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「二重思考」とは、「New Speak」と同様にジョージ・オーウェルの小説「1984」に登場する造語である。二重基準・ダブルスタンダードを極めた結果「ダブルスタンダードを適用していると、適用している当人が気付かない」境地に達した状態。言わば「究極のダブルスタンダード」と言うべきだろう。小説「1984」では、社会主義一党独裁体制の下、思想言論行動を常時監視される管理社会で、国民はこの「二重思考」を習得することが求められ、実際(恐るべきことに)身につけている。
だが、何も国家権力や外国等の外部の力に依らずとも、自ら「二重思考に陥る」という事は、在る様だ。
【東京社説】週のはじめに考える 自衛隊の積極的平和主義
2014年3月23日
http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2014032302000126.html
【1】 安倍晋三首相は、平和の前に戦争あり、を疑わせる「積極的平和主義」を打ち出しました。自衛隊の活動は、見直しが必要なほど消極的でしょうか。
【2】 「自衛隊の高度な知識、能力を身につけたい」
【3】 今月中旬、茨城県ひたちなか市にある陸上自衛隊施設学校で、モンゴル陸軍の将校団五人が研修を受けました。陸上自衛隊の施設科は他国では工兵と呼ばれています。国連平和維持活動(PKO)の開始後は派遣先で道路の補修や建物の建設を続けています。
◆モンゴル軍に技術指導
【4】 将校団は測量器材を操作しながら、自衛隊の担当者を質問攻めにしました。モンゴル軍は測量は民間業者に委託し、施工のみ工兵部隊が行います。しかし、海外活動であるPKOに民間業者は同行しません。測量から施工まで自己完結させる必要があるのです。
【5】 団長のダワードルジ大佐は「装備品はロシア、ドイツ、韓国などが提供してくれる。招いたうえ、技術を教えてくれるのは日本だけ。こうした交流を通じて二国間の関係が発展することを願います」と謝意を表しました。
【6】 ロシア、中国という大国に挟まれ、バランス保持が欠かせないモンゴルに対し、日本政府は有償・無償の資金援助をしています。自衛隊は人的貢献を担っているのです。
【7】 防衛省は二〇一一年度から、人道支援・災害救援、地雷・不発弾処理などの安全保障分野で東南アジア諸国の能力を高める「能力構築支援」を開始しました。PKO、国際緊急援助隊に続く、三番目の国際貢献策にあたります。
【8】 カンボジア、東ティモールといった自衛隊がPKOで活動した国のほか、憲法改正してPKO参加を決めたベトナム、モンゴル、インドネシアへ隊員を派遣したり、軍人を招いて日本の技術を習得してもらおうというのです。
◆イラクでも独自の活動
【9】 陸上幕僚監部国際防衛協力室長の笠松誠一佐は「人種、宗教が異なるアジアの国々は多種多様。日本がけん引して共通の価値観を形成していきたい」。能力構築支援は平和への積極的な貢献策と強調するのです。
【10】 初の「戦地派遣」となったイラクでの自衛隊は独特でした。自衛隊らしい活動を考え抜いた結果、施設復旧、医療指導、給水に徹したのです。地元の人々を雇用しての施設建設や道路工事によって信頼は高まり、各国の軍隊が視察に訪れるほどでした。
【11】 独自性はその服装にも出ていました。薄茶色の砂漠の中で、日本仕様の緑色を基調とした迷彩服。しかも頭、肩、胸、背中の四カ所に大きな「日の丸」。これほど目だつ格好はありません。迷彩も何もないのです。
【12】 「われわれの任務は人道復興支援、はっきり分かる格好をしていた方が安全だからです」。派遣された幹部は疑問に答えました。一方の米軍は薄茶色の迷彩服を着ていて目だたない。「人助け」に行った自衛隊と戦争に行った米軍との違いは、こんなところにも表れていました。【13】 アフガニスタン戦争、イラク戦争を経験した米国は「テロとの戦い」のあり方を見直し、テロの背景にある貧困の解消を目指しています。〇八年ごろから陸海空、海兵隊の四軍がイスラム国家の多いアジアで医療、技術指導を行う「善行キャンペーン」に取り組んでいます。自衛隊は、変化する米軍とも協調しています。
【14】 米海軍主催の「パシフィック・パートナーシップ」は米海軍の病院船を東南アジアに派遣し、無償で住民を診察します。海上自衛隊は輸送艦のほか、医官、看護官を参加させています。
【15】 さて「積極的平和主義」です。安倍政権は昨年末、安全保障政策の柱として「国家安全保障戦略」を閣議決定しました。その中に出てくる言葉です。文中、「積極的」が三十回も繰り返し登場、海外の安全保障問題に文字通り積極的に関わっていく姿勢を鮮明にしています。
◆「軍事力強化」に違和感
【16】 海外の紛争から距離を置いてきた戦後の平和主義を「消極的」とみなして否定し、第一次安倍政権で掲げた「戦後レジームからの脱却」を実現する狙いがうかがえます。強い意気込みは「パワーバランスの変化の担い手は中国、インドなどの新興国であり」「米国の国際社会における相対的影響力が変化」「強力な指導力が失われつつある」との記述から分かります。弱体化した米国を軍事力を強化して補うというのです。それには憲法解釈の変更が必要だというのが安倍首相の考えです。
【17】 自衛隊の地道な活動とはあまりにも違います。「普通の軍隊」にしようとする試みに強い違和感を覚えます。
「自衛隊=軍隊=悪」と言う"ステレオタイプ"よりはマシか?
さて、如何だろうか。
試みに冒頭のパラグラフ【1】を飛ばして再読していただきたい。ある種「落とし噺」になって居る事にお気付きだろうか。全部で17あるパラグラフの内、実に【2】~【14】で我が自衛隊三軍の海外活動を「手放し」と言って良い位に絶賛しているのに対し、最後の3パラグラフ【15】~【17】で「安倍首相の積極的平和主義」と「現状自衛隊の海外活動」との乖離を理由に、安倍首相及び積極的平和主義を批難している。冒頭の( 先刻再読の際に外すよう勧めた )パラグラフ【1】は、
1〉 自衛隊の活動は、見直しが必要なほど消極的でしょうか。
と「安倍首相の積極的平和主義に対する疑義」を投げかけているから、逆に言えば「自衛隊の海外活動現況は、充分積極的だ!」と主張したいのだろう(*1)。
自衛隊の海外活動が取り沙汰される度に、「海外派兵だぁぁぁぁ!戦争につながるぅぅぅぅぅ!!アジア侵略の歴史を思い出させるぅぅぅぅぅぅぅ!!!!」と絶叫していたのは、一体、何処のどいつだね?
ま、そんな事を絶叫していた「過去を反省した」のならば、上掲東京新聞社説パラグラフ【2】~【14】に表れるような「自衛隊海外活動礼賛」も良かろう。それは「転向」とか「裏切り」とか「寝返り」とかは呼ばれても、時間方向変化が明確であれは、「二重基準=ダブルスタンダード」とか「二重思考」と言う批難は免れ得よう。
だが、今度は、「安倍首相の積極的平和主義」と「現状自衛隊の海外活動」との「乖離」と言うのが問題になる。上掲社説では「◆「軍事力強化」に違和感」とわざわざ小見出しにまでして、「大絶賛の自衛隊海外活動」と「安倍首相の積極的平和主義=軍事力増強」を真っ向から対立するものと捉え、あたかも善と悪との対決かの如く描いて見せる。
「軍事力増強」で兵力に余裕が生まれれば、その分「海外活動を拡大し得る」と言うごく単純な因果関係さえ、全く無視している。本記事タイトルにもとり、冒頭説明した「究極のダブルスタンダード」としての「二重思考」なんてモノを想起した所以だ。「従来の自衛隊三軍海外活動は絶賛するが、軍事力増強="安倍首相の積極的平和主義"には異を唱え非難する」奇怪さに、東京新聞自身が気付いていない様であるから。
章題にもしたような「自衛隊=軍隊=悪」と言うステレオタイプよりは、「自衛隊の現状を肯定」している分マシかも知れないが・・・「偏見と独断に満ち溢れた思考停止」と言う点では、大差がないぞ。
第一、国家から強制された訳でもないのに自ら「二重思考」に陥るとは、フリージャーナリズムにあるまじき愚行ではないか。
如何に、東京新聞。
そりゃ脱原発原理主義も思考停止の一種だろうがさ。
<注釈>
(*1) こいつも「文言として書かれていない。」がね。