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どうも、かつて鳩山由紀夫が忌まわしくも悍ましい事に日本国首相であった頃、EUを念頭に置いたらしい「東アジア共同体構想」なる箸にも棒にもかからぬ妄想をぶち上げていたことがあるが、どうやらEUなり欧州なりと言う奴が、ある種の人々には「理想郷」に見えるらしい。以下に掲げるは毎日新聞の社説で、殆ど本記事タイトルに言い尽くしているが「独仏友好の絶賛」である。まずは当該社説、御一読いただこうか。
転載開始=========================================
【毎日社説】独仏友好条約50年 和解と努力の成果だ
http://mainichi.jp/opinion/news/20130128k0000m070081000c.html
毎日新聞 2013年01月28日 02時30分
ドイツとフランスが、第二次世界大戦までの領土争いと敵対の歴史を克服し、首脳間の定期交流など未来志向の協力関係を築く礎となった独仏友好条約(エリゼ条約)の調印から50年を迎えた。
それまで100年近く流血の争いを繰り返した両国は、今では欧州連合(EU)の中核として欧州統合をけん引する原動力となった。独仏和解の50年は、隣国同士がいがみ合いをやめ、相互理解と協調への努力を重ねることの成果と重要性を改めて世界に訴えかけている。
条約は1963年1月22日、当時のドゴール仏大統領とアデナウアー西独首相がパリのエリゼ宮(仏大統領官邸)で調印した。和平条約ではない。年2回の首脳会談や青少年交流強化機関の設置など、具体的な2国間の取り決めを定めた全19条の短いものだ。両国はこれにのっとって首脳や青少年の交流を積み重ね、相互理解と信頼関係を築いてきた。
その成果の一つが、両国の学生の提案から実現した歴史の共通教科書だ。両国の戦争責任の受け止め方や視点の違いも盛り込んで、06年に独仏両国語で刊行された。現在も両国の高校教育の一部で使われ、相互理解に役立ったと評価されてい
る。
今月22日、ベルリンで開かれた記念式典でメルケル独首相は「変革への勇気があれば難題を克服できることを両国はこの50年で学んだ」と条約の意義をたたえた。
独仏間の争いでは、鉱物資源に恵まれた国境のアルザス・ロレーヌ地方(現フランス領)が知られる。19世紀後半の普仏戦争でドイツがフランスから奪い、小説「最後の授業」の舞台にもなった。第一次世界大戦でフランスが奪還し、第二次世界大戦中は一時、再びナチス・ドイツの支配下に置かれた。
だが戦後、資源を争奪するのでなく共同で管理するため、独仏を含む「欧州石炭鉄鋼共同体」が発足。これを足がかりに欧州は統合への道を歩み、平和と安定を築いてきた。アルザス地方のストラスブールでは、EU予算などを審議する欧州議会の本会議が毎月、開かれている。
翻って日本を取り巻く北東アジアでは、中韓と日本が領土をめぐる問題や歴史認識での対立を抱え、北朝鮮の核・ミサイル開発問題など緊張の種が尽きない。
独仏和解の例をアジアにそのまま当てはめることはむろんできない。今の独仏間に領土問題はないし、ドイツと日本では戦争責任と謝罪をめぐる周辺国の受け止め方も違う。ただ、旧敵の隣国同士が首脳の定期協議や市民交流を通じて和解への努力を粘り強く重ねてきた歴史から、くみ取るべきものはあるはずだ。
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五分の一社説
さて、如何だろうか。
改めて言うまでも無かろうが、社説と言うのは「新聞社の主張」であり、それ故に「新聞社の顔」とも言える。それが「新聞社の存在理由」であるか否かは議論の余地もあろうが(※1)、「新聞社の主張」である事にはチョット議論の余地は無い。
然るに上掲毎日社説と来た日には、「新聞社としての主張」は最後の2パラグラフのみで、そこまではひたすら独仏友好絶賛である。ソリャ「絶賛」も主張の一つではあろうが、上掲社説の本筋ではない。肝心なのは最後の2パラグラフだけで、分量としては全体の五分の1ほどしか無い。
だが、まあ、「肝心な部分が短い」とて、「言いたいこと・主張のポイントは絞れている」と言う事でもあり、必ずしも悪い事ではない。「社説」と言う大凡千字程の中に新聞社の主張を盛り込むと言うフォーマットとしては難がありそうだが、それだけなら「文章の下手な社説」と言うだけに過ぎない。
問題は、文章の巧緻さではなく、主張の中身そのものだ。
上掲毎日社説は「仏独友好の絶賛」に続いて、以下の様にその社説を〆る・…と言うより、「仏独友好」をダシに散々使った後で、以下の様にしか主張して居ない。
1> 翻って日本を取り巻く北東アジアでは、
2> 中韓と日本が領土をめぐる問題や歴史認識での対立を抱え、
3> 北朝鮮の核・ミサイル開発問題など緊張の種が尽きない。
4> 独仏和解の例をアジアにそのまま当てはめることはむろんできない。
5> 今の独仏間に領土問題はないし、ドイツと日本では戦争責任と謝罪をめぐる周辺国の受け止め方も違う。
6> ただ、旧敵の隣国同士が首脳の定期協議や市民交流を通じて和解への努力を粘り強く重ねてきた歴史から、
7> くみ取るべきものはあるはずだ。
…早い話が「独仏友好を見習え」と言う事だ。上記4>「独仏和解の例をアジアにそのまま当てはめることはむろんできない。」 と、一応「限定条件」を付けている分だけは、先行記事で取り上げた朝日新聞社説(※2)よりはマシだろう。
だが、先行記事にもした通り、独仏の間には、①元は独仏共にフランク王国であった事 ②キリスト教と言う共通の宗教基盤(※3) ③ 殆ど建国以来対立関係で、数百年戦争している事(※4) と言う諸条件がある点、極東アジアとは異なっている。何より今のEU-NATOが結成されたのは ④ ソ連とワルシャワ条約機構と言う共通の敵があった冷戦時代があったため、だ。
であるならば、先行記事にもした通り、独仏友好から上記7>「くみ取るべきもの」は、「中国と言う共通の敵」の設定であり、「対中国包囲網」に他ならない筈だ。
何能天気に「独仏友好に学べ」だよ。せめて百年、戦争してから言えよな。
<注釈>
(※1) 而して私は、「社説は新聞の存在理由の、少なくとも一半である」と主張し続けているが。(※3) 宗派は違うけどね。(※4) その一部は辛うじて上掲社説にも書かれているが