応援いただけるならば、クリックを⇒ https://www.blogmura.com/
 
 この書き出し方も何度か使っているが…まずは以下朝日社説を御一読願いたい。その上で、私(ZERO)の疑問・質問にお答えいただければ幸甚だ。つまりは、以下の様な「国語の問題」と思って頂きたい。
 
【問題】以下の文書を読み、問題に答えよ。

 
朝日社説】原発輸出―立法府から再考促せ
2014年1月8日(水)付
【1】 安倍首相がトルコのエルドアン首相と会談し、日本からトルコへの原発輸出を進めることを確認した。

【2】 経済浮揚につながるとして原発輸出に前のめりな安倍政権だが、過酷事故が起きれば被害は一国とどまらず、日本も責任を負わせられかねない。

【3】 さらに、使用済み核燃料の最終処分や管理方法の確立といった国際課題がある。加えて、日本とトルコとの原子力協定は核燃料サイクルをめぐる記述すらあいまいだ。

【4】 協定の発効には国会の承認がいる。与野党の議員は立法府の責任として、政府に再考を促すべきだ。

【5】 トルコとの原子力協定で問題視されているのは、ウラン濃縮と、使用済み核燃料からプルトニウムを取り出す再処理に関する記述である。将来的にトルコが「できる」余地を残す文面となっている。

【6】 いずれも核兵器の製造にもつながりかねない技術だけに、国際社会はきわめて神経質に対処してきた。

【7】 今回、協定が発効したとしても、トルコが簡単に再処理できるわけではない。先の国会でも岸田外相が「日本として認めない」と答弁している。

【8】 にもかかわらず、不明瞭な記述となったのは、「肯定的な表現」を求めるトルコ側の要望を受けてのことだという。

【9】 ごく一部の国に限られていた原発の利用は、ここにきてエネルギー不足に悩む新興国に広がっている。安倍首相がトップセールスで原発を売り込んでいる先も新興国ばかりだ。

【10】 原発開発を急ぐ国々には、政情不安な地域や非民主的な政治基盤のところが少なくない。安易に原発を売り込み、相手の求める内容で協定を結べば、核不拡散への国際的な取り組みは難しさを増す。
 
【11】 ただでさえ、国際原子力機関(IAEA)による従来型の査察は強制力に欠けるなどの限界が指摘されている。

【12】 日本自体、核燃サイクルは頓挫しており、海外への再処理委託で大量に積み上がった余剰プルトニウムの確実な処理が国際的な関心事となっている。

【13】 まずは、足元の問題解決に専心し、放射性廃棄物の管理や処分をどうするかという国際課題に正面から取り組む。それが、安倍政権の責務だろう。

【14】 野党はもちろん、自民党内にも拙速な原発輸出や協定発効に対する慎重論があるという。政局絡みのかけひきに陥ることなく、与野党協力して立法府の良識を示してもらいたい。
 
 

【問1】 文章の主旨を百字以内にまとめよ

 さて如何だろうか。
 章題にしたのが、先行予告した「問題」という事になるが、さて読者諸兄の「回答案」は如何だろうか。一つ考え、紙にでも書いて「記録」していただきたい。
 
 (間)
 
 
 さて、読者諸兄の「回答案」が出来た(であろう)処で、「模範解答」とは言わぬまでも、私(ZERO)なりの「回答案」を示すとしよう。
 
 上掲朝日社説タイトル及び一読して明らかな事は、「上掲朝日社説は、日本の原発輸出に反対している」という事だろう。タイトルには「再考を促せ」とあり、〆のパラグラフ【14】では「立法府の良識を示してもらいたい。」として、直接「原発輸出反対」と言う文言は無い(*1)が、冒頭パラグラフ【1】「日本からトルコへの原発輸出を進めることを確認した。」事に対する社説であり、パラグラフ【4】「(日本-トルコ原子力)協定の発効には国会の承認がいる。」と明記されて居る事からも、「原発輸出反対」の主張は自明であろう。これらをまとめると、以下の様になろう。
 
【回答案1】「国会は日本‐トルコ原子力協定を承認せず、原発輸出を阻止せよ。」
 
 これで30文字。問題文に「百字以内」とあるのだから、もう少し情報を加えないと、試験問題として満点には成らないだろう。
 
 では、上記【回答案1】の通り「原発輸出反対」する理由を付け加えるべく「原発輸出反対理由」を上掲朝日社説から抽出すると、以下の通り。( 例によって【】はパラグラフ番号 )
 
(1) 過酷原発事故が起きれば、日本が責任を負わせられかねない【2】
 
(2) 使用済み核燃料の最終処分や管理方法の確立といった国際課題がある【3】
 
(3) 日本‐トルコ原子力協定に、ウラン濃縮や再処理をトルコが将来的に実施可能としかねない文言がある【3】【5】【8】
 
(4) 原発輸出が核拡散につながりかねない【10】【11】
 
 上記(1)~(4)の他に、「IAEAの監視体制にも限界がある【11】」だの日本の核燃料サイクルはとん挫している【12】」「日本の余剰プルトニウムに国際的関心が集まっている【12】」「自民党内にも原発輸出に慎重論がある【14】」だの、種々述べているが。どう見ても直接的な「原発輸出反対理由」ではない。凡そこの世の森羅万象には賛否両論何れもあり得るのだから、「自民党内の慎重論」が「原発輸出に反対す米理由」になる訳が無い。慎重論を唱える自民党議員が反対する理由ではあろうが、その他の議員が反対する理由にはならない。第一、「自民党内の慎重論」が反対理由になるような「全党一致ルール」を適用するならば、殆どの法案は可決せず、「強大な自民党政権下で"決めない政治"を現出させる」事になろう。それこそ正に、朝日新聞の目的である可能性は否定し難いが…幸いな事に自民党の目的にはなりそうにない。
 
 況や、日本の「核燃料サイクル頓挫」や「余剰プルトニウム」は「日本からの原発輸出」とは殆ど無関係。辛うじて「核燃料サイクルのとん挫」が「原発の商品価値を高めない」程度であり、やはり「日本からの原発輸出反対理由」とはならない。
 
 「IAEA監視体制の限界」は、フセイン大統領時代のイラク・オシラック原子炉の頃から言われており、実際にイラクが同原子炉を使って核兵器を保有しようとしたからこそ、イスラエルが空爆して同原子炉を破壊している。無論、イラクのオシラック原子炉は、フランスがイラクに輸出したもので、日本は全く関係ない。
 今回のトルコの原発について言うならば、日本から輸出しなければ、フランスなりロシアなり中国なり韓国なりが輸出するまでの話。どの国が輸出しようが、さらにはトルコが原発を独自開発しようが、その事と「IAEA監視体制の限界」には何の関係も無い。
 
 「日本がトルコに原発輸出しなければ、トルコは他国から輸入するだけ」と考えれば、原発輸出反対理由上記(2)と上記(4)も「反対理由」ではなくなってしまう。記(4)は「IAEA監視体制の限界」とほぼ同義であるし、上記(2)は輸出輸入国産に関わらず原発があれば「課題」なのだから「日本からトルコへの原発輸出に反対する理由」としては極めて希薄だ。
 
 となると、真面…と言うよりは「幾分マシ」な「原発輸出反対理由」は、上記(1)と上記(3)しか残らない。これを回答案に反映するならば・・・
 
【回答案2】「日本が過酷事故の責任を負わされたり、トルコが核開発に利用しかねないから、国会は日本‐トルコ原子力協定を承認せず、原発輸出を阻止せよ。」
 
 これで66字。上記(4)の「ウラン濃縮や再処理」「核開発」と言い換える(*2)には些かの原子力工学知識が必要だが、懸念される事象=反対すべき理由となる事は「核開発」だろう。

 

<注釈>

(*1) 従ってアワモリ氏や星の旅氏の理屈「文言に無い事は主張していない」に従えば「原発輸出反対とは主張していない」事になるのだが。 
 
(*2)言い換えずとも、6字増えるだけだから、「百字以内」には十分収まるが。 
 

論評:朝日社説

 さて、上記【回答案2】の通り纏められた上掲朝日社説の主張は、如何であろうか。
 「無責任にして、無礼」ではなかろうか。
 
 「無責任」と言うのは原発過酷事故の際に、日本が責任を取らされかねないからと言う「原発輸出反対理由」による。
 「無責任」と言うのは、必ずしも批難とは限らない。自国・自分を「責任の無い立場に置く・誘導する」のは利益・国益である場合もあるから、だ。例えば福島原発事故を受けてドイツ政府が「脱原発」宣した際は、「ドイツは脱原発し、ドイツ国内の全原発を廃炉にするが、ドイツ製原発の輸出は継続する」と宣言した。「ドイツ発の原発事故は起こさないなどと言う美辞麗句と共にだ。ドイツが電力の輸出入可能な西欧諸国の一つであり、不足すればフランスの原発から電力輸入できることも勘案すると、この「ドイツの脱原発宣言」は、「ドイツ以外発の原発事故には関知しない」且つ「ドイツ以外に建設されたドイツ製原発の事故」は可能性を残すと言う「極めて無責任」なものであるが、「ドイツ発の原発事故は起こさない」と言う美辞麗句が実現すると言う点で「ドイツの利益」ではある。
 同様に「原発過酷事故の際に、日本が責任を取らされかねないから」と言う理由でトルコへの原発輸出を止めれば、なるほど「トルコでの原発過酷事故の際に、日本の責任は問われない」であろう。法的には、経済的には、当該原発を輸出した日本以外の外国がその責任を問われよう。直接的には。その意味では、この「無責任な原発輸出中止」は「日本の利益」とも言い得よう。
 
 だが、トルコにとってはどうだろうか。日本からの原発輸入を進めていたが、断念させられ、他国の原発を輸入し、さらに原発過酷事故に見舞われたトルコ政府、トルコ国民にとっては。
 日本が、日本製原発の輸出を渋ったから、他国の原発を輸入しなければならず、原発過酷事故に見舞われた。日本製原発ならば、こんな事故にはならなかった。」そう考えるのが普通ではなかろうか。
 ある種「逆恨み」という事になろう。だが、日本製原発がその品質と安全性を期待され、相対的に「日本製原発の代替」となった他国製原発が信用に欠けていればなおの事、そんな「逆恨み」の可能性は高まる。そのリスクを負ってまで、「無責任な原発輸出中止」による「日本の利益」を追求すべきとは、私(ZERO)には思われない。
 
 「無礼」と言うのはもう一つの原発輸出反対理由トルコが核開発に利用しかねないからに依る。確かに核拡散は世界中の多くの国の懸念事項ではあるが、上掲社説内にある通り、パラグラフ【7】「今回、協定が発効したとしても、トルコが簡単に再処理できるわけではない。」と朝日新聞社説自身が認め、パラグラフ【6】で「将来、トルコがウラン濃縮・再処理「出来る」可能性」でしかないのに「原発輸出中止」するという事は、トルコを北朝鮮やイラクに準じた「核兵器開発疑惑国」扱いする、という事である。その非礼を、朝日新聞社説氏は、重々ご承知であろうか。
 
 トテモ、ソウハ思ワレヌ
 
 先述の通り、「トルコへの原発輸出」とは全く関係の無い事象を並べたてた混乱ぶりからすれば、「原発輸出反対」に固執する余り、常軌を逸して無責任・無礼に陥ったとみるのが至当であろう。
 
 「バカ丸出し」。本記事タイトルを左様銘打った所以である。
 
 尤も、原理主義なんてぇものは「至尊至高の原理」が必然的に「思考停止状態に陥れる」ものだから、はたから見れば「馬鹿」以外の何物にも見えないのであるが。
 
 如何に、朝日新聞。