応援いただけるならば、クリックを⇒ https://www.blogmura.com/

 当ブログの「社説比較」シリーズ開始以来書いている事だが。日本の新聞を読み比べるならば、朝日と産経を比較するのが手っ取り早い。各紙の社説が一斉に同じ論調で同じ題材を取り上げる事もある(*1)が、「国論を二分する」様な題材については、朝日と産経が類似の主張と言う事(*2)は全く記憶が無い程だ。だから、この二紙は「社説対決」シリーズの常連・乗客であって然る可きだが…実は殆どの場合両紙は対立するので、逆に「社説比較」シリーズ記事になって居ない。

 だが、今回は鮮やかなまでのコントラストをなしているので、朝日対産経で「社説対決」シリーズ記事とした。両紙が社説で取り上げるのは、我が国のほとんどの原発が稼働停止しているが故に生起し始めた(*3)電力料金値上げ(*4)である。

<注釈>

(*1) それはそれで「国論は一致した」とも言えるが、私ならば「警戒警報発令」だ。「何かある」可能性を念頭に置くべき事態だ。

(*2) それ即ち、朝日-産経連合と、それ以外の主張が対立している、と言う図式。「記憶にない」どころか、ちょっと想像を絶するほどだ。

(*3) 太陽光、風力共に火力や原発の数倍の発電コストがかかるから、今後「再生可能な自然エネルギー」の「普及」が進めば、さらに電力料金は値上がりする。理の当然だろう。

(*4) 後述の通り、朝日は「電力会社の経営改善」で電力料金値上げを回避しろ、と主張して居るが、原発を再稼働した上で「経営改善」すれば「電力料金値下げ」さえ可能な筈なのだが…まあ、脱原発原理主義者=原理主義者の一種に、モノの道理を説いても無駄か。所詮朝日は、「脱原発」が目的であって、電力料金値上げ回避は「脱原発のための障害除去」にしか過ぎない、と言う事だから。全く、原理主義とは度し難いな。

転載開始=========================================

【朝日社説】電力値上げ―当座しのぎではダメだ   平成24年10月31日(水)

 原発への依存度が高い関西電力をはじめ、電力各社が値上げを検討している。

原発の代わりに動かしている火力発電の燃料費がかさんでいるためだ。

火力への依存が高まることによる当面のコスト増は、ある程度、利用者全体で広く薄く負担するのもやむをえまい。

しかし、それも電力会社が先々の電力供給や経営のあり方を真剣に見直したうえでの話である。それなくして、値上げには説得力がない。

原発への新しい安全基準は、来年7月をめどに原子力規制委員会がまとめる。追加的な対策をとるのが難しく、稼働が認められない原発も出るだろう。

運転寿命を40年とする規制を厳格に適用する方針は、すでに示されている。大飯原発など、活断層の存在が懸念される原発もいくつかある。

こうした危ない原発、古い原発から閉めていくことになる。

廃炉には多額の費用がかかるが、まだ十分に引当金を積めていないところが少なくない。

そうした状況を考えれば、経営戦略を早急に切り替えなければならない。

事業を見直し、経営の無駄をとりのぞく。安全対策費がかさみ、維持だけでお金がかかりすぎるなら、自ら原発を閉める選択肢もある。

世界一高いとされる液化天然ガス(LNG)の購入費も、政府の支援などを得ながら調達先を広げるなどして下げていく必要がある。

効率のいい新型火力や自然エネルギーなど、新たな電源を確保する。利用者に省エネ・節電を促す新しいビジネスを活用していく。やるべきことは、山ほどある。

ところが、各社の発言を聞いていると、まだ全ての原発の存続を前提に、当座をしのぐ策ばかり練っているようだ。

政府・与野党も、エネルギー産業の構造改革に向けて早く議論を深め、電力会社が自ら脱原発へと動くような枠組みを講じていくべきだ。

実際に値上げ申請となれば、少なくとも家庭向けの料金については、公認会計士など専門家による査定を受ける。

消費者庁も別途、検証の場を設けるだろう。どちらも広く公開される見込みだ。

原発依存からの脱却へ経営を切り替えているか――。コスト負担を引き受けるうえで、注意深く点検する必要がある。

「燃料代が上がったので」という説明だけなら、とうてい納得できない。


【産経社説】【主張】電力値上げ 抑制の切り札は再稼働だ
2012.11.2 03:25 [主張]

http://sankei.jp.msn.com/economy/news/121102/biz12110203260002-n1.htm
 電力会社が相次ぎ電力料金値上げの検討に入った。原子力発電所の停止で火力発電所の燃料費がかさんでいるためだ。

料金値上げは、国民生活や産業などに打撃を与える。電力会社の徹底したリストラが前提とならなければならない。

だが、それだけで値上げを抑制するのは無理だ。電力をできるだけ安価に、かつ安定的に供給するには、安全性が確認された原発を有力電源として活用することが欠かせない。

今なすべきは、原発再稼働に向けた手順を早期に確立し、円滑な運転再開につなげることだ。それが政府の責務である。

関西、九州の両電力は、値上げの時期や幅を今後、検討する。北海道と東北、四国の3電力も、原発再稼働の見通しをにらみつつ最終判断する。来春にも実施される値上げの幅は家庭用で1割、産業用で2割程度が有力という。

国内では現在、関電の大飯原発2基だけが稼働中だ。電力需要の3割を賄ってきた原発の運転停止に伴い、各社とも火力発電所をフル稼働させ、液化天然ガス(LNG)などの輸入が急増している。このコスト増を料金に転嫁する値上げだ、と各社は説明する。

電力料金値上げは日本経済に甚大な影響を及ぼす。とりわけ円高に苦しむ輸出産業のさらなる競争力低下を招き、価格の転嫁が難しい中小企業への痛手も大きい。

電力会社が遊休資産の売却や人件費の切り込みで、上げ幅をなるべく圧縮するのは当然である。認可が必要な家庭用については、政府も厳しく審査する構えだ。

しかし、関電などでは、燃料費と他社からの電力購入費が一昨年に比べて2倍に増え、コスト全体の半分を占めているという。

8%に満たない人件費の削減では、合理化にもおのずと限界がある。必要以上に人件費や修繕費を減らせば、技術者の確保や電力の供給にも支障が生じかねない。

今年度上半期の貿易収支は過去最大の赤字を記録した。専ら火力発電向け燃料の輸入増による。

原発の運転停止が長引けば、それだけ国富の流出を招き、国力の低下は避けられない。そうなれば台頭する中国との相対的力関係など、安全保障にも影を落とす。

電力各社の値上げ検討は、そうした猶予ならざる状況を改めて示した。政府は原
発再稼働を一刻も早く主導すべきだ。


=================================転載完了

定量的評価と定性的評価/客観的評価と主観的評価

 さて如何だろうか。

 私に言わせれば、如何もへったくれもない。章題にもした通り、朝日社説なんざぁ産経社説の足元にも及ばなければ、有効な反論・異論にすらなって居ない。公平を期するために付記するならば、産経社説の方が朝日社説の二日後に出ているから、「後出しジャンケン」出来る立場にある。が、朝日がひたすら電力会社を悪者扱いして脱原発原理主義を奉じるばかりであるのに対し、産経社説は数字を挙げ、定量的に議論を進めている。

 定性論で言ったところで、「電力の三割を担っていた原発が、その原子炉内にまだ使える核燃料を擁したまま殆ど停止させられており、その代替電源を燃料食わせまくった火力発電が担っている。」と言う現状を鑑みれば、電気料金値上げに直結するのは当たり前。稼働率が1/8ほどしか無い太陽光や風力が「新たな電源」たりえない事を理解できない朝日新聞と言えども、効率の良い火力発電所」だの「利用者に省エネ・節電を促す新しいビジネス」だのを今日明日にでも建設/設立して電力会社の経営改善を図る」なんて事の無謀さ無茶ぶりは、理解できて然るべきだろう。

 「数字は嘘を吐かないが、嘘に数字はつきものである」とは、どこかの記事に引用したフレーズ。「統計で嘘を吐く方」なんて古典的啓蒙書もあるから、「定量的評価=数字がある」からと言って客観的評価とも限らなければ、冷静冷徹な評価とも限らないが、

1〉 8%に満たない人件費の削減では、合理化にもおのずと限界がある。

の産経社説の数字が正しいならば、朝日の社説は好意的に言ってもタダの感情論・浪花節。普通に考えれば暴論以外の何物でもない。

 ソリャ脱原発原理主義者に物の道理を説いた処で虚しいばかりではあるが…如何に新聞社が電力の安定供給に責任を持たない口舌の徒であるからとて、広く世間一般にその主張を流し、「オピニオンリーダー」たり得る立場としては、無責任が過ぎようと言うものだぞ。朝日新聞。