応援いただけるならば、クリックを⇒ https://www.blogmura.com/

 宣伝謀略は、宣伝謀略と承知の上なら、情報源たり得るとは、何度か繰り返している処。その「情報源として利用する宣伝謀略」を利用する際には、「如何なる立場からの宣伝謀略か?」を見誤らない事が非常に重要だ。

 所詮この世に流布されている情報報道などは、偏りもあれば情報操作もあるから、「全ては宣伝謀略」と考えてかかった方が良いぐらい。であるならば、「如何なる立場からの宣伝謀略かが不明」と言う情報報道が一番取扱いが難しい。「一見中立・不偏不党に見えるが、実は謀略宣伝」と言うのが「謀略宣伝の理想」でもあれば、受け取る側からすれば「一番警戒すべき情報報道」でもあろう。

 そう言う意味では、中国共産党政権の宣伝機関と定義される人民日報を母体とする人民網のネット情報なんてのは、「中国共産党政権の謀略宣伝」とハナッから判って居るから、取り扱いは楽だ。

【人民網】どんどん偏執的になる日本の「価値観外交」
http://j.people.com.cn/94474/8292586.html

 日本の保守派政府要人は一貫して「価値観外交」を提唱している。この「独り芝居」を気に入り、呼応する者は甚だ少ないが、安倍氏や麻生氏は独断専行に走り、「自由と繁栄の弧」の構築を最後までやり抜こうとしているようで、どこへ行ってもこれを口にしている。(文:呂耀東・中国社会科学院日本研究所研究員。人民日報海外版コラム「望海楼」掲載)

安倍氏は先日、英国に駆けつけてG8サミットに出席した際、時間を割いてポーランドの首都ワルシャワでポーランド、チェコ、スロバキア、ハンガリーの東欧4カ国首脳と会談し、共同声明も発表した。日本メディアによると東欧での中国の影響力拡大を念頭に、共同声明は日本と4カ国が法治と市場経済などの共通の価値観に基づき、関係を強化する必要性を謳った。

安倍氏は就任以来、密度の濃い「価値観外交」攻勢をかけている。そしてG8サミットおよび東欧4カ国との首脳会談で「価値観外交」を極致まで発揮させるとともに、「自由と繁栄の弧」の最後の一筆として、中国をにらんだ最終注釈を加えた。安倍氏らの「価値観外交」の意図は、日米欧の共有する「普遍的価値」をユーラシア大陸の外周に帯状に連なる、東南アジアから中央アジアを経由して中欧および東欧にまでいたる国々に浸透させ、これによっていわゆる「同じ価値を共有する」「自由と繁栄の弧」を形成することにある。

「自由と繁栄の弧」を最初に打ち出した麻生太郎氏の考えでは、ユーラシア大陸外周に帯状に分布するこれらの国々に民主主義を根付かせるため、日本は多面的な援助を行い、これらの国々との関係を強化し、欧米、NATOとの協力関係を強化する必要がある。安倍氏が就任後中心になって推し進めている「価値観外交」路線は、欧米との関係を重視し、東南アジア外交を強化するもので、すでに釣魚島(日本名・尖閣諸島)問題で中国を抑え込むための便利な道具となっている。(*1)

安倍氏は就任後、米国、ロシア、アジア、中東の計10カ国を訪問したほか、東京でインドとの首脳会談も行い、「価値観外交」を大々的に展開している。彼は一貫して日米同盟が日本外交の基軸だと強調しており、新たな「日米防衛協力指針」は安倍氏の操る中で全面的に見直され、明確に中国をにらんだものになろうとしている。さらに日本は価値観を共有するいわゆる民主国家とのグローバルな海洋パートナー同盟を結成することで、釣魚島問題で中国の正当な主権維持活動に対処することも望んでいる。

東アジアは日本政府要人によって「価値観外交」の主戦場と見なされている。北東アジアでは韓国に特使を派遣して、いわゆる共通の価値観によって韓国を抱き込もうとした。岸田文雄外相はフィリピン訪問時、両国の海洋安全保障協力を強化し、中国の正当な海洋主権の維持を抑え込もうとした。安倍氏も初外遊にインドネシアやタイといった東南アジア諸国を選び、「東南アジア外交五原則」を打ち出して、価値観外交の理念を宣伝した。こうした一連の外交活動には「自由と繁栄の弧」を構築し、中国を孤立させ、封じ込める狙いがある。

地域経済協力の追求が世界の大多数の国々の主流となっている現在、もし日本が引き続き冷戦思考を固守し、いわゆる「自由と繁栄の弧」の構築をひたすら図るのなら、これは東アジアの地域経済協力の大局にとってマイナスであり、平和と安定、協力とウィンウィンという世界の多数の国々の良き願いにも反する。

近視眼的歴史観を捨て去り、「価値観」への偏執を捨て、災いを他国に押し付ける破壊者ではなく、近隣国と親しくする建設者となることを試みるよう安倍氏、麻生氏らにご忠告する。
(編集NA)

「人民網日本語版」2013年6月20日




<注釈>

(*1) 即ち、日本の「価値観外交」は、日本にとって大変良い事で、中国にとって
都合が悪い事、だな。


実質、最後の2パラグラフしかない。


 さて、如何だろうか。

 端的に言えば安倍政権の価値観外交に対する批判である。人民網が「安倍政権の価値観外交」を批判しているのは、以前にも記事にした処であるが、今回もどんどん偏執的になるとタイトルに銘打つ通り、さぞや激烈な批難が展開される、かと思いきや…事実上「安倍政権のの価値観外交に対する批判」は最後の2パラグラフに集中しているだけ。それまでの長い前半部分は、あれこれ批判的な形容詞はついているが、事実上「安倍政権の外交小史」でしかなく、読みようによっては「安倍政権の価値観外交勝利の記録」だ。

 「安倍政権のの価値観外交に対する批判」が集中する最後の2パラグラフを再掲すれば、以下の通り。

1〉 地域経済協力の追求が世界の大多数の国々の主流となっている現在、
2〉もし日本が引き続き冷戦思考を固守し、いわゆる「自由と繁栄の弧」の構築をひたすら図るのなら、
3〉これは東アジアの地域経済協力の大局にとってマイナスであり、平和と安定、協力とウィンウィンという世界の多数の国々の良き願いにも反する。

4〉 近視眼的歴史観を捨て去り、「価値観」への偏執を捨て、
5〉 災いを他国に押し付ける破壊者ではなく、近隣国と親しくする建設者となることを試みるよう安倍氏、麻生氏らにご忠告する。

とまあ、人民網殿は安倍政権の安倍首相と麻生副首相に「ご忠告」してしまうんだから、大したモノと言うか、余計なお世話と言うか。

 何れにせよ上記1〉~5〉にある安部政権の価値観外交を批判する理由、目を皿にしても以下の2項目しかない。

【1】 価値観外交は、地域経済協力を阻害する

【2】 価値観外交は、「災いを他国に押し付ける」

 上記【1】の言わんとする事は、殆ど自明であろう。「世界第2位のGNPを誇る中華人民共和国の経済力(※1)」を背景とした、経済的恫喝である。その「地域経済協力」を上記3〉で「平和と安定、協力とウィンウィンという世界の多数の国々の良き願い」などと美辞麗句を並べ立てているが、巧言麗色少なきかな仁の見本みたいなものだ。

 なにしろ、中国共産党政権及び人民解放軍の行動実績こそが、モノの美事に「平和と安定、協力とウィンウィンという世界の多数の国々の良き願い」に反しているのだから。スプラトリー諸島を武力占領して駐留部隊を配置し、尖閣諸島を「核心的利益」と言い出して侵略宣言を為し、その付近で人民解放軍艦艇で我が自衛艦に対して射撃管制レーダーを照射し、あまつさえ左様な挑発事実を事後に知った上に当該人民解放軍艦艇を擁護強弁してみせた(※2)のは、他の誰でもない、中国共産党政権自身である。
 先行記事で同じ人民網の記事は、やはり安部首相の価値観外交を典型的な人格分裂(※3)」と「痛罵」していた。だが、「人格分裂」を起こしているのは、上記3〉の通り礼賛する「地域経済協力」を、上述の通り武力恫喝・武力占領で「実行」している中国共産党政権の方であろう。

 上記【2】は、さらに笑える。なぜならば、これは安倍政権の価値観外交が掲げる「自由・人権・民主主義」が「災いを他国に押し付ける」と主張して居るのである。上記4〉「「価値観」への偏執を捨て」などと「ご忠告」している事からも、可也強く非難している事になるのだが・・・「自由・人権・民主主義」が掲げられることによって「災いをもたらされる国」とはどんな国だと考えているのか?

 いや、これは愚問だな。それこそ中国共産党政権が、嫌と言うほど痛感している事だろう。即ち、「安倍政権の価値観外交が掲げる自由・人権・民主主義」によって真っ先に「災いがもたらされる」のは、独裁国家である。而して中華人民共和国や朝鮮民主主義人民共和国などは、押しも押されもせぬ一党独裁国家。即ち「日本の価値観外交によって災いがもたらされる国」の筆頭は、中華人民共和国である。

 であるならば、中国共産党政権としては、あれやこれやそれやいろいろ理屈をこねて、巧言麗色並べ立て、脅しすかして日本に「価値観外交の放棄」を迫るのは、ある意味「当然」ではあろう。

 だが、我が国の外交は、我が国の国益を追求するのが目的だ。対中緊張緩和や、対中経済協力が「我が国の国益」となる事は、ありうること、ではあろう。だが、今の中国共産党政権は、先述の通り「人民解放軍艦艇の射撃管制レーダー照射さえ事後承諾して擁護強弁してしまう」国であり、「尖閣諸島に侵略宣言を出してきた」国である。正真正銘掛け値なし、共に天を頂かざる敵、と言っても良さそうな位だ。

 言い換えれば、我が国は、「災いを中国に押し付ける」ためだけでも、価値観外交を推進する意味・意義がある、と言う事だ。

 価値観外交、断固続行すべし。
 それは、我が国の利益である。

【おまけ】 上掲記事は「どんどん偏執的になる日本の「価値観外交」」と銘打たれているのであるが、上掲記事を読んでも、どの辺りがどう「どんどん偏執的」になっているのか、サッパリ判らない。
 「安倍政権を非難している、と言う事しか判らない論説・記事」は、日本でも枚挙に暇が無い程だが、これほど中身のない記事は、ちょっと珍しかろう。それともこれが、Made in China 品質と言う事かな。


<注釈>

(※1) 我が国の10倍人口と、10倍蛇貴課ない国土を抱えて、ようやく我が国を上回った、だけであるが。 

(※2) 即ち、「射撃管制レーダー照射」と言う、「開戦の火蓋を切る」事さえありうる挑発行動を、中国共産党政権=政府が事後承諾して見せたのである。