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前半要約


 上掲記事前半の一問一答を私(ZERO)なりに要約しておこう。

 【Q1】「”健康にただちに影響はなかった”と言う表現は誤解を招くのではないか」と言う批判。これに対しバイス教授は懇切丁寧に、誤解をなくすように回答し
ている。

 【Q2】「低線量被曝の影響は現出するまで何十年もかかるのに”健康にただちに影響はなかった”と言うのか」と言う、同じ表現に対する批判。これに対しバイス教授は、低線量被曝の影響は「検出されないぐらい小さいだろう」と断言し、モニタリング調査は「科学的と言うよりは政治的なモノ」と言明している。

 【Q3】「リスクを検知できないことと、リスクがないこととはまったく違う」と言う「他の専門家」の言を借りての…やっぱり批判だよなぁ。これに対しバイス教授は、低線量被曝の影響について三つの説がある事を説明し、「今後半世紀にわたって議論され続けるだろう」と、前半記事タイトルにもなった回答をしている。

 なんだか批判しても全く歯が立たないように私(ZERO)には見えるが、気にせず後半に行くと・・・
【WSJ】国連科学委議長に聞く(後編)=小のう胞と甲状腺がんの関係は未解明
http://jp.wsj.com/article/SB10001424127887323809104578611034281393020.html?mod=japan_newsreel

 7月5日付の本コラム(前編)では、東京電力福島第1原発の事故が住民の健康に「いかなる差し迫った影響も及ぼさなかった」とする国連科学委員会(UNSCEAR)の報告書(秋に正式発表予定)の概略について、ヴォルフガング・バイス議長の見解を紹介した。後編では、日本政府がデータをすべて提供したのか、UNSCEARの推定被ばく線量と世界保健機関(WHO)の推定線量にはなぜ差があるのかなど、一歩踏み込んだ問題についてリポートする。

※【】はZeroによる通し番号

【Q4】――ヨウ素131など、事故直後、十分な公式データが計測されなかった放射性物質もある。また、規制当局の速記録(2011年9月9日、内閣府原子力安全委員会「放射線防護専門部会――原子放射線の安全に関する国連科学委員会(UNSCEAR)原子力事故報告書、国内対応検討ワーキンググループ」)を見ると、ありのままのデータを提供することに及び腰の規制当局者などもいたようだが。


【A4】 「時間はかかったが、(日本側から)必要なデータはすべてもらった。必要なデータの長いリストを最初に提出し、その後、追加の依頼を何度も行った。28カ国から入手したものや国際機関から提供されたものなど、日本政府とは無縁のデータも数多く使った。日本のデータのみに頼っていたら、政府の言うことしか信じないのかと、世間から非難を受けていただろう。


 ヨウ素131や132など、もはや当時に戻って影響を正確に測り直すことができない放射性核種については、最善の方法で、被ばく線量を推定した。


 一方、ヨウ素129は、半減期が半永久的に続き、非常に計測しにくいが、将来的にやるつもりだ。その結果を、今後何十年も計測可能なセシウムと比較することで、もはや計測不可能なヨウ素131に関する知識を深めることができる。これが、(ヨウ素131などの)モデル評価と実測のズレを減らすのに役立つだろう」


【Q5】――今年の春、WHOは福島の住民の推定被ばく線量を発表したが、UNSCEARの推定線量より高かった。


【A5】 「理由は、いたって簡単だ。WHOが使ったのは、事故後3カ月間、つまり11年夏までに計測されたデータであり、同機関の発表は「初期線量評価」と呼ばれるものだからだ。WHOは、ほとんど情報がなかったため、モデルに依拠せねばならなかった。そのモデルとは、パラメータ、つまり何かを算出するために必要な推定に基づいたものだ。同機関に唯一可能だったのは、被ばく線量の幅――下限と上限――を算出することだった。そして、その上限を使って健康リスクを推定した。


 ところが、そうした初期のデータには、住民の避難や(放射能汚染)食品の規制など、緊急対策を講じるために設定された数値などが含まれており、科学的データとは言えない。注意深く吟味し、分析すれば、使用可能なデータではあるが。


 一方、UNSCEARは、2年近くに及ぶデータを基に調査を行った。WHOの報告書よりデータベースの量で勝っているため、(線量やリスクの)不確実性が少ない。だから、被ばく線量の幅も推定健康リスクも小さくなる。研究の科学的なクオリティーがどうのこうのという話ではなく、実測データの差の問題だ。


 UNSCEARは、たとえば5年後など、何年かたった後で、また研究を行うつもりだ。チェルノブイリ事故の影響についても、まだ研究を続けている」


【Q6】――5月末日に行われたUNSCEARの記者会見で、教授は、超音波による福島の子供たちの甲状腺スクリーニング検査では、高率で、のう胞やしこりが見つかったが、香港では、もっと高率で子供たちの甲状腺にのう胞やしこりが見つかったと述べている。


【A6】 「福島では、事故直後、被災地の子供たち1080人を対象とした甲状腺検査
が行われたが、しこりが見つかる率は非常に低かったため、リスクなしということ
で、検査を続行しなかった。


 だが、その後、1080人を対象にした、この(特定の地域や集団の健康などを調べる)コホート調査には、被ばく線量が高い子供たちが含まれていないのではないかといった懸念が指摘され、超音波検査などを行うことになった。本来なら、当初から3万~4万人の子供を対象に検査を実施すべきだった。


 この超音波検査には問題がある。まず、事故による放射線の影響を受けていない、被災地から遠く離れた県内の子供たちには実施しなかったことだ。実施していれば、被ばくした子供たちの甲状腺検査の結果と、そうでない子供たちの検査結果を比較し、健康リスクを分析することができたのだが。


 だから、チェルノブイリの子供たちの検査結果と比較せねばならなくなったわけだが、非常に精度の高い新技術である超音波検査と違い、27年前の技術では小さなしこりは発見できなかった。そのため、チェルノブイリでは、福島の場合より、しこりははるかに大きいが、数は少なかったことから、福島では、なぜ小さなしこりがこれほど多いのかという懸念が生まれている。


 だが実際、甲状腺がんと関係があるのかどうかは、まだ分からない。香港や韓国では、もっと高率で子供たちの甲状腺にしこりが見られた」


【Q7】――教授は、記者会見で、今後、福島では、より多くの甲状腺がんが発見されるだろうとも述べている。


【A7】 「おとなの場合も子供の場合も、甲状腺スクリーニング検査で健康状態を精査することで、以前なら見つからなかったがんが発見されるからだ。『スクリーニング効果』である。とはいえ、今のところ、福島で報告されているがんの発症数は、自然環境でがんになる基礎的リスクに準じたレベルだと考える。


 低線量被ばくによるがんの発症リスクが、絶対的な意味でどのくらい高いのか、という問いに答えるのは難しい。線量が低ければ低いほど、不確実性が増す。リスクはないと言う一部の専門家と違い、われわれは、あると考えてはいるが」

学者は学者なるも、記者は記者ならず。


 さて、如何だろうか。

 冒頭部分の続きとして、上掲一問一答も私(ZERO)なりに要約してみよう。

 【Q4】は端的に言って「データが不十分なのではないか?」と言う、鋭いかどうかは兎も角痛烈な批判。これに対する【A4】は、懇切丁寧に「データは充分である」と答え、「日本のデータのみに頼っていたら、政府の言うことしか信じないのかと、世間から非難を受けていただろう。」と言い添えている。

 【Q5】「WHO報告の被ばく線量の方が、国連報告よりも高い。」と言う、これも鋭いかどうかは兎も角強力な批判。だが【A5】「WHO報告の方が初期3カ月のデータのみに基づき、誤差が大きい事。」を単純明快に説明している。

 【Q6】は…要約しにくいな…「バイス教授自身が福島の子供たちに甲状腺の小のう胞やしこりが見つかっている事を認めているが、香港の方がその率は高いと言った。」これに対し【A6】は懇切丁寧に、①甲状腺の小のう胞やしこりと甲状腺がんの関係は不明である。 ②甲状腺の小のう胞やしこりは、香港や韓国の方が高い率で見つかっている=福島原発事故の影響より地域差の方が大きい ③チェルノブイリ事故当時の技術では、甲状腺の小のう胞やしこりの小さなものは検出できなかった。ことなどを説明している。

 【Q7】「バイス教授自身”今後、福島では、より多くの甲状腺がんが発見されるだろう”と認めた」。これに対し【A7】「検査するのだから、発見数が増えるの当たり前だ」

1> とはいえ、今のところ、福島で報告されているがんの発症数は、自然環境でがんになる基礎的リスクに準じたレベルだと考える。

と、ご丁寧に捕捉もしている。

 上掲記事のバイス教授【A7】の〆は、以下のパラグラフである。

2>  低線量被ばくによるがんの発症リスクが、絶対的な意味でどのくらい高いのか、という問いに答えるのは難しい。
3> 線量が低ければ低いほど、不確実性が増す。リスクはないと言う一部の専門家と違い、われわれは、あると考えてはいるが」

 さて、ここで是非先行記事「WSJ+肥田美佐子=ダメなのか? 」を参照いただきたい。上掲記事に先行する肥田美佐子記者のWSJ紙記事で、米専門家「小さいが発がんリスクある」―影響なしとの国連原発調査受け  http://jp.wsj.com/article/SB10001424127887323614804578530731682130330.htmlをぶった切った記事だ。特に、WSJ紙記事でやはりインタビューを受けたコロンビア大学医学大学院のデービッド・ブレナー教授(同大学放射線医学研究センター所長)の回答を参照頂きたい。

 私(ZERO)の見る処、ブレナー教授と上掲記事のバイス教授は、ほぼ同じ事を言っているのだ。即ち、「福島原発事故による低放射線被ばくの影響は、検出できないぐらい小さいだろう」であり、「影響は小さいが、ある」である。その意味で、両教授とも上掲記事前半【A3】でバイス教授が紹介した「低放射線量被爆の影響三学派」の同一学派、それも「低放射線量被爆のリスクはあるとする学派」に属している。
 と同時に、両教授とも「自説は決定的な証拠を有していない」と認めている。実に学者らしい、美事な態度である。

 それに対し、WSJ紙の肥田美佐子記者は…先行記事と言い、今回記事と言い、福島原発事故による低線量被曝によるリスクはある!」と、書きたい、言わせたいと言う意図が見えて仕方がない。

 そんな意図、予断を以って記事を書いて、真面な報道記事になるだろうか。

 如何に、肥田美佐子記者。

 如何に、WSJ紙。