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福島第一原発事故以来、やたらに脚光を浴びる「再生可能な自然エネルギー」。分けても注目を集めているのは太陽光と風力だ。クリーンで尚且つ「国産」なんてイメージまであるモノだから、管直人がその退陣条件にした特別措置法のお蔭で「発電量を全量電力会社が高価買い上げしてくれる(※1)」事もあって、一定の普及を見せて居る様だ。尤も今の処、発電量に占める水力を除いた「再生可能な自然エネルギー」の割合は、1%だったのが1.4%になった程度。実績も少ないお蔭で実害も少ないのは御同慶の至りだ。今も昔も「再生可能な自然エネルギー」の主役は、発電量として圧倒的に水力なのであるし、制御可能と言う点ではバイオマス以外の全ての「再生可能な自然エネルギー」を凌駕する(※2)。
尚且つ、「制御不能の発電量」と言う事に加えての、太陽光発電の稼働率の低さは特筆大書に値して、大凡1割ちょっと(※3)。「原発○基分の太陽光発電!」なんて報道は、大概定格出力同士を比べていて、稼働率を全く考えていないから、要注意だ。ソリャ火力発電でも原発でも定期点検のための停止期間はあるから、「稼働率10割」ではない。おまけに原発・火力・水力は制御可能な発電量で、現状と当面の間電力は「需要に応じて発電する」他ないのだから、その「需要変動」を吸収できるのはこれら制御可能な発電力のみ。言うなれば、原子力・火力・水力発電は電力需要に応じて低めの稼働率にならざるを得ないが、発電余力はある。それに対し、火力や風力の発電量は出来高で、目いっぱい発電しての稼働率。それが太陽光では1割ちょっとでしかない、と言うのは「冷たい計算式」シリーズや「冷たい推算式」で計算/推算して見せた所だ。
今回産経が報じるのは、千葉・銚子沖の洋上風力発電所。出力2400KWと言うから、定格で言っているのだろうが2.4MWで、今まで記事にしたメガソーラーとほぼ同クラスだ。
.<注釈>
(※1) 何しろ、太陽光発電は原発や火力発電の4倍の高価格だ。
転載開始=========================================
国内最大の巨大洋上風車が運転開始 千葉・銚子沖
http://sankei.jp.msn.com/life/news/130304/trd13030413120008-n1.htm
2013.3.4 13:08 [環境・エコ]
千葉県銚子市沖に設置された「洋上風力発電」の巨大風車=2012年10月 海岸や沖合に風力発電機を設置する「洋上風力発電」で、千葉県銚子市の沖合約3キロに完成していた巨大風車が4日、運転を始める。東京電力や新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)などの実証実験に活用され、沖合に設置された本格的な洋上風力発電では国内最大。
風車は海面からの高さが約126メートル、直径は約92メートル。出力は約2400キロワット。海底に土台を設置した「着床式」で、海底ケーブルで陸地に送電する仕組み。昨年10月には報道関係者らに公開された。
今後、NEDOが風向きや発電効率などを検証。発電分は東京電力が供給し、一般家庭1200世帯分の電力を賄う見込みだ。
洋上風力発電は陸上より風力が安定しており、騒音の心配も少ないため世界的に開発が進んでいる。
=================================転載完了
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冷たい推算結果 稼働率2割
さて、始めようか。
上掲記事にある数値は、実は不十分だ。何しろ報じられて居る数字は・・・
1〉 風車は海面からの高さが約126メートル、直径は約92メートル。出力は約2400キロワット。
2〉 発電分は東京電力が供給し、一般家庭1200世帯分の電力を賄う見込みだ。
上記の内、計算に使えるのは上記1〉「出力は約2400キロワット」 と上記2〉「一般家庭1200世帯分の電力を賄う」の二つだけだ。
さて、明白な方から行こう。上記2〉「一般家庭1200世帯分の電力」と言うのは、以前「続・冷たい計算式」取り上げた「広島県・赤磐市のメガソーラー」評価に使われていた数字(※1)から、1世帯当たりの年間電力消費量を計算すると(※2)、以下の式になる。
〉 年間発電量は184万キロワット時。一般家庭の年間消費電力量510世帯分に相当する。
184万kwh ÷ 510世帯 = 3607.8kwh / 世帯 …式(1)
上式(1)と上記「一般家庭1200世帯分」から、今回記事にある千葉沖洋上風力発電の発電量を計算すれば、以下の式になる。
3607.8kwh / 世帯 ×1200世帯 = 4329360 kWh …式(2)
これに対し上記1〉の「出力は約2400kWh」と言う記述は、このままでは意味が曖昧なので、
1’〉 定格出力2400 kW
と「読み替え」よう。この「読み替え」は、「出力」を「定格出力」に読み替えているし、「約」も外している。が、大意は外すまい。この定格出力で24時間365日発電し続けたとすると、その「理想的年間発電量」は、
2400kW × 24h × 365日 = 20124000 kWh …式(3)
上式(2)と上式(3)から、千葉・銚子沖洋上発電所の稼働率が計算できて、以下の通り。
4329360 kWh ÷ 20124000 kWh = 0.2151 ≒ 22% …式(4)
即ち、当該洋上風力発電所の稼働率は2割ちょっと。今まで取り上げてきたメガソーラーからすると、倍近いが、五分の一一寸でしかない。
3〉 洋上風力発電は陸上より風力が安定しており、騒音の心配も少ないため世界的に開発が進んでいる。
と言う当該記事の報道は、嘘ではないだろうし、メガソーラーに対し「日当たりの良い土地を占有しない」と言う利点はあるだろう。稼働率も上記の通りメガソーラーより格段に良い。が…やっぱり発電量としては、「火力・原子力の燃料代を浮かし、水力の貯水量を保つ」効果しか、期待しえないのである。
<注釈>
(※1) 出典: メガソーラー:赤磐市に設置 県内立地6件目、8月から稼働へ /岡山 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20130129-00000221-mailo-l33(※2) 広島県・赤磐市と千葉の間で「1世帯当たりの年間電力消費量」は同じと見なした。