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 そりゃ、再三繰り返すとおり、「原理主義」と言うのは(*1)ある種の思考停止である。「至尊至高の原理の前に、全ては捧げられる」のだから、二枚舌やダブルスタンダードなんて何のその。その類推からすれば、「原理主義」の前には二重思考とて、いと容易きことであろう。
 
 事実、下掲の毎日新聞社説は、その脱原発原理主義故に、モノの見事に二重思考の実例となっている。
 
 無論、二重思考も、思考停止も、知性とは対極にあるモノだから、いやしくも「もの書き」に対して「二重思考」というのは、相当な悪罵であり、批判出るのだが・・・

<注釈>


(*1) 差別なんかと同様に 


【毎日社説】:地球温暖化対策 世界に貢献する目標に   
   毎日新聞 2015年04月21日 02時34分

  【1】 政府は、2030年の温室効果ガス排出量を現状に比べ20%台半ばまで減らす新目標を掲げる方向で最終調整に入ったという。京都議定書の基準年の1990年比に換算すると削減率は10%台にとどまり、目標を公表済みの先進各国と比べると物足りない。これでは、閣議決定している50年に80%削減という長期目標の達成もおぼつかない。 

   【2】  地球温暖化を巡る国際交渉は、今年末にパリで開く国連の気候変動枠組み条約第21回締約国会議(COP21)で、20年以降の温室効果ガス削減の新枠組み合意を目指している。

【3】  欧州連合(EU)は30年に90年比で40%以上削減、米国は25年に05年比で26?28%減との目標を提出済みだ。ともに「先進国で50年に80%削減」という国際目標にも沿う。国際エネルギー機関(IEA)は、現行の対策に基づく各国の削減可能量を分析しているが、それを上回る意欲的な目標値となっている。

【4】  一方、日本が最終調整中の20%台半ばはIEAの分析と同水準だ。このペースでは長期目標の達成は難しく、将来世代の負担が重くなる。原発が止まるなど、温暖化対策で不利な面があることは否めない。しかし、日本は世界第5位の温室効果ガス排出国だ。先進国として意欲的な削減目標を掲げ、世界の温暖化対策に貢献することが求められる。

【5】  そのためには、省エネと再生可能エネルギーの導入拡大が不可欠だ。

【6】  日本の技術を使い、海外で排出削減することも地球規模の対策に役立つ。ただし、国内対策をおろそかにはできない。

【7】  日本の省エネは世界最高水準にあるものの、取り組みは停滞気味で、国内総生産(GDP)当たりの温室効果ガス排出量は英国やイタリアの方が今や少ない。温暖化対策に熱心な企業で作る「日本気候リーダーズ・パートナーシップ」は先月、省エネ・省資源型の経済構造構築が日本の競争力強化につながるとし、排出量取引制度の導入などを提言した。時代に即した考え方である。

【8】  再生エネの拡大は電気料金の上昇要因になる一方で、化石燃料の調達費が削減できる。再生エネの地産地消を進めれば地域の雇用創出が期待でき、安倍晋三首相が強調する地方創生にも貢献する。

【9】  電気事業連合会によれば原発1基当たりの二酸化炭素(CO2)排出抑制効果は年間約320万トン。日本の温室効果ガスの総排出量は年間約14億トン(CO2換算)で、長期目標を達成する上で原発が寄与する割合はそれほど大きくない。

【10】  原発事故を言い訳に、日本が温暖化対策に消極的姿勢を続けることは、もはやできない状況にある。

 

定量的評価と定性的評価の恣意的使い分け


 さて、【問題】と行こうか。
 
【問題】 上掲毎日社説の中から、典型的な二重基準を挙げよ。
 ヒントは章題。
 
 ___________________________________________________________________
 
 ま、見る人が見れば、自明だろうが、典型的なのはパラグラフ【8】とパラグラフ【9】だろう。
 
1>【8】  再生エネの拡大は電気料金の上昇要因になる一方で、化石燃料の調達費が削減できる。
2> 再生エネの地産地消を進めれば地域の雇用創出が期待でき、安倍晋三首相が強調する地方創生にも貢献する。

3>【9】  電気事業連合会によれば原発1基当たりの二酸化炭素(CO2)排出抑制効果は年間約320万トン。
4> 日本の温室効果ガスの総排出量は年間約14億トン(CO2換算)で、
5> 長期目標を達成する上で原発が寄与する割合はそれほど大きくない。

 
 さて、言うまでも無かろうが上記1>~2>のパラグラフ【8】再生エネ礼賛であり、上記3>~5>のパラグラフ【9】「原発批判」=「原発による二酸化炭素排出量削減無効論である。章題にもしたとおり、パラグラフ【8】「再生エネ礼賛化石燃料調達費削減」「地域の雇用創出などの美辞麗句が並ぶが、数字が一切出てこない。少なくとも「化石燃料調達費」は、直ちに数値化できそうだが、単に「削減できる」だけで「再生エネは大絶賛である。
 
 対して、パラグラフ【9】では「原発1基当たりの二酸化炭素(CO2)排出抑制効果」を「年間約320万トン」と数値化し、確かに「年間320万トンの二酸化炭素排出量削減」を「日本の温室効果ガスの総排出量は年間約14億トン(CO2換算)」と比較して原発が寄与する割合はそれほど大きくない。と切って捨てている。「二酸化炭素排出量を削減できる」と言うだけで「原発礼賛とならない」ところが、美事なまでの二重基準だ。
 
 ああ、発電に二酸化炭素を排出しないという点では、原発の再生エネも同等であろう。だが、「原発一基あたり」で二酸化炭素排出量削減できる「年間約320万トン」を再生エネで削減するために、どれだけのメガソーラーが必要だと思っているんだ?・・いや、そんなこと、考えても居ないのだろう。
 
 試算してみよう原発1基。新型ならば1GW級だが、半分の500MWを想定しよう。原発の稼働率を5割と仮定すると、250MWの発電力に相当する。これをメガソーラーで代替すると、「50MW(*1)級メガソーラー施設×5カ所」と考えるのは浅はかで、「冷たい計算式/推算式」シリーズに書いたとおり、「日本の太陽光発電所の稼働率は、約2割」だから、この5倍の50MW級メガソーラー施設×25カ所」が、漸く「原発1基分の発電量」であり「原発1基分の二酸化炭素排出量削減」である。これが日本国内でもちらほらあるらしい25MW級(*2)メガソーラー施設」なら、さらに2倍で50カ所。くどいようだが、これで「原発1基分の発電量であり、二酸化炭素排出量削減」である。
 
 つまり、増えた、増やせとかますびしい「再生エネによる二酸化炭素排出量削減効果」は「寄与する割合はそれほど大きくない」どころか「雀の涙」と言うことだ。
 
 毎日新聞社説ご推奨の再生エネを上掲記事パラグラフ【9】の「定量的評価」を当てはめれば、かくのごとし。
 
 逆に、毎日新聞社説が批判してやまない原発に、上掲記事パラグラフ【8】の「定性的評価」を当てはめるならば、こうなるだろう。
 
1A>  原発の拡大は電気料金の下降要因になる上に、化石燃料の調達費が削減できる。
2A> 原発の地産地消を進めれば地域の雇用創出が期待でき、安倍晋三首相が強調する地方創生にも貢献する。



 つまり、上記1>~2>再生エネを礼賛する根拠理由はほぼそのまま原発にも当てはまり、それどころか「電気料金の下降要因になる」点で原発は再生エネを上回りさえするのである。
 
 問題は、「再生エネ」と「原発」を入れ替えての「言葉遊び」ではない。
 
 「再生エネ」と「原発」を、同じ物差し、同じ評価基準、同じ土俵で比べようとすらせず、別の評価基準で評価したモノを同じ社説内の前後するパラグラフに並べて見せ、全世界大公開してしまう、毎日新聞の間抜けさだ。
 
 別に毎日新聞が間抜けだろうがキチガイだろうが、知ったことでは無いのだが、この頭の悪い文章で相当な給料をもらえるという「新聞記者という身分」には、呆れ果てるな。

<注釈>

(*1) 日本国内にはまだ無いような、大規模なメガソーラーだ。 

(*2) これでも国内屈指の施設の筈。