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 西暦2018年・平成30年・皇紀二千六百七十八年、あけましておめでとうございます(遅ればせながら)。

 幣ブログをいくらかご覧になればおわかりだろうが、幣ブログ記事の多くは批判や批評で、中にはわれながら悲憤慷慨している記事も散見されるから、「初春」であり「めでたい」正月にはいささか難のある記事ばかりだ。正月一発目の記事ぐらい、いくらかでも目出度いものとしたいのは、日本人の普通の感覚だろう。
  
 でまあ、毎年のようにやっているが、「干支にちなんだ名前の兵器」を記事にしようと、つらつら思い返すに・・・ 

 今年の干支は、「戌」。「イヌ」と読むのだから、ふつうに書けば「犬」であろう。「人類の友」などと呼ばれることがある犬は、人類が最初に家畜化した動物であるそうな。それだけに、「人類にとって(一般的には)最も身近な動物」と、言えそうだ(*1)。

 と同時に、日本では、「忠犬ハチ公」とか「権力のイヌ」とかでイメージ・常套句となっているように、イヌには「忠実である」という良いイメージも、逆に「走狗」として「下っ端」「自らの意志を持たない」「権力権威に唯々諾々と従っている」なんて悪いイメージもある。まあ、猟犬が広く一般的な欧米諸国や、イヌを食料と(も)考える半島・大陸では、また違った「イヌのイメージ」がありそうだが、「忠実」「自らの意志を持たない」ってのは、「道具としての兵器の名前」にはうってつけ、と思われる。(私(ZERO)には)

 ところが、「イヌの名前を冠された兵器」ってのは、日本/日本軍ではトンと覚えがない。制式名称にするには「イヌのイメージ」では(兵器としては)かなり貧弱なようだし、大体、「動物の名を兵器に冠する」って習慣が、我が国では(あったとしても)相当弱い。勢い、タイトルにしたような「イヌと呼ばれた兵器」ってのは、我が国・我が軍には、さっぱり覚えがない。
 
 そこで目を外国、特に西欧諸国に転じると、これはいくつかある。

空に、海に、陸に、ブルドックあり

 たとえば、ソースの商標にもなっているブルドックは、闘犬としても使われる犬種だから、「強い」イメージに合致する。遡れば、イギリスにブリストル・ブルドック複葉戦闘機がある。複葉羽布張りの戦闘機で、第1次大戦機でこそ無いが、1927年制式採用の大戦間機だ。

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 第2次大戦機である(理の当然ながら単葉低翼機(*2))ハリケーンが後継機となったと言うから「イギリス最後の複葉戦闘機」になりそうなものだが、さにあらず。イギリス人ったらグロスター・グラジエーターなんて複葉羽布張り戦闘機を第2次大戦初頭の「主力艦載戦闘機」にしているモノだから(*3)、ブルドック戦闘機はどうも影が薄い。「大戦間のイギリス戦闘機として最も有名」と、ウイキペディアに誉められても、フィンランドやスゥエーデンに輸出されても、「戦闘機としての知名度」は、相当に低い。まあ、「大戦間の戦闘機」ったら、そんなものかも知れないが。我が国で97式戦闘機(97戦)や96式艦上戦闘機(96艦戦)がそれなりにメジャーなのは、「国産にして、世界トップレベルの性能を実現したから」で、そうでなければ(あるいはひょっとしてイギリスなどでは)10年ほど先輩で輸出もされたブリストル・ブルドック戦闘機に知名度で負ける、のかも知れない。

 因みにブルドック戦闘機のエンジンはジュピターで、このライセンス生産が後の中島・寿エンジンにつながったから、97戦や96艦戦は、ブリストル・ブルドックと「血が繋がっている」と、言えないこともない。

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 空にブリストル・ブルドック戦闘機あれば、海にB級駆逐艦ブルドックあり。「B級」ってのは「B級戦犯」と同様に「A級になれない、二流、二軍」という意味ではなく(*4)「Bで始まる名前を付けるのが通例であった軍艦の級名」だから「B級」。ブルドックBulldogはその9番艦で、最終艦。1931年就役で、第2次大戦でも戦った艦だそうな。

 尤も、このブルドックの属する「B級駆逐艦」には「Keithキース」って「Bで始まらない名前の艦」もあるし、かと思うと先代のHMS Buldog(英国軍艦ブルドック)は第1次大戦前に建造されたG級駆逐艦に属していて、このG級駆逐艦は以前は1番艦の名を取って「ビーグル級駆逐艦(*5)」だったが変更された、のだそうで・・・どうも、イギリスが開発した駆逐艦をアルファベット順に銘々し直した、らしい。イギリス海軍Royal Navyぐらい歴史が長いとそんな整理も必要になってくる、らしい。でもなぁ、「後出しで、やるなよ」。

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 空に、海にブルドック戦闘機&駆逐艦がいれば、陸にも居そうで、真っ先に思い浮かぶのが米軍のM41ウォーカーブルドック軽戦車だ。が、これを「イヌと呼ばれた兵器」と言ったら、ちょっと怒られそうだ。この戦後に開発され、我が陸上自衛隊も一時期装備した「ウオーカーブルドック」戦車の名前の由来は「朝鮮戦争時に第8軍を指揮したウォルトン・ウォーカー中将の名にちなんだ」そうであるから、「ウォーカー」が中将の名前で、「ブルドック」は「あだ名」だ。

 とはいえ、我らが陸自で使われたこともあり、陸海空の「ブルドック」兵器の中ではこのM41ウォーカーブルドックが一番有名だろう。


ドイツ製の獣たち

 兵器に動物の名をやたらに冠するモノとしては、ドイツ人の「獣名前戦闘車両」がある。有名どころの第2次大戦戦車「タイガー(ディーゲル 虎)重戦車」「パンサー(パンテル 豹)中戦車」を皮切りに、「マルダー(テン)対戦車自走砲」「フクス(狐)装輪兵員輸送車」「ルクス(大山猫)軽戦車&装輪装甲車」と、猛獣はじめとする獣名前が並ぶんだが、「イヌの名前」と言うと、たとえば「ダックスフント」なんてのは、トンと覚えがない。Crimson Skyと言う架空空戦ゲームには「フォッケウルフFw189ヘルハウンド」って「イヌの名前のドイツ製双発前進翼レシプロ戦闘機」が登場するが、これはあくまで「架空の機体」だ。

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 敢えて、半ば強引にこじつければ、第2次大戦の対戦車自走砲ヘッツァー「勢子」という意味だから、「ある種の猟犬」を指す(*6)。チェコ製38型中戦車の車体を利用して、上に密閉型装甲戦闘室を乗せたヘッツァーは、小型の車体に(正面から見れば)きつい傾斜装甲と結構な火力の長砲身75mm砲(*7)を持ち、「小型軽量大火力」を絵に描いたような、私(ZERO)も結構好きな戦闘車両なんだが、如何に20世紀屈指の傑作車体である38型戦車の車体(*8)といえども重量過大は否めず、走行や運用に相当難があった、らしい。

地を走れ、空を飛べ、序でに撃ち落とせ、グレイハウンド


 ドイツほどではないが獣名前を付けるのがアメリカ人で、冷戦華やかなりし頃の巡航ミサイル(*9)と、第2次大戦の装輪装甲車M8に「グレイハウンド」の名がある。グレイハウンドってイヌは足が速く、ウサギなどを狩る猟犬にするため作り出されたそうだから、偵察を主たる任務とする装輪装甲車や、巡航ミサイルとの 名前としては「相応しい」と、言えそうだ。

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 他に、ロシアのパンティールS1地対空ミサイルのNATOコードが「SA-22グレイハウンド」だそうだし、米海軍の「E-2早期警戒機の輸送機型(*10)」も「グレイハウンド」と呼ばれている。グレイハウンドは「兵器名としては人気がある」ってことになりそうだ。

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犬と、言えないこともない・・・犬には見える。

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 チョイト捻った所では、我が国でも採用し、かつてブルーインパルスの使用機でもあったF-86Fセイバー戦闘機の「亜種」F-86 Dが、その独特のレーダーレドーム付き機首形状から「セイバードック」と呼ばれた。
 F-86Fセイバーでは機首前端にあったインテーク(空気取入口)の上半分をつぶすようにしてレーダー及びレーダーアンテナのレドームを装備した機体で、機首下面に引き込み式のロケットランチャーを装備した、典型的な要撃戦闘機(*11)。その(結構無理矢理積んだ)レーダー故に「初の全天候型戦闘機」なんて呼ばれ方もするが、何しろ単座戦闘機に(結構無理矢理)積んだ初期のレーダーなモノだから、「操作するのに三本目の腕が要る」とも評される。

 とは言え、その(相当無理矢理とは言え)全天候性と、短時間に大火力を投射できるロケット弾、さらには地上レーダー管制と組み合わせた半自動防空システム共々、戦後我が国の空を一時期守護していたのがこのF-86Dセイバードックであることは、特筆大書されて良かろう。

 以上のように見てくると・・・M41ウォーカーブルドック軽戦車と、F-86Dセイバードックは、我が国とも縁浅からぬ「イヌと呼ばれた兵器」と言うことになる。

 いずれにせよ本年が、我が国にとって良き年でありますように。
 
 そのためにも、北朝鮮は滅ぼされるべきである。

<注記>


(*1) と、書くと、猫派からは総反撃を食らいそうだが、戌年なので勘弁してもらおう。 

(*2) でも、胴体は一部羽布張り。
 イギリスを代表する第2次大戦戦闘機・スピットファイヤの「弟分」。 

(*3) さらには、その「本当にイギリス最後の複葉戦闘機・グラジエーター」が第2次大戦のマルタ島防衛戦に活躍したりするモノだから。 

(*4) 「A級戦犯」「B、C級戦犯」ってのは、「訴追を受けた罪状の違い」である。従って「罪の軽重」とは少なくとも「直接の相関はない」のだから、「A級戦犯はB、C級戦犯より罪が重い」訳ではない。 

(*5) 「Buldogともども、Gではじまっていない」のにね。 

(*6) イヌでなくても、人でも、ヘッツァー・勢子に離れるんだが。 

(*7) 主砲としていくらか短い105mm砲や火炎放射器を装備したタイプもあり 

(*8) 第2次大戦後も生産されて、兵員輸送車の車体になっている。大型転輪とリーフスプリングサスペンションが、重宝した、らしい。
 ドイツ人得意の「千鳥足配置二重転輪」ではないしな。 

(*9) もちろん、核弾頭装備 

(*10) 実際は逆で、C-2グレイハウンド輸送機を早期警戒機にしたのがE-2ホークアイだ。 

(*11) まあ、空自の戦闘機は基本的に要撃戦闘機なんだが、昔も今も。「支援戦闘機」を除けば。