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 さて、如何だろうか。5日間連載社説と言うのは、東京新聞以外では滅多にお目にかかれない「力作」だ。それだけ「脱原発に力を入れている(※1)」という事。

 その、合計5日間の社説、上掲(1)~(5)を要約すると、以下のようになろう。
 
(1)福島原発事故現場をバス内から視察した。被ばく線量は、積算で21マイクロシーベルト。東京や名古屋の約300倍だった。

(2)福島原発事故によるメルトスルーは大事(おおごと)だ。(※2)

(3)福島原発事故後の汚染水に含まれる三重水素は、除去が難しく、放出への社会的合意が得られ難い。(※3)

(4)原発事故の炉心近くでは、高放射能環境で現用ロボットすら活動は困難だ。新型ロボットの開発が期待される。(※4)

(5)放射能汚染という災禍に於いて、原発と核兵器は同じだ。核兵器と人類は共存できない(※5)原発に代わるエネルギーはある(※6)。

…とまあ、百花繚乱敵と言うか「脱原発」以外あまり通底するものが無いというか・・・

 上掲(1)にしても、「被ばく線量、積算21μSV」と言うのは「東京や名古屋の約
300倍」と言うのは本当としても、仮に1年間毎日この「福島第一原発事故現場バス
ツアー」をしたところで、

 21μSV × 365日/年 = 7665μSV/年 = 7.665mSv/年  ・・・式(1)

 これに対し、国際放射線防護委員会(ICRP)が2007年に出した勧告によれば、一般の人に対する放射線量の指標は、

 ①緊急時は20~100ミリシーベルト

 ②緊急事故後の復旧時は年間1~20ミリシーベルト

 ③平常時は年間1ミリシーベルト以下

であるから、上式(1)の約8mSvは、上記②「緊急事故後の復旧時」の「一般人の指標」のレベルに充分入っている。年間通じて毎日当該取材を続けたとて、放射線による悪影響は無視出来るレベル。今回の取材中受けた放射線量21μSvも、上記③「平常時」基準年間の2.1%でしかない。つまり、名古屋や東京の自然放射能よりは確かに高い放射能ではあるが、上掲(1)は「自然放射能よりも高いぃぃぃぃぃl!300倍だぁぁぁぁぁl!!!!」と言うだけで「それがどう影響するか/しそうか」には全く触れていない。「意図的な情報操作が疑われる」と言うよりは、まず確信犯の脱原発原理主義、だろう。
 勿論、その後詳述されるように、実際に原発事故後の作業にあたる作業員達は、バスも降りねばならないし、放射性物質にも近づかねばならなかろうから、上掲(1)東京新聞記者よりも高い放射線環境に置かれるだろうが、それ故にこそ、個別に積算放射線計をつけ、作業時間を管理している。即ち再三繰り返す通り、「放射能・放射線量は定量的に評価しなければならない」の実践である。これまた繰り返しだが、大凡この地球上にいるすべての生物は「放射性物質炭素14汚染」を免れようがないのだから(※7)

 出だしの上掲(1)が上述の体たらくだから、続く(2)~(5)も上記注釈の通り。上掲(2)は福島原発事故の「スリーマイル事故より悪い点」をあげつらうばかりで、スリーマイル事故より改善向上している点はまるで無視。
  上掲(3)は「社会的合意」などと尤もらしい婉曲表現だが、「福島原発差別」助長以外の何物でもない。福島第一原発から出ようが、ほかの原発から出ようが、三重水素(トリチウム)は三重水素(トリチウム)である。それを「福島第一原発産だから拒否」なんてぇのは、「エンガチョ」と同じ「穢れ思想」の発露。対象が人や集団ではなく、「福島第一原発」と言う施設であろうとも、差別は、差別であろうが。
 上掲(4)も酷いモンだ。耐放射線環境ロボットは、そりゃ廃炉作業、特に福島第一原発などの事故後の廃炉作業には不可欠であろうし、期待もされよう。だがそれは、間違いなく原子力技術の恩恵に浴している。原発は目の敵にする脱原発原理主義者が、なんだって原子力技術の産物・耐放射線環境ロボットは褒めそやせるのか。興味深いと言うか、表裏比興と言うか。全く、原理主義とは度し難い。
 止めは、「やっぱりぃ?」とも言うべき、上掲(5)「核兵器と原発」と、来たモンだ。それも、「放射能汚染という災禍に於いて、原発と核兵器は同じだ。と言う、凄まじいほどの大雑把さである上に、核兵器と人類は共存できないなんて御題目を、証明不要の大前提に据える始末。「核無き世界』を絶対善視している訳だが、そんな「一国の核兵器保有国によって、全世界が支配されかねない」状態を、理想とも絶対善とも思えてしまう神経は…これまた「原理主義」の為せる業、か。

 で、上掲(5)の最終段は、「原発に代わるエネルギー」に対する実に無責任な「期待」だ。

1〉何より原発に代わるエネルギーを、私たちは努力すればもつことができる。フクイチはそう語りかけてくる。

 なるほど、福島原発事故後、大飯原発を除く約50か所の原発を稼働停止しても、計画停電以外の停電は起こらず、計画停電もほどなく取りやめとすることができた。そのための「私たちの努力」は、広く世間一般の節電努力と、電力各社の火力発電フル稼働及び増設が主。前者は普遍的に有効かも知れないが、不景気による生産活動停滞も後押ししていたのは確かだし、逆に景気が良くなれば電力消費は増える/増やさねばならない。後者については燃料代がかさんで各電力会社の経営環境を悪化させているのもさることながら、二酸化炭素排出と引き換えだ。東京新聞期待の「再生可能な自然エネルギー」は、確かに増えたは増えたが、水力を除けばその発電量は全体発電量の1%から1.4%に「増えた」だけ。少し前の数字なので、今はもっと増えたかもしれないが、いずれにせよ「原発に代わるエネルギー」には程遠い。それどころか、発電量が原則制御不可能な風力や太陽光が(※8)、「発電の主力」になんか、なり様が無いのは自明なんだが…脱原発原理主義者には、言うだけ無駄か。

 日本における太陽光の発電稼働率は約1割。風力でも約2割にしかならないという事実(※9)も、脱原発原理主義の前には虚しいな。


<注釈>

(※1) 「新聞が義務として言わねばならないこと」の残り二つ、「オスプレイ配備反対」「消費税値上げ反対」が霞んで仕舞うほど…と言うより、「消費税値上げ反対」なんて、この前東京新聞社説になったのは何時だか記憶が無いぐらい。だが、検索してみると、「消費税増税延期」を6/2に、橋下市長のオスプレイ八尾空港訓練案を6/7に社説で取り上げている。一応「アリバイ成立」しているようだ。 

(※2) 事故後3年経つまでメルトダウンが具体的に判明しなかったスリーマイル事故と対比するくせに、事故後2年4か月の福島第一原発事故を「まだ何もわかっていない」と抜かせるんだから、美事なまでのダブルシンクだな。

(※3) そりゃ、「社会的合意」などと婉曲表現しているが、福島原発差別以外の、何ものであろうか。 

(※4) なんで、こういうときだけ平気で技術に期待するんだろうね

(※5) すでに戦後この方70年ほども共存していますが、何か?この間核兵器による直接攻撃も回避できていますが、何か質問でも? 

(※6) 現時点のわが国で原発を代替できるのは、火力発電のみ。それとて二酸化炭素排出量と、燃料代と引き換えだ。「再生可能エネルギー」として脚光浴びまくりの太陽光や風力は、「冷たい計算式」「冷たい推算式」シリーズで計算している通り、稼働率が1割~2割と低い上に、発電量を制御出来ない、お天気任せか風任せ。発電コストが原発の3倍以上だとか、とてつもなく広大な設置面積が必要だとか、以前に、発電力として全く当てに出来ない。 

(※7) だからこそ「炭素14年代測定法」が成立する。仮に「放射性物質炭素14汚染を免れたモノ」が「炭素14年代測定法」にかけられたら、「測定不能なぐらい古いもの」と判定される、筈である。 

(※8)大容量高効率畜放電技術が開発され普及しない限り 

(※9) 冷たい計算式/推算式 シリーズ参照