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 福島原発事故以降、未だかますびしい「脱原発ヒステリー」やら「放射能アレルギー」と同時にやたらに脚光を浴びているのが「再生可能な自然エネルギー」であろう。別けても太陽光発電所と風力発電所は「注目の的」であり、「どこぞにメガソーラーが建設される/された」「何処やらに風力発電所が出来る/出来た」と言うニュースは枚挙に暇がない程。当ブログでも「冷たい計算式」/「冷たい推算式」シリーズとして幾つも記事にしている処だ。

 今回取り上げるのは兵庫県・赤穂市のメガソーラー。以前取り上げたメガソーラーには岡山や淡路島もあったから、瀬戸内海の晴天が多い気候がメガソーラーなど太陽光発電に適していると、期待されているのだろう。

 その期待の「晴れた日の多い」瀬戸内地方でも、こんな稼働率とは・・・


旭硝子が赤穂市にメガソーラー
  
http://sankei.jp.msn.com/economy/news/130423/biz13042317330034-n1.htm
2013.4.23 17:32
 旭硝子は23日、兵庫県赤穂市に出力約4・2メガワットの大規模太陽光発電所(メガソーラー)を建設すると発表した。来年4月に着工し、2015年3月に稼働させる予定。

年間発電量は一般家庭約820世帯分に相当し、全て関西電力に売る。投資額は約13億円で、工場用地として保有していた同社の遊休地に設置する。


.

.推算式


 さて、始めようか。


1〉 旭硝子は23日、兵庫県赤穂市に出力約4・2メガワットの大規模太陽光発電所(メガソーラー)を建設すると発表した。

 上記1〉から、例によって「理想的年間発電量」即ち「定格出力で24時間365日発電した場合の発電量」を計算しよう。何度も繰り返すが、これは「夜間は1kWも発電する事は出来ない」太陽光発電に対しては全く馬鹿げた仮定ではある。だが、原発にせよ火力発電にせよ水力発電にせよ、稼働率を計算する上では「24時間365日連続定格発電時の発電量」を基にする(※1)のだから、この基準を揃えるためには、非現実的だが妥当な仮定である(※2)。

 4.2MW × 24h × 365日 = 36792MWh   式(1)

 一方、予想される発電実績の方は、上掲記事にある以下の記載から推算した。

2〉 年間発電量は一般家庭約820世帯分に相当し、全て関西電力に売る。

 これに従来の「冷たい計算式」シリーズで取り上げた岡山や淡路島のメガソーラー発電報道からの推算「一般家庭の一世帯当たり年間消費電力」は、大凡3600kwh/世帯・年」を適用すれば(※3)上記2〉から今回の赤穂市メガソーラーの年間発電量が推算できる。

 820世帯 × 3600kwh/世帯 = 2952000kWh = 2952MWh 式(2)

 上記式(1)と上記式(2)から、例によって稼働率を計算すれば、

 2952MWh ÷ 36792MWh = 0.0802 ≒ 8% 式(3)

実に、稼働率8%。約12分の1であり、「冷たい計算式」/「冷たい推算式」シリーズ始まって以来の最低稼働率と、推定できてしまう。大凡「メガソーラーの稼働率は1割」と、一連の記事から推定してはいたが、これほど低い稼働率なのは、今まで取り上げた2MW級メガソーラーに対して4.2MWと、約2倍の発電容量故、かも知れない。

 何れにせよ、太陽光発電と言う「今を時めく再生可能な自然エネルギー」だろうが「国産エネルギー」だろうが、発電量としては「何かの足しになる程度」と言う事が、今回も確認された形だ。この上、発電量が制御できない「出来高払い」な上に大容量畜電技術は影も形も無いんだから、上記2〉「年間発電量は(中略)全て関西電力に売る」しか仕方が無い。またその売電価格が、つい先ごろまで「原子力発電や火力発電の4倍近い」42円/kWhだったのだから、メガソーラーや太陽光発電が「脚光を浴びる」のも無理はないが、ちょっと前のデータでも「水力以外の再生可能な自然エネルギー」が全発電量に占める割合は、福島原発事故以前の1%が1.4%に増えただけ。「4割アップ」は急成長ではあるが、差分で言えば「0.4%のシェア拡大」でしかない。恐らくは、1割を超えてしまうと、電力供給の安定化が懸念されよう。

 因みに、今は少し安くなったはずだがちょっと前までの「太陽光発電量強制買い上げ価格」である42円/kWhで上式(2)の年間発電量を売電したとすると、

 2952000 kWh/年 × 42円/kWh = 123984000円/年 = 1.23984億円/年  式(4)

3〉 「投資額は約13億円で、工場用地として保有していた同社の遊休地に設置する。

とも上掲記事にはあるから、仮にこの4.2MW級メガソーラーがメンテナンス費用ゼロで済むと仮定すれば(※4)、

 13億円 ÷ 1.23984億円/年 = 10.4852239年 ≒ 10.5年 式(5)

となり、上記3〉「投資額13億円」は、約10年半で回収できる勘定である。勘定であるが・・・それは「太陽光発電量強制買い上げ価格 42円/kWh」としての話である。先述の通り、太陽光発電太陽光発電量強制買い上げ価格は見直されているし、見直されてもまだ原子力発電や火力発電の3倍以上の高価格なんだから、「今後も見直され、引き下げられる」と考えるのが至当であろう。第一、「再生可能エネルギーによる発電量全量強制高価買い上げ制度」などと言う管直人の退陣条件であった制度が、10年ももつかどうか、怪しいものだ。

 つまり、この赤穂市の4.2MWメガソーラーは、旭硝子の宣伝やパフォーマンスにはなっても、商売にはなりそうにない。まあ、例によって「火力や原子力発電の燃料節約」にはなるのだから、その点は結構な事ではあるが。

 それでも、上記2〉の様に「年間発電量は一般家庭約820世帯分」と豪語できるのは、「メガソーラーがサボっている間(※5)、その820世帯に電力供給し続ける」関電の火力、水力、さらには原子力発電(※6)のお蔭だぞ。



<注釈>


(※1) 而して、理想的状態ならば、原発、火力発電、水力発電にはこれが可能である。「年間通じて発電止めてのメンテナンスが不要」「降水量が充分」などの理想的条件が必要ではあるが。 

(※2) 逆に言えば、一日の半分は全く発電できない上、発電量が制御できない太陽光発電が、如何に発電手段として非現実的か、と言う事だ。 私の「自然エネルギー推進論」―フクシマ後も原発推進の立場から― http://blogs.yahoo.co.jp/tiger1tiger2stiger/35778036.html

(※3) 気候的には赤穂に近そうだが。 

(※4) そんな事は有る訳ないのだが。ソーラーパネルの洗浄やら、故障の修理やら、かかるはずだ。 

(※5) 而して、太陽光発電は、一日の半分は、サボるどころか眠っている。 

(※6) 今は、日本の原発の大半は稼働停止させられているのだが。「稼働停止させられている」だけだ。 



.私の原発推進論&「自然エネルギー推進論」


① エネルギー政策の目的は、見通せる将来に渡って「電力の安定供給」である。電力を電力需要にあわせた必要充分な電力量を停電させずに安価に安定した電圧で給電する事である。

② 現時点においては大容量の電力を蓄電する技術はない。精々が揚水式水力発電の上の方のダムに水として蓄える程度である。また、将来的に大容量蓄電技術が確立普及したとしても、蓄電して取り出す電力には必ず損失が付きまとう。

③ 大容量蓄電技術が普及するまで、電力は、必要量に応じて発電し送電しなければならない。

④ 必要に応じて発電できる、制御可能な発電力は、火力、原子力、大分落ちて水力である。

⑤ 「再生可能な自然エネルギー」太陽光、風力、地熱、潮汐力などは、「態と発電しない」ことしか出来ず、原理的に制御不可能な発電力である。これは、発電コストが如何に安くなろうと変わりようが無い。

⑥ 従って、大容量の蓄電技術が普及するまで、「再生可能な自然エネルギー」は発電の主役たり得ない。

⑦ 少なくとも大容量の蓄電技術が普及するまで、発電の主役は、火力、原子力、大分落ちて水力である。これに付け加えられるとすれば、バイオマス火力発電ぐらいである。この中で原子力は、制御のレスポンスが鈍い恨みはあるモノの、比較的狭い敷地で大きな発電量を二酸化炭素排出なしで発電できる利点を持つ。また発電コストとしても、「福島原発事故に対する補償や対策を加味して漸く火力に負けるかも知れない」程度であり、水力に対しては依然優位である。

⑧ 従って、火力と原子力は共に不可欠な発電方であり、水力以外の「再生可能な自然エネルギー」の発電量は、全体の1割程度とすべきであろう。尚且つ我が国では、水力発電の開発が進んでおり、水力発電の劇的増加は望めない。

⑨ 以上から当然ながら、我が国に原発は不可欠である。我が国の現時点での脱原発なぞ、愚挙にして暴挙である。

⑩ ドイツやベルギーがお気楽に「脱原発」を実施できるのは、電力が足りなければフランスの原発から電力を輸入できるからである。これら西欧諸国の「脱原発」は、「ナンチャッテ脱原発」と呼ばれるべきであろう。