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以前にも書いた処だが、私は「銃を撃った事が無いGunマニア」だ。
Gunマニアではあるが、我が国が銃社会になってしまう事は望まない。「千里を行くに兵刃を用いず」と言う治安の良さが、銃社会になることなく実現し、維持できるのならそれに越したことはなく、我が国はその理想状態に近い。この治安状態が一定範囲に保たれている以上、今更我が国を「銃社会にしなければならない」理由はほとんど見当たらない。
一方、アメリカが現在銃社会であり、銃社会になった要因の一つがアメリカ合衆国成立=独立戦争=独立革命にも遡る「革命権」と、広大な国土ゆえの治安の不安定に由来する「自衛権」にある以上、その銃社会からの脱却なんてのは容易な事ではない。少なくとも以下の諸条件をクリアしなければ、「銃無き社会を目指す銃規制」には反対するのが道理だろう。
(1) 治安状態の広範かつ大幅な改善=自衛権に頼らずに自らの安全を確保できる環境
(2) 銃を持たない(筈)の市民による革命権の確保若しくは革命権の弱化ないし放棄の合意
我が国の場合は、幸いにして上記(1)の条件は既にクリアしているし、「革命権」なんてコンセプトも知らない国民が相当に居るぐらいだから上記(2)もクリアだ。
が、アメリカはそうではない。上記(1)の治安状態もさることながら、上記(2)の「革命権」は、合衆国憲法にも明記されている権利である。
かてて加えて、地域によっては狩猟や「猛獣から身を守るために」銃を必要とする場合もある。
さらに見落とせないのが、「非合法な銃」だ。これはマフィアやらヤクザやらが隠し持っている武器と言うのもあれば、ただ単に銃としての正式登録を忘れていたとか、遺品として受け継いだとか、種々の理由で「法律の網から漏れた」銃を指す。で、これら「非合法な銃」は、非合法であるが故に、今すぐ強制的徹底的な銃規制を敷いたとしても、「即座に無くならない」し、「恐らくは、完全に無くす事は絶望的」な銃である。
であると言うのに…まあ、こういう報道ってのは、どうよ。
転載開始=========================================
銃所有者の実名・住所を地図にして公開、米紙に非難殺到
http://www.afpbb.com/article/disaster-accidents-crime/crime/2918225/10034238
2012年12月27日 17:59 発信地:ニューヨーク/米国
【12月27日 AFP】小学校での銃乱射事件を受けて米国内で銃規制をめぐる議論が熱を帯びる中、ニューヨーク(New York)州の地方紙が26日、銃を所持する許可を得ている同州の住民3万人超の実名と住所を記載した地図を公開した。銃所有者らからは、プライバシーの侵害だなどと非難の声が上がっている。
米新聞大手ガネット(Gannett)がニューヨーク州ウェストチェスター(Westchester)郡で発行する地方紙「ジャーナル・ニューズ(JournalNews)」は、州内2郡の当局から銃器所持許可を持つ3万3000人以上の実名と住所の情報を取得。双方向型の地図を作成し、「The Gun Owner Next Door(あなたの隣に住む銃所有者)」との見出しを掲げた記事と共に掲載した。
ジャーナル・ニューズ紙によれば、地図上に示されたうち1万3000人については、過去5年間の記録がないことから既に転居または死亡した可能性があるという。また、現在さらにもう1郡の当局に1万1000人分の情報を申請しているという。
掲載された情報は全て、申請すれば誰でも取得できる内容。ジャーナル・ニューズ紙は「情報自由法(Freedom of Information Act)」に基づき合法に取得したものであり、読者は近隣に銃所有者が住んでいるかどうかを知る権利があるとして、掲載の正当性を主張している。
シンディー・ロイル(CynDee Royle)同紙編集長兼副社長は、「このデータベースの公表が論争を招くことは分かっていたが、ニュータウンの銃乱射事件を受け、地元の銃所有状況について可能な限りの情報を共有することが重要だと考えた」「近所の誰が銃を持っていて、身近に何人の銃所有者がいるのか、人々は気に掛けている」などと説明した。所有する銃器の種類や数に関する情報も申請したが、こちらは拒否されたという。
この地図をめぐっては、銃所有者を危険にさらすとの批判が相次いでいる。同紙には、身の安全を心配する人やプライバシーを侵害されたと感じた人から電話が数百件あったという。交流サイト「フェイスブック(Facebook)」の同紙のページにも賛否両論が集まっており、中には同紙や編集者の個人情報をさらす書き込みもある。(c)AFP
乱射事件を受けて銃登録者を公開 米新聞社 銃規制反対派は反撃
http://sankei.jp.msn.com/world/news/130107/amr13010718210002-n1.htm
2013.1.7 18:20 [米国]
【ニューヨーク=黒沢潤】米東部コネティカット州の小学校で児童ら26人が射殺された銃乱射事件を受け、ニューヨーク州の新聞社がウェブ上で、合法的銃所持者の名前を公開した。銃規制反対派を牽制(けんせい)する動きとはいえ、「プライバシーの侵害だ」などと異論が続出している。
ニューヨーク市郊外ホワイト・プレーンズにある「ジャーナル・ニュース」で、情報公開制度を利用し、周辺地区の銃所持者の関連情報を入手した後、グーグル・マップ上で銃所持者の居住地を赤丸で表示している。赤丸をクリックすると、5年ごとに登録更新が必要な銃所持者の名前と住所が自由に閲覧できる。
同社のジャネット・ハッソン社長は「コネティカット州の銃乱射事件以降、銃所持者情報を住民が共有することは極めて重要だ」と訴える。銃規制支持派からも「銃を所持する権利があるのなら、(銃所持者が)情報をあえて隠す必要はない」などと、擁護の声が上がっている。
これに対し、規制反対派からは、プライバシー侵害を指摘する声に加え、「性犯罪者と同列に扱われている」「銃が置かれている場所が特定され、盗まれたら危険だ」など批判の声が上がっている。
規制反対派は最近、ハッソン社長ら同社幹部の名前や住所、電話番号をネット上で公開するなど、“対抗措置”を講じた。同社には脅迫文や“白い粉”の入った不審な郵便物も届いており、同社は7日までに、州内の事務所2カ所に武装警備員を配置した。
=================================転載完了
報道した新聞は売れるだろうが、殆ど役立たず、むしろ有害だ
さて如何だろうか。
上記①、②にある通り、銃登録者の住所氏名を公開した地方紙「ジャーナル・ニューズ(Journal News)」にとっては、大いに話題を呼んだこともあり、宣伝効果甚大であろう。その結果発行部数が増え、新聞は売れて、「ビジネスとしては大成功」となる公算大だろう。
同紙が主張する通り、「銃登録者の住所氏名」は合法的に誰でも入手できる情報であり、且つ「読者が求めている情報」でもあろう。従って、法的には「議論を呼んでいる」と言う「銃登録者の住所氏名報道」は、「問題ない」ものであろう。
「法律的に問題なく」「ビジネスとしては成功(多分)」なのだから「ビジネスライク」に言えば「大手を振って自慢でき、天地俯仰に恥じない」とさえ言えそうだ。
左様、純粋に「ビジネス」と言う視点に立てば、だ。
だが、「アメリカを銃無き社会にする事を目指す」と言う視点からしたらどうか。
或いは「今現在銃社会であり、当面は銃社会であり続けるアメリカに於ける治安」と言う視点では。
「銃無き社会を目指す」と言う視点からするならば、「一石を投じた」と言う事位は言えるかもしれない。だが、先述の通り既に長い事銃社会であり、非合法な銃に事欠かないアメリカに於いて「合法的な銃の所持者情報公開」と言うのは、あまり意味が無い。犯罪者や犯罪歴のある者ならば、「非合法な銃しか持っていない」可能性は高そうだから、尚更だ(※1)。
さらに問題なのは、後者の「アメリカにおける治安」と言う視点だ。上掲①や②には、公開された「銃登録者の住所氏名」によるプライバシーの侵害や身の危険あるいは登録された銃の盗難を懸念する声が紹介されているが、それ以上に問題なのが、「銃登録していない住所」を明らかにしてしまっている点だ。私が泥棒や強盗であるならば、間違いなく「銃登録していない住所」=「合法的に銃を保有していない住所」を優先的に狙う。無論狙う家宅を選定する条件は、「銃の有無」ばかりではないだろう。だが、「合法的に銃を保有していない住所」ならば、運悪く家人に発見されたとしても、銃で撃たれる可能性を減らせる。優先的に狙う条件ではあろう。
無論、それでも家人に発見されて撃たれるかも知れない。報道された情報以降に合法的に銃を入手したか、或いは、元から非合法な銃を所持していた場合は、その可能性がある。
つまりは、「ジャーナル・ニューズ(Journal News)」紙は、話題となり同紙の販売を伸ばすために、合法的に銃を保有していない一般市民の安全を脅かしている、とさえ言い得よう。而して左様な「合法的に銃を保有していない」と報じられた一般市民としては、急遽合法的に銃を入手するか、もっと手っ取り早く「非合法な銃」を入手したくなる者が、相応の割合でいるに違いない。
逆に「合法的に銃を保有している」と報じられてしまった者の方はどうだろう。前非を悔いて保有するすべての銃を、ご近所立会いの下で放棄したりするだろうか。
極めて想像し難い。そういうパフォーマンスを演じ、「銃はすべて放棄しました」と宣言したくなる者はあるだろう。或いはひょっとして「ジャーナル・ニューズ(Journal News)」紙に報じられた抑止効果に期待して、本当に保有する銃を放棄なり売却なりする者も、あるかも知れない。が、私なら…そう、未だ銃を撃った事のないGunマニアたる私ならば、ご近所の手前合法的に登録された銃は放棄して、非合法の銃を入手するだろう。それが我が身を守る最善の方法だから。
まあ、氏名住所を報じられてしまった合法的な銃登録者が、私の様に考えるとは限らない。そんな奴ぁ少ないかも知れない。
だが、ジャーナル・ニューズ(Journal News)」紙の問題の報道が、「銃無きアメリカを目指す」上では「一石を投じる」以上の効果は望めそうになく、「銃登録していない一般市民の安全」を食い物にして、その売り上げを伸ばそうとした、と言うのは、殆ど疑いの余地が無い(※2)。
それはまあ、マスコミの本質、新聞屋と言う商売かも知れない。
だが私は、そんなビジネス、そんな新聞社を、軽蔑こそすれ、尊敬は出来ない。
否、それどころか・・・ブラックファロールの昼飯になりな。ジャーナル・ニューズ(Journal News)紙(※3)。
<注釈>
(※1) まあ、プロの犯罪者は、逆に乱射事件なんて起こさないのかも知れないが・・・(※2) 或いは、「正義感に駆られて」浅はかにも同報道に踏み切った、か・・・ジャーナル・ニューズ(Journal News)紙としては左様主張したいだろうがね。全然信用できないな。(※3) 念のために付け加えておけば、コイツは、悪罵だぜ。