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映画ですら、サイクルの速いテレビ番組や動画サイトに押され、斜陽と言われて久しい。況や制作に金ばかりかかってあまり売れない戦争映画なんてのは、マイナージャンルも良いところだ。半島や大陸(※1)のように国策宣伝映画としては作られるが、商品としては「かつての勢いがない」どころではない。
それでも、かつては戦争映画にも、映画にも、相応に勢いがあり、商業的に戦争映画が成功を収めることだって珍しくなかった。それだけあまたの戦争映画も作られていた訳だ。無論、箸にも棒にもかからない駄作戦争映画もあったが、傑作もあった。
戦争映画の傑作を上げていくならば・・・
<注釈>
(※1) ソ連時代のロシアも、結構なものだったが。
戦争のはらわた Cross of Iron
ジェームス・コバーン主演。サム・ペキンパー監督
「東部戦線・冬季戦」の一言で、ある種の人間にはその恐ろしさ、凄絶さ、おどろおどろしさは伝わる。小説「鷲は舞い降りた(※1)」でマックス・ラドル大佐(※2)が認めている通りだ。その東部線戦・冬季戦を描いたのがこの映画「Cross of Iron」。原題の意味するところは、「鉄十字章」で、第2次大戦にドイツ軍が授与した「階級に関わらず抜群の戦功を挙げた者に授与される、ドイツ軍最高の名誉章」の事(※3)。さらに「抜群の戦功」を重ねると、鉄十字章の階級があがったり、柏葉だの剣だのダイヤモンドだののおまけが付いてグレードアップされる事と、先述の通り「階級によらず授与される」というのが味噌。
「東部戦線・冬季戦」の一言で、ある種の人間にはその恐ろしさ、凄絶さ、おどろおどろしさは伝わる。小説「鷲は舞い降りた(※1)」でマックス・ラドル大佐(※2)が認めている通りだ。その東部線戦・冬季戦を描いたのがこの映画「Cross of Iron」。原題の意味するところは、「鉄十字章」で、第2次大戦にドイツ軍が授与した「階級に関わらず抜群の戦功を挙げた者に授与される、ドイツ軍最高の名誉章」の事(※3)。さらに「抜群の戦功」を重ねると、鉄十字章の階級があがったり、柏葉だの剣だのダイヤモンドだののおまけが付いてグレードアップされる事と、先述の通り「階級によらず授与される」というのが味噌。
普通はどこの軍隊でも勲章は階級に応じて授与され、「階級に依らず」と言うのは例外的。同じくドイツの第1次大戦に授与されたプール・ル・メリット勲章(通称 Blue Max)とイギリスのヴィクトリアクロス勲章ぐらいしか、ほかの例を私は知らない。が、戦意向上という意味では、見習うべき制度と思われる。
そんなドイツの勲章がタイトルになっているだけに、この映画はドイツ軍が主人公・主役であり、ジェームス・コバーンが演じるのはドイツ国防軍下士官シュタイナー軍曹(※4)。M43戦闘帽と分捕り品のPPSh41短機関銃(※5)がトレードマークで、サム・ペキンパー監督得意のスローモーションで痺れるぐらいにかっこ良く描かれる。原題の通り、鉄十字章を獲得する抜群の戦功を挙げるのは、他ならぬシュタイナー軍曹である。
もっとも、映画そのものは「ヒーロー・シュタイナー軍曹大活躍の一大活劇」では、全くない。何しろ先述の通り「東部線戦・冬季戦」だ。寒いのと泥と凍土の中での塹壕戦で歩兵戦。スコップと銃床がものを言う白兵戦に加えて、「鉄十字章を求めて」フランスから転属してきた上官をはじめとするドイツ軍内部の腐敗と権力闘争が、シュタイナー軍曹達第一線部隊をさらなる地獄へ突き落とす・・・「戦争のはらわた」なんて恐怖映画じみた邦題がついているのは、この「軍内部の醜さ暴露」故だろう。
「教えてやろう。鉄十字章の取り方を。」
ラストは、すっきりしないまでも相応に納得の行く映像なんだが(※6)、見終わってスカッとする映画ではない。だから、ドイツ軍だとか東部線線だとかのキーワードが琴線に触れる「マニア」にしかお勧めできないが・・・見る人が見たら、はまる映画だ。私も気に入っている。
<注釈>
(※1) 映画化もされているが。後述。(※2) 映画で演じるは、ロバート・デュパル。アイパッチが渋い。(※3) 同じ趣旨の勲章は、第1次大戦ドイツでもプール・ル・メリット勲章として定められた。青い十字架型の勲章で、通称をBlue Max。こちらも第1次大戦の空戦映画のタイトルとなっている。(※4) 冒頭ではまだ伍長。(※5) これまた、冒頭で分捕る。(※6) ネタばらしになるといけないので、詳しくは書けないが・・・シュタイナー軍曹、大爆笑。
ナバロンの要塞 Guns of Navalon
グレゴリー・ペック主演、アンソニー・クイン、デビット・ニーブン、アンソニー・クエルと、主役級の俳優ががっちり脇を固めて、原作がアリステア・マクリーンとくれば、私のような人間は血がたぎってしまう。
エーゲ海に浮かぶ島、ナバロン島。ここに配備されたドイツ軍の巨砲は水道を睨み、ケロス島に孤立したイギリス軍の撤退を阻んでいた。爆撃機による同砲破壊の試みも失敗し、ケロス島からイギリス軍撤退の期限が迫る中、イギリス軍は登山家キース・マローリー指揮する少数の特殊部隊にナバロン島への潜入と巨砲の破壊を命じた・・・映画のオープニングはギリシャ神話の話から始まり「現代の伝説」として「神でも半神でもない人間の物語」と、「語り始める」。それだけにこちらは「見終わってスカッとする」活劇として描かれる。
何しろ、役者が揃っているから、見所満載だが、特筆大書したいのは主人公・グレゴリー・ペックの上官アンソニー・クエルが、ナバロン島上陸早々に足を骨折してしまい、任務完遂の足手まといになってはと、自殺を図るのを止めたシーンの直後だ。
結局このシーンは、ペックの「今度逃げ出したら、もう片方の足もへし折るぞ。」と言う軽口で終わり、ニーブンはホルスターの蓋を戻すんだが・・・そのクエルの負傷をも利用して・・・後は見てのお楽しみ、だ。「アリステア・マクリーンのどんでん返し」とだけ、言って置こう。もっとも私は、どんでん返しの無いマクリーンの方が、好きなんだが。
大脱走 the Great Escape 監督:ジョン・スタージェス
スティーブ・マックイーン、チャールズ・ブロンソン、ジェームス・コバーン、ドナルド・プレザンス・・・いや、まあ、目も眩む様なキャスティング。綺羅星のごときスター達が揃う。まだ映画産業が元気だった頃の映画だねぇ。
第2次大戦下のドイツ。連合軍捕虜(主としてパイロットや航空機搭乗員)の脱走に手を焼いたドイツ軍は、脱走歴のある捕虜を集めて集中的に管理しようとした。「独房王」ヒルツ(スティーブ・マックイーン、若い。!)、トンネル王ダニー( チャールズ・ブロンソン・・・は若くてもあまり変わらない。)、「ビッグX」バートレット( リチャード・アッテンボロー )ら集まった錚々たるメンバーは、「全員脱走」を目指す壮大な脱走計画を始める・・・
第2次大戦下のドイツ。連合軍捕虜(主としてパイロットや航空機搭乗員)の脱走に手を焼いたドイツ軍は、脱走歴のある捕虜を集めて集中的に管理しようとした。「独房王」ヒルツ(スティーブ・マックイーン、若い。!)、トンネル王ダニー( チャールズ・ブロンソン・・・は若くてもあまり変わらない。)、「ビッグX」バートレット( リチャード・アッテンボロー )ら集まった錚々たるメンバーは、「全員脱走」を目指す壮大な脱走計画を始める・・・
「脱走物」と言うのは戦争映画の1ジャンルだ。戦争映画ですらマイナーなのに、「脱走物」戦争映画ときたらそれこそ超マイナーなんだが、「第17捕虜収容所」「オフサイド7」「マッケンジー脱出作戦」「勝利への脱出」など幾つもある。大抵は連合軍捕虜が主人公であり、「大脱走」もその例外ではない。
「脱走物」の背景にあるのは、「軍人は、捕虜となった後は脱走を企て、敵軍を混乱させる義務がある」と言う当時の欧米諸国の考え方。実を言えば「生きて虜囚の辱めを受けず」と武士道全開の「戦陣訓」を掲げて「捕虜となった後の措置を考えなかった」我が帝国陸海軍の方が少数派なんだが(※1)、だからこそドイツ軍捕虜が脱走する「マッケンジー脱出作戦」なんて映画もある。
そう言う捕虜観があるからこそ、実際に第2次大戦中に実施された捕虜脱走も多数あり、ノンフィクションとしても小説としても種々文献がある。「大脱走」も史実を下敷きにしており、続編である「大脱走2」はより原作=ノンフィクションに忠実な後日談の映画となっている。
この映画の魅力を一言で言えば、「チームワークの妙」だろう。バートレットは首謀者として計画を立て、統率する。目指すは「全員脱走」だ。ダニー(ブロソン)はトンネル掘りが得意だが、実は閉所恐怖症で、その恐怖を親友に打ち明け、その親友に支えられる。偽造屋(プレザンス)は視力を殆ど失いながら、米軍パイロットに支えられてスイスを目指す(※2)。モノツクリ(コバーン)を支えてくれたのはフランス人の抵抗運動(レジスタンス)だ。彼はこの大脱走中数少ない脱走成功者となる。マックィーンに至っては、情報収集のために単身脱走し、その情報を持ち帰る、つまり捕虜収容所に帰って来る。仲間と一緒に脱走するために。一人ではなせない事が、集団ならばなせる。これぞ「チームワークの妙」であろう。
左様、毛利元就の「三本の矢」の教えのように。
<注釈>
(※1) 軍人の「降伏する権利」を認めない国もあるから、大日本帝国特有の問題ではない。(※2) 因みにドナルド・プレザンスは第2次大戦に従軍して撃墜され、捕虜にされた経験を持つ。