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 「翻訳」ってのは、存外大変な仕事、なんだろうと思う。少なくとも二つの言語に精通して居なければならないし、内容によっては専門用語や俗語、風俗、歴史、俗信等にも通じていないと「正しい翻訳」にならない。

転載開始=========================================

日本、ミサイル防衛システムを誇示
2012年 12月 10日 17:19 JST
 
http://jp.wsj.com/World/Europe/node_561102?mod=WSJ
【東京】日本列島の上空を通過して衝撃を与えた1998年の北朝鮮によるロケット発射以来、日本はミサイル防衛システムの構築に約1兆円を投じてきた。日本は今や、米国以外では最も洗練されたミサイル防衛システムを備える国となった。このシステムは他国へ輸出する用意も十分にできているものだ。

北朝鮮の策略と中国の潜在的な脅威から国を守るために力を注いできた、この日本の野心的で巨額な取り組みは、早ければ10日にもその成果が試されることになる。北朝鮮が「人工衛星」と主張する長距離弾道ミサイルの発射実験が、この日から発射予告期間に入るためだ。日本政府は北朝鮮のミサイルが日本南端の軌道上を通過する可能性があると警告している。この週末、北朝鮮は発射が遅延する可能性があると発表したが、具体的な日時は示されていない。

日本の防衛省に配備されたPAC3前で話す野田首相
イスラエルのいわゆる「鉄のドーム」と呼ばれるミサイル防衛システムの成功がここ数週間にわたってちょうど注目を集めてきたが、ライセンス認可を受けた米国の技術を利用する日本の多層的な弾道ミサイル防衛網プログラムは、机上の計画から全国規模での完全配備の段階へとここ数年の間、水面下で進められていた。

この計画の一環として、早ければ2018年にも、日本は米国との共同開発による次世代迎撃ミサイルの本格製造を開始すると予定されている。米国は日本が数十年間わたる武器輸出規制を最近、緩和しつつあることから、これらのミサイルを他国へ輸出することを望んでいる。

最新鋭の日本の防衛システムは陸上の地対空誘導弾パトリオットミサイル(PAC3)と海上自衛隊のイージス艦、そして、数十のレーダーからなる。米国以外で、弾道ミサイルを大気圏外の上層と大気圏内の下層の双方で、迎撃可能な能力を備えている国は日本だけだ。

米国以外で海上配備型迎撃ミサイル(SM3)を備えた国として唯一であるという点で、日本は最先端を行っている、と立命館アジア太平洋大学客員教授で元防衛省防衛研究所研究部長の小川伸一氏は話す。

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The Wall Street Journal
ミサイル防衛システムの配備の様子
専門家らは日本の防衛システムをイスラエルの「鉄のドーム」と比較するのは難しいと指摘する。「技術的にシステムはかなり異なる。鉄のドームは比較的遅い、低空飛行のロケット兵器を撃ち落とすために設計されているが、日本や米国が使うより洗練されたシステムは、これより高速でもっと高い弾道ミサイルを迎撃するために設計されている」と話すのは、ケンタッキー大学で軍事理論を教えるロバート・ファーリー教授だ。ファーリー氏は今回の北朝鮮による発射予告についてのブログを書いた。

日米共同の実射による運用訓練は幾度か実施されているが、日本はまだ実際に迎撃を行ったことはない。しかし、これもすぐに変わるかもしれない。森本防衛相が7日、ミサイルなどの日本の領土領海への落下に備えて破壊措置命令を発令したためだ。

この破壊措置命令は北朝鮮との緊張が高まるなか発令された。これは以前にも発令されたことがあるが、一度も実行されたことがない。北朝鮮が発射遅延の可能性をこの週末に発表する以前、同国は日本とその他の国からの強い抗議にもかかわらず、10~22日の間に「人工衛星」を打ち上げると予告していた。

「しっかりと国民の命と財産を守るため、万全の態勢で臨みたい」と、野田佳彦首相は東京・市ヶ谷の防衛省に配置されたPAC3部隊を視察する際、記者団に述べた。

最新型弾道ミサイル防衛システムの能力向上を示す1つの材料として、日本の複数の防衛省関係者は2006年から09年に北朝鮮が発射した長距離ミサイルの位置を特定できる能力があったことを指摘し、日本がこれらのミサイルを迎撃することも問題なくできたことを示唆した。 

防衛政策企画官の岩池正幸氏は「当時(の北朝鮮ミサイル発射を)正確に監視できたので、非常に自信がある」と話す。

たとえ、日本のイージス艦に技術的にはミサイル迎撃能力が備わっていても、日本は地上配備型のPAC3を使うことを示唆している。また、これは日本の領土領海が危険にさらされた場合に限るとしている。ミサイル発射直後の海上からの迎撃が北朝鮮によって攻撃行為とみなされかねない、と専門家は指摘する。

ミサイル防衛システムは1993年に初めて導入された際、その高額な費用に加え、近隣諸国から反感を買う可能性があるとして議論を呼んだ。しかし、その5年後、北朝鮮が打ち上げた長距離多段式ミサイルが日本北部の上空を通過して太平洋に落下したことから、国内の反対派の声も消えた。

数年の調査研究期間を経て、2003年に日本は米国と弾道ミサイル防衛技術のライセンス契約を結ぶことで合意した。

以来、ミサイル防衛プログラムの推進が加速され、2007年には最初のPAC3やイージス艦が配備された。今日、日本は低空飛行ミサイルの迎撃が可能な16基のPAC3と、弾道ミサイルの大気圏外での迎撃が可能なイージス艦4隻を保有している。

次の段階は潜在的にさらに野心的で、かつ議論を呼びそうだ。日米両国は超高速で射程距離の長いミサイルに対する新しい迎撃システムの運用テストを始めることになっている。一部の政府高官が「ゲームチェンジャー(従来の様相を一変させるもの)」と呼ぶこれらのミサイルの製造は2018年にも始まると予想されており、米国は日本がイージスシステムの技術をほかの同盟国にも移転するよう強く日本に圧力をかけている。

日本は基本的に、弾道ミサイル防衛のアジア太平洋地域への拡大に関する米防衛省の声明が描き出す限りにおいて合意している。それは米国防総省ミサイル防衛局のホームページに記載されており、そこには「日本と共同開発中のSM3ブロック2Aは、ルーマニアとポーランドの陸上配備型イージス弾道ミサイル防衛施設と海上のイージスBMD艦への配備に向けてスケジュール通りに進んでいる」と記されている。

ただ、日本が武器供給国になることに対する国内および近隣諸国の警戒心に敏感な日本の高官らは、公式には何も決定されていないとあわてて述べた。しかし、日本は昨年、1967年以降、自国に課していた武器輸出規制を緩和した。日米合意下で共同開発された武器は一般論として第三国に移転できるが、防衛政策企画官の岩池氏は「いまのところ具体的に(技術転換計画が)ない。まだ開発段階だ」と述べた。

最新鋭の迎撃技術に加え、日本のミサイル防衛システムは赤外線偵察衛星や強力な「Xバンドレーダー」を含む米国の最も進んだ早期警戒システムと結びついている。「AN/TPY2」と呼ばれる最初のXバンドレーダーは青森県に5年前に配備され、米軍が運用している。米軍は同レーダーを警戒網の重要な一端ととらえている。

在日米軍司令官アルバトーレ“サム”アンジェレラ中将は先月、記者団に対し「ミサイル防衛における日米協力で大きな前進だ」だとしたうえで、「北朝鮮からの危険はこの防衛に含まれる」と述べた。

今年9月、訪日中だったパネッタ国防長官は2基目のXバンドレーダーの設置を約束した。政府高官らは早ければ来年にも2基目が配備されると予想している。

記者: Chester Dawson  


=================================転載完了

取材不足と言うより、『煽り』ではないか


 さて、如何だろうか。

 タイトルにもした通り、私が「今頃何を言ってるんだ」と感じたのは、上掲記事の以下の一文による。

1〉 日本の多層的な弾道ミサイル防衛網プログラムは、机上の計画から全国規模での完全配備の段階へと
2〉ここ数年の間、水面下で進められていた。

 水面下」だと、笑止な。我が国の防衛費はこれ以上の期待し難いほど透明で、ミサイル防衛の配備だって防衛白書に明記されている処。一体何がどう「水面下」に潜っていると言うんだ??WSJ紙記者の認識不足・取材不足・勉強不足の自白以外の何物であろうか!…と感じたから。

 だが、上掲記事の後段は、我が国にミサイル防衛配備を相当詳細に記述している。つまり、少なくともこの記事を書く時点に於いて、WSJ紙記者・Chester Dawson氏の認識も取材も勉強も、相応のレベルに達しており、十分満足のいくものと言って良さそうだ。であるならば、上記2〉の「〉ここ数年の間、水面下で進められていた。」と言う表現は、一体どこから来るのだろうか。

Case1: 「Chester Dawson記者は、日本のミサイル防衛について今回初めて取材し、十分な知識を得た。それまでは日本のミサイル防衛について、殆ど知らなかった。」
 このCaseは、Chester Dawson記者にとっては相当恥ずかしいCaseであろうが、その恥を態々上記2〉の様に「曝す」理由が判らない。先述の通り「水面下に潜っていた」のはChester Dawson記者が見逃していた/見落としていた、だけなのだから、上記の通り「認識不足・取材不足・勉強不足の自白」であり、尚且つその「自白」をそのまま紙面に記事として掲載してしまったWSJ紙の恥でもある。
 だが、記者自身にとってもWSJ紙にとっても恥であるだけに、このCaseの可能性は低そうだ。そんな「恥」を曝さないのが、編集部やデスクの任務でもあろうから。

Case2: 「Chester Dawson記者は、日本のミサイル防衛について、十分な知識を持っていたが、今回記事タイトルにもした通り「日本のミサイル防衛システム誇示」を強調するために、上記2〉の様に「ここ数年間は水面下で進められた」と表現した。」
 これも実は記者自身とWSJ紙自身にとってかなり恥ずかしい事の筈だ。それは偏向報道であり、虚偽報道ではないにしても誇大報道ではある。だが、その誇大報道こそ意図したものであるから、Case1より可能性は高い。それ故に、本省の章題を「『煽り』ではないか」としたのである。

Case3: 「Chester Dawson記者の英文記事を日本語に訳した際に、意図する/せざるにかかわらず「誤訳」が生じた。」
 このCaseの可能性も否定し難いと見たからこそ、本記事冒頭に「翻訳の難しさ」を挙げている。さらには「意図的な誤訳」による「『煽り』の可能性」すら、否定し難い。自衛隊や防衛省に対し批判的な偏向報道は、マスコミの「デファクトスタンダード」であるから、そんな恣意的な「誤訳」は、大いに在りそうな事と思われる。
 但し、このCaseは、上記Case1及びCase2に比べると、Chester Dawson記者自身にとってもWSJ紙にとっても「恥ずかしくない」Caseだ。恥ずかしいのは当該記事を「誤訳」して見せた、WSJ紙日本語版の翻訳者、と言う事になる。

 だからこそ、英語の原文に当たりたかったのだが…原文(英文)は会員様のみ閲覧なので判らない。

 どうなんだね、WSJ紙よ。