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中国共産党の「権威ある反論」ではないかも知れない。そもそも、あまり反論になっていない


 さて、如何だろうか。

 時系列を少し整理すると、「上海株暴落」が発生したのは上掲記事②にある通り6月24日。上掲記事①は、「上海株暴落を受けて」と考えてよさそうな、ほぼ1週間後の人民網記事。清華大学金融学部の李稲葵主任なる者が、どれぐらい「偉い学者」なのかは判らないが、人民網の記事であるから「中国共産党の御用学者」としての発言であることは、一寸疑いようが無い。そのちょっと後になるのが上掲記事②の石平氏コラム。一読して明快だが、上掲記事②は「上海株暴落後の中国経済」を悲観して見せ、一方上掲記事①は「世界が中国経済を見誤っている」と強弁している。

①1〉  中国経済の信用残高と債務残高の合計がGDP比で100%から200%へと倍増しているため、デレバレッジの過程に入るのは必至で、
①2〉 この過程は経済・社会に動揺または衝撃を与え、成長が減速するというのがその(中国経済にリスクありとする)理由だ。
①3〉 これはロジックは大変明晰だが、正しくない」

と強弁する清華大学金融学部の李稲葵主任は、その理由を三点あげている訳だが…

 理由(1)「世界金融危機の発生以来の世界の基本的趨勢」と言うのは、要は借金しているのは中国共産党政権ばかりじゃない。みんな借金してるじゃないか。という事。私にはどうにも判らないんだが、これは「世界の中国経済に対する読みが誤っている」と言う、「反論・弁明」になるのだろうか。「中国経済は現在の世界経済における重大なリスクエリアだと言い続け、最大のリスクだとすら言っている。」国際投資家は、「中国以外の政府が抱える借金」を、知らない訳が無いではないか。
 無論、「中国以外の国の借金」を指摘強調することで、「中国の借金」を軽視させることはできるかも知れない。それによって国際投資家の中国評を変えよう、と言うのが理由(1)の意図、なのであろうが…他国の借金を強調したとて、中国の借金が1元だって減る訳ではない。要は理由(1)は、誤魔化し以外の何かとは思えない。

 理由(2)「中国の都市化需要は永遠である」と言う宣言。

①4〉 このため中国経済は今後一定期間も、一定の成長速度の空間と潜在力を維持する。

と言うのだから、「永遠である」は言い過ぎかも知れないが、「当面の間都市化需要は続く」と言う、実に勇ましい宣言だ。飲用どころか工業用水にも使えない程酷い水質汚染も、渡洋して我が国への飛来さえ観測できるPM2.5も、「都市化需要」であり「投資を必要としている」のは事実だろうが、都市化とそれに伴う公害も、景気対策だと言う主張である。他に解釈があろうか。

①5〉成長軸は都市建設、地下パイプ網建設、大気汚染対策、水の処理等々を含む準公共財にあり

とまで明言しているのだ。この「ロジック」に従うならば、今盛大に水質も待機も汚染しているのは「都市化需要を生み出す景気刺激策」という事になる…そりゃ水質汚染・大気汚染が止まらない訳だ。
 百歩どころか万歩程譲って、左様な非人道的な景気刺激策で都市化需要が拡大再生産されたとしても、それは「金融需要がなお拡大する」としか言っていない。「金融需要に必ず資金が供給される」とは限らないし、実際に資金不足が起きたがための上海株暴落、と上掲記事②でも報じられている。第一、水質汚染も大気汚染も景気刺激策」と公言されてしまうような国で、水質汚染対策・大気汚染対策に投資して「儲かる」なんて、私(Zero)には全く想像出来ない
 つまりは、「中国の都市化需要」は「当面続く」かも知れないが、そこへ健全な資金が供給されるとは到底思えない。それは、「中国経済リスクのさらなる悪化」にしか、なりそうにないのである。

 極めつけは理由(3)「中国の金融・経済システム改革を、遅くとも今年10月までに決定する…流石は「3年前の5月までに普天間基地問題解決」と辞任直前まで吹聴し続けた鳩山由紀夫の親分、と言うべきか。「改革を通じてこうした問題を解決」「不良債権を取り除き」「地方財政も再編を始動」「比較的確かな、持続可能な新税源」「民営経済の大規模な規制緩和」などの改革を、全部まとめて議論し、その議論を、

①6〉7月、8月、9月、さらに第4四半期の10月まで続ける必要があるかもしれない。

と言うのだから、遅くとも10月末には一連の改革についての議論は完了し、何らかの改革案が完成すると、言うのである。
 まあ、まずはその「金融・経済システム改革議論」が7月に始まるかどうかが、大いに見ものではあるが。
 無論周知の通り、中国共産党政権は一党独裁の非民主主義的政府であり、その分意思決定が民主主義より速いという事は、あり得よう。だが上掲記事②の言う金融・経済システム改革は、不良債権を片付け、地方財政を再編し、新たな確実な税金を定め、大規模な規制緩和まで行う、既得権益を相当に損ね、新たな利権を生み出しそうな「改革」だ。新たな利権には挙って賛成が集まろうが、損なわれる既得権益には相応の抵抗があろう。上意下達を旨にするとしても、果たして「上意」すら、10月までにまとまるかどうか。
 なんにせよ、こちらも10月までには何らかの「結果」が見える筈だ。実に楽しみな事だ。

①7〉 一連の改革の動きとシグナルが出て、その時には中国経済に対する世界の解釈は多少変わるだろう。

と言う、清華大学金融学部・李稲葵主任の予言及び人民網記事の当否が判明するのだから。


勝敗は明白

 翻って上掲記事②は、「例によって例の如く」とも言える、石平氏の「中国経済崩壊予言」である。先述の通り、上掲記事①は上掲記事②より先行するから、「清華大学金融学部の李稲葵主任は石平氏に反論したもの」ではない。言わば「後出しジャンケン」とも言い得る。

 だが、先述の通り「清華大学金融学部の李稲葵主任」の「中国経済が世界の読みと異なり経済リスクなく順当に発展する」理由が、ほとんど流になっていないが故に、勝敗は明らかだろう。石平氏の勝ち、だ。