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 ある事象を選挙の争点にしようとした、としよう。
 
 左様であれば、その選挙の候補者に対し、その争点への態度を明確にするよう求めるだろう。少なくとも賛否の態度を。可能ならばその賛否の理由や、賛否の程度・強さを明確にするよう、質問するなり公開討論するなりするだろう。その場合、最も警戒するのは「その選挙の候補者が、その争点への態度をあいまいにする事/隠す事」であろう。所謂「争点隠し」であり、その「争点隠し」をさせない様、努力するだろう

 以前にも記事にした通り、今夏に予定されている参院選に於いて、「改憲を争点にしろ」と、東京新聞は社説の章題にまでして主張した。これに対し現自民党政権、なかんずく安倍首相は、改憲の意思を明確にし、どう改憲するかについてもある程度明確に方向を示している。「選挙の争点にする」には、実に都合の良い状況、の筈だ。「争点隠し」どころか「争点明確化/担ぎ出し」とも言えそうな安倍首相・自民党なのだから。

 であると言うのに東京新聞と来たら、こんな社説を掲げている。



【東京社説】首相9条発言 ご都合主義の改憲論だ

【1】 戦力不保持を規定した憲法九条二項の改正は、自民党結党以来の党是なのであろう。しかし、憲法学者の「自衛隊違憲論」を引き合いに出して改正の必要性を主張するのは、ご都合主義ではないか。

【2】 衆院予算委員会はきのう、安倍晋三首相と全閣僚が出席して、基本的質疑が行われ、二〇一六年度予算案に関する実質審議が始まった。金銭授受問題が報じられた甘利明前経済再生担当相の閣僚辞任で、数日遅れのスタートだ。

【3】 首相が、稲田朋美自民党政調会長との質疑で言及したのが、九条二項改正論である。

【4】 九条は一項で戦争放棄、二項で戦力不保持を定めている。にもかかわらず自衛隊が存在しており、「現実に合わなくなっている九条二項をこのままにしておくことこそが立憲主義の空洞化だ」というのが稲田氏の指摘だ。

【5】 これに対し、首相は「七割の憲法学者が、自衛隊に対し憲法違反の疑いを持っている状況をなくすべきだという考え方もある」と、九条二項改正の必要性を訴えた。

【6】 ちょっと待ってほしい。

【7】 集団的自衛権の行使を可能にする安全保障関連法をめぐり、多くの憲法学者らが憲法違反として反対の声を上げたにもかかわらず成立を強行したのは、当の安倍政権ではなかったのか。

【8】 自衛隊は、日本が外国から急迫不正な侵害を受ける際、それを阻止するための必要最小限度の実力を保持する組織であり、戦力には該当しないというのが、自民党が長年、政権を担ってきた歴代内閣の見解である。

【9】 自衛隊を違憲とする意見があるのは確かだが、国会での議論の積み重ねを通じて定着した政府見解には、それなりの重みがある。

【10】 安倍政権が憲法学者の自衛隊違憲論を理由に九条二項の改正を主張するのなら、集団的自衛権の行使を認めた閣議決定や安保関連法についても、憲法違反とする憲法学者の意見を受け入れて撤回、廃止すべきではないのか。

【11】 都合のいいときには憲法学者の意見を利用し、悪いときには無視する。これをご都合主義と言わずして何と言う。それこそ国民が憲法で権力を律する立憲主義を蔑(ないがし)ろにする行為ではないか。

【12】 憲法改正には国民の幅広い支持が必要だ。九条二項を改正しなければ国民の平穏な暮らしが脅かされるほどの緊急性が今あるのか。一九五五年の結党以来の党是だとはいえ、憲法改正自体が目的化していると危惧せざるを得ない。


 

御都合主義は、どっちだよ


1>  安倍政権が憲法学者の自衛隊違憲論を理由に九条二項の改正を主張するのなら、
2> 集団的自衛権の行使を認めた閣議決定や安保関連法についても、
3> 憲法違反とする憲法学者の意見を受け入れて撤回、廃止すべきではないのか。

…正直、一読したぐらいでは上記1〉~3〉は理解できなかった。二読、三読してようやく理解した、と思う。

 自衛隊違憲論を理由にして憲法9条二項の改正を主張するのなら、安保法案違憲論を理由にして(既に成立した)安保法は廃止すべきであるって事らしい。何ともねじまがった複雑な…と言うより、実に不思議な主張だ。

 「安保法案違憲論」も「憲法9条違反だから違憲」としているのだから、「自衛隊違憲論を理由にして憲法9条二項の改正を主張するのなら、安保法案違憲論を理由にして憲法9条(2項ばかりでなく)も改正すべきだ」と言う主張・論理ならば、「憲法9条繋がり」であるし、遥かに論旨は明確すっきりするのに、そうは主張しない。

 「憲法学者の意見を受け入れて、安保法を撤回、廃止」は主張するが、「憲法学者の意見を受け入れて、自衛隊を廃止」とすら主張しないまあ、自衛隊廃止何て唱えているのは共産党と社民党ぐらいだし、当然安倍政権・自民党は主張していないから、そんな主張は(一部の)憲法学者にしか通用しないが。

 先頃成立した安保法にも、発足以来すでに半世紀以上たつ自衛隊にも、何れにも憲法学者から違憲論は出ている。で、その違憲論を基に「自衛隊違憲論の為に憲法9条2項を改正すると主張するならば、安保法案違憲論の為に安保法は撤回すべきだ!」って主張は、「都合の良い憲法違反論(*1)」ではないのかね。無いとすれば、その理由は何かね…って、訊くだけ野暮か。

 この正月には「選挙で、改憲を争点にしろ!http://blogs.yahoo.co.jp/tiger1tiger2stiger/40340292.html」とぶち上げ、「改憲が争点になれば、自民党・安倍首相は不利になるだろう」と踏んでいたが、世論・世情が「改憲容認」であるようなので、今さらながら「従来通りの解釈改憲で良いでは無いか/十分では無いか」と主張し始めた、って事かね。

 たった、一カ月で、かね。
 
 何れにせよ「改憲の現実味が増している」と言う事、の様だがね。重畳至極。


【注釈】

(*1) 私なんぞには一読したぐらいでは意味不明である程に「都合の良い」=「手前勝手な」、「他・他者には通用しない」


<注記>



(*1)  私なんぞには一読したぐらいでは意味不明である程に「都合の良い」=「手前勝手な」、「他・他者には通用しない」