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先行記事「やっぱり、心此処にあらざれば、見るとも見えず http://blogs.yahoo.co.jp/tiger1tiger2stiger/39111040.html 」にて私(ZERO)は、福島に対する風評被害を助長する「美味しんぼ」なる漫画を頓珍漢に擁護する東京社説を糾弾し、「人非人」と断じた。
だが「人非人」は東京新聞の専売特許では無い様だ。
【毎日社説】:美味しんぼ 「鼻血」に疑問はあるが
毎日新聞 2014年05月15日 02時32分
【1】 「週刊ビッグコミックスピリッツ」(小学館)に連載中の漫画「美味(おい)しんぼ」が物議を醸している。その中身には疑問があり、福島の人たちから怒りの声が上がっていることは理解できる。風評被害も心配だ。
【2】 しかし、これに便乗して、原子力発電や放射線被害についての言論まで封じようとする動きが起きかねないことを危惧する。今後、どのように福島の人々の健康不安を払拭(ふっしょく)し、被災地の復興を進めていけばいいか、議論を冷静に深めたい。
【3】 前号掲載では「美味しんぼ」の主人公が福島第1原発を訪れた後、鼻血を出す場面が描かれて議論を呼んだ。12日発売の今号では、実名で登場する福島県の前双葉町長が「福島に鼻血が出たり、ひどい疲労感で苦しむ人が大勢いるのは、被ばくしたからですよ」と発言。やはり実名で登場する福島大准教授は除染の経験を踏まえて「福島はもう住めない、安全には暮らせない」と話す。また、岩手県のがれきを受け入れて処理した大阪市内で、住民が健康被害を訴えたとする話も紹介されている。
【4】 これに対して、福島県や環境省、岩手県、大阪府・市などは強く抗議した。風評被害を広げることや除染の効果は上がっていること、がれきの放射線量は基準値を大幅に下回るものであることを主張している。
【5】 国連科学委員会の調査は、福島でがんや遺伝性疾患の増加は予想されないとしている。福島第1原発を取材で見学しただけで、放射線のために鼻血が出ることは考えがたい。しかし、長期間にわたる低線量被ばくが健康にどんな影響を及ぼすかについては十分には解明されていない。専門家の中には、心理的ストレスが免疫機能に影響を与えて、鼻血や倦怠(けんたい)感につながる可能性があると指摘する人もいる。
【6】 この問題をきっかけにして、原発の安全性や放射線による健康被害を自由に議論すること自体をためらう風潮が起きることを懸念する。
【7】 もともと、根拠のない「安全神話」のもと、原発政策が進められた結果が今回の事故につながった。「美味しんぼ」の中でも指摘されているが、事故後の放射性物質放出についての政府の情報公開のあり方は、厳しく批判されるべきだろう。また、汚染水はコントロール下にあるといった政府の姿勢が人々の不信感を招き、不安感につながっているのも確かだ。そして、低線量被ばくによる健康への影響については、これから長期にわたる追跡調査が必要だ。
【8】 求められている論点は多くある。いずれも、感情的になったり、理性を失ったりしては議論が深まらない。絶えず冷静さを失わず、福島の人々とともに考えていきたい。
間抜けな論点ズラし、否、ズレていない
さて、如何だろうか。
先ずは「流石は全国紙」と言うべきだろう。地方紙たる東京新聞の様な「赤っ恥社説」には、一見なって居ない。
だが、「一見なって居ない」だけだろう。それは、上掲毎日社説が為す「美味しんぼ擁護論論拠」を列挙すればほとんど明らかになる。
(1) 原子力発電や放射線被害についての言論まで封じてはいけない【2】【6】
(2) 長期間にわたる低線量被ばくの影響は、十分解明されていない 【5】
(3) 「原発安全神話」は崩壊し、放射性物質放出の情報公開も不十分だった【7】
即ち、先行記事で取り上げた東京新聞とほとんど同じ根拠を以って「美味しんぼ」を擁護している。
上記(3)は先行記事東京新聞の②~③に相当する。
上記(1)は東京新聞の①が「"通説に反するから"と」と付けていた「制約条件」を外した「原発や放射線被害に対する言論」と一般化する事で擁護論としている。
「異論・異説」は大事だ。民主主義の根幹は「異論・異説に対する寛容」とも言い得る。無論、民主主義なぞ絶対善ではない(*1)が、誤判断を減らすうえでは有効であろうと期待出来、それ故に私(ZERO)自身我が国の民主主義体制を支持し、「異論・異説」を尊重している。故に上記(1)「原子力発電や放射線被害についての言論まで封じてはいけない」と言う主張に、原則として賛成する。
問題は、当該漫画「美味しんぼ」が、「原子力発電や放射線被害についての言論」として尊重されるべきであるか、という事だ。無論漫画であり、基本的にフィクションである。だが、学者やら元町長やらが実名で登場し、どうやら実在の人物と同様の主張を為しているらしい。それら実名登場する人物が「福島はもう住めない、安全には暮らせない」と話し、「岩手県のがれきを受け入れて処理した大阪市内で、住民が健康被害を訴えた」と話たのも「話したのは事実」なのだろう。
だが、「実在の人物が話した通りの事を、漫画中の人物が話しただけ」としても、それは「噂の拡大・拡散」になる。これに「主人公が鼻血を出し、それが放射線の影響であると示唆される」と言う虚構が加われば、その「噂の拡大・拡散」は、立派な「風評被害の拡大」であろう。而して、漫画と言う情報媒体の特性と相まって「原子力発電や放射線被害についての言論」としては極めて論理性に欠ける事になる。とどのつまりは「風評煽り」になる公算大であろう(*2)。
上記(2)「低線量被曝の影響解明不十分」は辛うじて「新味」であるが、これは「逃げ」であり、それも「酷い逃げ」だ。一種不可知論に持ち込むことで「主人公が福島原発取材直後に鼻血を出す」マンガ「美味しんぼ」を「実際にあり得る事」の如く論じている。先行記事にも書いた通り、「放射線の影響で鼻血を出すような人間」はまず長く生きられない(*3)。であると言うのに、
1〉 福島第1原発を取材で見学しただけで、放射線のために鼻血が出ることは考えがたい。
と認めつつ、
2〉 専門家の中には、心理的ストレスが免疫機能に影響を与えて、
3〉鼻血や倦怠(けんたい)感につながる可能性があると指摘する人もいる。
3〉鼻血や倦怠(けんたい)感につながる可能性があると指摘する人もいる。
と書いて「"美味しんぼ"擁護」するのだから、度し難い。上記2〉心理的ストレスが免疫機能に影響を与えて ならば、その「心理的ストレス」を与えるのは、「放射線」では無く「低線量でも放射線を浴びた事は健康に影響するかも知れない」と言う風評や似非科学であろう。つまりは、毎日新聞や「美味しんぼ」にも、その責任の一端がある訳だぞ。
早い話、上記2〉~3〉は、「逃げを打った」心算で「語るに落ちて」居る。
斯様なお粗末な「美味しんぼ」擁護論の結論が・・・
4〉 求められている論点は多くある。
5〉いずれも、感情的になったり、理性を失ったりしては議論が深まらない。
5〉いずれも、感情的になったり、理性を失ったりしては議論が深まらない。
6〉絶えず冷静さを失わず、福島の人々とともに考えていきたい。
「主人公が放射線の影響で鼻血を流す」漫画を描くことは、「理性を失って」いないか?
「福島はもう住めない」と主張する元町長は「感情的になって」いないのか?
「絶えず冷静さを失わず、福島の人々とともに考え」なければならないのは、「美味しんぼ」作者、及びその頓珍漢な擁護者である毎日新聞、東京新聞らの方であろう。
<注釈>
(*1) 「絶対」なんてモノは、この世の中には滅多にない。(*2) この辺りは、原典にあたってみないと断言は憚られる。(*3) そりゃ漫画の中だから、不老不死だろうが不死身だろうが、何でもアリだが。