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「Wall Street Journal紙の米国銃規制関連記事、しかも日本人女性記者」と、これだけ条件が揃うと「ロクなモンじゃなかろう」と判断してしまうのは、偏見だろうか。
確かに私自身神ならぬ身の人の子であり、偏見とか差別とかはなるたけ避けようと思っても、きっと偏見も差別もあるに違いない、と自戒すべき身ではある。だから上記の判断を「偏見だ!」と糾弾されれば、少なくとも自省しなければならないとは思うが、今回取り上げるWSJ紙記事もまた上記の判断を補強してくれてしまうようだ。
転載開始=========================================
学校への銃持ち込みは日常茶飯事―規制議論の裏で変わらぬ米社会
http://jp.wsj.com/article/SB10001424127887324903404578313263371234632.html?mod=WSJJP_hpp_LEFTTopStoriesFirst
米国では、銃規制の議論が活発化している。12月に東部コネティカット州の小学校で子供20人を含む26人が殺害される銃乱射事件が起きたことを受けて、2期目に突入したオバマ大統領も銃規制の強化に向けて精力的に動いている。
しかし、その裏では、銃が絡んだ事件が依然として後を絶たない (※1)。特に、子供や若者が犠牲になる事件も引き続き相次いでおり、数週間前には南部アラバマ州で銃を持った男が小学生を乗せたスクールバスに乗り込み、運転手を射殺して5歳の男の子を人質として連れ去り、自宅の地下壕に約1週間立てこもった事件が連日話題となった。
そうしたなか、NBCニュースが米国の子供を取り巻く恐ろしい実態を示す調査結果を明らかにした。それは、生徒が銃を学校に持ち込む事件が日常的に起きているということだ。今年に入って公表されたものだけでも調査時点で48件、登校日で換算すると1日2件以上報告されていることになる(※2)。
未成年の犯罪は情報が伏せられる場合が多いことを考慮すれば、実際はこれを大幅に上回る数の銃が学校に持ち込まれていることは容易に想像できるだろう。
例えば、最近では東部バージニア州とペンシルバニア州で、どちらも小学2年生の男の子が弾丸の入った銃を学校に持ち込み、友人に見せびらかして停学処分を受けた。また先週には、西部ワシントン州で小学5年生の男の子2人がクラスメートの女の子を殺害する目的で銃とナイフを持って登校し、逮捕された。
小学生の場合は興味本位で持ち込む場合が多いようだが、年齢が上がるほど自己防衛や他人に危害を与える目的で銃をカバンなどに忍ばせるケースが増える。
米国では、「自己防衛=銃所有」という発想が極めて根強い。それは、武器保持を認める合衆国憲法修正第2条がもともと、先住民やヨーロッパ諸国の軍隊による攻撃などに対して一般市民が自ら防衛に当たれるために制定されたという歴史的背景もあるが、現在ではむしろ、犯罪の大半で銃が使用されるため、そうした脅威に対するには同様に銃を持つべきとの考えが根本にあると思われる(※3)。
2011年のギャラップ世論調査によると、米国成人の実に47%が世帯として銃を所有していると答えている。また、複数の銃を保持する人もいるため、米国内には3億丁以上、つまり1人1丁に相当する銃が出回っていると推計されている。特に、保守色の強い南部や中西部、そして共和党支持者の間で銃所有率が高い。
もちろん、法律に則った銃所有者が大半だが、これだけ銃が蔓延した社会では子供達が犠牲となる事件が頻発するのもある意味必至と言えよう。子供の権利擁護団体である児童保護基金が先月発表した調査によると、2010年に銃で殺害された19歳以の子供は約2700人に上り、毎日7人、毎週52人の子供が銃で命を奪われている計算になるという。
それにもかかわらず、テレビや映画では銃が依然として「強くてカッコいい」ものであるかのように描写され、玩具店に行けば様々な種類のおもちゃの銃が棚を埋め尽くしている。筆者の住むテキサス州では、8歳以上向けに誕生日パーティープランを提供する射撃場があると聞いて驚いたこともある(※4)。
護身用の拳銃保持以外にも、猟銃での狩りが盛んに行われていたり、スポーツ射撃を楽しむ親が多かったりと、米国の子供達は幼少の頃から銃に興味を抱き、銃に対する恐怖感や嫌悪感が希薄になるのも否めない環境で育っている(※5)。
しかも、女性の銃所有が急増していることを受けてピンクや花柄の銃が売り出され、小売最大手のウォルマートなどに行けば、おもちゃの銃が並ぶすぐ横で本物の銃や弾丸が買えてしまうなど、銃に対しての敷居は極めて低いのが実情だ。実際に、今月初旬には南東部サウスカロライナ州で、3歳の男の子がピンクの銃をおもちゃと思って遊んでいたところ、誤発して亡くなる事件があった(※6)。
銃購入者の犯罪・精神疾患歴のチェックを義務づけるとともに、軍隊で使われるような襲撃用銃器(※7)を禁止するなど銃規制を強化できたとしても、武装権利を主張する声の根強い米国で銃のない社会が実現することはまず有り得ないだろう。学校の安全性を高めるために教師が銃を携帯すべきという議論すら上がっていることからも、米国がいかに銃依存社会であるかが分かる。
もちろん、米国全体が現状をよしとしているわけではなく、CNNとタイム誌による最近の調査では、米国民の過半数が銃規制の強化を支持していることが示された。筆者のまわりでも、例えば教師の銃携帯に関しては、「事故や事件が増えるだけ」と懸念する親が多い。
一方、銃規制ほど注目されてはいないものの、銃に関する教育の必要性も議論されている。教育制度は州によって大きく異なるため一概には言えないが、テキサス州の公立学校の場合、いじめに関しては防止に向けたカリキュラムが義務付けられているが、銃についての教育は必修ではないという。
ただし、学校によっては、外部機関に委託するなどして銃の安全な取扱方法を教えているところもある。例えば、米国最大の銃ロビー団体である全米ライフル協会(NRA)が未就園児から小学3年生を対象に行うプログラムでは、銃を見たら「近寄らない、触らない、その場を離れる、大人に伝える」という簡単な対処法を教える。
学校における銃教育は「銃に対する興味を助長する」との懸念が強いだけでなく、 NRAが教育プログラムを提供していることに対する反発も大きい。また、銃の安全な取り扱いを学んだ子供でも、実際に銃を見ると興味が勝って触らずにはいられないという調査結果も出ており、こうした教育の効果には疑問の声も上がっている。
しかし、バージニア州ロアノーク大学で銃規制問題を研究するハリー・ウィルソン教授は、銃に関する教育は「害よりも利が大きい」と話す。銃を見たら触らないというのは「誰もが子供に対して望むこと」で、「それに異議を唱える人はいないはずだ」というのが同氏の考えだ。
前出のCNN/タイム誌による調査では、 銃の暴力に加担している最大の要因は何かという問いに対して、37%の回答者が親の子育ての仕方、37%がポップカルチャーの影響、23%が銃の入手が容易なこと、と答えている。ウィルソン教授も、子供が関与する銃の事件が相次いでいる理由として、社会的な変化や銃を持つ親の管理の甘さが最も大きいとの見方を示す。
護身、レジャー、スポーツ、権利の主張・・・理由が何であれ銃を手放すことができないのであれば、何よりもまず、銃弾を抜いた状態で鍵をかけて保管するなど、管理を徹底することが銃を所有する親の最低限の責任だろう(※8)。児童保護基金が「銃ではなく子供を守ろう」をスローガンに掲げるように、銃の暴力、特に何の罪もない子供が犠牲となる事件が少しでも減ることを祈りたい(※9)。
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ジェンキンス沙智(さち) フリージャーナリスト・翻訳家
愛知県豊田市出身。テキサス大学オースティン校でジャーナリズム学士号を取得。在学中に英紙インディペンデント、米CBSニュース/マーケットウォッチ、 米紙オースティン・アメリカン・ステーツマンでインターンシップを経験。卒業後はロイター通信(現トムソン・ロイター)に入社。東京支局でテクノロジー、通信、航空、食品、小売業界などを中心に企業ニュースを担当した。2010年に退職し、アメリカ人の夫と2人の子供とともに渡米。現在はテキサス州オースティン近郊でフリージャーナリスト兼翻訳家として活動している。
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<注釈>
(※1) 「その裏で」も何も、銃規制が始まってさえいないのに、「銃が絡んだ事件」が減る道理は無かろうに。(※2) いや、ちょっと待てや。自己防衛Self Deffenceと言う観点からすれば、これは慶賀すべき事であるし、「日常的に生徒が銃を学校に持ち込んでいる」と知れば、生徒にむやみに銃を向けることは抑止出来ようが。何一面的な事を言っているんだ。(※3) この辺で軌道修正と言うか、補足情報が与えられている。良い事だ。(※4) ああ、書いているのは女性記者か。納得。「強いもの」を「カッコ良いもの」と思うのは「男の子」の本能であり、性とさえ言えよう。銃が力であり、強いものである限り、それは、少なくとも男の子にとって、「カッコ良いもの」である可能性を持っている。男の子向けに「玩具の銃」があるのは当たり前で、無いとしたらその方が余程不自然だ。(※5) なんだろうね。アメリカみたいな銃社会でなければ、「銃に対する恐怖感や嫌悪感があって当然」みたいなこの表記は。いや、きっとそう確信しているに違いないんだが、その確信の、なんと儚く脆い事か。(※6) 「誤発」なんて日本語があるか??!「暴発」もしくは「誤射」だろう!…と思って検索かけたら「誤発弾」って韓流ドラマがあるんだな。でもそれは韓流ドラマのタイトルであって、日本語じゃないし、「誤発する」なんて用法は無さそうだぞ。(※7) ああ、Assault Weaponの「訳」なんだろうけれど・・・定義が難しいとはいえ、「襲撃用武器」ってのもいただけない訳だな。その銃は、待ち伏せにも狙撃にも使えるんだから。(※8) それでは護衛用には役に立たない。いざというとき即座に発砲できるからこそ護身用武器は役に立つのであり、いつ「いざというときになるか」を予想できるとは限らないんだから。(※9) ああ、「祈る」だけならば実害は無いし、タダだからな。