応援いただけるならば、クリックを⇒ https://www.blogmura.com/

 戦後この方、その成立以来タダの一文字も改訂されていない日本国憲法の前文には、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。と言う有名な一節がある。

 何故有名かと言えば、あまりに現実世界と乖離しているから。

 「諸国民」は「平和を愛する」とは限らないし、「諸国民の公正と信義」は「信頼」して良いほどもありはしない。寧ろその逆で、「諸国民」は、奸佞邪知に富んだ我利我利亡者であると考えた方が、遥かにに現実的でもあれば、安全側でもある。「渡る世間に鬼はない」なんてのは、治安の行き届いた我が国内だから通用すること(※1)で、「渡る世界は鬼ばかり」と考えねばならない。

 そんな「厳しい国際社会」の一端は、最近の報道からも垣間見える様だ。

<注釈>

(※1) それも最近では、昔ほどではなくなってしまったが。 



①【AFP】 スパイはどの国もしている、元情報当局者
2013年07月04日 16:51 発信地:ワシントンD.C./米国
http://www.afpbb.com/article/politics/2954287/11004271?ctm_campaign=txt_topics

【7月4日 AFP】暴露された米国のスパイ行為に欧州の人々は怒りを表明するかもしれないが、彼らは情報収集活動の「ゲーム」がどのように行われているかについて以前から熟知している──誰もが誰かをスパイしているのだ、と元情報当局者らは語る。

米国家安全保障局(National Security Agency、NSA)による在ワシントンD.C.(Washington D.C.)欧州連合(EU)代表部やその他の同盟国の在米大使館の盗聴疑惑について、バラク・オバマ(Barack Obama)米大統領は問題の沈静化を図るのと同程度に、情報収集活動を行っていることを暗に認めているように見える。

オバマ大統領は1日、訪問先のタンザニアで「欧州各国の首都には、私が朝食に何を食べたかには興味がないとしても、自国の首脳と私が会うことになっていれば、私がどんなことを話題にするかぐらいは知っておきたいという人たちがいる。これは私が保証する」と述べた。「情報機関はそのように活動しているのだ」

また、NSAのマイケル・ヘイデン(Michael Hayden)前局長は6月30日に米CBSテレビに出演し、「国際的な情報収集活動に対して悲嘆しているヨーロッパ人はまず、自分の国の政府が何をしているのか調べた方が良い」と述べ、友好国をスパイしているのは米国だけでないと示唆した。

さらに、匿名を条件に取材に応じた別の元情報当局者は「フランスはわれわれをスパイしているし、英国をスパイしている。イスラエル、ロシア、英国、米国、中国など本格的な情報機関を持つ大国は常に他国の政府をスパイしている」と語る。

一方、欧州のある情報筋は、米国の電子監視プログラムが非常に大規模だったことを考えれば、西側同盟国の怒りは理解できると指摘した。

■「偽善はゲームの一部」

米政府の元高官でサイバーセキュリティー専門家のジェームズ・ルイス(JamesLewis)氏は、一部の批判は「空疎に聞こえる」と語る。「欧州の大国はこれと極めて似たことをしているのだから」

また、米中央情報局(CIA)元職員で、現在はジョージタウン大学(GeorgetownUniversity)に所属するジョン・ショイアー(John Scheuer)氏は「偽善はゲームの一部」と説明する。公の場でスパイについてある発言を行い、それとは違うことを秘密裏に承認するのは昔からあったことだという。

9.11米同時多発テロの後、ショイアー氏はテロ容疑者を拘禁する秘密収容施設の運用に携わった。CIAはテロ容疑者への過酷な尋問で入手した情報を普段から「欧州のパートナーたち」と共有していたという。

「だがそのことが明るみに出ると、(欧州の人々は)衝撃を受けてがくぜんとして、米国の行為を非難する」とショイアー氏は言う。「それがこのゲームの仕組みだ」

しかし、米国は必要とあればいつでもパートナー国との形勢を逆転することが出来るとショイアー氏は言う。「われわれは常に、誰がわれわれをスパイしているか把握している。欧州の誰かがわれわれを過度に追い詰めるなら、大統領はこのように表明するだろう。『OK。欧州のX国が米国の情報を収集している証拠はこれだ』」
■「経済情報を収集していなければ、政府の怠慢」

複数の元情報機関関係者によると、スパイの世界では同盟国に対するスパイは暗黙のうちに認められているが、絶対に検討してはならないとされる手法もあるという。例えば、欧州で選挙に介入しようとすることなどだ。

友好国に対するスパイで、超えてはならない一線が真に存在するのは、情報収集についての「ファイブアイズ(5つの目)」協定の下で活動する英語圏の主要国、米国、英国、オーストラリア、カナダ、ニュージーランドだけだという。このスパイ協定5か国の電子監視プログラム「エシェロン(Echelon)」が1990年代に暴露された際には、5か国は激しい非難にさらされた。

米国の同盟国のうち特にフランスとイスラエルは、経済的な利益を得るために高度なサイバースパイ活動を行っているという。米情報16機関による米国家情報評価(National Intelligence Estimate、NIE)は、米国企業に対する経済スパイは中国がトップで、フランス、イスラエル、ロシアが2番手につけていると結論づけた。

「私は、自分が米国人か、あるいはベルギー人や英国人だったとして、自国政府が自国経済を支援するような情報収集活動を行っていなかったとしたら、それは政府の怠慢だと考えるだろう」とショイアー氏は語った。
(c)AFP/Mathieu Rabechault


② フランス情報機関も大量の個人情報収集 ルモンド紙報道
2013.7.5 09:13
http://sankei.jp.msn.com/world/news/130705/erp13070509140002-n1.htm
 5日付のフランス紙ルモンドは同国の情報機関、対外治安総局(DGSE)が米国の国家安全保障局(NSA)と同様にフランス国内や外国との間の電話やインターネットによるやりとりを傍受、大量の個人情報を収集していたと報じた。

それによると、集められる情報は電話や電子メール記録、短文投稿サイト「ツイッター」やインターネット交流サイト「フェイスブック」へのアクセス状況など広範囲に及ぶ。DGSEのほか、税関当局の情報機関やパリ警視庁など6機関が利用できる仕組みになっているという。

ルモンドは「NSAの活動は非公開ながら議会の承認を得ているが、DGSEの活動は法的裏付けがない違法行為だ」と指摘した。

ルモンドの取材に、DGSEはコメントを拒否。首相府は通信傍受や情報収集は法律の枠内で行っていると説明した。(共同)


冷たい現実



 さて、如何だろうか。

 上掲記事①、②の背景には、「”米国政府が米国内外の個人情報監視活動をしている”と暴露した米国家安全保障局(NSA)の元契約職員エドワード・スノーデン容疑者」事件がある。これに対し、上掲記事①「米国以外の国の情報収集活動」を指摘し、

①1>  元情報当局者は
①2> 「フランスはわれわれをスパイしているし、英国をスパイしている。
①3> イスラエル、ロシア、英国、米国、中国など本格的な情報機関を持つ大国は常に他国の政府をスパイしている」と語る。

①4>  「私は、自分が米国人か、あるいはベルギー人や英国人だったとして、
①5> 自国政府が自国経済を支援するような情報収集活動を行っていなかったとしたら、
①6> それは政府の怠慢だと考えるだろう」とショイアー氏は語った。

と、各国の情報収集活動を支持・擁護する発言者を登場させている。

 一方、上掲記事②は、今度はフランス情報機関が個人情報収集を働いていたとする報道。

 ちょっと留意が必要なのは、背景となったスノーデン容疑者の告発は「米国の個人情報収集」を告発し、上掲記事②は「仏国の個人情報収集」を報じているのに対し、上掲記事①が支持擁護するのは「各国の情報収集」である点。「情報収集」は「個人情報収集の上位概念」であり、「個人情報収集」は「情報収集」の一手段である点だ。
 尤も、「個人情報収集なしの情報収集」と言うと、公刊文献調査などに限定されるから、自ずと限界がある。「本格的な情報機関」ならば、「個人情報収集」に大なり小なり遅かれ早かれ手を染めることは、ほとんど必然と考えるべきだろう。それは中国や北朝鮮のような一党独裁国家に限らず、西側自由主義諸国でも変わらない、と言う事実を、上掲記事②やスノーデン容疑者の告発は、伝えている。

 では、我々は、我が国は、如何にすべきであろうか。

 悪辣な情報収集合戦に明け暮れる「汚い世界」を非難し、個人情報取集なんかしない、清廉潔白かつ「民主的な」政府を目指せ、と、各国にも説けば、我が国も実施する、べきだろうか。

 確かに、「国民に対する政府の個人情報収集」は「民主主義を脅かす可能性がある」とは言い得る。実際それ故に、米国内でも米国政府を非難する声もある。
 だが、民主主義体制国家とて、まずは国家として生き延びなければ、民主主義体制を維持できず、上記の「政府非難」に対して応える事すらできはしない。国家は、まず第一に存続するがゆえに国家である。「国家が存続するためには全てが許される」訳ではないが、「国家存続のために許されるレベル」と言うのはある筈で、「国家による個人情報収集は許されない」なんて事は無いだろう。

 一番愚かなのは、「自国にだけ個人情報収集を許さない」状態。これは自国に態々情報戦上の手枷をはめるようなものだ。

 まあ、我が国の場合は、まず「本格的な情報機関」を創設するところから、始めないといけない訳だから、「自国民に対する個人情報収集可否」以前の問題だが。