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   こんなことになるんじゃないかと、予測できたのはF-35の部品が「イスラエルに供給されると、武器輸出三原則に抵触するのではないか」と言う問題。「米国で組み立てられた後、第三国に引き渡された場合、武器輸出三原則の例外にあたる」として「例外扱い」される事になるそうだ。先行記事(*1)に於いて私は我が国益と武器輸出三原則が相容れないならば、優先すべきは我が国益だと論じ、F-35を「武器輸出三原則の例外とするか、武器輸出三原則を変えるべきだと断じたし、また別の記事では産経と朝日の社説を比較した(*2)。当ブログ開設以来の主張「日本の新聞を読み比べるならば、産経と朝日を読み比べるのが手っ取り早い」を、改めて実証して見せた形だ。
  
   今回取り上げるのは、同じ「F-35部品の武器輸出三原則例外化」を題材とし
  た、毎日と読売の社説。例によって例の如くと言うべきか、毎日は朝日と、読売は
  産経と、それぞれ類似の主張を為している。掲載されたのは共に産経&朝日の翌日
  だから、どちらも産経&朝日の社説は「読んでから書いた」と見て良さそうだ。
  
   先ずは第2ラウンド、毎日vs読売の社説を、御一読いただこうか。(各社説の丸数字は、前回に引き続いて③からふった。)
  
  
  【前回引用社説】
   ①【朝日社説】F35部品輸出―決定過程が見えない   平成25年02月05日(火)
  
  

  <注釈>

  
 

   転載開始=========================================
   
 
  ③【毎日社説】:武器三原則とF35 なし崩し形骸化は反対
   
http://mainichi.jp/opinion/news/20130206k0000m070110000c.html
   毎日新聞 2013年02月06日 02時32分
   
    政府は、航空自衛隊の次期主力戦闘機F35の国際共同生産に関連して、日本企業が国内で製造した部品の対米輸出を武器輸出三原則の「例外」として認める方針のようだ。近く官房長官談話として発表する。
   
    三原則は、民主党政権下の11年12月に緩和されたが、「国際紛争を助長することを回避する」という理念は堅持された。F35をめぐる今回の措置が、この理念をなし崩しに形骸化するようなことになってはならない。明確な歯止めが必要だ。
   
    三原則は、平和国家の立場を明確にするため、佐藤内閣が1967年に表明、政府方針となった。その後、対米武器技術供与や、ミサイル防衛(MD)の日米共同開発・生産などが例外扱いとされてきた。
   
    今回、問題となっているのは、三原則が「国際紛争の当事国やそのおそれのある国」への武器輸出を禁止していることと、イスラエルのF35導入計画との関係である。
   
    米国の同盟国・イスラエルは、核開発を進めるイランを先制攻撃する可能性が指摘され、イスラム原理主義組織ハマスやシリアを空爆するなど周辺国などと緊張関係にある。
   
    日本企業が約4割の部品製造に参画するとされるF35が、米国からイスラエルに渡れば、国際紛争助長回避という理念は有名無実となる。
   
    11年の三原則緩和にあたって、日本が開発や生産にかかわった武器を「第三国」に移転する場合、日本政府による事前同意など「厳格な管理」が条件になっていた。F35部品の対米輸出でも、これを適用することが最低限、必要である。イスラエルが現在の政策を維持したままであれば、F35供与の日本同意は三原則の理念に反することになろう。
   
    また、今回の第三国移転の議論とは別に、共同開発・生産の相手国が「紛争当事国またはそのおそれのある国」となる可能性を指摘し、共同開発・生産に参画するために三原則の見直しを求める意見もある。
   
    たとえば、米国や英国もイラク戦争のように紛争当事国になりうるのだから、紛争当事国などへの武器禁輸方針そのものを破棄すべきだ、という考え方だ。
   
    しかし、これでは武器開発の経済性や軍需産業の基盤整備を優先して、平和国家としての立場を捨て去ることになる。
   
    政府の対応について、石破茂自民党幹事長は「三原則の趣旨を逸脱すべきでない」と語り、公明党も三原則を尊重するよう求めている。
   
    装備品(武器)が防衛的なものかどうかをはじめ、その性格・使用目的によって共同開発・生産への参加を判断するなど、あくまで三原則の理念を堅持することを前提に、対応方針を検討すべきである。


   ④【読売社説】F35部品輸出 3原則の例外扱いは妥当だ(2月6日付・読売社説)
   
http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20130205-OYT1T01552.htm
    武器の輸出など防衛装備政策では、日本の安全保障と国益を踏まえた総合的な視点が肝要だ。
   
   政府は、航空自衛隊の次期主力戦闘機F35について、日本企業が製造した部品の輸出を武器輸出3原則の例外として認める方向で調整している。
   
   日米の防衛技術協力を深め、同盟関係を強固にするだけでなく、日本国内の防衛技術・生産基盤の維持や育成にも役立とう。輸出容認は妥当な判断である。
   
   野田政権は2011年12月、武器輸出3原則を大幅に緩和し、武器の国際共同開発・生産を解禁する新基準を策定した。
   
   「国際紛争の助長を回避する」との従来の理念は踏襲しつつ、厳格な輸出管理や、武器の第三国移転における日本の事前同意などを共同開発国に義務づけている。
   
    巨額の費用を要する戦闘機や艦船などの開発は近年、複数の国が最新技術を持ち寄り、共同で実施するのが国際的な潮流だ。
   
    日本だけが武器輸出3原則を墨守し、“技術鎖国”を続ければ、技術面で各国の後塵を拝するし、武器も一段と割高になる。その悪影響は甚大である。
   
   特に戦闘機分野では、11年9月に国内生産が終了しており、産業衰退の恐れも指摘されている。それだけに、日本がF35の共同生産に参加する意義は大きい。
   
    日米が共同生産するF35は、レーダーに捕捉されにくいステルス性を持つ次世代機だ。周辺国と緊張関係にあるイスラエルが導入することについて「国際紛争の助長」を懸念する声も一部にある。
   
    だが、F35の開発・生産の主体は米国である。日本が製造するのはエンジンやレーダーなど一部の部品にすぎず、その役割は限定的だ。イスラエルがF35を導入しても、中東地域の不安定化に直結するわけではあるまい。
   
  そもそも国際紛争を助長しないという基準を過度に厳格適用すれば、同盟国の米国への輸出さえ成り立たず、非現実的である。
   
   日本の安全保障環境は、中国の軍備増強、北朝鮮の核・ミサイル開発によって悪化している。中国軍は尖閣諸島周辺などで示威活動を活発化させ、国産ステルス機の開発にも力を入れている。
   
   日本は、今年度から始まった計42機のF35の導入を着実に進めるとともに、F35の共同生産体制を軌道に乗せて、関係国との国際連携を強めることが欠かせない。
   
  同時に、政府には、こうした状況をきちんと国民に説明し、理解を広げる努力が求められよう。

   
   (2013年2月6日00時55分 読売新聞)

   
   
   =================================転載完了

   「平和国家の立場」って何だ?それ、美味いのか?

   
    さて、如何だろうか。
   
    上掲③毎日社説の方は、前回①朝日社説と同様に下記の終盤3パラグラフに要約出来そうだ。
   
   毎1〉  しかし、これでは武器開発の経済性や軍需産業の基盤整備を優先して、平和国家としての立場を捨て去ることになる。
   
   毎2〉  政府の対応について、石破茂自民党幹事長は「三原則の趣旨を逸脱すべきでない」と語り、
   毎3〉公明党も三原則を尊重するよう求めている。
   
   毎4〉  装備品(武器)が防衛的なものかどうかをはじめ、その性格・使用目的によって共同開発・生産への参加を判断するなど、
   毎5〉 あくまで三原則の理念を堅持することを前提に、対応方針を検討すべきである。
   
    つまりは上記毎1〉「平和国家の立場」の為の上記毎5〉「武器輸出三原則の理念堅持」であり、上記毎4〉は殆ど前回引用の①朝日社説、分けても朝5〉~朝6〉にそっくりだ。朝日と毎日の相違点は、あくまで「武器輸出三原則死守」だけを掲げる朝日と、「武器輸出三原則の理念」の背後に「平和国家の立場」を明言する毎日ぐらい。つまりは「背景説明・根拠思想の有無」でしかなくて、求めている事はほぼ一緒だ。
   
    一方上掲④の毎日社説は、冒頭の一文に集約できそうで、
   
   読1〉  武器の輸出など防衛装備政策では、日本の安全保障と国益を踏まえた総合的な視点が肝要だ。
   
とある。続くパラグラフで、毎日とは全くが逆に「武器開発の経済性や軍需産業の基盤整備」を縷々説き、
   
   読2〉  そもそも国際紛争を助長しないという基準を過度に厳格適用すれば、
   読3〉 同盟国の米国への輸出さえ成り立たず、非現実的である。
   
   とまで断じるから、「平和国家の立場」の「への字」も出て来ない事共々、上掲③毎日社説とは美事なまでの好対照を見せている。
   
    逆に前回引用した②産経社説上掲④読売社説の相違点を挙げるならば、最後の一文だろう。
   
   読4〉  同時に、政府には、こうした状況をきちんと国民に説明し、理解を広げる努力が求められよう。
   
    言い換えれば「武器輸出三原則の理念・理想」とか、「平和国家の立場」とか、言い出す/拘泥する国民もまだまだ多い(だろう)から、冷徹な国際社会の現実と利害得失を説明・説得しろと言う要求・要望。これが前回引用③産経社説との相違だろう。
   
    つまるところ…今回の毎日vs読売社説対決は、前回の朝日vs産経と大差なく、その意味では実に「つまらない対決」となっている。
   
    まあ、それだけ「朝日グループ」と「産経グループ」の対立軸・争点は明確になっている、と言う事だろうな。
   
    となれば、私が読者諸兄に問いかける問いも、前回と大同小異なものとなる。
   
  [  平和国家の立場から、]「武器輸出三原則」を墨守ないし強化し、「F-35の部品をイスラエルに輸出しない」事に決めた結果、我が国防衛産業基盤を弱体化させることを、是とするのかね?【Q2A】
   
    言うまでも無かろうが上記【Q2A】は、前回記事の【Q2】に冒頭の[ ]内を追加した、だけである。
   
    如何に、国民。