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 当ブログでは再三「脱原発原理主義」と槍玉にあげている東京新聞が、「連載社説」と言う力の入れようでドイツは失敗したかとドイツの脱原発政策/再生エネルギー政策を取り上げた。取り上げたのは事実だが…私(ZERO)が下した結論はタイトルにした通りだ。が、ここは虚心坦懐。「福島原発事故を経てなお原発推進論者=私(ZERO)が下した結論」なぞ気にせずに、下掲一連の東京新聞社説を御照覧あれ。

 
①ドイツは失敗したか<1> 風や光で走る"新幹線"
2014年4月7日
http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2014040702000150.html
【1】 ドイツ鉄道(DB)OBのハンス・ディーター・メトケさん(74)は、胸を張る。

【2】 「われわれの鉄道は、二〇五〇年までに100%再生可能エネルギーで電車を走らせます」

【3】 旧東独出身で、一般機械製作マイスターの資格を持つ現場の技術者だ。十年前に定年退職した後は、ベルリン郊外のルメルスブルク整備工場で、見学案内のボランティアを務めている。

【4】 最高時速三百キロで欧州の主要都市間を結ぶドイツ“新幹線”、ICEが整備中だった。各車両に「UNTERWEGS MIT OKOSTROM(ウンターウェークスミット エコシュトローム)(エコ電力で走行中)」と書かれた緑色のステッカーがはってある。

【5】 ドイツでは、利用者・企業が送電網を通じて電源を選択できる。

【6】 DBは、風水力で発電する事業者との提携を進め、ベルリン中央駅など駅舎の屋根に太陽光パネルをのせて、自給自足もしようと試みている。

【7】 今のところ、経費がかさむのは確かである。だがユニークなのは、この試みを「エコプラス」という商品にしたことだ。

【8】 企業に会員登録してもらい、出張にDBを使うと、運賃に2%程度の協力金を課す。ベルリン-フランクフルト間なら百円ちょっとというように。会員企業は見返りに、再生エネによる出張で削減できた二酸化炭素(CO2)の総量を、証書として受け取ることができるのだ。エコ企業の証しである。消費者は、それを見ている。

【9】 社員三十万人。年間延べ二十七億人の旅客を運ぶ巨大鉄道会社の影響力は計り知れない。「有力企業の会員が増えています」と、DBの女性幹部(52)は言う。

【10】 では、挑戦を促す力は何なのか。その人はさらりと言った。

【11】 「国民の希望です」

【12】 福島原発事故の後、ドイツは脱原発を宣言した。そのため電気料金が値上がりし、国民の不満が高まったともいわれている。

【13】 ドイツの挑戦は失敗なのか。皆さんと一緒に考えたい。

 (論説委員・飯尾歩)

※OKOSTROMの最初の「O」はウムラウト

 
②ドイツは失敗したか<2> 何が家計にやさしいの 
2014年4月8日
http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2014040802000155.html
【1】  ドイツでは、個人による電力市場への参入が、日本よりはるかに簡単だ。

【2】 「(送電会社に)電話を一本かけて、手紙を一通書けば、手続きはおしまいですよ」と、ベルリンにある公益法人、再生可能エネルギー・エージェンシーの副代表ニルス・ベーニクさんは言う。

【3】 二〇〇〇年施行の再生可能エネルギー促進法は事業者に、太陽や風でつくった電力を高く買い取り、優先的に送電網につなぐよう、義務付けた。

【4】 高く買って安く売る。その差額を埋めるのが、電気料金に上乗せされる再生エネ普及のための賦課金だ。日本もこれにならった。

 <五〇年までに、総発電量の80%以上に引き上げる>

【5】 メルケル政権は一昨年、より高い導入目標を打ち出した。

【6】 法による“追い風”を受け、再生エネの発電比率は現在24%になった。だがその反動で賦課金の負担が増え、生活者の不満が高まったと、日本でもしばしば報道される。本当は、どうなのか。

【7】 法が定めた昨年の賦課金は、電力一キロワット時あたり五・三セント(七円四十銭)、平均的な家庭では、月およそ十五ユーロ(二千百円)になるが、暖房やガソリン代を含むエネルギー費用全体に占める割合は、4%にすぎない。

【8】 再生エネが、しばしばやり玉に挙がるのは、助成金がガラス張りになっているからだ。

【9】 一方で、原発には隠れたコストがつきまとう。政府の支援や税制上の優遇などを賦課金に換算すると、一キロワット時十二セント(十七円)で、再生エネを大きく上回る。それでも氷山の一角という。

【10】 使用済み核燃料の処分や事故の補償などまで考えに含めると、同じく二ユーロ(二百八十円)の賦課金が必要になるという試算もある。これらを負担するのは、誰か。

【11】 「何が家計にも、やさしいか。結局は風や光だと思う」

【12】 ドイツで直接耳にしたのは、むしろこんなつぶやきだった。

 (論説委員・飯尾歩)

 
 
③ドイツは失敗したか<3> エネルギー不安に備え
2014年4月10日
http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2014041002000145.html

【1】 欧州連合(EU)で消費される天然ガスの約三割がロシアから輸入され、その半分はウクライナ経由で運ばれる。

【2】 しかし、ウクライナの混迷が、直ちにエネルギー危機に結びつくかといえば、そうではない。

【3】 多少の値上がりはあるだろう。だが深刻な供給不安に陥ることはないというのが、現地の大方の予測である。ただし、この危機はEU諸国に対し、他国へのエネルギー依存の危うさを、より強く印象づけた。

【4】 特に日本と同じ資源小国のドイツでは、エネルギーの地産地消、太陽や風が無限にもたらす再生可能エネルギーへの関心が、一層深くなったに違いない。

【5】 世界に降り注ぐ太陽エネルギーの総量は、世界のエネルギー消費量の二千八百五十倍になるそうだ。しかも無料。ドイツがロシアなどに支払うガスや石油の代金は、年に九百二十億ユーロ(約十三兆円)にもなる。太陽や風を、もっと活用しないという手はない。

【6】 国内でも依存は終わる。かつてドイツの発電力の七割と送電網の八割が、E・ONやRWEなど大手四社に握られていた。

【7】 大量の電力を一度に供給可能な原発は、大手寡占には都合のよい電源だった。ところがチェルノブイリに続き、科学立国日本で起きた原発事故が、安全神話にとどめを刺した。電力は一極集中から地域分散の時代へ向かうべきだと、ドイツは読んだのだろう。

【8】 電力の小規模分散化は、地域や中小企業を活性化させ、地方に新産業が生まれる可能性も秘めている。再生エネの普及は昨年、ドイツの地方自治体に百七十一億ユーロ(約二兆四千億円)の経済効果をもたらしたという調査もある。(1)業者の利益(2)労働者の所得(3)税収-などの合算である。日本には、そういう大きな策がまだ見えない。 
(論説委員・飯尾歩)

 
④ドイツは失敗したか<4> 電力会社が勝てぬもの
2014年4月11日
http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2014041102000139.html

【1】 「チャタムハウスルールでお願いします」。大手電力会社の幹部は、切り出した。

【2】 情報の利用は自由だが、発言者の身元は秘すという英国流ルール。さあ、本音を聞いてみよう。

【3】 「電力をつくるだけなら、原発が一番安上がり。でもドイツの脱原発に後戻りはあり得ません。北欧ほどではないですが、国民は原発が大嫌い」

【4】 ドイツの脱原発は、宗教者なども参加した「倫理委員会」の提言に基づくメルケル首相の政治的判断によるものだ。

【5】 この国には、地震はほとんどない。しかし「四十年戦争」とも呼ばれる長い原発対住民運動の歴史がある。その中から生まれた環境政党「緑の党」は支持者を広げ、連立政権の一翼を担うほど力を蓄えた。保守与党のキリスト教民主・社会同盟(CDU/CSU)を率いるメルケル首相は国民の大きな意思を読んだのだ。

【6】 大手電力各社は原発に膨大な資金をつぎ込んできた。福島の事故後、原発拡大路線に急ブレーキをかけた政府に対し、数十億ユーロの損害賠償を求めて提訴した会社もある。しかし、国民の政治的意思にあらがうほどの力はない。

【7】 原発の代わりに火力発電を増強し、再生可能エネルギーの方には、乗り遅れた感がある。

【8】 消費者にも不公平感はある。

【9】 再生エネ普及のための経費として、各家庭には賦課金が課されている。ところが、国際競争力を保つためとして、連邦政府は二千以上の企業に対し、賦課金を免除した。昨年各家庭が負担した賦課金の約四分の一は、その分を肩代わりしたことになるという。

【10】 「家計への配慮は何もないのに…」と、ベルリンに住む四十歳代の主婦は不満を訴える。

【11」】 不満は解消できるのか。再生エネ普及に支援を要する助走期間は、そろそろ終わりにすべきだろうか。原発ゼロでも豊かな社会に向けて、誰もが納得できるかたちで水平飛行に移れるか。


 (論説委員・飯尾歩)