応援いただけるならば、クリックを⇒ https://www.blogmura.com/
先頃の北朝鮮による弾道ミサイル発射実験に対し、我が国は「対弾道ミサイルの拠点防衛」と言うべきパトリオットPAC3を、いつもの防衛省中庭ばかりでなく沖縄にも配備し、不測の事態に備えた。
PAC3に限らずパトリオットは、我が国防空の一翼を担い、各地の高射群に配備配置されているのだが、かかる事態に対し首都東京と同様に沖縄(*1)を「守る」と言う我が国の意思表示であり、予告された弾道ミサイル発射方向にある沖縄に対する「配慮」でもあろう。
であると言うのに、琉球新報と来た日には…
<注記>
(*1) の、残念ながら一部、ではあるが。対航空機ミサイルとしてのパトリオットは100㎞以上の有効射程を持つが、対弾道ミサイルとしてのPAC3の有効射程=防衛範囲は、半径数十キロにしか過ぎない。
【琉球新報社説】<社説>PAC3先島配備 優先すべきは外交努力だ2016年2月5日 06:02【1】 ミサイル発射に乗じた自衛隊配備の地ならしなら許されない。必要なのは冷静な外交努力だ。脅威をあおることではない。
【2】 北朝鮮による事実上の長距離弾道ミサイル発射通告に対し、中谷元・防衛相が破壊措置命令を出した。防衛省は地対空誘導弾パトリオット(PAC3)を宮古島、石垣島に展開する。与那国島にも陸上自衛隊の連絡員を派遣する。
【3】 ミサイル発射通告に対し、安倍晋三首相は「国民の安全確保に万全を期すようにしてほしい」と指示した。しかし、PAC3配備が本当に住民の安全確保を目的としたものか疑問である。なぜなら今回のミサイル発射にPAC3は役立たないからだ。
【4】 北朝鮮の計画通りならば、先島上空を通過する時点ではミサイルは大気圏外を飛行しており、PAC3は届かない。
【5】 仮に打ち上げに失敗し、空中で爆発し破片が落下したとしても対処はできない。PAC3はミサイルの発射地点や高度、方向から落下位置を予測して迎撃するシステムだ。破片の落下位置は予測できず、迎撃は不可能である。
【6】 軍事評論家の前田哲男氏は「打ち上げに成功する場合も失敗する場合もPAC3は機能しない」と指摘し、部隊展開の意図は北朝鮮の脅威の誇張と県民のために心を砕いている姿勢を示すパフォーマンスだと述べる。
【7】 そのことは2012年に北朝鮮が「人工衛星」と称して弾道ミサイルを発射した時の対応でもはっきりしている。その時はPAC3と共に石垣島に450人、宮古島に200人の自衛隊員を配備した。ところが、ミサイルが上空を通過する多良間島には数人の連絡員を配置しただけだった。
【8】 このことからも、ミサイル迎撃が目的ではなく、住民向けに「頼りになる自衛隊」の演出を狙ったPAC3配備だったと言えよう。
【9】 宮古島市、石垣市は現在、自衛隊配備の是非をめぐって市民の間でさまざまな議論が起きている。自衛隊に対する厳しい住民感情の払拭(ふっしょく)を意図したPAC3配備ならばやめるべきだ。
【10】 北朝鮮のミサイル発射通告は重大な国際社会への挑発であり、厳しく批判されている。しかし、挑発に乗って脅威をあおり、PAC3を配備しても問題の解決にはならない。外交努力を最優先し、国際社会の連携で北朝鮮に自制を促すべきだ。
軍事素人だからって、誤って良い事にはならない
〉 PAC3はミサイルの発射地点や高度、方向から落下位置を予測して迎撃するシステムだ。
これは、明らかに嘘だ。PAC-3は地上配備の対空ミサイルシステム。地上に配置されたレーダーの「見える範囲」は、通常(*1)「レーダー水平線のこちら側」に限る。レーダー水平線までの距離は、レーダー自身と目標の高度の関数であるが、「発射地点」は当然地上だから、良い処30~40㎞先までしか見えない。
言い換えれば、沖縄に配備されたPAC-3の車載レーダーが地上・地表を「見る」事が出来るのは、沖縄近海のみ。とてもじゃないが北朝鮮の何処かにある発射地点なんて、見える訳が無い。
即ち、「ミサイルの発射地点や高度、方向から落下位置を予測して迎撃するシステム」は、地上配備型や艦艇搭載型である限り、成立し様が無い。これらの事は、軍事とは直接関係ない。「沖縄から北朝鮮が見えるか」と考えさえすれば判ることだ。
更には、「北朝鮮が見えない」のは、何も沖縄に限った事では無い。日本全国どこでも「北朝鮮は見えない」のだから、上記「PAC3はミサイルの発射地点や高度、方向から落下位置を予測して迎撃するシステムだ。」が「事実」ならば、「日本全国どこにあっても、先ず役に立たないシステム」の筈である。これは「北朝鮮の弾道ミサイル発射に対して沖縄に配備されたPAC3が役に立たない」何て次元を遥かに超えた大問題であり、それこそ「安倍政権打倒の切り札」ともなりうる一大スキャンダルとなる、筈である(*2)。
そんな、殆ど自明な事が「判らない(*3)」のは・・・・どこぞの自称”軍事評論家(*4)”のいう事を鵜呑みにして、その「鵜呑みにした言説」が「都合が良かった」為に、「裏を取る」どころか物理的な検証すら怠った、って処だろう。「裏を取る」ってのは、ジャーナリズム、報道の基本、じゃぁないらしいな。琉球新報では。少なくとも「都合の良い情報」に関する限り。
とは言え、上記の事実は「琉球新報がジャーナリズムとは程遠い、似非報道機関である。」と言う事実が改めて実証されただけであり、その意味では「些事」と言えば「些事」である。
より重大なのは、「PAC3緊急配備」を、否定的にしか評価できない琉球新報の思考停止である
仮に琉球新報や自称”軍事評論家”の言う通りに「PAC3が今回の北朝鮮弾道ミサイル発射に対し役に立たない」としても、「PAC3は、我が国が現在保有する数少ない弾道ミサイル防衛手段の一つ(*5)」である事は間違いないし、「(同時ではないが)防衛省中庭と同様に沖縄にもPAC3が配備された」事も間違い様が無い。それは「売られた恩」かも知れないが、恩である事に変わりはあるまいに。ああ、そう言えば、東日本大震災の際に米軍が敢行した「トモダチ作戦」について、「災害救助を宣伝に使うとは、被災者を蔑にしている!!」とかみついたのは、琉球新報だったか。
逆の場合を考えてみようか。日本政府がイージス艦を日本海に配置せず、PAC3も沖縄に緊急展開せず「外交努力のみ」に努めていたら、その事を琉球新報は激賞し、称賛し、現・安倍政権の「平和的姿勢」を肯定的に評価しただろうか。
非常に疑問である。その時琉球新報が「見捨てられた沖縄」とか何とか主張したであろう事は、想像に難くない。社説として取り上げたかどうかには、疑義の余地はあるモノの。
一方、同日の沖縄タイムス社説は…
なんぼかマシな沖縄タイムス社説
<注記>
(*1) 水平線越えで監視できるOTHレーダーなんて特別な例外を除いて
(*2) 現在全国に配備されているPAC3が「全く役に立たない」のだから、歴代自民党政権も民主党三代政権も、まとめて吹き飛ばしかねない大スキャンダルだ。以前平安名純代記者が「崩れる安全神話 http://blogs.yahoo.co.jp/tiger1tiger2stiger/37566720.html 」と銘打った短期集中連載記事の中で唱えた「オスプレイ42機が、実は墜落して失われているのだが、秘密にされているぅぅぅぅう!」ってスキャンダル程では無いにしても。(*3) 判って居れば、琉球新報が「安倍政権打倒キャンペーン」を始めない理由があろうか。(*4) 上掲社説から推測するに、その自称”軍事評論家”は、前田哲男氏である公算が高そうだ。「前田哲男」でウイキペディアによると…「日本社会党(現社会民主党)の安全保障問題に関するブレーン」…爆笑モノだな。ああ、無論、上掲琉球新報社説に”文字として書かれていない”のだが。(*5) もう一つは、イージス艦搭載のSM-3だが、SM-3搭載のイージス艦も今回配置についており、こちらは対弾道ミサイル射程=防衛範囲の広さもあって、沖縄に限らず日本周辺の防衛にあたっていた。
【沖縄タイムス社説】[北朝鮮発射通告]国際連携で暴走止めよ【沖縄タイムス社説】[北朝鮮発射通告]国際連携で暴走止めよ2016年2月5日 05:30 社説 注目【1】 北朝鮮が8日から25日の間に地球観測衛星を打ち上げると国際機関に通告した。事実上の長距離弾道ミサイル発射実験とみられる。
【2】 国連安全保障理事会の対北朝鮮制裁決議は「弾道ミサイル技術を使った全ての発射」を禁じている。衛星打ち上げ用ロケットと、核弾頭などを搭載する長距離弾道ミサイルは、技術的には同じで、打ち上げは明らかな決議違反だ。
【3】 東アジアの緊張を高める暴挙であり、国際社会への挑戦である。
【4】 北朝鮮が通告したミサイルの経路は、沖縄の先島上空を通るとされる。住民が生活する島の上空を通過することを想像すると不気味さを覚える。部品落下の恐れもあり、住民に不安を与える行為だ。北朝鮮に中止を強く求める。
【5】 ミサイル発射の狙いは何なのか。日米韓は米本土を狙う大陸間弾道ミサイル(ICBM)開発が真の目的だと警戒する。米本土に届く射程の長いミサイルを開発することで、自国の体制を脅かす米国を揺さぶる思惑があるようだ。
【6】 2012年12月に発射されたミサイル「テポドン2号」改良型は、設計上の射程が米西海岸に届く約1万キロだったと推定される。それから3年余り。何らかの新たな技術を試し、攻撃能力の向上をアピールしたい意向もうかがえる。
【7】 国内的には、故金正日総書記の生誕記念日「光明星節」が16日に控えている。5月には36年ぶりとなる朝鮮労働党大会も予定され、国民の士気高揚を狙う意図もあるとみられる。
■ ■
【8】 北朝鮮の動向では、先月6日の「初の水爆実験」が記憶に新しい。唐突な4回目の核実験は、北朝鮮が核開発へ前のめりになっていることをまざまざと感じさせた。
【9】 中谷元・防衛相は核実験直後に「北朝鮮が(ミサイル搭載に必要な)弾頭小型化の実現に至っている可能性も排除できない」との見解を示した。
【10】 核弾頭とそれを搭載するミサイル。外交姿勢が不安定で場当たり的な北朝鮮が、双方の技術を高めれば「核兵器なき世界」は、さらに遠のく。
【11】 北朝鮮の核実験に対する安保理の制裁決議をめぐっては、石油禁輸など厳しい内容を目指す米国に対し、中国が難色を示し、米中の攻防が長引いている。しかし、北朝鮮の核は中国にとっても脅威だ。日米韓に中国やロシアも加え、各国が協調・結束してこの動きを止めてもらいたい。日本は、安保理非常任理事国の立場も活用するなど多角的な対応が求められる。
■ ■
【12】 ミサイル発射通告を受け、防衛省は12年に続き、飛行経路に近い石垣島と宮古島に地対空誘導弾パトリオット(PAC3)の配備を決めた。部品の落下に備え、警察庁は化学テロに対応する専門部隊の派遣も決定した。
【13】 ただ、PAC3の射程は約20キロで、カバーできる範囲は限られる。配備は南西諸島への自衛隊増強の「地ならし」との見方もある。危機管理に万全を期すのは当然だが、一方で、冷静な受け止めも大事だ。
未だ常識的・理性的なのは、沖縄タイムスではないか。
なんとまぁ、沖縄タイムス社説が「まともに見えて」しまうのだから、げに恐るべきは琉球新報であろう。