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 先ず、言わねばなるまい。上掲【1】は「卒原発工程表」となって居るが、これは工程表ではない。せいぜいが「ジョブリスト」とか「ToDoリスト」としか呼べないモノで、時系列情報は「B)3年間の経過措置」「C)中後期プログラム」にリストを分けて、「今後3年間分」と「それ以降の7年間分」とに「ToDoリスト」を二分しているだけだ。

 上掲【2】には幾らかマシな「工程表」が掲げられているが…中身は殆ど上掲【1】のまま、尤もらしいグラフだか線表だかもどきが掲げられているが、「具体的にいつまでに何をするか」は、やはり「3年後」と「10年後」と言う2カ所の「締切」を示すだけ。上掲【2】Ⅱ「卒原発の二段階」と銘打ったのは適切で、その章題通り「二段階のステップを示しているだけ」で、それ以上でもなければ、それ以下でもない。

 尚且つ「今後三年間」「以降の七年間」のジョブとして示されたものも凄まじいんだが、ここではスケジュール的に最も厳しいのではないかと言う一点にだけ触れよう。「以降の七年間」の方の上掲【2】(2)⑤「地域分散型の再生可能エネルギーの飛躍的な普及環境により、内発的・創造的なエネルギー産業を創発し地域の雇用拡大と経済の活性化を図る。」を取り上げる。

 先ずこの上記【2】(2)⑤前半「地域分散型の再生可能エネルギーの飛躍的な普及」であるが、現時点においても「再生可能エネルギー」が発電量に占める割合は、水力で1割、その他の太陽光・風力・地熱などがひっくるめて約1%にしか過ぎない。水力を今後「飛躍的に普及」させるのは、理想的ではあろうが不可能であろう。それはダムの建設を意味し、ダムは建設に数年を要する。現時点で計画もないダムを立地選定から建設・完成・稼働(発電)開始まで「今後10年」と言うのは一応「可能な数字」ではあろうが、何処に何カ所でどれぐらいの発電量となると、「実に心許ない」では全く済まない。単純計算で言って、今1割を占めている水力発電に二割を分担させようとすれば「現状の二倍の数のダムが必要」と言う事だ。
 「小規模水力発電」なんて言い出す奴が居そうだが…ソリャ数は多く作れようし、工期も短かろうが、そのトータルで一体どれほどの電力を稼ぎ出せると言うのか。

 有効落差4.8mで最大出力100kWの小規模発電所が年間76万kWhを発電する事例があるそうだから、(*1)これからこの水力発電所の稼働率を計算すると、

 76万kWh ÷ (100kW × 24h ×365日)= 86.76% と、これは可也優秀な稼働率だ。

 一方新型の原子炉1基は大凡1GW = 100万kwである。この稼働率を7割として年間の発電量は、

 100万kw × 24h × 365日 × 稼働率0.7 = 613200万kWh であり、上記100kW水力発電所の8000倍以上。これで「新型原子炉1基分」だから、日本全国50カ所以上の原発の百分の1以下が「稼働率9割近くを誇る100kW小規模水力発電所の8000カ所に相当する訳だ。原子力の威力を誉むべきかな。

 上記URL資料17ページには「包蔵水力調査結果」と言うのもあり、水力発量に対する未開発の出地点も棒グラフになって居る。これによると、「現状開発済みの水力発電所を場所で2倍にする事すら出来ない」事が示されている。即ち「私の自然エネルギー推進論」にて「現時点でまともに役に立つ唯一の再生可能エネルギー発電源」と認定した水力からして、この体たらくなのである。

 それ以外の再生可能エネルギー、太陽光、風力、地熱、バイオ燃料・・・・羅列するだけ虚しいな。ソリャ現状が「束になっても1%」だから、「飛躍的に普及」させるだけなら「今後10年の後半7年」で可能かも知れない。だが、その意味するところは、「現状の10倍まで飛躍的に普及させたとしても、電力の1割しか担えない」と言う事。それで「スケジュールは達成」かも知れないが、それは「卒原発スケジュールの達成」ではなかろう。唯の自己満足でしかない。


<注釈>



「未来の党」の主張する原発代替エネルギー


 上掲【2】で「原発代替エネルギー」として挙がっている項目は、拾っていけば、以下の通りで、実は皆無に近い。

 【2】(1)②電力システム改革の断行」は「再生可能エネルギーの普及、新しいエネルギー産業の創造の基盤をつくる。そうだが、「電力システム改革の断行」自体は代替エネルギーでもなんでもなくて、唯の「代替エネルギー支援」でしかない。それ自身は1kwと言えども発電しないのだから。

 【2】(2)③節電発電所の普及拡大とエネルギー効率化を進める。」「無理のない節電・省エネがむしろ経済・経営に良い環境をもたらす仕組みを整備する。」と言うのだが、要は「節電」でしかない(*1)。 ああ、東京新聞も「節電で脱原発と二酸化炭素25%削減の両立」と社説で堂々と主張して居るから、少なくともこの項目は「東京電力並みの脱原発原理主義」にとどまっている、と言えよう。が…「エネルギー効率化」は「無駄取り」でしかないから、効果には限界が有る(*2)上、これを「原発代替エネルギー」と呼ぶのは、自画自賛が過ぎようと言うものだ。
 大体、「無理のない節電・省エネ」なんてのは電力料金/電力コストの削減なんだから、「仕組み」も何も現状でも「経済・経営に良い環境をもたらす」モノだろう。何が「むしろ」=逆接なんだか、サッパリ判らないぞ。日本語は確かか、「未来の党」(修辞的疑問文)

 【2】(2)④天然ガスなどの分散型発電・コジェネレーションの普及促進を通じ、石油・石炭への依存度を減らす。」と言うのは「火力発電の効率化」と要約出来よう。これは「再生可能エネルギー」なんてイメージばかりの御題目よりは遥かに現実的なエネルギー源・発電源ではある。
 だが、今現時点で原発の代替をしているのは正にその火力発電であり、【2】(2)④は「現状の追認と若干の改善」でしかない。肝心要の「改善」は、「火力発電燃料の天然ガス化とコジェネレーション」によるものである。とても「原発代替エネルギーを示した」とは言えないし、二酸化炭素排出量の問題がある。「天然ガス化とコジェネレーション」は、火力発電所から出る二酸化炭素量を「石炭・火力による現状の火力発電所」よりは減らせるものであろうが、かつて原発が分担していた3割の発電量を代替したらトータルの「発電による二酸化炭素排出量」が減るとは到底思えない。況やかつて鳩山由紀夫が口走って「国際公約」に祀り上げらら、未だ祀り上げられたままである「1990年との比較で25%の二酸化炭素排出量削減」なんぞ夢のまた夢。
 少なくとも、上記【2】(2)④を掲げるからには、「1990年との比較で25%の二酸化炭素排出量削減」と言うかつて掲げた目標の放棄を、明言すべきであろう。

 【2】(2)⑤地域分散型の再生可能エネルギーの飛躍的な普及環境」これにより内発的・創造的なエネルギー産業を創発し地域の雇用拡大と経済の活性化を図る。」そうで、ここで漸く 「二酸化炭素排出量を増やさずに済む(と期待できる)」発電源として「地域分散型の再生可能エネルギー」が登場する。「卒原発の段階」のそれも後段「今後3年後以降の7年間」のさらにドン尻近くの登場であるのは、まあ置くとしても、「再生可能エネルギー」の可能性と実態は上記「卒原発スケジュール」と以前の記事「私の自然エネルギー推進論(*3)」で述べた通り。最も現実的である再生可能エネルギーたる水力からして上記の体たらく。太陽光や風力は設置面積の広大さ(*4)は未だしも、大容量畜放電技術が無ければまともな発電源としてすら扱えない。


<注釈>

(*1) 「節電発電所」ってのが何か良くわからないので、実はあまり自信が無い。「発電所が節電する」って、どういう状態だぁ?

(*2) 「現状のエネルギー効率がひどく悪く、これを原理的に大幅向上できる状態」にない限り、「効率向上」で稼ぎ出せるのは、1割2割の話でしかない。