• 拳銃と機関銃がゴッチャにされている・・・【乗りものニュース】零戦の放った弾丸は目の前のプロペラをどう避ける?往年のプロペラ戦闘機に納得の仕組み

 衆目が一致し、よく知られているところだが、我が国は世界的に見ても銃の所持に対する規制が厳しく、実際に銃を所持している人はかなりの少数派である。(*1)自衛官、警官、海上保安官など「職業的に銃を使用する/接する」人も少数派(*2)なモノだから、「銃に関する知識が根源的に欠落している人」が、相当に居る。

 そんな「銃に関する知識が根源的に欠落している人」が、兵器について解説すると、私(ZERO)のような「実銃を撃った事はないがガンマニア」の目からするとかなり滑稽な事になる、事もある・・・・「銃に関する知識が根源的に欠落している人」の方が恐らくは多数派だから、「その滑稽さに気付かない」事も往々にしてあるらしい。下掲するのは、そんな「滑稽な記事」の一つだ。
 
 ああ、昔、天下のウオールストリートジャーナル誌にあった「戦艦ニューヨークの寄港(*3)@21世紀」ほどのインパクトは、無いけどな。

 

  • <注記>
  • (*1) 加えて、散弾銃やライフル銃のような「長物」は所持できるが、拳銃は所持できない。
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  • (*2) この点、兵役がないのも、利いているよな。 
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  • (*3) 「補給艦ニューヨークの寄港」を、恐らくは「補給艦は軍艦だから」、「戦艦ニューヨークの寄港と表記してしまった、らしい。
  •  戦艦ってのは、絶滅艦種なんだけどな。米海軍で一番長い事「生存」していたんだが。 


 

  • 【乗りものニュース】零戦の放った弾丸は目の前のプロペラをどう避ける?往年のプロペラ戦闘機に納得の仕組み

  https://trafficnews.jp/post/107416

 

2021.05.26 種山雅夫(元航空科学博物館展示部長 学芸員)

 

tags: ミリタリー, 航空, 軍用機, 戦闘機, 旧日本軍, 零式艦上戦闘機(零戦), ドイツ軍, フォッカー

 

零戦など先の大戦で活躍した戦闘機は、プロペラの後ろに機銃を持つレイアウトが見られます。なぜ、放った弾丸がプロペラにぶつからないのでしょうか。それを可能にする装置の歴史やメカニズムを見ていきます。

 

カギは「プロぺラ同調装置」

 2021年3月、茨城県筑西市のテーマパーク「ザ・ヒロサワ・シティ」内に開館予定の「科博廣澤航空博物館」に、零式艦上戦闘機、いわゆる「零戦」が移送されました。開館日程は未定とのことですが、筆者(種山雅夫:元航空科学博物館展示部長 学芸員)は開館を待ち遠しく思っています。

 

 その零戦の武装は、左右の主翼に20mm機関砲を各1門に加え、最前方にあるエンジンのすぐ後ろ、胴体上部に7.7mm機銃が2門設置されています。後者の胴体機銃に関しては、発射時、プロペラの回転面を弾丸が通過することになります。

 

 こういった「プロペラの後ろに機銃」といったレイアウトは、零戦はもちろん、第2次世界大戦下の戦闘機では非常に多く見られたスタイルです。ここで生じるのが、「なぜプロペラに弾丸がぶつからないのか」という疑問です。

 

 

 答えは、「プロペラにぶつからないよう、機銃から弾丸が出るタイミングを調整している」となります。この装置を「プロぺラ同調装置」と呼びます。

 

 この仕組みをかんたんに言えば、機銃の前にプロペラのブレードがある場合に限って、弾丸を発射できるようになっているのです。そうすると、弾丸がプロペラの位置まで前進するまでのごく僅かな時間に、プロペラが回って、弾丸がぶつかることなく通り過ぎるようになります。もちろん、このあたりはエンジンのき回転数と機銃の発射速度との兼ね合いがあるため、飛行機の機種と機銃の種類によって調整が必要です。

 

 飛行機は、ライト兄弟が1903(明治36)年に初飛行してから、少しずつ進歩してきました。その進歩は、戦争に使用する兵器として採用されるようになると、一気にスピードアップすることとなります。戦闘機同士が組んずほぐれつ旋回しながら相手の後方に取り付き、機銃を発射するという光景が見られるようになったのは、第一次世界大戦が始まりです。

 

 第一次世界大戦当初、飛行機のおもな任務は、どこにどれくらいの戦力があるのかを把握するための偵察がおもな任務でした。これは、上空から見れば、相手方の歩兵や、やっと戦闘に使用されるようになってきた戦車などの様子がはっきりとわかるためです。

 

 そこに出現したのが、相手方の偵察機を邪魔する飛行機です。当初は石やレンガを投げていたこともあったそうですが、やはり拳銃を打つ方が効果的ということで、戦闘機が出現します。

 

「プロぺラ同調装置」が世界に広まるまで

 ライト兄弟時代の飛行機のカタチは、翼を上下に2枚備え、エンジンをパイロットの後方に配置していたため、前方は開けており、拳銃を付けやすくなっていました。

 

 ただその後、飛行速度の上昇や運動性の向上など、性能が上がるにつれエンジンを機首に配置することが主流となったことで、銃を前に置くことが難しくなっていきます。

 

 そのため、拳銃を後ろの席の人が撃つ、拳銃を2枚ある主翼のうちプロペラの回転面より高い上の翼に取り付ける、エンジンの上に拳銃を取り付けプロペラが壊れないよう防弾鋼板をプロペラに取り付ける、といった工夫がされました。しかし、いずれの方法にしても、目の前の敵機を撃つためには充分ではありませんでした。

 

 

撃墜されたフォッカーEIII(画像:米国議会図書館)。

 

 そこでイギリス、フランス、ドイツなどの各国では、プロペラのブレードの合間を機銃の弾丸がうまく通過するようなメカニカルな機構の開発に取り組んでいましたが、どれも十分な効果を発揮できませんでした。そのようななか、これをいち早く実現したのは、ドイツ空軍の「フォッカーEIII」に取り付けられた機銃同調装置(Stangensteuerung)でした。

 

 フォッカーEIIIは、1915(大正4)年の実践配備から翌年にかけ、固定銃を備えた当時としては異例のコンセプトをもつ戦闘機としてデビュー。相手機を自機の正面に来るように操縦さえできれれば、これまでより格段に、弾丸を命中させることができました。同機は大きな戦果をあげ、敵である連合国軍側も、その圧倒ぶりから「フォッカーの懲罰」と恐れました。

 

 その後連合国空軍側も、墜落したフォッカーEIIIを参考に、同様の装置を機体に取り付けたことで、機銃同調装置が広まります。その後第2次世界大戦後まで、プロペラ形式の戦闘機においては、機銃同調装置の有効性は証明されており、先述のとおり、日本では零戦などでこの装置が採用されました。

 

 航空機、そしてメカにおいて、ドイツの執着心は底知れないと感心する一例といえるでしょう。

 

 ちなみに、機首にプロペラが無い現代のジェット戦闘機では、命中率を上げる工夫として機銃を機首下面に配置することが多いです。ただ、F-16などは機体が小型のため、機銃はパイロットの横に設置しています。

 

【了】

※誤字を修正しました(5月26日9時11分)。

 

  • 「プロペラにつけて弾丸を跳ね返す装甲板」ギャローズウエッジに触れているのは良いが、「拳銃」と「機関銃」の混同は、許せんな。

 そりゃ世の中にはフルオート射撃(*1)可能な「マシンピストル」って拳銃があり、一部は第1次大戦中に航空機向けに製造されたそうだが、拳銃としてはかなりの少数派(*2)である。

 「拳銃弾を使う機関銃」は「短機関銃サブマシンガン」と呼ばれ、日本語で「マシンガン」というとこっちを指す事もままある(*3)し、一部の短機関銃は第1次大戦の際航空機に搭載された(確か、連装式にして旋回短機関銃とし)が、これも随分マイナーな話だ。

 上掲記事で「拳銃」と表記されているのは、大部分「機関銃」であろう。

1> 前方は開けており、拳銃を付けやすくなっていました。

 拳銃ならば、多少重かろうが片手で発射できるので、「付ける」必要は無い。第1次大戦で航空機に持ち込まれ空戦に使われた拳銃は、私の知る限り「乗員が手に持って撃つ」ばかりで、旋回式なり固定式なりにして「付けた」例は、無い。

 即ち、「付ける必要」があり、実際に「付けた」のは、主として機関銃である。ああ、確かラノ・ホーカーが、「猟銃を斜め前方向けに取り付け、引き金に結んだ紐を操縦席から引っ張って発射した(且つ、それを命中させて、撃墜した(*4))」って例はあったと思うが、「猟銃」も相当な少数派だ。しかも当時の猟銃だから、良い処上下か水平の二連装で、二発しか撃てない。


 一応念のため記載しておこう。

(1)拳銃  片手ないし両手で保持して撃つのが基本の小型の銃。フルオート射撃できる銃もあるが、ごく少数である。取り外し式の銃床を付ける場合もあるが、これも少数だから、「頬付けして狙う」撃ち方は、滅多にしない。

(2)機関銃(略して 機銃) 小銃弾を主としてフルオートで発射する大型の銃。両手で持てば手持ちで撃てる機関銃もあるにはあるが、相当に無理があり、二脚や三脚等の銃架に乗せて撃つのが一般的。
 第2次大戦後の近代的な小銃=突撃銃はフルオート射撃可能なのっで、小銃と機関銃の違いはかなり曖昧になっている(*5)。銃身交換の容易さや、フルオート射撃に対する耐性、水冷の有無(*6)等が「相違点」としてあげられるが、決定的なのは「配備数」しか無いかも知れない。「一人に一丁ずつ配備される個人用火器が、小銃(突撃銃含む)」「分隊(5人から10人)に一、二丁配備される分隊支援火器(の一つ)が、機関銃」

(3)短機関銃(サブマシンガン。だが日本語では、「マシンガン」とも。) 拳銃弾を主としてフルオート射撃する銃。大きさは、大型拳銃程度から小銃の短いのぐらいまで幅広い。折りたたみ式を含めて銃床は点いている事が多いが、無いのもある。
 小銃弾より反動の小さい拳銃弾のお陰もあって、手持ち射撃は比較的容易で、二脚はまだしも三脚や車輪付き銃架に乗せられる事は先ず無い・・・例外もあるが。
 配備で言うと、兵卒ではなく士官・下士官用に配備される事が多い。後は戦車兵の降車戦闘(ってのは、結構緊急事態であることが多いが)用とか。
 「ギャング映画で派手にぶっ放しているヤツ」と言えば、判る人には判るだろう。あ、でも「アンタッチャブル」では、短機関銃と並んでショットガン散弾銃が「派手にぶっ放されて」いたなぁ。
 「ギャング映画で、ダダダダッと派手にぶっ放しているヤツ」と、言い直そう。
 

  • <注記>
  • (*1) 引き金を引きっぱなしにすれば、次々に連続的に弾が出て来る射撃。無論、押し鉄・押しボタンならば、押しっぱなしとする事で連続的に弾が出る。 
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  • (*2) ザッと思い出すに、モーゼルM712(M1930)マシンピストル、スチェッキンAPS、ベレッタM93Rぐらいである。 
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  • (*3) 「む、マシンガン?手前ぇら、警察じゃぁねぇな!」「我々は、ゴールド氏私説警備隊だ!」@ルパン三世
  •  赤川次郎の小説「セーラー服と機関銃」は、どうもこのサブマシンガンを「機関銃」呼ばわりしてしまっている様であるが、M3グリスガンにせよ、MP40にせよ、「機関銃」と呼ぶのは、正しくない。 
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  • (*4) って、両津勘吉巡査と勝負が出来そうな 
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  • (*5) だから、「機関部は共通にして、銃身や銃床を組み替えればどちらにもなる」ストナーM63”システムウエポン”なんて銃も作られた。 
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  • (*6) 水冷していれば機関銃だが、空冷の機関銃も多いし、戦後は主流。