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 以下に掲載するは、朝日新聞の社説二本。何れも通常は毎日二本掲載する社説を一本化して二千字程の長文にしたもので、何れも題材は「脱原発」だから、「福島原発事故を経てなお原発推進論者」たる私からすると異説・反対論だ。

 異説・反対論は大歓迎なんだが、そこは朝日と言うか、やっぱり朝日と言うか、朝日にしてこの体たらくと言うか…まあ、御一読の程を。

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①【朝日社説】テロとミサイル攻撃―脱原発こそ最良の防御だ   平成25年03月08日
(金)

. レーザー銃で「武装」した模擬部隊を編成し、実際に原発に突入する。迎え撃つのはやはりレーザー銃を持つ発電所の警備隊。レーザーが当たれば相手は倒れる想定だ。テロリストに原発が占拠されるか、警備隊が勝利して安全を守りきるか。

米原子力規制委員会(NRC)が最低3年に1回、原発で行う「フォース・オン・フォース」という訓練だ。

演習後、NRCは徹底的に発電所の成績を評価する。

2001年9月11日の同時多発テロ以来、米国では原発へのテロを警戒し、全電源喪失に備えた機材の追加と訓練の強化を104基の原発に義務付けた。

今、それでもテロ対策として十分ではないという声がある。福島第一原発の事故が敵に弱点をさらけ出したからだ。

バックアップ機能も破壊し水と電気を遮断すればテロリストは福島の危機を再現できる。

使用済み核燃料の貯蔵プールが原子炉格納容器の外にある原発は、安全確保が不十分である。米NGO「憂慮する科学者同盟」の上級研究員、エドウィン・ライマン氏は福島が示したアキレス腱(けん)をそう指摘する。

■次の脅威への備え

米国の原発は、脅威の大きさに応じて設計基準を見直す「DBT」(設計基礎脅威)という考え方をとる。

テロや事故で原発の弱点が明らかになれば脅威のレベルはあがり、基準が修正される。福島の事故の後、NRCは改善策の導入をすすめている。

サイバー攻撃への警戒も高まる。システムに侵入され、電源系統の遠隔操作によって冷却機能がまひする恐れもある。

9・11以後、施設の改善に業界全体で12億ドルをかけたという米原子力エネルギー協会(NEI)は「世界貿易センター(WTC)に比べて核施設は小さく、飛行機によるテロ攻撃は困難だ。サイバー対策はネットを外部から孤立させれば心配ない」と説明する。

しかしサイバーテロに詳しい米科学者連盟のチャールズ・ファーガソン会長は「USBメモリーを持ち込めば、システムをウイルス感染させることはできる。相手は表も裏もある人間なのだから」と警鐘を鳴らす。

高まる脅威にどこまで対策を打つか。国際テロの再発防止に大国の威信をかける米国ですら、見えない敵への対処法は暗中模索である。

■ジレンマの中の日本

2月、日本の原子力規制委員会の緊急事態対策監がNRCを訪ねた。7月に策定する原発の新安全基準の骨子を説明し、意見を求めるためだ。

新基準の柱の一つがテロ対策だ。航空機激突で全電源が喪失する。その時に備え、原子炉を冷却するため電源設備を分散して配置する。100メートル以上離れた所に第2制御室も必要??。

これらの過酷事故対策を、今までのように電力会社まかせにせず、法律で義務化する。

日本はすでに国際原子力機関(IAEA)の核物質防護勧告に基づき、立ち入り制限区域の設定や重要施設周辺の柵、カメラなどの設置を進めてきた。

だが、今月4日に開かれた規制委の核セキュリティーに関する検討会の初会合では、原発で働く作業員の身元も精査されていない実態が報告された。

日本は他国から核セキュリティー後進国とも指摘される現状を、まず認識する必要がある。

他方で、民間警備員も武装する米国方式をそのまま導入するのは無理がある。では、どんな危機対応が最適なのか。ジレンマの中にある。

■核燃料は特殊容器に

「ミサイルで日本の原発を攻撃すれば、広島型原爆の320倍の爆発が起こる」。北朝鮮の朝鮮労働党幹部がこう講演したと、韓国のネットメディアが昨秋、報じた。

真偽は定かではない。だが現実に日本海沿岸のものを含めて多くの原発が、北朝鮮の中距離弾道ミサイルの射程内に入る。

2007年、イスラエル空軍の戦闘爆撃機がシリアに侵入、東部の核施設を空爆したとされる。原発攻撃は、あり得ない話と切り捨てられない。

国内の原発などには1万数千トンの使用済み核燃料がある。原発を再稼働すれば、新たに使用済み核燃料が出てくる。

どうすべきなのか。100%の迎撃率を望めないミサイル防衛に命運はあずけられない。テロ対策を無限に拡大するわけにもいかない。

リスクを減らすには、やはり、原発をできるだけ早く減らしていくしかない。同時に、プールにある使用済み核燃料を空冷式の頑丈な容器に移し変えていくことも必要だ。

安倍政権は、民主政権の「30年代の原発ゼロ」の白紙化を強調する。再稼働にも前向きである。原発攻撃へのリスクをどう考えてのことだろうか。


②【朝日社説】原発、福島、日本─もう一度、共有しよう  平成25年03月11日(月)

 記者を乗せたバスが東京電力福島第一原発の構内へ入る。

周辺のがれきは片付き、新たな設備や機器が並ぶ。一見、ふつうの工事現場だ。

ところが、海沿いの原子炉建屋に近づくと状況は一変する。

水素爆発の衝撃で折れ曲がった巨大な鉄骨、ひっくり返った車??。1?3号機の周辺で測った放射線量は、毎時1ミリシーベルトを超えた。まだ人が入っての作業はできない。

炉内は冷却を保っている。だが、建屋には毎日400トンの地下水が流入し、その分、汚染水が増え続ける。貯水タンクの増設でしのいでいるが、2年後には限界がくる。「収束」とはほど遠い現実がそこにある。

防護服と全面マスクに身を包んだ人たちが黙々と働く。多くは、東電以外の協力会社や下請け企業の作業員だ。

事故直後、命がけで対応にあたった人たちは「フクシマ50(フィフティー)」と世界から称賛された。

いま、線量計をつけて働く作業員は1日約3500人。6割以上が地元・福島県の人たちだという。「フクシマ3500」の努力があって、私たちは日常の生活を送っている。

■広がる孤立感

原発周辺の町は先が見えず、苦しんでいる。

浪江町復興推進課の玉川啓(あきら)さん(41)は、町の人と話す時、安易に「復興」という言葉を使わないようにしている。会話が進まなくなるからだ。

「復興」には、災害そのものは終わったという語感がある。「しかし、避難している人たちにとって事故はまだ現在進行形なんです」。住民は今、約600の自治体に分散する。

被災者には孤立感が広がる。

福島市内の仮設住宅に移った双葉町の60代の男性。東京に住む娘に近い埼玉県に戸建てを買い、終(つい)の住み家にしたいと思うが、東電が提示する賠償金ではまったく足りない。

福島県内とされる「仮の町」にも行くつもりはない。「放射能を気にして孫も来ないようなところでは意味がない」

新しい町長にも、議会にも期待はしていない。「誰を選んでも何を訴えても、そこから先に届かないもの」

原発が立地する他の自治体との距離も開くばかりだ。

自民党本部で2月15日、原発のある道県の議会議長を招いた調査会が開かれた。相次ぐ「原発の早期再稼働を」の声に、福島県の斎藤健治議長は「これ以上、一緒に議論できない」と途中で席を立った。

大震災の前までは、福島第一に原子炉の増設を求めるなどバリバリの原発推進派だった。

「『原発は必要』という人ほど事故後の福島を見に来ない。会合の場でも言ったよ、自分で3号機の前に立ってみろって。そしたら再稼働なんて簡単に言えなくなる」

■世界に向けての発信

事故直後は、「恐怖」という形で国民が思いを共有した。2年経ち、私たちは日常が戻ってきたように思っている。

だが、実際には、まだ何も解決していない。私たちが「忘れられる」のは、今なお続く危機と痛みと不安を「フクシマ」に閉じ込めてしまったからにすぎない。

福島との回路をもう一度取り戻そう。

浪江町では、グーグルが協力し、「ストリートビュー」というサービスで町並みの画像を記録していく企画を始めた。

町民からの「様子が知りたい」の声に応えるためだが、原発事故に見舞われた町のありのままの姿を、世界に向けて発信する狙いもあるという。

原発付近一帯を保存し、「観光地化」計画を打ち上げることで福島を語り継ぐ場をつくろうという動きも出ている。

いずれも、現実を「見える化」して、シェア(共有)の輪を広げようという試みだ。

「電力会社が悪い、国が責任を果たせって言えるのは僕らが最後かもしれません」と、浪江町の玉川さんは言う。「何が起きたのか、今ちゃんと共有して賠償制度や避難計画を見直さないと、今度どこかで事故が起きたら『福島のことを知ってて(原発を)受け入れたんでしょ。自己責任です』と言われておしまいになりかねない」

■私たち皆が当事者

その玉川さんが昨年4月、原発を訪れた際、ソーシャルメディア「フェイスブック」に書き込んだ投稿が、「シェア」という機能によって、人から人へと広がり続けている。すでに1万5千件を超えた。

そこには、こんな言葉がつづられている。

「今回の事故は最悪ではなかった/幸いなことに最悪を免れることができたという、恐ろしい事実をもっと皆で共有すべきと感じます」「福島を支援するということが誤解/福島の地で今を支えている/それによって日本が支えられている/皆がまさに当事者なのです」


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