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 「合従連衡」と言うと「その時の利害に従って、結びついたり離れたりすること。また、その時勢を察して、巧みにはかりごとをめぐらす政策、特に外交政策のこと。」を意味する四字熟語ながら、元は支那大陸最初の統一王朝・秦帝国成立以前の戦国時代に遡る史実。後に統一王朝になってしまうぐらい勢力拡大した秦に対し、他の国々で対秦大同盟を組んで対抗しようというのが「合従策」。これに対し、大国となった秦に対し各国が個別に「二国間安全保障」を確立しようというのが「連衡策」。史実では合従策=対秦大同盟が破れて「秦による中華統一」=秦帝国誕生に終わった訳であるが、それは古代支那大陸の話。

 時は流れて、21世紀は現代。軍事費二桁成長の軍拡路線を驀進する人民解放軍を擁する中国共産党政権に対しても、「合従策は有効である」と、人民日報海外版コラムの行間から読める。

【人民日報海外版コラム】安倍氏の「結束して対抗」は必ず挫折する
http://j.people.com.cn/94474/8323862.html

 日本の安倍晋三首相は先日日本メディアで「中国が度々歴史問題を取り上げるのは、釣魚島(日本名・尖閣諸島)海域での海洋権益の拡大が主たる目的だ」と公然と述べた。安倍氏はさらに一歩踏み込んで「中国側は力による現状変更を試みている。これに対して日本は妥協せず、中国と領土係争を抱える国々と連携して中国に対抗する」と公言した。(文:華益文・国際問題専門家。人民日報海外版コラム「望海楼」掲載)

  安倍氏のこうした発言は、歴史と領土という中日間の最大の核心的問題および日本の対中政策に関わり、中国側からしてみれば口から出任せで、白黒を逆さまにする、思い上がった発言以外の何ものでもない。安倍氏の誤った歴史観と首相に返り咲いた後の中国関連の言動を振り返ってみれば、こうした発言が決して一時の思いつきによるものではないことが難なくわかる。

  安倍氏は早くも1990年代から自民党のいわゆる歴史検討委員会に精を出して参与し、新版の歴史教科書を懸命に送り出し、日本の侵略の歴史を歪曲したうえ、その中核メンバーとなった。

  釣魚島など領土、海洋権益をめぐる中日間の争いにおいて、安倍氏はかつて中日間に釣魚島問題の棚上げ合意があったことを否認する前政権の立場を継承。釣魚島係争の存在を頑として認めないうえ、中日首脳の対話が実現できない責任を「一貫して対話に条件を設けているからだ」と中国側になすりつけている。

  安倍氏が歴史を歪曲し、中国の顔に泥を塗るのは、軍隊および戦争を行なう権利を再び保有し、かつての「輝き」を取り戻すべく、日本国憲法を改正し、日本をいわゆる「普通の国」に変えることが根本的目的だ。安倍氏からすると中国は、こうした「夢」を実現するうえで最大の「邪魔者」であり、日本の外交的苦境の最大の外的要因だ(※1)

  日本がこうした苦境から抜け出す、あるいは「包囲を突破」するための安倍氏の処方箋は、中国を牽制し、さらには「封じ込める」ことだ。そこで安倍氏は戦略構想「民主主義安全保障ダイヤモンド」を打ち出し、「価値観外交」を推し進め、「中国脅威論」を囃し立て、釣魚島問題で「妥協せず」の姿勢を示し、しかも就任早々からいわゆる「戦略的外交」に着手し、自ら取り組み、その外交構想「中国封じ込め」を実行に移した。安倍氏は現在、中国と領土係争を抱える国と連携して中国に対抗すると公然と主張している。まさか「8カ国連合軍」をやりたいとでも言うのか(※2)。

  安倍氏は不安障害を患い、切羽詰まって取り得る手段は何でも試みてきた。半年余りが過ぎた。安倍氏の中国「封じ込め」の外交的布石はぼろが続出しており、「ひけらかす」ことのできる外交的進展をいくらかでも得たようには全く見えない(※3)。北東アジア地域では中米、中韓、中露の首脳がすでに会談を行い、緊密な意思疎通を継続している。安倍氏が最も信頼し重視するオバマ政権も現在、中国と協力の拡大、溝の管理・コントロールについて戦略的な対話と手配を行なっている。東南アジア地域では、ASEAN各国はいずれも日本の投資と援助を歓迎しているが、中国の領土主権に関わる問題や対中「包囲・牽制」問題において日本の側に立つ国はいくらもない(※4)。南中国海問題で中国との争いが最も多い2つの国のうち、ベトナムは少し前に国家主席が訪中したし、フィリピンは実力上の問題から「日本の中国牽制の拠点としての重任」を担うのは困難だ(※5)。南アジア地域では中印首脳はすでに対話と協議を通じて両国間の国境問題を処理し、両国関係の健全で安定した発展に影響が出ないようにすることを確認した。

  安倍氏は中国周辺にいくつか石を放り投げたり、数回呼びかけをしたりすることで、少しのさざ波や返事は得られるかもしれない。だが安倍氏自身も、それが心理的ニーズを満たすだけであることをよく分かっているだろう。「8カ国連合軍」の時代はとっくに過ぎ去った。中国と領土係争を抱える国と連携して中国に対立するとの発想にいたっては、なおさらに現実離れしている。

  中国の関わる問題において自他共に欺き続け、身の程知らずな妄想を抱く。これでは恐らく不安障害は悪化する一方だろう。中日関係の直面する深刻な問題を直視し、これ以上回り道をしないこと、ましてや「8カ国連合軍」をかき集める妄想など抱かぬことを安倍氏と日本側にお勧めする(※6)。
(編集NA)



<注釈>

(※1) 逆じゃないの? 中国が尖閣諸島侵略宣言「核心的利益」などと言いださなかったら、憲法改正は今ほども現実化しただろうか?そもそも、「日本を”普通の国”に変える根本目的」は、「外交的苦境」なんて引き起こしていないじゃないか。せいぜいが、「中韓と首脳会談が出来ない」と言うだけ。どこが、「苦境」なんだ? 

(※2) 意味:「8カ国連合軍をやられると困る」   じゃないのかね。

(※3) ならば、別にコラム使って攻撃するほどの事もあるまい。 

(※4) って事は、「幾らかはある」のだから、「ひけらかす」かどうかは兎も角、「外交的進展」は「あった」という事ではないのかね。 

(※5) そのフィリピンに提訴された国は、どこかね? 

(※6) 日本政府と日本国首相に「お勧めする」とは、いったい人民日報とは何様なのかね? 

人民日報が「合従策など無理だ。無駄だ。」と言っている。これをどう評価するか?

 さて、如何だろうか。

 最近の中国マスコミの御多分に漏れず安倍首相に対する悪意と罵詈雑言に満ち溢れた記事であるが、「ヘイトスピーチ」級の修飾語を除けば、言っている事は章題にした通り合従策(対中国包囲策)は無理であり、無駄である。としか言っていないのではなかろうか。その理由として縷々あげられているのは、

(1) 中米、中韓、中露の首脳がすでに会談を行い、緊密な意思疎通を継続している。
(2) 米国も中国と協力の拡大、溝の管理・コントロールについて戦略的な対話と手配を行なっている。
(3) 中国と協力の拡大、溝の管理・コントロールについて戦略的な対話と手配を行なっている。
(4) ASEAN各国は、中国の領土主権に関わる問題や対中「包囲・牽制」問題において日本の側に立つ国はいくらもない
(5) ベトナムは少し前に国家主席が訪中した。
(6) フィリピンは実力上の問題から「日本の中国牽制の拠点としての重任」を担うのは困難だ。
(7) 中印首脳はすでに対話と協議を通じて両国間の国境問題を処理し、両国関係の健全で安定した発展に影響が出ないようにすることを確認した。

と、こうなるようなのであるが…どうも「中国と首脳会談」をすれば「安倍首相の合従策は破られた」事になるらしい。実に全く大した自信ではあるな。それでも上記(4)で「ASEANの中の少数国」と、上記(6)でフィリピンは、「日本の側に立つ国」と認定されている訳だから、「合従策による対中国包囲網」には程遠いとは言え、少なくとも「ひけらかす」ことのできる外交的進展をいくらかでも得たようには全く見えない」と言う上掲記事にある「評価」が不当である事は、上掲記事自身が述べている。「ASEANの中の少数国とフィリピン」では、確かに合従策としては心許ないが、安倍政権発足から僅か半年。それ以前は対中追従しか考えないような民主党政権だったことを勘案すれば、「対中国大同盟の端緒」と見做すこともできる。否、上掲記事の通り「中国共産党の口舌=宣伝機関」たる人民日報が、わざわざコラムに取り上げて安倍首相及びその合従策を大非難しているのだから、「中国共産党としても看過しえない」と自白しているようなものだ。

1〉「8カ国連合軍」の時代はとっくに過ぎ去った。
2〉中国と領土係争を抱える国と連携して中国に対立するとの発想にいたっては、なおさらに現実離れしている。

 「8カ国連合軍」。このキーワードは上掲記事内に3箇所登場する。上記1〉の他は、

3〉 まさか「8カ国連合軍」をやりたいとでも言うのか。

と、その非現実性をまさかと嘲笑し、さらには上記1〉で「時代遅れをなじりつつ、最後のパラグラフで、

4〉 中国の関わる問題において自他共に欺き続け、身の程知らずな妄想を抱く。
5〉これでは恐らく不安障害は悪化する一方だろう。
6〉中日関係の直面する深刻な問題を直視し、これ以上回り道をしないこと、
7〉ましてや「8カ国連合軍」をかき集める妄想など抱かぬことを安倍氏と日本側にお勧めする。

と、態々「安倍首相と日本政府」に「8カ国連合軍と言う妄想を抱かぬ事」を「お勧め」している。解釈によっては何とも日本に対する「友愛」に満ち溢れた、「心温まる御忠告」という事になろう。鳩山由紀夫あたりなら、大喜びしそうだ。

 だが、私(ZERO)は鳩山由紀夫ではない。第一、安倍首相と日本政府に対するヘイトスピーチ並みの罵詈雑言にあふれた上掲人民日報コラムに「友愛」だの「忠告」だのを感じる訳が無い。

 であるならば、上記1〉~8〉意味するところは、殆ど自明だ。

 「中国共産党政権としては、安倍首相に8カ国連合軍を実現されては困る。
  また、その可能性は、あり得る(※1)。」

 上記2行目を断言するのは、正に上掲人民日報コラムが「8カ国連合軍」を非難攻撃した挙句に「安倍首相と日本はそんな妄想を抱くな」と「御忠告」しているが故。これが本当に荒唐無稽でそんな可能性は全くないと中国共産党政権が考えているならば、こんな「御忠告」はそれこそ無駄で、「安倍首相と日本が誇大な妄想を抱いて自滅する」のを待つだけで良い筈だ。

 そうはしなかったのは、「8カ国連合軍」実現と言う可能性を、無視しえなかったから。

 「義和団事件コンプレックス」とでも呼ぶべき精神状態なのかもしれない。だがこれを、利用しない法は無い。

 史実でも、対秦大同盟としての合従策は失敗したが、義和団事件に対し投入された「8カ国連合軍(※2)」は義和団と清軍を撃破し、少なくとも一定の成功を得ている。尚且つこのとき北京防衛で活躍し、一躍世界の英雄となったのは、我が日本軍と柴五郎少佐(※3)だ


<注釈>

(※1) と、少なくとも中国共産党は考えている。

(※2) イギリス・アメリカ・ロシア・フランス・ドイツ・オーストリア=ハンガリー・イタリア・日本 

(※3) 映画「北京の55日」では、米海兵隊指揮官・チャールトン・ヘストンの副官扱いだったが。