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 先頃可決成立した我が国の特定秘密保護法に対しては、日本新聞業界左半分を挙げての大反対キャンペーンが実施されたことは、既に何本かの記事にした(*1)。その大反対キャンペーンの最先鋒を担っていたのが毎日新聞であり、それ故に荒唐無稽珍妙奇天烈な反対論を社説として掲げてきたことも。

 その反特定秘密保護法大キャンペーンは未だ続行中なようであり、それ故に下掲の通り毎日新聞が「自民党の反特定秘密保護法報道に対する反論」を非難する社説、言わば「反論の反論」を掲げている。
 
 「反論の反論」自体は慶賀すべき事と言って良かろう。それは、少なくとも言論の自由の発現であり、建設的な議論の端緒となる、少なくとも可能性を秘めている。
 
 無論、その「反論」にせよ、「反論の反論」にせよ、ある程度の論理性と整合性を有していれば、だ。
 
 さて、その毎日新聞の「反特定秘密保護法報道に対する自民党の反論に対する反論」は如何ばかりかと言うと…まあ、御一読の程を。

 

<注釈>

(*1) リストは後掲 
 
 
【毎日社説】社説:秘密法の報道 自民の反論は筋違いだ
毎日新聞 2013年12月19日 02時35分
http://mainichi.jp/opinion/news/20131219k0000m070111000c.html
【1】 臨時国会で成立した特定秘密保護法をめぐり、自民党が「誤った新聞報道への反論」と題する文書を作成し、党所属国会議員に配った。
 
【2】 反論は、毎日、朝日、東京3紙が取り上げた同法の問題点を指摘する23本の記事や社説の記述について「事実に反します」と断定している。
 
【3】 強引な論法による反論が少なくない。同法に反対する報道について「一部の新聞は誤情報を流して国民を不安に陥れています」と、決めつけているのも見過ごせない。
 
【4】 国会で審議される法案は、賛否分かれるものが多い。少数意見や批判意見に謙虚に耳を傾け、よりよい内容をめざすのが、民主主義の下での議会や政党の姿ではないのか。
 
【5】 党内向け文書とはいえ、有権者に対する説明に使われるものだ。自民党は筋違いの反論をするのではなく、拙速審議で残された同法の問題点に真剣に向き合ってもらいたい。
 
【6】 毎日新聞の報道に関する反論の一例を挙げる。「国家機密の漏えいに厳罰を科すことで、官僚による情報の『囲い込み』が拡大する懸念が国会審議で浮かんできた」との記事だ。反論は「特定秘密は、法律の別表に限定された事項の情報に限って行政機関の長が責任を持って指定するものであり、指定は(有識者で作る)情報保全諮問会議の意見を反映させた基準に基づいて行われます」として、囲い込みは「ありえません」と結論づけた。
 
【7】 私たちは別表の規定ぶりが拡大解釈可能で、行政機関の長が恣意(しい)的に指定を広げる恐れを指摘してきた。さらに、諮問会議は基準作りに関与するだけで、個々の指定をチェックできないと、その限界も言ってきた。いずれも、国民の不安が大きな点だからだ。だが、反論は官僚が都合良く指定をする余地がないかのように説明しているに過ぎない。
 
【8】 そもそも、政府は身内のチェックの限界を認めたゆえ、成立直前に矢継ぎ早に複数の第三者機関を提案し、成立後は国会の監視組織設置の動きまで出てきたのが実情だ。自民党の反論によれば、そうした見直しさえ必要ないかのようだ。
 
【9】 安倍晋三首相は9日の記者会見で「もっと丁寧に時間をとって説明すべきだった」と述べた。国会審議で細部を詰め切れないまま最後は力で押し切ったことへの反省ではなかったのか。
 
【10】 正確な報道をするよう報道機関は慎重を期しているが、反論や指摘には謙虚に耳を傾けたい。ただし、意図的な誤情報で社会不安をあおっているかのようなレッテル貼りは、明らかに事実に反する。
 
【11】 政権与党がこのような姿勢をとっていては、前向きな議論さえ封じ込めてしまう。

原理主義的傲岸さ

 さて、如何だろうか。

 新聞が、かつては謳われ、目指していた(*1)ような「オピニオンリーダー」と言う役割を果たせなくなって/期待されなくなって、「既に久しい」と私(ZERO)は断じている。左様断じる理由の一つは、新聞社が新聞社の主張として掲げる社説のレベルの低さと軽さだ
 
 無論、かつての新聞社説とて、名文名調子ばかりでは無かったろうし、駄文駄説も数多あっただろう。それでも「○○新聞の社説」と言うのは一定のステータス/権威を持っていたと、漠然としておりある処から過去は間接的でさえあるが、「感じて」いる。それ故にこそ現在の新聞社説をアカ新聞含めてモニターもし、本記事はじめとする数多の記事にもしている。
 
 それでも「やはり、最早新聞はオピニオンリーダーたろうと言う意思・意図・意欲を放棄した/放棄せざるを得ない のだな」と改めて痛感せざるを得ないのは、上掲社説の様な「レベルの低い主張」が「社説」であるが故。くどい様だが上掲社説は、沖縄二紙の様なローカル紙ならぬ全国紙、それも世界でも発行部数では有数の毎日新聞の社説である。
 
 なにしろ上掲毎日社説は、タイトルを「秘密法の報道 自民の反論は筋違いだ」とし、毎日はじめとする日本新聞業界左半分(*2)あげての反特定秘密保護法反対キャンペーンを正当化し、
 
1〉自民党は筋違いの反論をするのではなく、拙速審議で残された同法の問題点に真剣に向き合ってもらいたい。
 
とまで断じている。俎上にあげたのは、自民党の「誤った新聞報道への反論」と題する文書だそうだが、上掲毎日社説全部で11のパラグラフの内「反論の反論」になっているのはパラグラフ【6】【7】【8】のみ。おまけしてもパラグラフ【10】【11】が追加になる程度だ。
 
 パラグラフ【6】【7】【8】では、
 
2> 「特定秘密は、法律の別表に限定された事項の情報に限って行政機関の長が責任を持って指定するものであり、
3> 指定は(有識者で作る)情報保全諮問会議の意見を反映させた基準に基づいて行われます」として、
4> 囲い込みは「ありえません」と結論づけた。
 
と言う自民党「誤った新聞報道への反論」に対し、
 
(1) 行政機関の長が恣意(しい)的に指定を広げる恐れ
 
(2) 諮問会議は基準作りに関与するだけで、個々の指定をチェックできない
 
を以って「反論の反論」としているが…こりゃ、端的に言って水掛け論であろう。<1>「強制機関の長による特定秘密指定」<2>「諮問会議は特定秘密指定基準にのみ関与をどこまで信用するかと言う。

 少なくともこの二つが「情報囲い込みを抑止する」のは間違いない。自民党「誤った新聞報道への反論」にある通り「ありえない」と断ずるには議論の余地はあろうが、「情報囲い込みを糾弾する」記事・社説に対してはタイトル通り「誤った新聞報道への反論」にはなっているし、上掲毎日社説の言う「筋違いな反論」にはなりそうにない。
 
 さらに、上記(2)については、「個々の指定をチェック」の意味・意義を全く軽視している。「個々の指定をチェック」するには、特定秘密に指定される項目や内容を諮問会議が熟知しなければならない。情報保全諮問会議を「特定秘密取扱者のみで編成する」ならばそれも可能であろうが、そうなると「有識者よりなる」と言う訳にはいかない。「何が秘密かも秘密です」とは世上冗句の種にされて居るが、冷静冷徹考えれば、「秘密とはそういうモノ」だ。

 少なくとも、「広く有識者よりなる情報保全諮問会議」にて「個々の指定をチェック」させる訳には行かないからこそ「特定秘密」なのであろう。
 
5>  政府は身内のチェックの限界を認めたゆえ、
6> 成立直前に矢継ぎ早に複数の第三者機関を提案し、
7> 成立後は国会の監視組織設置の動きまで出てきたのが実情だ。
 
と言うパラグラフ【8】に至っては噴飯ものだ。「複数の第三者機関」や「国会の監視組織」は「拙速審議で残された同法の問題点に真剣に向き合った結果」と評価できないのは、「自民党政権の実施する修正は全て改悪または無効」と言う原理主義的傲岸さゆえ、と考えないと、得心が行かない。一体、どんな修正をしろと…原理主義者には、聞くだけ野暮か。
 
 だが、そんな原理主義的傲岸さばかりの社説では、「反論の反論」とは認め難い。精々が泣き言・繰り言・浪花節でしかなかろう。
 
 更には、上掲社説の〆にあたるパラグラフ【10】【11】
 
8>  正確な報道をするよう報道機関は慎重を期しているが、反論や指摘には謙虚に耳を傾けたい。
9> ただし、意図的な誤情報で社会不安をあおっているかのようなレッテル貼りは、明らかに事実に反する。
 
と、高らかに宣する傲岸さも、原理主義ゆえであろう。上記の通り自民党安倍政権は特定秘密保護法に関する与野党協議も実施し、相応に法案修正もしている。その自民党安倍政権による法案修正を尽く無視或いは蔑にするか、「特定秘密保護法そのものの欠陥」にすり替える社説ばかり、毎日新聞は並べ立てている。これで報道記事の方に些かでも「少数意見」たる「特定秘密保護法擁護論」でも入っていれば、上記8>「報道機関は慎重を期している」と自称出来るかも知れないが…ああ、アリバイ作りの「報道記事」ならどこか隅の方にすでに用意してあるのかも知れないな。だがそれを以って「意図的な誤情報で社会不安をあおって」いないと言う主張は、上記9>「明らかに事実に反する。」とは、毎日新聞では言わないようだな。いや実に恐るべきは原理主義ナリ。
 
 挙句の果てが〆の一文。
 
10> 政権与党がこのような姿勢をとっていては、前向きな議論さえ封じ込めてしまう。
 
 政権与党の姿勢なんぞより、マスコミの報道姿勢の方が「議論封じ込め」には、遥かに有効であろうが。

 

<注釈>

(*1) 少なくとも建前上/理想的には。

(*2) プラス日経