応援いただけるならば、クリックを⇒ https://www.blogmura.com/
「社説比較」「社説対決」シリーズなんて記事を当ブログにアップ始めて以来一貫して主張してきたことが、「日本の新聞論調を比較するならば、朝日と産経を比べるのが手っ取り早い」である。その「一貫した主張」が時に覆され、裏切られた事例も記事にしてきたが、おおむね「妥当な推論」と呼べそうなぐらいに実績も重ねた「ジンクス」である。それ故、「社説対決」シリーズの相当部分は「朝日 対 産経」の形をとっている。
今回取り上げた二本の社説もまた、「朝日 対 産経」で、期待に違わぬ好対照ぶりを見せてくれている。題材は、中国が韓国の要請を受けてハルピンに建設した「安重根記念館」である。言うまでも無いだろうが安重根とは伊藤博文首相(当時)を暗殺した犯人である(*1)。
<注釈>
(*1) この事件自身は、正真正銘掛け値なし天地俯仰に恥じる処の無いテロ事件である。このテロ事件を「革命の端緒」と見做したり、安重根を「義士」だの「英雄」だのと見做すには、「超法規的な解釈・論理」が必要である。そんな「超法規的な解釈・論理」を我が国が要する必要性は微塵も無いのだから、我が国にとって安重根はテロリストで暗殺者。それ以外の何かになんか、なり様が無い。赤穂浪士の四十七士も、その「吉良邸討ち入り」と言う行動自体は、「テロ」で「暗殺」だ。だがそこに「亡き主君に対する忠義」と言う「超法規的な解釈・論理」があるからこそ、「義士」と呼ばれ、讃えられる。「亡き主君に対する忠義」と言う「超法規的な解釈・論理」を認めるか否かは、人によって異なり、それによって赤穂浪士も「テロリストで暗殺犯」扱いされもしよう。だが、「亡き主君に対する忠義」と言う「超法規的な解釈・論理」にある程度の普遍的価値が認められればこそ、「47RONIN」なんて洋画になっているんじゃないかね。
①【朝日社説】安重根論争―政治が負の連鎖を断て
2014年1月22日(水)付
明治維新の立役者の一人で元首相の伊藤博文を暗殺した朝鮮の独立運動家、安重根(アンジュングン)の評価をめぐり、日本政府と韓国、中国両政府が非難しあっている。
暗殺現場である中国のハルビン駅に、地元当局が記念館を開設したためだ。昨年の安倍首相による靖国神社参拝に対抗した対日圧力の一環とみられる。
いまの北東アジアに何より必要なのは融和の努力のはずだ。なのに、あえて対立の火種を増やし、言い争いを深める事態を憂慮せざるをえない。
安重根の評価は、とくに日韓の間で対照的だ。菅官房長官は「死刑判決を受けたテロリストだ」とし、韓国外交省は「独立と東洋の平和のために献身した偉人」と反論している。
この落差を埋める手だては、容易には見つからない。歴史とは、同じコインの表と裏を見るように、それを評価する者の立ち位置や考え方によって異なる叙述になりがちだからだ。
9・11テロ事件の直後、当時のパウエル米国務長官はテロの認定の難しさをこう語った。「ある者には『テロリスト』でも、別の者には『自由の戦士』に映るような領域がある」
パレスチナのアラファト氏や東ティモールのグスマオ氏のように、時に犯罪者、時に英雄とされた例は世界史に数多い。
日本と中韓が安重根をめぐる自説をぶつけ合っても、生まれるものは争い以外にない。自国の叙述に閉じこもったまま相手の理解のみを求める行為は、もはや外交とはいえない。
どの国の間にもある永遠の平行線の課題は棚上げし、協調できる結節点を探るのが政治の責務だろう。日中韓の指導者たちにはその自覚が欠けている。
政府間のさや当てをよそに、韓国民の間では日本との距離を縮めようとの声も出ている。
韓国の世論調査によると、安倍首相の靖国参拝後でも、半数近くが日韓首脳会談の実現を支持している。
ソウルでは、長崎・対馬で盗まれた仏像を日本へ返すよう政府に求める訴訟が韓国の市民団体によって起こされた。
市民レベルや経済界では無為な対立を続けるよりも、新たな互恵の関係をめざす動きが芽生えているのに、政治のリーダーたちはなぜ、負の連鎖を断ち切れないのか。
自国の歴史観を押し通すことで国内の狭い支持層を喜ばすことはできても、複眼的な視座が求められる外交の地平は開けない。日中韓の指導者は、アジアの未来を描く大局観こそを語り合ってほしい。②【産経社説】安重根記念館 中韓連携に強く反論せよ
2014.1.21 03:16 [主張]
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/140121/plc14012103160005-n1.htm
明治末期、初代韓国統監だった伊藤博文元首相を暗殺した安重根の記念館が、中国北東部のハルビン駅に開設された。
日本にとってはあくまでも「死刑判決を受けたテロリスト」(菅義偉官房長官)である。外務省の伊原純一アジア大洋州局長が中韓両国の駐日大使に「犯罪者をたたえることは受け入れられない」と抗議したのは当然だ。
中韓は連携して歴史問題で日本を包囲しようとしている。政府は国家の名誉と尊厳をかけ、誤った日本の印象付けが広まらないよう、積極的な対外発信などに努めるべきだ。
朴槿恵韓国大統領は昨年6月の訪中時に、安重根の石碑建立を習近平国家主席に提案した。安重根は韓国国内で英雄視されているが、第三国にも話を持ちかけて記念施設や像を建てるのは度を越えており、容認できない。
しかも、当初の石碑の話から記念館へと格上げされた。中国は韓国の申し出には慎重に対応するだろうといった、日本政府の甘い見通しはなかったか。
安重根が中国にとって「英雄」なのかは疑問だ。あえて韓国の提案に乗り、記念館を日本に対する嫌がらせのカードに用いたと考えざるを得ない。そこまでして反日行動をとる中国の姿勢にこそ、警戒を強めなければなるまい。
中国共産党は自国の主張を相手国や国際社会に浸透させるために世論戦、心理戦、法律戦の三戦を使うという。日本は対日批判の世論戦を仕掛けられている。
佐々江賢一郎駐米大使が最近、安倍晋三首相の靖国神社参拝などに対する中国の批判に反論する形で米紙に寄稿した。「中国は教条的な反日プロパガンダをやめるべきだ。中国と異なり日本は戦後、戦闘で一発も弾を撃っていない」などと語ったのは適切だった。
だが、政府の対応は十分ではない。「中韓の不当な主張には取り合わない」といった消極的態度もみられる。これでは相手の言い分を認めたことになりかねない。執拗(しつよう)な対日批判の異様さを関係国に粘り強く説明する必要がある。
朴大統領は外遊のたびに歴史問題で日本を批判している。北朝鮮の脅威に連携して対処するなど、韓国の外交・安全保障上の国益は日米との緊密な協力にあるはずだ。その基本を離れ、対中連携に偏る外交は見直してほしい。
.
「正しい歴史認識」とやらを強制しようとするから、そうなるんじゃないか
さて、如何だろうか。
先ず上掲①朝日社説と上掲②産経社説とでは現状の事実認識に大差が無い事に注目すべきであろう。即ち
(1) 伊藤博文首相(当時)を暗殺した安重根に対する評価は、日本と韓国で異なる。
韓国では「義士」に奉られ、「救国の英雄」扱い(*1)であるが、我が国からすれば「首相(当時)暗殺のテロリスト」でしかない。この「安重根認識の日韓ギャップ」を認めている(*2)点で、上掲①朝日社説と②産経社説に大差は無い。
無論、そこは日本新聞業界の「両極端」とも言うべき朝日と産経だ。
朝日の方が「安重根認識の日韓ギャップ」を他国の類似例を列挙した上で、
朝1> どの国の間にもある永遠の平行線の課題は棚上げし、協調できる結節点を探るのが政治の責務だろう。
朝2> 日中韓の指導者たちにはその自覚が欠けている。
朝2> 日中韓の指導者たちにはその自覚が欠けている。
とまあ、ここまでは私(ZERO)でさえ首肯し得るほどの「正論」を吐いている。無論、一般論としては、だ。
だが、その一方で、我が国の「安重根=テロリスト認識」が、あくまでも「我が国の立場」と心得ているのに対し、韓国の「安重根=義士認識」が「正しい歴史認識」なるモノに基づき「人類の大義、すなわち平和と自由を死で実践していった大物(*3)」とまで格上げと言うか誇大妄想と言うか「祀り上げて」しまっている事を全く無視している。かてて加えて「親日」と言うのが悪口になるようなお国柄で、「韓国の政治家が日本と協調できる結節点を探る」なんて、期待するさえ虚しかろう。
即ち、上掲朝日社説は「韓国と言う特殊事情」を全く無視しており、
朝3〉 自国の歴史観を押し通すことで国内の狭い支持層を喜ばすことはできても、
朝4〉複眼的な視座が求められる外交の地平は開けない。
朝5〉日中韓の指導者は、アジアの未来を描く大局観こそを語り合ってほしい。
朝4〉複眼的な視座が求められる外交の地平は開けない。
朝5〉日中韓の指導者は、アジアの未来を描く大局観こそを語り合ってほしい。
等と、脳天気に上掲①社説を結んでいる。特に上記朝5〉なんてのは、何度聞いたのか判らない「未来志向の日韓関係」と言うキャッチフレーズと、何が違うんだ?そのキャッチフレーズは、殆ど耳にする度に裏切られ、「政権末期に反日煽って政権維持」を繰り返しているんだが。ああ、現朴政権だけは、発足当初から反日全開か。「未来志向」かどうかは兎も角、ある意味「新たな日韓関係」とは言えそうだな。
そうは言っても、上記朝1〉~朝5〉を通じて、日韓二国関係に限らず、中国に触れているのだから、朝日としては上出来な社説と言うべきだろう。
尤も教科書問題から南京虐殺、従軍慰安婦まで、尽くと言って良い位朝日新聞が火を点け、煽って、外交問題化しているその罪は、到底許容できないが。その上上掲朝日社説の様な「問題棚上げ」と言う「大人の対応」に日本政府が終始してきたことこそ、「歴史認識」なる「外交カード」を中韓に与え、我が国益を損ない続けて来ている所以であろう。
他方、上掲②産経社説は、
産1〉 中韓は連携して歴史問題で日本を包囲しようとしている。
産2〉政府は国家の名誉と尊厳をかけ、誤った日本の印象付けが広まらないよう、
産3〉積極的な対外発信などに努めるべきだ。
産2〉政府は国家の名誉と尊厳をかけ、誤った日本の印象付けが広まらないよう、
産3〉積極的な対外発信などに努めるべきだ。
と、上掲①朝日社説とは逆に「韓中との歴史認識対立姿勢」を求めている。上掲①朝日社説の「一般論的正論」よりも、韓中相手にはこちらの方こそ正論である事は、国交回復以来の日韓・日中関係が如実に示していよう。
単なる「安重根に対する認識の差異」だけならば、上掲①朝日社説の唱える「一般論的正論」でも通用しそうだ。
だが、「正しい歴史認識」だの「人類の大義」だのを振りかざす「狂信者」相手では、そんな「一般論的正論」は無駄・無謀。
産4〉 執拗(しつよう)な対日批判の異様さを関係国に粘り強く説明する必要がある。
と言う上掲②産経社説の主張こそ、正に正論であろう。
<注釈>
(*1) 実際に国を救ったかと言うと、全くそんな事は無いが。「日帝支配」を早めこそすれ、「日帝支配弱体化」にも「日帝支配からの解放」にも、全く関係ない。
(*2) いや、これが半島のマスコミともなると「日韓ギャップがある」事すら「許さない」のだから、話にならない。
(*3) 【中央日報取材日記】安倍首相、安重根記念館に行くべき http://japanese.joins.com/article/877/180877.html?servcode=100§code=140&cloc=jp|main| 「暗殺して死刑になった」事実を以って「死で実践した」ってんだから恐れ入るな。