蛇の道は蛇
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平成二十五年 西暦2013年 皇紀二千六百七十三年 が幕開けしたというのに、当ブログでは未だ「正月らしい」記事をアップしていない。時事問題や歴史ネタではなく「趣味に走った」映画紹介でお茶を濁しているのは、自民党政権成立によってある程度曙光を感じるものの、前門の虎後門の狼で課題山積、予断を許さない所ではない我が国の状況では、こんな記事でもないとそれこそ「正月らしくない」記事しかできあがり難いと考えたからでもある。
とは言え、そこは年末には忘年会を開き、新年と共に年神様がやって来るのが、我が国・日本だ。日本人としては一つぐらい「正月らしい」記事をアップしたいのが人情と言うもの。そこで今回取り上げるのは、今年の干支、蛇である。
蛇が神格化されているのは日本に限らない。インド起源とされるナーガ神は上半神が人間で下半身は大蛇(※1)として描かれるし、古代メキシコのケツァルコアトル神は翼の生えた蛇として描かれる。キリスト教じゃぁ「最初の人類・アダムとイブを唆して、「知恵の実」を食べさせた」悪者(※2)にされてしまっているが、「神格化された蛇」ってのは案外多い。
日本などで蛇が神格化されているのは、蛇の生息地と水が密接に関係しており(※3)、水を司る水神、さらには農耕神とされたから、と言う説があるそうだ。こう言う文化人類学上の学説は、私のような理系の人間から見ると実証も反論も難しいから(※4)、「もっともらしい」とか「説得力がある」とか言う、かなり恣意的な基準でしか判定できないが、我が国の蛇に限って言えば「在りそうなこと」とは言いえよう。
干支というのは大陸渡来の思想では在ろうが、龍神と並んで蛇神が相応の勢力を為し、八頭の大蛇がスサノオに討伐されてその神威を与えた(※5)と言う神話を我が国が有するのは、少なくとも干支=大陸渡来思想の直接的結果ではあるまい。
しかしながら、日本では蛇は神にもなっているのだが・・・蛇の名を冠した武器・兵器と言うのは実に少ない。直接「蛇から出た」はずなのに、三種の神器の一つは「草薙の剣(※6)」と蛇とは全く関係ない名になっているし、「龍」は帝国陸軍爆撃機や潜水艦や空母の名になっていても「蛇」はトンとない。
逆に、「聖書の悪役」であるのに英語をはじめとする西欧語では蛇の名を結構兵器・武器の名にしてしまう。有名なところではベル社の「コブラ」ファミリーで、AH-1攻撃ヘリ「コブラ」が発展してAH-1W「スーパーコブラ」だのAH-1Z「バイパー」だのになっているのは、第二次大戦の戦闘機P-39「エアラコブラ」やP-63「キングコブラ」の「伝統」を受け継いだため。つまりは「筋金入りの蛇好き」がベル社と言うことになろう。
かと思うとイギリスのジェット戦闘機Venomは直接蛇ではないが「蛇毒」ではある。
しかしなんと言っても極めつけは、アメリカ設計の空対空ミサイルAIM-9サイドワインダーだろう。一時は「西側世界の標準短距離空対空ミサイル」とも言いえたこのIRシーカーAAMの名は、和名を「ヨコバイガラガラヘビ(※7)」と言うらしい毒蛇の名前。この毒蛇が生体赤外線センサーを有して暗闇でも獲物に喰らい付けると言う事から命名されたそうだから、「蛇の名前だから付けた」訳ではなさそうであるが。
まあ、「聖書の悪者」であるからこそ、「悪」としての力を有して、兵器・武器の名前としては採用しやすい、ってことなのだろう。
逆に日本のように蛇が神様にまでなってしまうと、そう仇や疎かに兵器・武器の名とはしがたい、ってことか・・・・と考えたが、「龍」を冠した武器・兵器は日本でも西欧語でも結構あるんだよなぁ。
蛇の神格化と、兵器・武器名としての採用の間には、残念ながら強い相関はなさそうである。ただ、日本と西欧語との対比は、なかなか興味深い・・・と、理系である私は文化人類学的に考察するが、如何なものだろうか。
<注釈>
(※1) つまりSexは・・・なんて不敬な想像は、神罰ものだろう
(※2) と言うよりは、一種の「悪魔」であろう。無理もないが。何しろ一神教だ。「父なる神」以外は神なんてものはなく、宗派によっては「父と子(イエス・キリスト)と精霊」は「三位一体」=同一人物( って解釈は、まあ、私が異教徒だからかも知れないが )と言うかなり強引な解釈で「一神化」しているぐらいだ。
(※3) 生物学的に言うと、蛇のような爬虫類は両生類より格段に乾燥に強いから、砂漠地帯に生息する蛇も相応に居るんだが・・・
(※4) と、言うよりは「実証」って一体どうやるんだ?所詮、再現実験やダブルブラインド法などの「理系の実証法」に比べたら、「状況証拠の補強」でしかないのではないか。
(※5) 「討伐された後に尻尾から名剣が出て来た」と言うのは、「神としての力を譲り渡した」と考えるのが、至当・・・・と、理系の私は考える。
(※6) その、実戦に於ける抜群の功績をたたえた名称、とも言えるが。
(※7) 「コ」が抜けると、放送禁止かも知れない。差別用語ではないだろうが。