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西暦2019年・平成31年・皇紀2679年明けましておめでとうございます。
まあ、例年の通り、新年一発目のブログ記事ぐらいは「目出度い記事」にしたいと思うのが、普通の日本人の人情というモノ。そこで「干支に因んだ兵器」を取り上げるのがほぼ毎年恒例なんだが、今年の干支は亥で「イノシシ」だ。
草食動物ながら「牙」があり、猪突猛進なんて言葉もあるように、突進力にも定評がある(その代わり、小回りは利かない)イメージのイノシシだが、一方で「猪武者」と言えば悪口だ。どちらかというと後者の悪口としてのイメージが強いのか、まず日本・日本軍の兵器の名としては「イノシシ」が登場しない。
まあ、例年の通り、新年一発目のブログ記事ぐらいは「目出度い記事」にしたいと思うのが、普通の日本人の人情というモノ。そこで「干支に因んだ兵器」を取り上げるのがほぼ毎年恒例なんだが、今年の干支は亥で「イノシシ」だ。
草食動物ながら「牙」があり、猪突猛進なんて言葉もあるように、突進力にも定評がある(その代わり、小回りは利かない)イメージのイノシシだが、一方で「猪武者」と言えば悪口だ。どちらかというと後者の悪口としてのイメージが強いのか、まず日本・日本軍の兵器の名としては「イノシシ」が登場しない。
ならば、海外へと目を転じると・・・海外でのイノシシのイメージというのは良く判らないが、あまり良いイメージがないのか、単に印象が薄いのか(*1)、兎も角「兵器の名前」としてのイノシシはとんと見当たらない。
殆ど唯一の例外が、米空軍のフェアチャイルドA-10攻撃機。「サンダーボルトⅡ」の愛称がメジャーだが、「ウォートホグ(イボイノシシ)」とも呼ばれている、「イノシシと呼ばれた兵器」だ。

イボイノシシってのは相当にインパクとある外見の動物だが、航空機としてのA-10もインパクトでは負けていない。攻撃機というのは軍用機の中でも戦闘機に次いで運動性が求められる機種であり、ジェットエンジンの攻撃機と言えば、超音速飛翔出来るモノ(*2)も希少ながらあるぐらい、高速性を求められることもある機種だ。
だが、A-10に求められたのは「低速での運動性」「長時間耐空性」「大きな搭載量」だった。
その結果出来上がったA-10攻撃機は、分厚い矩形翼を持ち、双発のエンジンは胴体後端近くにポッド式に搭載し、双尾翼がそのエンジンポッドを隠すようにそそり立つと言う「一寸ジェット機とは思えない」様な「前近代的(と言って悪ければ、第2次大戦のレシプロ機風の)異形となった。
外見の異形さもさることながら、内容も相当なモノで、兎に角「打たれ強く」するために、操縦席廻りはチタン装甲の「バスタブ」で覆われ、操縦系統は油圧二重系を張り巡らし、片翼の外翼がもげても帰投できるように設計された、と言うのだから恐れ入る。樫村三等空曹殿も、草葉の陰でお喜びだろう。
一方で、高度なレーダーなどは搭載せず、ミサイルや誘導爆弾の様なスタンドオフ・精密誘導兵器の運用は限定的にして、大量の無誘導爆弾と機関砲を主力とする、これまた「時代逆行的な機体」だった。
だぁが、その機関砲が、並みではない。30mmのガトリング機関砲は、「発射すると、機体が止まる(様な気がする)」と言われる程強烈な反動ながら、威力(特に貫通力)も抜群で、特に湾岸戦争の際のイラク軍車列に対する威力を大いに見せつけた。
この湾岸戦争で見せつけた威力もあって、一時は全機退役させられそうだったのも取りやめとなり、攻撃機から、「目標を指示し、攻撃機隊を指揮する」前線統制機へと転用(と言うより、新たな任務追加だな)され、OA-10として未だ現役バリバリの、息の長い機体だ。
A-10が「空飛ぶイボイノシシ」ならば、「地を走るイボイノシシ」が英国陸軍のウォートホグ装甲車だ。シンガポールが開発した、牽引車とトレーラーに「二分割された」形の連結式装軌装甲車・Broncoシリーズを改良して英陸軍が採用し、アフガニスタンなどにも投入されたと言う。

こちらも「連結式」って外形が特異な「ウォートホグ」だが、写真などを見るとそれより気になるのは「スノコ状装甲」だろう。「鉄筋コンクリート造りの鉄筋だけ車体周囲に張り巡らした」様に見える「スノコ状装甲」は、第2次大戦後大いに発達した歩兵の携行対戦車ロケット弾、具体的にはRPG-7に対する対抗策だ。
第2次大戦のバズーカ砲やパンツァーファウストなどが「歩兵が携行し、発射できる対戦車兵器」たり得たのは、成形炸薬弾(HEAT弾)の「モンロー効果」とか「ノイマン効果」とか呼ばれる高い貫通力のため。だが、この高い貫通力は「スタンドオフ距離」と呼ばれる「貫通する装甲から一定の距離を置いて起爆する」必要がある。「スノコ状装甲」は、成形炸薬弾をこのスノコで過早に起爆させることで、その貫通力を減じる仕掛け。RPG-7等の対戦車ロケット弾ばかりではなく、対戦車ミサイルに対しても一定の効果がある(*3)。第2次大戦のドイツ戦車(の一部)が砲塔周囲や車体側面に張り巡らした「シェルツエン」補助装甲の末裔だ。
つまりは、陸のウォートホグ装甲車も、空のウォートホグ攻撃機と同様に「高い防御力を狙っている」と言えそうだ。
尤も、陸のウォートホグ装甲車は、基本兵員を輸送するのが仕事で、その攻撃力は「装甲車としても高い方ではない」。まあ、「全地形を踏破して兵員を輸送する」のが目的だから、それで良いのだが。
因みに陸のウォートホグ装甲車の原型となったブロンコは我が国にも輸入され、消防車両「レッドサラマンダー」として配備されている・・・軍用ではないから、兵器ではないし、イノシシでもないが。

何はともあれ、今年が我が国と我が国民と読者諸兄にとって良い年でありますように。
<注記>
(*1) 多分、後者だと思うが。(*2) A-5ビジランティなど。F/A-18も戦闘機兼任ながら超音速飛翔できる攻撃機だ。(*3) 基本的にどちらも成形炸薬弾頭だからね。ま、その上を行くタンデム弾頭とかもある訳だが。