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 チョイと想像力を働かせてみよう。貴方は中国人で、在外中国大使を勤めている。
 
 在外大使なんか勤める位だから、結構なエリート官僚で、多分中国共産党員だ。故郷の中国では中国共産党が「救国の英雄」として一党独裁体制を維持しているが、何しろ「お国柄」だ。貴方にとっては「当たり前の体制」だ。

 一方であなたは、エリート官僚として在外経験がある事から、「外国(中国以外)」の特に「先進国の豊かさ」を身を以って知っている。その恩恵・恩典にあずかっても居る。貴方は、中国のエリート官僚としては当たり前の汚職による蓄財もしているし、家族一族の「中国国外脱出」の準備も進めているかも知れない。汚職は中国官僚の伝統だが、最近中国共産党トップ周辺から「汚職追放」の掛け声がやかましく、昔の様にはいかなくなっている。

 蓄財の手段が制限されるのも閉口だが、もっと恐ろしいのは過去の汚職や「国外脱出準備」が暴露され、叱責される事だ。そうなったら財産どころか、貴方自身、家族、ひいては一族の生命すら危うい。

 貴方の本国・中国は、最近隣の島国との仲が険悪になっている。その島国の首相が「悪霊参拝」をし、「第2次大戦に対する反省を欠いて居る」と言うので、貴方の上司にあたる中国外交部が強烈な非難を公言した。貴方の同僚の在外大使は、外交部と同趣旨の非難声明をその任地の大手マスコミに表明すると聞いた。
 さあ、在外中国大使たる貴方は、一体どんな行動をとるか?

 
【人民網】中国の外交官40人が安倍首相を糾弾 国際社会の共鳴を呼ぶ
  http://j.people.com.cn/94474/8512718.html
 2014年01月15日08:25
【1】 駐英大使、駐独大使、駐露大使、駐南アフリカ大使など中国の外交官数十人が最近、現地の主流メディアへの寄稿やインタビューを通じて、靖国神社を参拝し、歴史を無視する安倍首相の行為を相次いで糾弾し、国際社会の広範な注目と共鳴を呼んだ。

【2】 劉暁明駐英大使の英紙デイリー・テレグラフへの寄稿「日本軍国主義はヴォルデモート」は英国のネットユーザーの間で強烈な反響を呼んだ。ある人は「中国の大使は中国の尊厳を守っただけでなく、英国市民を説き伏せた。人々は中日間の争いの本質を理解しただけでなく、中国の立場への理解と同情を深めた」と指摘した。。英ロンドン・ウェストミンスターで新聞や雑誌を売るバーンズさんは人民日報の取材に「中国の大使は英紙への寄稿とテレビインタビューで中国の声を発し、中国の厳正な立場を明らかにし、問題の経緯と真相を人々に理解させた」と語った。

【3】 程永華駐日大使の人民日報への寄稿を読み終えた日本の村田信彦・元毎日新聞駐独記者は人民日報に「寄稿の内容は平和を渇望する日本の民衆の声、世界秩序の安定を求める国際社会の世論と完全に一致する。寄稿は『中日国交正常化時、中国側は一貫して日本軍国主義者と日本国民を区別して扱い、戦犯と普通の兵士を区別して扱い、日本軍国主義の発動した戦争は中国国民に甚大な災禍をもたらしたが、日本国民も大きな被害を受けたのであり、戦争責任は一つまみの軍国主義者が負うべきだと考えた』と、中国外交の立場を大変慎重に明らかにした。日本の昭和天皇は1975年までは靖国神社を8回参拝したが、1978年にA級戦犯が合祀されてからは参拝しなかった。現在の天皇は靖国神社を一度も参拝していない。中国大使の寄稿は日本の皇室の考えとも一致すると言える。だが、安倍氏らの危険な挑発行為を阻止しなければ、日本の民衆は世界の歴史において非難されかねない。問題解決の核心は決して『中日対立』ではなく、日本人が国際正義と人類の良識を理解できるか否かだ」と語った。

【4】 ドイツ・デュッセルドルフ商工会議所のウルリッヒ・レーナー会長は中国側の立場と主張を紹介する史明徳駐独大使の最近の行動を称賛。デュッセルドルフ商工会議所の多くの会員は「歴史問題を正しく扱うことはドイツの普遍的認識だ。ドイツ人にとっては当然の事であり、日本が歴史問題で誤った態度を堅持するのは理解に苦しむ」と表明した。

【5】 ドイツ「世界の橋」協会の名誉会長は「アジア情勢が非常に複雑化した重要な誘因は日本にある。ドイツと日本は共に第2次世界大戦の枢軸国で、ドイツは日本の全ての行いを非常によく知っている。ドイツは戦争を発動し、虐殺を行った歴史的罪を忘れないし、ましてや否認することはない。日本は第2次大戦で重大な罪を犯した。日本は本来ドイツと同様に、過ちを認め、反省し、近隣国と全世界に謝罪すべきだが、残念なことに日本政府はそうしていない。日本の政府と政界要人の最近の一連の挑発的言動は、日本には歴史を直視する考えが全くないことを示しており、人々の期待に背き、失望、憂慮、憤りを抱かせている」と述べた。

【7】 同名誉会長は「私には日本の友人が少なからずいる。彼らも日本は歴史問題で嘘をつかず、真摯に謝罪と反省をすべきだと考え、安倍政権の右傾化を懸念している」と指摘。「世界の橋」協会会員に対して、行動を起こし、日本の友人への働きかけを多く行い、日本政府に一日も早く歴史を直視させ、国際社会の了解を求めさせるよう呼びかけた。

【8】 ロシア科学アカデミー極東研究所のベルゲル研究員は人民日報の取材に「中国の李輝駐露大使はインタファクス通信への寄稿で、安倍氏が中韓などの国民の感情を顧みずに靖国神社を参拝し、アジアさらには世界の人々の強力な排斥と懸念に直面したことを取り上げた」と指摘。「これは重大な原則問題だ」として賛同の意を表した。また「日本の多くの高官に靖国参拝の過去があり、すでに見慣れてしまっている感がある。これは全ての人が警戒すべき事だ」と指摘した。

【9】 田学軍駐南アフリカ大使は南アフリカ紙への寄稿「日本の首相の靖国神社参拝は『東洋のナチス』にひれ伏して礼拝を捧げる行為」で、安倍氏の参拝を強く非難し、南アフリカ各界で大きな反響を呼んだ。ある南アフリカ政府高官は「日本のする事なす事は人々を驚愕させ、非常に危険なメッセージを国際社会に発した。南アフリカは中国側の立場を理解する。国際社会は日本の動向を緊密に注視し、日本の全ての行いに対して強い警戒を保つべきだ」と指摘した。南アフリカ報道界のある著名人も「安倍氏のこの行動は危険な動きだ。南アフリカの報道界には、安倍氏の行動の本質と危害性を南アフリカの民衆が理解する手助けをする責任がある」と表明した。

【10】 エジプト紙The Egyptian Gazetteは「中国外交部副部長(外務次官)はエジプトを訪れた中国人観光客に、カイロ宣言誕生の地であるメナハウスホテルを見学するよう勧めた。アジア諸国の歴史において重要な地位を占める場所であるだけでなく、正義と国際法の原則に対する尊重を表明することにもなるからだ。中国側は靖国神社参拝という安倍首相の行動を強く非難。『参拝によって中日間の対話のドアは閉ざされた。日本が歴史を正しく扱えないのなら、中日関係に新局面を切り開くことは不可能だ』と述べた」と報じた。エジプト紙アル・アハラムは「中国側は東アジア地域で緊張をつくり出す日本側の誤った行為を明確に指摘したうえ、歴史の車輪が逆転することはないと表明した」と指摘した。

【11】 寧賦魁駐タイ大使はタイ紙への寄稿「歴史の忘却は裏切りを意味する」で、タイの「死の鉄道」で命を落とした連合軍捕虜1万3000人、ミャンマー、マレーシア、オランダ領東インド出身労働者9万人の残酷な事実から語り初め、日本政府の誤った歴史観、アジアの人々に未だに謝罪しない誤った立場を痛烈に批判し、タイで肯定的な反響を呼んだ。(
編集NA)

 「人民網日本語版」2014年1月15日
 

 

保身競争とプロパガンダの成果

 さて、如何だろうか。想像上の「在外中国大使」たる貴方は、どんな行動を選択
したか?
 
  本国・中国との仲が険悪になった島国…我が日本を非難する声明を寄稿するなり、声高に主張するなりし始めたのではないか。同僚の他国在外中国大使に後れを取らぬよう、我が身我が地位我が財産我が命を、確保・保持するために。
 
 無論、これは「想像上の在外中国大使」の話だ。だが実際の在外中国大使の反応も、似たようなものだ。なにしろ人民網の別記事( 中国の大使32人が安倍首相を集中批判  http://j.people.com.cn/94474/8509933.html    )では、中国外交部のウェブサイトに32人の在外中国大使が安倍首相批判の声を寄せたなんて事が、上掲「在外中国大使40人の寄稿」共々掲載されている。逆に言えばどの在外中国大使が安倍首相批判コメントだの寄稿だのを、実施しているか否かは人民網によって監視確認されている、という事だ。昨年の三中総会にも見られる「汚職撲滅」キャンペーンと併せて考えれば、前述「想像上の在外中国大使」の通り、「安倍首相批判」を公言喧伝しておくのが「無難」と言うモノだろう。
 
 つまりは、タイトルにもした通り、「在外中国大使32人の安倍首相批判コメント」だの「外交官40人の安倍首相批判寄稿」にせよ、保身競争と中国共産党宣伝キャンペーン=プロパガンダ(*1)の「成果」に過ぎない。それは「中国共産党の意思」を表していはいるかも知れないが、それ自体は国際世論でもなんでもない。
 
 ああ、上掲人民網記事タイトルにある通り、そんな「安倍首相批判」キャンペーンが「国際社会の共鳴を呼ぶ」様ならば、チョイと気にしなければならない可能性が出て来るが、上掲人民網記事から「国際社会」のメンバーを拾うと・・・
 
① あるネットユーザー

② 英ロンドン・ウェストミンスターで新聞や雑誌を売るバーンズさん

③ 村田信彦・元毎日新聞駐独記者

④ ドイツ・デュッセルドルフ商工会議所のウルリッヒ・レーナー会長

⑤ デュッセルドルフ商工会議所の多くの会員

⑥ ドイツ「世界の橋」協会の名誉会長

⑦ ロシア科学アカデミー極東研究所のベルゲル研究員

⑧ 南アフリカ報道界のある著名人
 
 8人/グループだけ。このうち氏名まで判明して特定できそうなのは、上記②、③、④、⑦の4人に半減し、真面なのは上記④「デュッセルドルフ商工会議所会長」ぐらい。上記③元毎日記者なんて胡散臭くて適わない(*2)。上記⑦ロシア科学アカデミー極東研究所なんて研究員が何人いるか判らないが中には中国に尻尾振る奴もいるだろうさ。極めつけは、上記②「新聞や雑誌を売るバーンズさん」って、誰だよ。
 大体、32人の大使コメント40人の外交官寄稿・発言を投入して「新聞・雑誌売りのバーンズさん」を含む8主体で「国際社会の共感を呼ぶ」と報じるとは、プロパガンダとしても相当な失敗ではないのかね?
 
 まあ、「国際社会の共感」の方は、今後数が増えてくる可能性をまだ残しているが、「新聞・雑誌売りのバーンズさん」程度で記事にして報じている事に、「中国共産党の焦り」が見える(*3)のは、私(ZERO)だけでしょうかね。アワモリさん、「星の旅」さん。

 

<注釈>

(*1) 旧ソ連風に言えば、「悪意ある宣伝」って奴だな。 
 
(*2) 上掲記事の言説で、その立場は明白だが。 
 
(*3) 無論、上掲人民網記事を通じて、「中国共産党の焦り」あるいはそれに同義の文言は「書かれていない」。