以前にも書いたが、私(ZERO)の様な理系の人間にとって、「人文科学は、何処まで科学か?」と言うのは大いなる疑問なのである。政治学、経済学、歴史学など、何れも「学」の字がついて「人文科学」と称されるし、「社会実験」ってのはあれこれ施されても居るが、何しろ境界条件も曖昧なら「設定すべき条件」が多岐にわた
る/制御出来ない/因果関係の有無からして不明確であるから、再現性も実証性も、怪しいったらありやしない。そんな学問を「科学」と呼んでよいモノか、大いに疑問なのである。
 
 であるならば、ノーベル経済学賞なんてのは、ノーベル平和賞ほどではないにしても、ノーベル文学賞ぐらいには、「胡散臭い」と思えてしまう。 だが、それは、「ノーベル平和賞が胡散臭い」と言うよりは、本質的に「経済学
が胡散臭い」のであるが、その「胡散臭い経済学者」の中でもトップクラス(*1)の学者がノーベル経済学を受賞するのであろうから、「どうせ経済学を聞くならば、ノーベル経済学者の方が、幾らかマシ(と、期待できる)」とは言えるだろう。

 で、安倍首相がそんな「ノーベル経済学賞受賞経済学者らの話を聞く」と、何故か朝日新聞、東京新聞は「気に入らない」らしい。


<注記>

(*1) 「胡散臭さが」ではなく、「経済学者として」 



①【朝日社説】経済分析会合 増税先送りの布石か 
2016年3月17日(木)付

 【1】  消費税率の10%への引き上げを再び先送りする、その布石なのか。安倍首相自身や、首相に助言している学者らの最近の発言を聞けば、そうした見方が出るのも当然だろう。

【2】 「国際金融経済分析会合」が始まった。内外の著名な経済学者らを招き、首相や主要閣僚が意見に耳を傾ける。5月の主要7カ国(G7)首脳会議(伊勢志摩サミット)の議長国として、経済政策のあり方を議論する際の参考にするという。

【3】 しかし、首相が14年11月、翌年秋に決まっていた10%への消費増税の先送りと衆院解散を発表した際も、事前に有識者からの聞き取りを重ねていた事実を誰もが思い出すのではないか。

【4】 そこに、最近の言動が重なる。消費増税について、首相は「リーマン・ショックや東日本大震災級の事態が発生しない限り、予定通り引き上げる」と繰り返してきたが、先月下旬の国会答弁で「世界経済の大幅な収縮が起こっているか、専門的な見地の分析も踏まえ、その時の政治判断で決める」と加えた。

【5】 その後、首相自身は元の発言に戻したものの、分析会合でまず意見を述べたノーベル経済学賞受賞者のスティグリッツ・米コロンビア大教授は、世界経済の弱さを強調し、消費増税の見送りを進言した。

【6】 リーマン・ショック並みの経済混乱に見舞われたら、増税の延期は当然だ。海外経済に不透明感が漂うのも事実である。

【7】 しかし、現状は「リーマン級」にはほど遠い。消費増税は予定通り実施するべきだ。

【8】 なぜ消費増税が必要なのか。

【9】 私たち、今を生きる世代は様々な社会保障サービスを受けているが、財源が全く足らず、多額の国債発行でまかなっている。自らへの給付を支えるために負担を増やし、将来世代へのつけ回しを少しでも減らす。同時に、子育て支援など不十分な分野を充実させていく財源も確保する。それが「社会保障と税の一体改革」だったはずだ。

【10】 首相は、自らの発言に責任を持ってほしい。14年秋の記者会見で、その後の基本姿勢として「(消費増税を)再び延期はしないと断言する」と語ったではないか。経済状況次第で増税延期に道を開く「景気条項」を消費増税法から削除するよう命じたのも、その決意の表れではなかったのか。

【11】 近づく参院選を意識し、さらには衆院解散の時期を探ることが最優先なのだろうか。足元の株価に一喜一憂し、目先の対応を繰り返しても、日本経済の真の再生にはつながらない。



②【東京社説】経済分析会合 いいとこ取りはやめよ経済分析会合 いいとこ取りはやめよ

Tweet 2016年3月17日

【1】 政府が内外有識者の意見を聴く国際金融経済分析会合は、消費税増税延期や補正予算編成のお墨付きを得るためではないか。そんな臆測が強い。都合のいい部分だけを取り出してもらっては困る。

【2】 「消費税を増税するタイミングではない」「緊縮財政をやめ、政府支出の増加こそ望まれている」-。第一回の分析会合に招かれたノーベル経済学賞受賞のスティグリッツ・米コロンビア大教授は、確かに消費税の延期や財政出動の重要性に言及した。

【3】 しかし、格差是正や幸福度の研究に目を向けてきた教授は、世界経済が抱える問題に幅広く提言したはずだ。最も重要な点は、景気は後退または停滞する可能性が高い中で、緩慢な成長の果実が一部のトップ層に偏り、格差が一段と拡大していると指摘したことだ。

【4】 景気低迷の原因は需要不足にあり、平等性を高める政策は需要を増やして効果的だと強調。具体的には賃金上昇と労働者保護を強める政策、財政出動なら教育や若者の健康への政府支出を求めた。

【5】 政権は、参院選を意識して補正予算編成のお墨付きとしたいのかもしれないが、教授はやみくもに財政出動を促したわけではない。むしろ法人税減税は投資に寄与しないから反対し、炭素税や相続税、株などの譲渡益課税については増税すべきだと主張した。

【6】 日銀のいわゆる異次元緩和政策についても「限界が近い」と指摘し、過度に金融緩和に依存する政策に警鐘を鳴らした。こうした「耳の痛い」提言こそ傾聴すべきで、消費税増税延期や補正予算編成の方便だけに利用することは許されない。

【7】 安倍晋三首相は一昨年、10%への消費税引き上げ延期を決めた際に「再延期はない。アベノミクスで増税できる経済環境にする」と明言した。増税を見送るなら、アベノミクスの失敗を認め、速やかに軌道修正すべきだ。有識者の提言を免罪符に増税延期だけ決めるのは筋が通らない。

【8】 だからといって、再び増税延期について国民に信を問うとして衆院を解散し、衆参ダブル選に打って出るのなら、ご都合主義も甚だしいと言わざるを得ない。

【9】 そもそも分析会合は、五月の主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)に向け、世界経済や金融情勢について有識者の意見を聴くというのが政府の説明だ。仮にも消費税増税や補正予算の判断に利用しようというのなら、納税者への裏切り行為ではないか



安保法案の時に「憲法学者は憲法違反と言っているのに、安倍政権は立法を強行しているぅぅぅぅぅl!」って騒いだの、誰?


 章題並びにタイトルにした通り、安保法案の時には憲法学者の安保法違憲論に耳を貸さない!!」と安倍首相を批難した朝日新聞&東京新聞が、今度は経済学者の意見に耳を傾けている!」として、「ご都合主義」何だと非難しているのだから、健忘症なんだか、二重思考なんだか、単なる「安倍憎し」なんだか…まあ、最後者だろうな。

 第一、安保法案の時の憲法学者国会招致も、今回の経済分析会合も、「有識者の意見を参考意見として聞く」のに変わりは無く、その「有識者の意見」に反しようが迎合しようが、決めるのは日本政府であり、責任を負うのは安倍首相である。有識者の意見を聞こうが、聞くまいが、「聞いたから」とか「聞かないから」とか、批難される筋合いではなかろう。

 それでもまあ、上掲二紙の中では朝日新聞の方がまだマシではある。「経済分析会合に関わらず、消費税10%への引き上げを実行しろ」と主張しており、少なくとも主張はあきらかだ。無論、安保法案の時は「憲法学者の唱えた安保法違憲論」に大いに与した事との矛盾は隠すべくもないが。

 訳が判らないのは上掲②東京新聞の主張だ。何しろ東京新聞はかつて「消費税値上げ反対」を「オスプレイ日本配備反対」と「脱原発」と並べて「新聞記者が言わねばならないこと」と主張した東京新聞が、脱原発原理主義と弊ブログが再三槍玉にあげる東京新聞が、「経済分析会合を口実に消費税値上げ延期しそうな安倍首相に対し」


②1〉増税を見送るなら、アベノミクスの失敗を認め、速やかに軌道修正すべきだ。
②2〉有識者の提言を免罪符に増税延期だけ決めるのは筋が通らない。

②3〉 だからといって、再び増税延期について国民に信を問うとして衆院を解散し、
②4〉衆参ダブル選に打って出るのなら、ご都合主義も甚だしいと言わざるを得ない。

②5〉 そもそも分析会合は、
②6〉五月の主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)に向け、
②7〉世界経済や金融情勢について有識者の意見を聴くというのが政府の説明だ。
②8〉仮にも消費税増税や補正予算の判断に利用しようというのなら、
②9〉納税者への裏切り行為ではないか。

 
ってんだから、「筋が通らない」「ご都合主義」なのは東京新聞の方であろう。

 まず、何を根拠や口実にしようが「記者として言わねばならないこと」と言うぐらい大事である「消費税値上げ延期」が実現するのなら、その点だけでも賛意を表して然るべきであろうに、「反省が足らない(上記②1〉~②2〉)「選挙に利用しようとしている(上記②3〉~②4〉)と、言いたい放題。挙句に上記②5〉~②9〉は「分析会合の政治利用は、納税者への裏切りだ!」ってんだから、恐れ入る。ならば、安保法案の時の憲法学者国会招致を「散々政治利用」した東京新聞らは、「安倍首相・安倍政権は、納税者を裏切れ!」と主張していた/主張している事になるが、しかと相違なかろうな。

 言うまでも無かろうが、上記の「しかと相違なかろうな。」と言うのは、東京新聞に対する皮肉だ。
 
 とどのつまり、東京新聞の「新聞記者として言うべき事」ってのは「安倍首相反対」に、尽きるのではないかね。