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予想通りと「予想外」


 さて、如何だろうか。

 朝日&東京が敵基地攻撃能力を不要・無用とする理由を列挙すれば、以下の通りだろう。

 (1) 地域の不安を高め、軍拡競争を招く【朝】【東】

 (2) 自衛隊は専守防衛の盾である(矛は米軍任せ)【朝】

 (3) 周辺諸国から先制攻撃への疑念を招く 【朝】

 (4) 情報収集や支援態勢など、大掛かりな「矛」になる 【朝】

 (5) 集団的自衛権の行使容認、憲法9条改正、国防軍の創設につながる
【朝】【東】

 (6) 憲法の趣旨に反する。【東】

 (7) 多額の経費を要する【東】

 これに対する産経の敵基地攻撃能力賛成理由は、以下の項目となる。

 【産1】昭和31年に「他に手段がない場合、誘導弾の基地をたたくことは自衛の範囲内」と統一見解

 【産2】「報復能力を検討することは周辺国との緊張を高めるので、議論するのさえふさわしくない」と言う考え方はおかしい/報復能力の保有や検討が相手に思いとどまらせる抑止力になる

 煎じ詰めれば、【産1】は(2)(3)(5)に対する反論であり【産2】は(1)(2)に対する反論であろう。ま、いつものことながら、上記【産1】【産2】に関する限り、私(Zero)は産経を支持するし、逆に上記(1)(2)(3)(5)に関する限り(※1)朝日&東京新聞には反対する。

 特に嗤えるのは東京社説、上記(6)を唱える以下の一節だ。

東1>  ミサイル攻撃を防ぐ手段がない場合、発射基地を攻撃することは自衛の範囲だが、
東2> 他国を攻撃する兵器を平素から持つことは、憲法の趣旨に反する。

 東京新聞社説氏は、東京新聞を代表し、東京新聞の主張を社説としている…筈である。然るに上記東1〉~東2〉は、普通に考えれば憲法の趣旨に則っている限り、自衛できない」事になるこれで現行憲法・日本国憲法改正を主張するのならまだ理屈は通るが、上記(5)や以前の社説「憲法96条改正論 ハードル下げる危うさ(※2)」等に見られるとおり、東京新聞主張は「現行憲法墨守」なのだから、筋が通らない。社是として掲げる脱原発原理主義とは、矛盾しないだけ見付けモノと言うべきか。矛盾どころか、関連付ける事さえ難しいが。
 それも「憲法違反」ではなく「憲法の主旨に反する」と婉曲表現している処が、姑息と言うか、心憎いと言うか。「主旨」ならば、解釈の幅分曖昧に出来るから、「憲法違反」と断ぜられない事象も「憲法の趣旨に反する」と批難は出来る。尤も、その「憲法の主旨」なるモノに、あの憲法前文の「正義と平和を愛する諸国民」も入っているのかと思うと、「憲法の趣旨に反するモノ」は、あって当然、無ければ不思議と言うもんだ。

 だが、「敵基地攻撃能力の有無」と言う問題は、我が国の国防方針の問題であり、国防政策の失敗は一国の存亡をも意味しかねない重大事だ。「憲法の趣旨に則っている限り、自衛できない」のならば、変える可きは憲法の方であり、この点については「自殺志願国家(※3)」でない限り、ほとんど議論の余地はない。従って、上記(6)や(5)を根拠に「敵基地攻撃能力」について、検討すらも許さないと言うのは、論外だ。

 上記(6)や(5)に比べたら、上記(7)「多額の経費」なんてのは、些事だ。無論、防衛費の過重負担で国家経済が傾いては本末転倒ではあるが、何しろ我が国の防衛費は、ある時代から「GNPの1%以下」に「制限」されてきており、尚且つその防衛費の半分が「世界で一番人件費の高い国の志願兵」に支払われる給料等。正面装備に廻っているのは「防衛費の1割」と言う処なんだから、仮に「GNPの2%程度」に増額しただけでも、装備に廻せる金額は数倍になろう(※4)。

 況や、上記(1)「軍拡競争を招く」なんてのは、笑止千万と言うべきだ。中国人民解放軍は、ここ数十年間連続二桁成長の大軍拡路線を驀進中だ。中国が徴兵制で、尚且つ人件費が未だに安い国である事や、人民解放軍自身がサイドビジネスをやるなど国防費が極めて不透明である事。大陸に尻尾振りまくりの民主党政権時代を通じてもその軍拡路線は続いた事を想起すれば、中国人民解放軍が軍拡するのに「日本の敵基地攻撃能力」なんて口実は、全く不要である事は明らかだ。
 言い換えれば、「軍拡競争」は、既に始まっている。我が国が理不尽にもその競争への参加を自粛し続けて来た(※5)に過ぎない。

 逆に「我が国は敵基地攻撃能力を保有しない」と宣言・実行したところで、中国人民解放軍の軍拡は、止まる筈もない。冷戦時代のソ連と同様に経済的に自滅破綻させる方が、早道でもあれば、安全な道でもある。

 以上の通り、上掲朝日社説&東京社説対産経の「敵基地攻撃能力要否論争」は、粗方予想通りの「つまらない展開」なのであるが・・・

朝1〉 自民党内では、戦闘機への対地ミサイルの搭載や、巡航ミサイルの配備などが検討されているようだが、
朝2〉それで済むほど単純な話ではない。
朝3〉 北朝鮮のノドン・ミサイルは山岳地帯の地下に配備され、目標の把握すら難しい。
朝4〉情報収集や戦闘機の支援態勢などを考えれば、大掛かりな「矛」の能力を常備することになる。

 上記(4)に相当する上記朝1〉~朝4〉の朝日社説指摘は(※6)全く正しい。私(Zero)も同意する。対地ミサイルにせよ巡航ミサイルにせよ、長距離攻撃能力を保有しただけでは、「敵基地攻撃能力」を保有した事にはならない。そのミサイルで、何処の何を攻撃するかを知り、その目標に向けて発射プラットフォームを的確に進出させる、目標標定手段や支援設備も必要なのである。この点は、産経社説すら見落とし/書き落としているように見える。

 而して、かかる長距離攻撃手段と長距離標定手段及び支援手段を含めた「大きな矛」を保有する事を、検討し、議論すべきなのである。

 無論、その「敵基地攻撃能力」の上位に在る我が国国防政策、集団的自衛権、さらには現有・日本国憲法も、議論して然る可きである。

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<注釈>


(※1) これまた、いつも通り、その点ばかりではないが。 


(※3) ないし「滅亡指向国家」 

(※4) 尤も、我が自衛隊三軍が共通して常に不足しているのは、頭数なんだが。 

(※5) 恐らく幾ばくかは、相手(この場合中国)が軍拡競争を止める」事を期待して。虚しい機体と言うのはこの世に幾らもあるが、これほど虚しい期待も珍しいだろう。 

(※6) 予想外な位に