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考えてみれば、大陸の支那人ってのは近代的・現代的海軍と言うモノは清帝国と今の中華人民共和国でしか持ったことが無くて、「海戦上の勝利」なんて「一体どの時代まで遡れば良いのだろうか?」って処だ。そりゃ「大陸」なんだから、基本的に陸軍の国。今の現代的な海軍だって、英語名称Peoplw Liberation Army Navy。「人民解放軍海軍」と訳すから未だ恰好がつくが、「Army Navy」だけ取り出すと「陸軍海軍」と言う珍妙な呼び名になる組織。
だから、かねぇ。こんな「想定状況」がまかり通るのは。
【中国青年報】専門家「日本の『いずも』艦隊は空母戦闘群に勝てない」人民網日本語版 2015年04月08日08:52【1】 日本海上自衛隊最大の軍艦「いずも」が3月25日に仰々しく就役し、国際的に幅広く注目された。ロイター通信は日本の海外での軍事作戦能力拡張の「高度に目立ったシグナル」だと指摘した。軍事サイト「Konas」は「いずも」戦闘群による独島(日本名・竹島)武力奪取に韓国は対抗するすべがないとの懸念を示した。(文:趙軍・海軍装備研究院研究員。中国青年報掲載)
【2】 「いずも」はそれほど戦闘力があり、空母戦闘群を抑え込むことができるのだろうか?データを見てみよう。
■「いずも」艦隊の攻撃防御能力
【3】 遠洋作戦で、「いずも」艦隊が空母戦闘群を「邀撃」する事態が生じるかもしれない。われわれの想定では、空母戦闘群は水上艦、攻撃型原潜、艦載機部隊で編成。「いずも」艦隊は「いずも」型、「こんごう」型、「あたご」型、「あきづき」型、「たかなみ」型、「むらさめ」型など8艦で編成され、F35B戦闘機12機、早期警戒ヘリ4機、哨戒ヘリ8~9機を搭載する。
【4】 まずF35Bの哨戒能力を見てみる。早期警戒ヘリは脅威の方向へ100から200キロ前に出て早期警戒・偵察を行う。F35Bの一部も200~300キロ出て空中パトロール任務を担う。F35Bは各回2機がパトロールし、2機が甲板で待機した場合、1日に各機2~3回飛行し、パトロール時間は4~6時間、甲板での待機時間も加えると1日の任務遂行時間は8~12時間にも達する。F35B戦闘機中隊が空中防御圧力に耐えるのは困難で、ましてや進攻的作戦行動を行う力はない。
【5】 次にF35Bの対艦攻撃能力を見る。護衛艦群が主要防御任務を担う場合、哨戒に当たるのは少数のF35Bと早期警戒ヘリで、6機のF35Bを対艦攻撃に出動できる。双方の艦隊が600キロ離れている場合、F35Bは各機空対艦ミサイル「JSM」2発、中距離空対空ミサイル「AIM-120」2発を搭載して出撃。攻撃目標との距離180キロの時点で、JSM12発を発射して帰航する。12発のJSMは高度50~60メートル、速度M0.9で進むが、攻撃目標との距離約40キロで、空母戦闘群の艦対空ミサイル数十発に2回迎撃されて戦果を挙げない。
【6】 次にF35Bの空中交戦能力を見る。6機のF35Bが高度5000メートルでひそかに侵入するが、攻撃目標との距離約250キロの時点で、空母戦闘群側の早期警戒ヘリに発見され、空母から艦載戦闘機8機が緊急発進する。F35BはJSM発射後、帰航途中で追尾する空母戦闘群艦載戦闘機による護衛艦群への攻撃を防ぐため、折り返して空中で交戦する。双方の距離が80キロの時点で、F35BはAIM-120計12発を発射。空母戦闘群側の艦載戦闘機はこれに気づき、すぐに速度M2で近づき、30秒後に50キロの距離でF35Bを発見。ただちに中距離ミサイル30発余りを発射して反撃する。
【7】 最後に「いずも」艦隊の対空防御能力を見る。双方の艦隊の距離が400~500キロの時、空母戦闘群は長距離対艦ミサイル10数発を発射して「いずも」艦隊を攻撃する。
【8】 艦載レーダーの探知距離、ミサイルシステムの反応時間、ミサイルの発射間隔、連続照射誘導などの制約から、対艦ミサイルとの距離20キロ余りの時点で「あきづき」「たかなみ」「むらさめ」「いづも」型軍艦が艦対空ミサイル30発余りを発射し、効果的な反撃を1回行う。「こんごう」型と「あたご」型は距離が近すぎて迎え撃つことができない。最終的に対艦ミサイル数発が護衛艦群の反撃と電子妨害を突破して目標に命中する。
【9】 以上のことから、空母戦闘群が「いずも」艦隊との戦いで全面勝利を収めることがわかる。艦対空ミサイルはJSMの迎撃に成功し、性能で敵を制する。艦載戦闘機はF35Bと互角だが、数で敵を制する。超音速対艦ミサイルは護衛艦群の対空防御を突破し、スピードで敵を制する。
【10】 「いずも」艦隊が空母戦闘群に打ち勝つというのが荒唐無稽な話であることは明らかだ。(編集NA) 「人民網日本語版」2015年4月8日
ふん、勝ったと思っているな。よし、戦争を教育してやろう。
我ながら勇ましい章題は、小林原文の劇画「黒騎士物語」の黒騎士中隊中隊長・エルンスト・バウアー大尉の決め台詞だ(*1)。第2次大戦末期の東部戦線を舞台に、通称「黒騎士中隊」と呼ばれる第八戦車中隊(特に、中隊長・バウアー大尉)を主人公…と言うのはちょっと言い過ぎだな。厳密にはその第8中隊に着任した新兵・クルツ・ウエーバーを主人公とし、小林原文独特の写実的なタッチとアルファベットの擬音(*2)を特徴とする「黒騎士物語」は、「教育してやれ!」の名台詞と共に、ある時期・ある範囲の「一世を風靡した」名作漫画だ。
そんな「ある時期ある範囲の一世を風靡した名作漫画の決め台詞」を章題にしたのは、上掲人民網記事の、中国共産党支配下では致し方ないだろうが実に御都合主義な「想定状況」の故。
パラグラフ【3】冒頭に示された初期状況、
1〉遠洋作戦で、「いずも」艦隊が空母戦闘群を「邀撃」する事態が生じるかもしれない。
1〉遠洋作戦で、「いずも」艦隊が空母戦闘群を「邀撃」する事態が生じるかもしれない。
は、先ず置くとしよう。これは「左様な状況を想定する」でしかない、いわば「境界条件」だ。
続く、
2〉 われわれの想定では、空母戦闘群は水上艦、攻撃型原潜、艦載機部隊で編成。
3〉「いずも」艦隊は「いずも」型、「こんごう」型、「あたご」型、「あきづき」型、「たかなみ」型、「むらさめ」型など8艦で編成され、
4〉F35B戦闘機12機、早期警戒ヘリ4機、哨戒ヘリ8~9機を搭載する。
2〉 われわれの想定では、空母戦闘群は水上艦、攻撃型原潜、艦載機部隊で編成。
3〉「いずも」艦隊は「いずも」型、「こんごう」型、「あたご」型、「あきづき」型、「たかなみ」型、「むらさめ」型など8艦で編成され、
4〉F35B戦闘機12機、早期警戒ヘリ4機、哨戒ヘリ8~9機を搭載する。
と言うのも、まあ良かろう。我が方が護衛艦8隻と航空機部隊で、護衛艦の級名から機種名・機数まで詳細に「想定されている」のに対し、中国人民解放海軍が「空母戦闘群は水上艦、攻撃型原潜、艦載機部隊」と「隊名だけ」なのは御愛嬌だが、そこは「そんな空母戦闘群を、人民解放海軍が編成し、真面に運用出来る」と言う想定に比べれば些事だから、無視して良かろう。
問題は、その後縷々述べられているパラグラフ【4】~【9】で、要は「我が海上自衛隊の対艦ミサイルも対空ミサイルも全く命中せず、他方人民解放海軍の対艦・対空ミサイルは少数ながらも命中するから、人民解放海軍の勝ち」と言う「想定状況」。それも、我が海上自衛隊が先に敵艦隊を発見し、先制攻撃をかけると言う「ミッドウエイ海戦の敵討ち」的状況でありながら、だ。
で、結論がパラグラフ【10】
5〉「いずも」艦隊が空母戦闘群に打ち勝つというのが荒唐無稽な話であることは明らかだ。
5〉「いずも」艦隊が空母戦闘群に打ち勝つというのが荒唐無稽な話であることは明らかだ。
と言うのだから…「油断は大敵」であり、「慢心する敵」は我が方にとって好都合。「放っておけば良い」と言うのも一理だが、一海上自衛隊ファンであり、自衛艦ファンでもある私(ZERO)としては、看過し難い。
そもそも「DDH=ヘリコプター搭載護衛艦(駆逐艦(*3))」と言う分類に無理があるモノの、「空母」と呼ぶには排水量も搭載機数もカタパルトorスキージャンプも足らない「いずも」は、良い所「ヘリ空母」。パラグラフ【4】に
6〉進攻的作戦行動を行う力はない。
とあるのは当たり前だ。大体、「F-35B×12、ヘリ×12」と言う搭載機数と「艦隊で8隻」と言う艦艇数からすると、これは「DDHいずも級1隻を中心とした1個護衛群」。進攻的作戦行動力は、不足して当然だろう。
パラグラフ【5】では、先制攻撃をかける我がF-35B隊6機の発射するJSM×12発が、
7〉12発のJSMは高度50~60メートル、速度M0.9で進むが、
8〉攻撃目標との距離約40キロで、空母戦闘群の艦対空ミサイル数十発に2回迎撃されて戦果を挙げない。
8〉攻撃目標との距離約40キロで、空母戦闘群の艦対空ミサイル数十発に2回迎撃されて戦果を挙げない。
と、虚しく全弾撃墜されてしまう、事になって居る。
味噌は、上記7〉「高度50~60メートル」である。この飛行高度なればこそ、その後の「空母戦闘群の艦対空ミサイル数十発に2回迎撃される」羽目に陥る。
F-35Bに搭載されるJSMは、ノルウエー開発のSSMであるNSMの航空機搭載型で、F-35Bのウエポンベイに入るコンパクトな形状と、逆探知されない赤外線シーカ、それにステルス形状が特徴であるが、それ以上に特徴的なのは海面すれすれに飛行する「シースキマー対艦ミサイル」である事。「シースキマー」という事は、飛行高度は「20m」なら高い方。低い奴なら10mを切る。低く飛ぶと、海面衝突する可能性は高くなるが、水平線が近くなるため「目標に近づくまで、目標から見つからない」。先述の赤外線シーカとステルス形状もあり「JSMが人民解放海軍艦艇から40㎞手前で発見・迎撃される」という事は、一寸ありえない。従って「迎撃回数は、良くて1回」であり、上記8〉「空母戦闘群の艦対空ミサイル数十発(*4)」であろうとも、12発のJSMが戦果を収める可能性は、充分にあろう。
次のパラグラフ【6】では我がF-35B×6機が12発のAMRAAMを彼我の距離80㎞先制発射しているのに対し、人民解放軍航空隊は「マッハ2に加速して50㎞まで30秒で接近し、中距離ミサイル30発余りを発射して反撃する。」そうである。
既に発射されたAMRAAMをモノともせず、超音速まで加速して敵に肉薄するとは、雷光に勝るとも劣らない勇敢な人民解放軍パイロットだが、AMRAAMの最大飛しょう速度はウイキペディアに依ればマッハ4。単純に考えるならば人民解放軍航空隊が彼我の距離を30㎞詰める間に、AMRAAAMは60㎞接近できる勘定であり、哀れ人民解放軍航空隊は、発射点に至る前にAMRAAMを喰らって全滅する計算だ。
無論、我が方のF-35BはAMRAAMを発射した後は遁走・帰還に尽力しよう。上記計算は相当に単純化しているが、上掲記事より大分マシな「想定」だろう。
パラグラフ【7】~【8】は、今度は我が艦体の防空戦になるのだが、イージス艦2隻(以上)を含む我が艦隊が、人民解放海軍の半分の迎撃距離から1回しか迎撃できないなんて、ナンセンスだ。
9> 「こんごう」型と「あたご」型は距離が近すぎて迎え撃つことができない。
に至っては、何のことを言っているのか意味がわからない。「イージス艦の主要対空兵器であるスタンダードは、長射程SAMであり、近距離迎撃には向かない」と言いたいのかも知れないが、イージス艦には個艦防空SAMであるESSMの発射・誘導能力もあれば、近接防御のCIWSもある。こと対空戦闘に関する限り、「こんごう」「あたご」ら我らがイージス艦は、「世界最強の水上艦艇」だ。これを凌駕しうるのは、艦載機による防空能力を有する米空母ぐらいなものだ。
9> 「こんごう」型と「あたご」型は距離が近すぎて迎え撃つことができない。
に至っては、何のことを言っているのか意味がわからない。「イージス艦の主要対空兵器であるスタンダードは、長射程SAMであり、近距離迎撃には向かない」と言いたいのかも知れないが、イージス艦には個艦防空SAMであるESSMの発射・誘導能力もあれば、近接防御のCIWSもある。こと対空戦闘に関する限り、「こんごう」「あたご」ら我らがイージス艦は、「世界最強の水上艦艇」だ。これを凌駕しうるのは、艦載機による防空能力を有する米空母ぐらいなものだ。
即ち、「いずも」を中心とする我が護衛艦隊の防空能力は、地球上で屈指のモノであり、「長距離対艦ミサイル10数発」とやらが、たとえ超音速であろうとも(*5)、おさおさ後れをとるモノかよ。
11> 【10】 「いずも」艦隊が空母戦闘群に打ち勝つというのが荒唐無稽な話であることは明らかだ。
11> 【10】 「いずも」艦隊が空母戦闘群に打ち勝つというのが荒唐無稽な話であることは明らかだ。
そんな台詞は、「空母戦闘群」を編成できる目処が立ってから吐くモノだ。
<注釈>
(*1) 記憶誤りと美化による若干の修正・修飾はありそうだが。(*2) GeBoBoBoBoBo KTowKTowKTow(機関銃の連続銃声)Vom! Pow!(砲声)など(*3) 艦種記号が「DDナントカ」であるから、米海軍記号で言えば「駆逐艦」。(*4) 一つの艦隊から発射される、数十発の対空ミサイル。発射だけならさして難しくないが、管制・誘導し、命中させるとなると別だ。それも、迫りくるシースキマー対艦ミサイルではな。(*5) 超音速と言うことは、十中八九、ロシア製の馬鹿でかいSSM、SS-N-22何だが・・・あれこそ飛行高度50~60mなのではないか?