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 「孫子」と言えば大陸は支那ご自慢の古典的兵法家。その古典的兵法は当然古典ではあるが、戦争には万古不易な部分があり、例えば「戦争も外交も国益追求(*1)の手段である」と言うのは万古不易なところ。兵法三十六計(*2)の「遠交近攻」にも通じる部分がある。
 
 その「孫子の兵法」。あれこれ有名なフレーズがあるが「百戦百勝は善の善なる者に非ず」なんて一寸「兵法らしからぬ」フレーズもある。「敵を知り、己を知らば、百戦危うからず」と合わせて考えると、「敵も己も熟知したとて、それで百戦百勝するのは最善ではない」と言う事になるから、「兵法らしからぬ」処だろう。
 だが、それは、「兵法」を戦争・軍事的側面のみで捉えるから。軍事的側面からすれば「百戦百勝」は「最善」以外の何物でもないが、戦争の目的は、外交と同様に「国益の追求」であるから、国益を確保するためならば、何も戦争して「百戦百勝」するばかりが能ではない。百戦百勝できる体制にしておいて、或いはそんな体制にあると相手に思い込ませて、国益を確保出来れば、それで目的達成。「兵は凶事」=「軍事行動は国家の存亡をも左右しかねない重大事(*3)」なのだから、兵を動かさずに戦争に勝てればそれが最上策だ。
 
 で、南シナ海、東シナ海、内陸はモンゴル、チベット、果ては台湾から沖縄まで、領土的野心全開の中国=中国共産党政権相手にその「孫子流、戦わずして勝つ方法」がネットに流布しているというのが報道記事。我が国としては、看過もなるまい。
 

<注釈>

(*1) 「何が国益か」には時代による変遷が認められるが。 

(*2) 孫子と並んでポピュラーながら、孫子よりだいぶ新しい、そうだが。 

(*3) こちらはどうも、違う意味で使われる事が多いようだね。 



転載開始========================================= 

【矢板明夫の中国ネットウォッチ】戦わずにして中国に勝てる6つの方法
http://sankei.jp.msn.com/world/news/121028/chn12102818010004-n1.htm
2012.10.28 18:00 [矢板明夫の中国ネットウオッチ] 
日本政府が沖縄・尖閣諸島の国有化を9月に発表したことを受け、同諸島の領有権を主張する中国が猛反発し、両国間の文化交流を中断させるなどさまざまな対抗措置を打ち出した。中国のインターネットでも政府の強硬姿勢にあわせて「釣魚島(尖閣諸島の中国語名)を武力で奪還せよ」と言った勇ましい「主戦論」があふれている。そんななか、「戦わずにして中国に勝てる6つの方法」という中国の弱点を指摘する書き込みがネットで話題となった。

「ヒラリー長官の警告」と題される書き込みは、米国のクリントン国務長官が訪中した際、中国の指導者に語った内容とされているが、実態は中国人のネットユーザーによる作り話とみられる。

クリントン長官は中国の指導者に対し、「貴国がフィリピン、ベトナムおよび日本と開戦すれば、米国は6つの対策を考えている。一兵卒も使わず、中国を負かすことができるだろう」と言ったという。

具体的な「対策」とは以下のようになっている。(1)中国の政府高官が所有する海外の銀行口座の残高を発表し凍結(2)米国のパスポートを持つ中国人官僚の名簿を公表(3)米国に住んでいる中国人高官の家族の名簿を公表(4)ロサンゼルスにある「妾村」を一掃(5)米国在住の中国人高官の家族をグアンタナモ刑務所に収容(6)中国国内の失業労働者などの不満分子に武器を提供。

内容は若干の重複があるが、今日の共産党政権の“アキレス腱(けん)”を見事に指摘した書き込みといえる。

少し説明すると、今日の中国では、家族と財産を海外に移し、本人がいつでも逃亡できるように外国のパスポートを持っている共産党幹部が多くいる。中国の捜査機関がなかなか手を出せないとの理由で、高官家族の移住先として圧倒的に人気が高いのが米国だ。例えば、高速鉄道建設に絡む汚職事件で昨年に摘発された張曙光・元鉄道省運輸局長は米国で3軒の高級邸宅を持っているほか、米国とスイスで28億ドルの預金があると報道されている。

張元局長のケースはあくまで氷山の一角といわれている。米国が中国の政府高官の海外財産のリストを公表すれば、共産党政権への中国民衆の怒りは一気に噴出するに違いない。中国内部が大混乱することは必至で、外国と戦争をするところでなくなる。

また、ハーバード大学に一人娘を留学させている習近平国家副主席を始め、多くの中国の指導者の身内が米国内にいる。すでに米国に“人質”を取られているといえ、中国の指導者は米国に強く出られない事情がある。

「ロサンゼルスの妾村の一掃」とは、多くの高官は妻を米国に移住させたほか、愛人にも米国の豪邸を買い与えている。それがロサンゼルス周辺に集中しているため、ネットでは「ロサンゼルスに中国の妾村ができた」と揶揄されている。妻よりも愛人を大事にしている高官が多いため、家族だけではなく愛人を一緒に刑務所送りすれば、中国高官たちへ与えるダメージはさらに大きい、ということを言いたいようだ。

最後にある「不満分子に武器を提供する」というのはシリアの反政府勢力に欧米が武器を提供したことからえた構想のようだが、中国当局が一番恐れる措置かもしれない。

中国国内では、土地の立ち退き問題などで毎年20万件以上の暴動が起きているとされており、不満分子に武器が提供されれば、人民解放軍を相手にたちまち内戦が始まりそうだ。

「ヒラリー長官の警告」は多くの中国国内のサイトに転載されている。「恐ろしい。戦争ができないのではないか」「これらのアイデアを絶対にアメリカに教えてはダメだ」といった感想が寄せられている。


=================================転載完了

その程度の事、アメリカが考えていない訳が無い。実行・実施だけの問題だ


 さて、如何だろうか。
 
 報道記事タイトルにある、「戦わずして中国に勝つ6つの方法」とは、以下の六項目である。
 
(1)中国の政府高官が所有する海外の銀行口座の残高を発表し凍結

(2)米国のパスポートを持つ中国人官僚の名簿を公表

(3)米国に住んでいる中国人高官の家族の名簿を公表

(4)ロサンゼルスにある「妾村」を一掃

(5)米国在住の中国人高官の家族をグアンタナモ刑務所に収容

(6)中国国内の失業労働者などの不満分子に武器を提供。
 
 第一印象は、「上手い処突いているな」である。(1)はある種の「経済制裁」だが、「中国の政府高官」を標的にしているのが味噌で、それが(2)(3)(5)とも連携して、巨大な「中華人民共和国」に対する内部分裂工作となって居る。(4)と(5)はやはり「中国の政府高官」を標的にしているが、こちらはある種の人質誘拐であるから、北朝鮮や中華人民共和国ならば平気でやれるだろうが、民主主義国家・米国ではそうやたらにはやれない…とは言え、第2次大戦中に日系米国人を強制収容した(*1)実績があるから、必要とあれば実施するだろう。
 比較的実施しやすいのは(2)(3)であろう。これらは「個人情報の開示」にはなりそうだが、「個人情報の開示」程度のハードルでしかない。この情報開示自体は違法でも非人道的でも制裁的でもなく、その情報で中国が混乱するのは中国の勝手だ。だから、実施しやすい。
 一方の(6)は、いわば「明石大佐の秘密工作」であり、少なくとも「準戦時的対応」である。無論、記事にもある通り、「シリアの反政府勢力に欧米が武器を提供した」最近の事例にもある通り、必要とあればこれも実施されるに違いなく、また相応の効果を期待できる。
 
 総体的にこの「戦わずして中国に勝つ6つの方法」、相応の効果を期待できそうで、中国のネット上で、
 
1〉 「恐ろしい。戦争ができないのではないか」「これらのアイデアを絶対にアメリカに教えてはダメだ」

などと騒がれるのも、故なしとはしない。

 が、言うべき事が二つある。
 
 先ず第一に、上記1〉「これらのアイデアを絶対にアメリカに教えてはダメだ」なんて呑気な感想がネット上にはあるそうだが、こんなアイディアはとうの昔にアメリカは知っているだろう事。アメリカは日露戦争直後からオレンジ計画だのレインボー計画だのを練って対日戦の準備を進めてきた国だ。世界列強の一角に辛うじて食い込んだとはいえ、危うく日露戦争による滅亡を免れたばかりの我が国に対して戦争準備を為していたアメリカが、対中国戦争の計画を練り、準備をしていない訳が無い。その過程で上記(1)~(6)のアイディアをどこまでまじめに考え、検討したかは判らないが、アイディアとして浮かばないとすら思う/願う方がどうかしている。
 
 第二に上記(1)~(6)の方策は、
 
2〉 クリントン長官は中国の指導者に対し、
3〉「貴国がフィリピン、ベトナムおよび日本と開戦すれば、米国は6つの対策を考えている。
4〉 一兵卒も使わず、中国を負かすことができるだろう」と言ったという。
 
として流布していると言う事を問題視しなければならない。端的に言って我が国としては、我が国に対し戦争を仕掛けてきた中国に対し、上記(1)~(6)の方策で事足れりとされるのは、困るのである。
 それらの方策が有効である事は認めるが、それで中国が即座に侵略戦争を止め、停戦するほどの劇的効果は期待しがたいから、である。
 
 かつて報じられた通り、我が国が「非核三原則」を宣した背景には、「日中開戦の場合、アメリカが中国に対し先制核攻撃をかけると言う保証ないし確証があったから。」である(*2)。我が国は未だ非核三原則を掲げているのに対し、中国はICBMからSLBMまで核兵器持ちまくりになっているから、アメリカとしては中国に対し先制核攻撃はかけ辛くなっている。況や、「一兵も損ねることなく勝つ」のは上策とは言え、そんな安全策しかとらない、と言うのは我が国にとっては甚だ都合が悪い。
 
 とどのつまりは、己が主権・領土・領海・領空は、己が手で守らねばならない、と言う事。
 
 上記(1)~(6)の方策程度は実施してもらうためにも、日米同盟は重要である、と同時に、アメリカが「一兵も出さない」事態に対しても、中国に対し勝つ方策が、我が国には必要なのである。無論、それには、我が国独自の核武装を含む、広範な、冷徹な議論が不可欠であろう。
 
 Parabellum!
 戦いに、備えよ。



<注釈>

(*1) ドイツ系やイタリア系は御咎めなしで。