何を「肝心」って言ってるんだぁ?ー【毎日社説】代表質問への首相答弁 肝心な点に何故答えない | 日出づる処の御国を護り、外国までも率いん心

    何を「肝心」って言ってるんだぁ?ー【毎日社説】代表質問への首相答弁 肝心な点に何故答えない

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    【毎日社説】代表質問への首相答弁 肝心な点に何故答えない

    代表質問への首相答弁 肝心な点になぜ答えない
    毎日新聞2020年1月23日 東京朝刊

    【1】 安倍晋三首相は同じ答弁を何度も繰り返すことが「丁寧な説明」だと勘違いしているのではないか。そんな疑問さえ抱く。
     
    【2】 首相の施政方針演説に対する各党代表質問がきのう、衆院本会議で始まった。だが、「桜を見る会」の疑惑などに対する首相の答弁は昨年12月の国会当時とほとんど変わらなかった。これでは到底納得できない。
     
    【3】 立憲民主党の枝野幸男代表が質問の冒頭、先の首相演説では一切触れられなかった「桜を見る会」の問題を取り上げたのは当然だ。
     
    【4】 この問題では、政府が「ない」と言ってきた一部の関係文書が残っていた事実が新たに判明し、疑惑解明のカギでもある招待者名簿が本当に廃棄されたのかどうかも裏付けできない状況になっている。
     
    【5】 ところが首相は名簿について「個人情報保護」を盾に相変わらず早期廃棄の正当性を強調し、再調査の必要性を認めなかった。名簿管理や廃棄に際し記録を残していなかった違法行為に対して官僚の処分はアピールしたものの、行政トップとしての責任を誠実に語ることはなかった。
     
    【6】 首相と妻昭恵氏の関係者を大量に招待して、税金を使った催しを私物化したのではないか。そして内閣府が無理な説明を重ねているのは首相を守るためではないか。これが疑惑の核心だ。「自分には一切責任がない」という首相の姿勢はむしろ強まっていると言っていい。
     
    【7】 統合型リゾート(IR)事件も同じだ。枝野氏が指摘したように、事件はカジノが利権を生む構造を浮き彫りにしたはずだ。しかし首相は、こうした根本的な問題に触れようとせず、捜査中を理由に「詳細なコメントは控える」で終えてしまった。
     
    【8】 枝野氏は「分配」を重視する経済政策をはじめとして、国のあり方について、安倍政権とは違う選択肢をそれなりに示した。
    向にあったと指摘すると、民主党政権下ではデフレが進行したと強調し、「デフレ自慢だ」とまで言って反論する場面もあった。
     
    【9】 にもかかわらず首相はアベノミクスの成果を列挙するだけだった。枝野氏が旧民主党政権時には実質賃金指数は回復傾向にあったと指摘すると、民主党政権下ではデフレが進行したと強調し、「デフレ自慢だ」とまで言って反論する場面もあった。
     
    【10】 これでは議論にならない。肝心な点に答えず、国会質疑の劣化を招いている責任はやはり首相にある。

     

    毎日新聞社説の言う「肝心」を抽出すると、以下の通りとなろう。

    1> 首相と妻昭恵氏の関係者を大量に招待して、税金を使った催しを私物化したのではないか。そして内閣府が無理な説明を重ねているのは首相を守るためでは無いか。これが疑惑の核心だ。【パラグラフ6】
     
    2> 事件はカジノが利権を生む構造を浮き彫りにしたはずだ。【パラグラフ7】
     
    3> 枝野氏は「分配」を重視する経済政策をはじめとして、国の在り方について、安倍政権とは違う選択肢をそれなりに示した。【パラグラフ8】
     
     
     

    1> 首相と妻昭恵氏の関係者を大量に招待して、税金を使った催しを私物化したのではないか。そして内閣府が無理な説明を重ねているのは首相を守るためでは無いか。これが疑惑の核心だ。

    ・・・所謂「桜を見る会」問題、な訳だが・・・こんなのが「肝心」筆頭になってしまう処に、毎日新聞(とアカ新聞ども)や現行野党(の大半)の「悲惨さ」を見てしまうぞ、私(ZERO)は。
     
     「妻昭恵氏の関係者を大量に招待して」と限定条件を付ける事で、ナントカ「安倍政権による桜を見る会私物化」へ持ち込もうという魂胆だろう。桜を見る会が「税金を使ったタダ酒」なのは同会発足当初から変わらず、「選挙協力者招待」も民主党政権時代に遡れてしまうがための「総理夫人の関係者大量招待」批判、って訳だ。
     
     一言で言ってしまえば、「実に下らない」な。
     
     桜を見る会は、税金によるタダ酒宴会として発足し、歴代首相に連綿と受け継がれて来た。招待客基準に明白なモノがなく、招待客が増えて2万人近くにまでなり、怪しげな人物(*1)まで紛れ込んでいた、ってのは事実だろう。多分。
     
     で、そいつの何処が、どの程度、現首相たる安倍晋三氏本人の、或いは現政府の、責任なのであろうか?それも、今年の「桜を見る会」は中止と決め、来年以降へ向けて招待客基準の明確化を宣している現職首相及び現行政府に対して。
     
     税金でタダ酒とはケシカラン!ならば、「税金のタダ酒」として発足した「桜を見る会」は、発足当初から「ケシカラン」存在であり、発足以来歴代首相の責任は不可避であるし、歴代首相の申し継ぎ事項を今年については中断した(*2)点では安倍首相を評価すべきだろう。
     
     選挙協力者如きにタダ酒飲ますな!ならば、少なくとも民主党政権時代以来の歴代首相の責任は不可避であるし、矢張り今年については中断した点では安倍首相を肯定すべきだろう。
     
     「首相夫人の招待客なんかに、タダ酒飲ますな!と言う上掲毎日社説の「限定条件」で、漸く「現・安倍首相&安倍政権だけ批判」することが出来そうだが・・・「大量の首相夫人の招待」を以て「私物化」と断定断言し、且つ「選挙協力者招待」は「私物化ではない」って判定基準は、随分と恣意的で、ダブルスタンダード臭くてかなわない。
     
     内閣府が無理な説明を重ねているの方は、もっと下らない。招待客名簿がシュレッダーで処理されたとかされないとか、電子データがが何処かに残っているとか居ないとかを指しているのだろうが、税金投入しているとは言え一人頭3千円以下の年一回のタダ酒宴会の招待客名簿を、「公文書として保存保管すべきだった」とか「本当に無いのか、徹底検証すべきだ」とか、正気を疑うレベルだぞ。
     
    • <注記>

    • (*1) 「怪しげな人物」ッてのも、かなり「怪しい」基準であるが。 
    •  
    • (*2) 中断は、以前にも何回かあったそうだが。 
     

    2> 事件はカジノが利権を生む構造を浮き彫りにしたはずだ。

     カジノが利権を生む構造」なんてのは、今般のIR疑惑を待つまでも無い。公営にしろ民営にしろ「新しい合法ギャンブル」なのだから、何らかの形で「利権を生む」のは間違いないし、「利権を生まない」と考える方がどうかしている。

     民営とした方が、公営にしてしまうより利権は大きいだろうが、営業としての成功や集客の多さは民営の方が期待出来ようし、民営/官営は一長一短であろう。
     
     私(ZERO)自身はIRに否定的であり、それ故今般のIR疑惑を「IR設立見直しの契機」とするならば、私(ZERO)とて(極めて珍しいことに)立憲民主・枝野党主に賛同できそうだ、と考えたのだが・・・下掲全文の通り、「カジノ推進法・整備法廃止法案(*1)」の宣伝が主で、「首相の責任追及」が従の「二本柱」。前者については(枝野氏の宣伝通りに)「今後の国会議論に期待」ではあるが(正直、全く期待する気が起きないが。)、後者は平たく言って「負け犬の遠吠え」でしかないな。

     

    • <注記>

    • (*1) いつぞやの、野党6党共同「安保法案廃止法案」みたいに「不要だから廃案にする」としか書いて居ないような、議論の材料にもならないような中身皆無のスカスカ法案なのじゃないのかぁ?あの法案は、「法案の名前の方が条文より長い」って言う、トンデモナイ法案だったぞ。 
     

    3> 枝野氏は「分配」を重視する経済政策をはじめとして、国の在り方について、安倍政権とは違う選択肢をそれなりに示した。

     「一体何がどう違う選択肢なのか?」と興味を持った私は、立憲民主党HPで【衆院本会議】施政方針演説に対する代表質問 枝野代表が安倍政権に代わる選択肢示すhttps://cdp-japan.jp/news/20200122_2506というのを見つけた。(全文下掲)
     
     その中で経済政策に焦点を絞ると、平たく言って「貧困救済などの下からの経済政策」であるらしい。上掲毎日社説にある「分配を重視する経済政策をそれなりに示した」と言う評価は、「一応正しい」と言えそうだ。
     
     だが、それって「最低賃金大幅強制アップ」とか「残業強制規制」とかでお隣韓国が実践して、モノの美事に失敗している政策じゃぁないのかね?ああ、だから、「それなりに示した」なのかぁ?
     

    であるならば、1>は「答える必要なし」で、2>は「今後の国会質疑で答える」で十分。

     残りの3>が殆ど唯一「代表質問での質疑に価する」部分と言えよう。その質問本体は、下掲全文からすると実質賃金・実質可処分所得をどう増やす計画か?」と「所得税の累進強化についての総理の見解」である。

     これに対して安倍総理がどう答弁したかは、上掲毎日社説によると、
     
    4> にもかかわらず首相はアベノミクスの成果を列挙するだけだった。
    5> 枝野氏が旧民主党政権時には実質賃金指数は回復傾向にあったと指摘すると、民主党政権下ではデフレが進行したと強調し、「デフレ自慢だ」とまで言って反論する場面もあった。
     
    ・・・少なくとも安倍首相は「枝野党首に対し、反論した。」って認識は、毎日社説記者にもあるようだ。「デフレ下の実質賃金指数回復傾向」が決して喜ばしいモノでは無い、って安倍首相の指摘も、首肯できるモノが多分にある。毎日社説記者は、首肯しないようだが。
     また、列挙された「アベノミクスの成果」の中には、先の臨時国会で枝野党首自身が指摘した「一般企業の7割の賃上げは”3%”ではなく、2%だ!」というのも入っているだろう。
     
     で、物価上昇率の目標が2%で、その目標になかなか届かず、物価場両立が2%を下回りっぱなしと言うことは・・・統計の取り方などで幾許かの齟齬はあるだろうが、「一般企業の7割では、実質賃金が上がっている」と言うことでは無いのか?
     
     言い換えれば、上掲毎日社説で、「肝心な点を答えない」事例としている「アベノミクスの成果列挙」は、「枝野党首質問の前提条件”実質賃金・可処分所得は増えていない”を、粉砕した指摘」であり、「肝心な点を答えない」所か「枝野党首質問の急所を突いた」のでは無いのか?
     そうでないとしたら、それは、何故だろう??サンプルとか調査期間とかの統計の取り方に依る齟齬なのか、はたまた統計の読み方、参照の仕方の違いか。或いは単なる勘違いや思い込みか。
     
     少なくとも、安倍首相の「アベノミクスの成果列挙」は、「肝心な点を答えない」のでは無く、「アベノミクスで実質賃金は上がる」無いし「既に実質賃金は(部分的に、かも知れないが)上がっている」という「安倍首相の主張」であった公算は、相当に大きい。
     
     こりゃ、安倍首相の答弁全文を参照すべきかな。
     
     で、結論。上掲毎日社説から読みとれる「安倍首相の答弁」は、自己弁護や自己正当化はあるかも知れないが、「肝心な点を答えない」と切って捨てられるべきモノでは、無さそうだぞ。
     
     
    https://cdp-japan.jp/news/20200122_2506

    【衆院本会議】施政方針演説に対する代表質問 枝野代表が安倍政権に代わる政権の選択肢示す

     

     衆院本会議で22日、安倍総理の施政方針演説に対する代表質問が行われ、立憲民主・国民・社保・無所属フォーラムを代表して枝野幸男代表が登壇。(1)「桜を見る会」をめぐる問題(2)「桜を見る会」に関連する公文書管理(3)閣僚等についての問題(4)政権ビジョン(5)経済財政(6)社会保障・教育子育て(7)エネルギー政策の転換(8)外交・安全保障――について取り上げ、安倍総理の見解をただしました。

     枝野代表は、日本社会の現状について、超高齢化と人口減少が進むなか、消費増税が引き上げられた一方で老後の不安は高まるばかりであり、第2次安倍政権発足から7年が経過しても、いわゆるトリクルダウンは起こらず、多くの国民の皆さんは豊かさを実感できず、格差が固定化し、明日への希望を見いだせない国民が増えていると指摘。「日本経済の過半を占める個人消費は回復の兆しすら見せず、アベノミクスの限界は明確。総理の施政方針演説は、見たくない現実に目を背けた無責任なものと断じざるを得ない」と指弾しました。

     その上で、「しかし私は悲観していません」と続け、私たちの国にある潜在的な力を引き出す新しい道を切り拓くため、安倍政権に代わるもう一つの政権の選択肢を示すと宣言。政権ビジョンとして「『支え合う安心』をつくる」「『豊かさの分かち合い』によって経済を活性化する」「『責任ある充実した政府』を取り戻す」――の3つの柱を挙げ、「社会全体で『支え合う安心』の仕組みを構築することで、老後の不安をなくし、子どもを産み育てたいと望む方々の希望をかなえることが可能な社会をつくる」「偏って存在している豊かさを分かち合うことで、多くの国民がその実感を持てるようにする。それが、可処分所得を実質的に拡大させ、国内消費を伸ばし、GDPの持続的成長につながる最大の経済対策となる。『分配なくして成長なし』。社会状況の変化を踏まえて経済政策を転換し、『豊かさの分かち合い』を進めることで、一人ひとりが豊かさを実感できる社会と、内需が着実に成長する経済を実現する」「『支え合う安心』も、適正公平に『豊かさを分かち合う』ことも、民間だけでは、市場原理では実現できない。昭和の終わり頃から、多くの先進国で『競争を加速することが正義、政府は小さいほど良い』という方向に大きく傾いたが、現状は、『民間でできないことまで民間へ』。背負うべき役割まで放棄した『小さすぎて無責任な政府』になっている。『小さな政府』幻想から脱却し、必要なことには『責任ある充実した政府』を、そして『民間でできないことはしっかりと官が責任を持つ』『まっとうな政治』を取り戻す。もちろん、立憲主義を回復させ、適正な公文書管理と情報公開を進めることは大前提」だと述べました。

     枝野代表は、「最大野党の党首の責任として、『支え合う安心』と『豊かさの分かち合い』を実現する『責任ある充実した政府』をもう一つの選択肢として高く掲げる」と表明。立憲民主党はもとより、会派を共にする皆さん、連携協力する他の野党の皆さん、今の社会と政治に不安と不信を抱く多くの有権者の皆さんと、違いを認め合いながら幅広く力を合わせ、政権交代を実現する決意だと述べ、その大きな転換点の向こうに、明るい日本を切り拓くことができると確信すると力を込めました。

     

    枝野代表の質問の全文は以下のとおりです。


    2020年1月22日

    施政方針演説に対する代表質問

    立憲民主・国民・社保・無所属フォーラム 枝野幸男

     私は、会派を代表し、私たちが目指す社会について、もう一つの選択肢を示しながら、安倍総理に質問します。

    (中略)

    4.政権ビジョン

    ■ 日本社会の現状

     超高齢化と人口減少が進む中で、一年間に生まれる子どもの数は90万人を切りました。消費税率が引き上げられたにもかかわらず、医療費の窓口負担を引き上げようとする動きなどが伝えられ、老後の不安は高まるばかりです。
     七年が経過しても、いわゆるトリクルダウンは起こらず、多くの皆さんは豊かさを実感できていません。格差が固定化し、明日への希望を見いだせない国民が増えています。日本経済の過半を占める個人消費は回復の兆しすら見せず、アベノミクスの限界は明確です。総理の施政方針演説は、見たくない現実に目を背けた無責任なものと断じざるを得ません。

     しかし私は悲観していません。
     日本は、戦後復興から高度成長へと人口も経済も急激に拡大してきた昭和の後半から、平成期を挟んで、人口減少社会、成熟経済へと大きく変化しました。その中で、社会状況に合わなくなったにもかかわらず、昭和の成功体験にとらわれ、無理やり引っ張り続けてきた多くのことが、限界に達し、矛盾を露呈してきたのが現状です。
     限界が見えてきたからこそ、何をどう変えていくのかが明らかになり、新しい道を切り拓いていくことができます。今、政治を変え、新しい道を切り拓くことができれば、私たちの国には、またまだ潜在的な力があります。
     私は、潜在力を引き出す新しい道を切り拓くため、安倍政権に代わるもう一つの政権の選択肢を示します。

    ■ 支え合う安心

     第一に、「支え合う安心」を作ります。
     本来、超高齢社会とは、人類が夢見てきた長寿社会にほかなりません。そのこと自体は望ましいことのはずです。ところが、老後の不安が大きくなる一方だから、高齢化社会を後ろ向きに受け止めざるを得ない方が多くなっています。
     人口減少は続いていますが、潜在的なものも含めれば、子どもを産み育てたいと望む方々は多く、その希望をかなえることが可能な社会を作れば、一定程度歯止めをかけることができます。
     老後も、子育てや教育も、かつては個人や家庭に委ねられていました。しかし、今の日本では、いずれも自分の力だけではどうにもなりません。自己責任に帰すのでは不安が広がるばかり。今こそ、自己責任論から脱却し、社会全体で「支え合う安心」の仕組みを構築しましょう。私は、これこそが、政治の最大の役割であると明確に位置づけ、その役割を担う新しい政権を作ります。

    ■ 豊かさの分かち合い

     第二に、「豊かさの分かち合い」によって経済を活性化します。
     バブル崩壊後のGDP国内総生産の成長率は、2018年までの平均で1%未満。昭和の終わり、バブル前の10年と比較すると実質で4分の1、名目では10分の1にもとどきません。施政方針でいくら虚勢を張っても、この基本構造は、アベノミクスの七年間も何ら変わっていません。
     その原因は、ひとえに国内でお金が回らないことです。海外との関係で、日本が貧しくなったわけではありません。
     同じ期間の輸出の成長率は実質で4.1%、名目でも2.9%。昭和の終わりの10年と比較して6割程度の成長をしています。国際収支も、一時的なマイナスはありますが、黒字基調が続いており、海外との関係では、日本はこの間も豊かさを拡大し続けています。
     経済が低迷している主要因は、輸出ではないのです。低下しているとはいえ、今なお日本は一定の国際競争力を持っています。国全体が貧しくなったのではなく、一人ひとりに行き渡らないため、多くの国民が豊かさを実感できず、消費を冷え込ませ経済を低迷させているのです。

     国際競争力を維持拡大させるための努力は、今後さらに強化する必要があります。しかし、それと同等以上に、偏って存在している豊かさを分かち合うことで、多くの国民がその実感を持てるようにします。それが、可処分所得を実質的に拡大させ、国内消費を伸ばし、GDPの持続的成長につながる最大の経済対策となります。
     また、若年人口が減り続ける中で国際競争力を維持・強化していくためにも、すべての若者が個々の持ち味を発揮できるような「学ぶ機会」を保障します。貧困などによって「学ぶ機会」が奪われている若者を、豊かさの分かち合いによってなくしていきます。

     昭和の高度成長期は、「成長するから分配できる」時代でした。しかし、バブル崩壊後の平成期は、大企業が成長して大きな利益を上げても、賃金や下請けなどに分配される部分や国内投資に回る部分が限定され、内部留保が積み重なるばかり。適正な分配がなされないために可処分所得が伸びず、経済の過半を占める内需が成長しないことで、全体としての経済成長の足を引っ張っています。この実態から目を背けても経済の安定的発展はありません。
     「分配なくして成長なし。」
     私は、社会状況の変化を踏まえて経済政策の根本を転換し、「豊かさの分かち合い」を進めることで、一人ひとりが豊かさを実感できる社会と、内需が着実に成長する経済を実現します。

    ■ 責任ある充実した政府

     第三に、「責任ある充実した政府」を取り戻します。
     「支え合う安心」も、適正公平に「豊かさを分かち合う」ことも、民間だけでは、市場原理では実現できません。
     昭和の終わりころから、多くの先進国で、「競争を加速することが正義、政府は小さいほど良い」という方向に大きく傾きました。日本では、「民間でできることは民間で」「小さな政府」などという言葉が、絶対的な正義として語られました。
     しかし現状は、「民間でできないことまで民間へ」。背負うべき役割まで放棄した「小さすぎて無責任な政府」になっています。
     民営化の先で生じた、かんぽ生命の問題。大学入学共通テストの民間丸投げ。公営に限定されてきたギャンブルを民間開放しようとしたカジノ。
     さらには、非正規化と定員抑制を進めすぎた挙句、長時間労働が常態化して正規でも希望者が激減し、非正規が集まらなくなっている教職員の世界。常勤職員が不足して大規模災害対応がパンクしている地方自治体。介護サービスの不足や待機児童の問題も、民間だけでは対応できない広い意味での政府の仕事です。
     今こそ、「小さな政府」幻想から脱却し、必要なことには「責任ある充実した政府」を、そして「民間でできないことはしっかりと官が責任を持つ」「まっとうな政治」を取り戻します。もちろん、立憲主義を回復させ、適正な公文書管理と情報公開を進めることは大前提です。

    ■ 決意

     私は、最大野党の党首の責任として、「支え合う安心」と「豊かさの分かち合い」を実現する「責任ある充実した政府」をもう一つの選択肢として高く掲げます。そして、立憲民主党はもとより、会派を共にする皆さん、連携協力する他の野党の皆さん、そして、今の社会と政治に不安と不信を抱く多くの有権者の皆さんと、違いを認め合いながら幅広く力を合わせ、政権交代を実現する決意です。

     以下、こうした政権ビジョンに基づき、いくつかの重要項目に絞って質問します。

    5.経済財政

    ■ 実質賃金・実質可処分所得

     暮らしの豊かさを示す実質賃金指数や実質可処分所得は、2005年ころから2009年ころにかけて急激に低下しました。そして、安倍総理が「悪夢」とおっしゃる時期は、むしろ回復傾向にあったものの、2013年に再び大きく下落して回復の兆しを示していません。安倍政権は、一部には好転させた数字があるものの、一人ひとりの暮らしの真の豊かさについては、これを膨らますどころか、むしろ低下させているのです。
     アベノミクス七年。その転換なくして、暮らしの豊かさを取り戻すことはできません。
     私たちは、一貫して訴えてきたとおり、まずは第一歩として、政治が直接関与できる低賃金労働者について、合理的な賃金引上げと正規雇用化を図ります。
     保育士や介護職員等、第一に公的な資金配分の多寡によって支払いうる賃金に制約がある分野であって、第二に低賃金であるために人員の確保に困難をきたし、第三に需要が大きいにもかかわらず供給が不足している公的サービス分野について、大幅な賃金引き上げを図るべく、資源配分を大胆に転換します。
     また、定員削減という美名の下で、必要な人員まで削られ、あるいは非常勤化が極端に進んでいる地方公務員や公立学校教職員、ハローワーク職員や消費生活相談員等の常勤雇用化や定数の適正化によって、特に地方に対する再分配を強化します。
     総理は、七年かけても実現できなかった実質賃金や実質可処分所得を増やすことを、どのような手段で、いつごろまでに実現しようとしているのか。具体的にお答えください。

    ■ 所得税の非累進性

     昨年10月、私たちの強い反対を押し切って、消費税が10%へ引き上げられました。消費を冷え込ませ、国民生活をより厳しいところへ追い込んでいます。今、必要なのは、広く薄く負担をお願いすることではなく、適正公平に豊かさを分かち合う仕組みです。
     日本の所得税は、累進課税であると言われています。しかし、株式譲渡所得のほか多くの金融所得は分離課税の対象となり、所得税は15%、住民税は5%です。そして、高所得者ほど所得に占める株式譲渡所得等の割合が高いことから、ある段階から、所得税の実質的な負担率は所得が増えるにつれて低下しています。
     国税庁の標本調査から試算すると、1億円までは所得が増えるほど所得税の負担率は高くなりますが、これを超えると順次低くなり、所得100億円超では所得2,000万円程度と同じくらいの負担率まで下がります。日本は真の累進課税ではありません。この認識で間違いないか。これで良いと思っているのか。総理にお尋ねします。
     私は、株式譲渡所得など金融所得課税を累進化しつつ強化した上で、将来的に総合課税化を目指します。総理の見解を伺います。

    (後略)