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首相の靖国参拝については、先行記事で朝日新聞と東京新聞の社説を取り上げ、朝日新聞の「政教分離」と称する「無宗教の新たな追悼施設」論も、東京新聞の「無宗教の追悼施設またはA級戦犯分祀」論も、纏めてブッタ斬った(※1)ばかりであるが、「三アカ新聞」には数えていないものの毎日新聞だって負けてはいない。こちらは、ただ単に「A級戦犯分祀論」であるばかりではなく…
<注釈>
(※1) 「無宗教で追悼」、やれるものならやって見ろ
毎日社説 :靖国参拝 首相は見送り継続を
毎日新聞 2013年08月16日 02時31分
http://mainichi.jp/opinion/news/20130816k0000m070092000c.html
【】はZeroが振ったパラグラフ番号
【1】 安倍晋三首相は終戦記念日の15日、靖国神社参拝を見送り、自民党総裁名で同神社に玉串料を納めた。
【2】 靖国が近隣外交を進める上での大きなネックになっている今、大局的な判断と評価したい。玉串料は私費で、自民党総裁特別補佐の国会議員が代理で納め、「自民党総裁 安倍晋三」と記帳したという。私費であれば政教分離上の問題は生じない。第1次内閣当時に参拝しなかったことを「痛恨の極み」と繰り返し明言していただけに、参拝期待の支持者向けの配慮として理解する。「戦没者への感謝と尊崇の念」は私たちも共有するからだ。
【3】 靖国が外交問題になって久しい。中国、韓国からの反発だけではない。安倍政権になってからは、同盟国の米国からも、中韓との行き過ぎた関係悪化を懸念する声が届いている。日本の戦後は、A級戦犯を処刑した東京裁判を受諾した1952年のサンフランシスコ講和条約の発効でスタートした。そのA級戦犯を合祀(ごうし)した靖国に首相が参拝することは、中国から見ればあの戦争の肯定につながり、米国からは、米主導で作られたサンフランシスコ体制に対する挑戦と受け取られる可能性がある。
【4】 靖国問題は、歴代日本政府が手をこまねいているうちにかくも複雑で難しい外交問題になってしまった。軽々に扱うべきではない。まして、日中関係は尖閣問題で暗礁に乗り上げ、首脳会談の糸口もつかめていない。同じ価値観を共有しているはずの日韓関係も歴史認識問題でかつてない関係悪化を来している。その意味で参拝見送りは当然とも言える。
【5】 問題は、今後どうするか、にある。秋には同神社の例大祭への出席問題、来春には春の例大祭、そして、毎年8・15への対応を求められる。長期政権を望むのであれば抜本策を講じるべきではないのか。
【6】 過去にもいくつかの策が提起され検討された。わかりやすいのが、いわゆるA級戦犯の分祀論である。中曽根康弘政権時から議論されてきた。昭和天皇が参拝を控えた背景にこのA級合祀があったとの証言もあり、保守陣営にも一定の支持者がいる。小泉純一郎政権時には無宗教の国立追悼施設の建設案もあった。
【7】 そもそも靖国問題とは何なのか。A級合祀争点化の経緯はどうか。解決の出口は他にないのか。こういった問題について調査、検証、提言する有識者会議を作るのも一案だ。最低限その結論が出るまで首相は参拝を見送ることだ。悪循環を断つ政治的知恵の出しどころである。
【8】 中韓両国にも注文がある。安倍政権の対応を長い目で見てもらいたい。浅薄なナショナリズムの応酬だけは避けようではないか。
最後の一行は、「アリバイ作り」と見た
さて、如何だろうか。
先述したとおり、毎日新聞は、「A級戦犯分祀論」がお気に入りのようだが、「無宗教の追悼施設」論にもパラグラフ【6】で触れている
尤も、先行記事にも述べたとおり、「無宗教で追悼」なんて言語矛盾を平気で唱える輩は、「追悼する気が全く無い輩」にしか過ぎない。同様に「無宗教の追悼施設」は「誰もがわだかまりなく追悼できる場」なんかには絶対ならず、「誰も追悼しない場」にしかならない。「無宗教の」という事は「霊魂を信じるな」という事であり、文字通りの「仏作って魂入れぬ」新たな追悼施設が、他のものに何ぞなり様が無い。
かてて加えて、毎日新聞が「A級戦犯分祀論」を唱える理由が、これまたパラグラフ【6】で、
1〉 過去にもいくつかの策が提起され検討された。わかりやすいのが、いわゆるA級戦犯の分祀論である。
2〉 中曽根康弘政権時から議論されてきた。
3〉 昭和天皇が参拝を控えた背景にこのA級合祀があったとの証言もあり、
4〉 保守陣営にも一定の支持者がいる。
とある。即ち上記2〉「中曽根政権時からある」 上記3〉「昭和天皇が参拝を控えた背景にこのA級合祀があったとの証言」 上記4〉「保守陣営にも一定の支持者」の三点が、毎日新聞の「A級戦犯分祀論」根拠、らしい。
だが、上記2〉は、「古くからある」でしかなく、「古いが未だに実現しないアイディア」でしかない。「古くから議論されながら、未だ圧倒的な説得力を持つ結論に至らない」でもある。それが、根拠になろうか。少なくとも、随分消極的な、弱い根拠だ。
上記4〉は、我が国が言論の自由を一定程度確保した自由主義国家である事を無視している。「保守陣営」ったって、阿呆も居れば、おっちょこちょいも居よう。「A級戦犯分祀論」を支持してしまうバカが保守陣営に居るからとて、これまた根拠になろうか。そりゃ「左翼の中の首相靖国参拝支持者」よりは比率が高いのかも知れないが。
上記4〉「一定の支持者がいる。」と言うのも、実に巧妙と言うか、姑息な表現だ。「相当に多数」でも「極少数」でも、この表現なら可能だから。とは言え、いくら数が居たって、よし「保守陣営の主流」であろうとも、バカでおっちょこちょいである事に変わりは無い。「A級戦犯分祀して、第二靖国神社を作れば、元の靖国神社に参拝しても中国や韓国は文句をつけない。」なんて信じられるのだから。全くおめでたい。
上記三点の内、最大の問題点は上記3〉「昭和天皇が参拝を控えた背景にこのA級合祀があったとの証言」であろう。
まず第一に、上記3〉は「証言もあり」と言うから、伝聞証拠である。尚且つ昭和天皇陛下は当然ながら既に故人であるから、その「証言」は裏の取り様も無ければ、反対尋問も出来ない。普通の法廷ならば、証拠として取り上げられないレベルの「証言」だ。ああ、東京裁判は別だが、あれは「普通の裁判」ではないぞ(※1)。
第二に、「証言もあり」と言うならば、A級戦犯筆頭とも言うべき東条英機元首相/陸相に対する昭和天皇陛下の御信任は誠に篤かったとの「証言もある」。この証言に従えば、「A級戦犯合祀が昭和天皇陛下が参拝を控えた背景にある」と言うのは極めて怪しくなる。
第三に、そもそも、「昭和天皇が参拝を控えた背景にこのA級合祀があった」事が「A級戦犯分祀」を決定する根拠たり得るのか、と言うのに多大な疑問がある。今は亡き昭和天皇陛下の、れっきとした親筆による御遺言とでもいうのならばまだしも(※2)、上述の通り怪しげな伝聞証拠・証言によって決められる/決まるべき事項であろうか。
確かに昭和天皇陛下は大東亜戦争(太平洋戦争)当時も在位されており、東条英機元首相/陸相はじめとする所謂「A級戦犯」とも個人的にも交際があり、押しも押されもせぬ大東亜戦争(太平洋戦争)当事者である。それに何てったって先代の天皇陛下なのだから、それこそ「保守陣営への影響力」は底知れないものがあろう。
だが、それ故にこそ、天皇陛下の政治利用は、厳に慎むべきなのではないか。
さらには、上記3〉の通り、「背景にあったとの証言」などと曖昧な伝聞証拠を以って「A級戦犯分祀論」根拠とするのは、正に「天皇陛下の政治利用」なのではないか。
ああ、「政治利用」とされないような「逃げ道」は作ってあるようだな。「との証言もある」と言うのは、上述のような反対の証言に対しても「”背景にある”と断言した訳では無い」と、証言者にその責任を負わせられる。証言者にしたって「背景にある」と証言しているだけだから、昭和天皇陛下の言葉の調子だとか雰囲気だとか、今となっては検証も再現もしようもないモノを根拠として「証言する」事が出来る。最悪の場合も昭和天皇陛下は既に故人だから、「ああも言った」「こうも言った」と、いくらでも捏造できるし、責任を負わせられる。
「毎日新聞は、そんな姑息、不敬な事はしない!」と断言出来れば、私も嬉しいのだが、上掲社説最後の一文が、そんな「毎日新聞に対する信頼/期待」を、モノの美事に粉砕してくれる。
5〉 中韓両国にも注文がある。安倍政権の対応を長い目で見てもらいたい。
6〉浅薄なナショナリズムの応酬だけは避けようではないか。
上記5〉~6〉の言って居る事自体は、私(ZERO)でも賛同できる。だが、最後の最後だけ、取ってつけたような「中韓両国に付けた注文」上記5〉~6〉が、「中韓両国に対しても、言うべきことは言う」と主張するための姑息な「アリバイ作り」と思わないのは、余程の「毎日新聞ファン」だけだろう。
如何に、毎日新聞。
<注釈>
(※1) 事後法によって裁かれ、不都合な証拠は却下され、反対尋問も極めて限定的だった。「裁判の形を借りた復讐・私刑」と言う評価が、至当であろう。
(※2) そんなモノが平成の御代も20年以上数えて「明らかになる」とか「発見される」とか言うも妙な事だが。