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 端的に言って、戦後の「日中国交回復」以来の我が国対中外交と来た日には、連戦連敗で殆ど「勝ち」がない。莫大な対中ODAは中国の反日教育の前に雲散霧消して「日中友好」効果は皆無だし、それでも南京虐殺をはじめとする「歴史認識」カードは「有効」であり続けている。漁船が海保庁の巡視艇に「体当たり攻撃」をかけても、ちょっと圧力をかければ「政治的判断」で「漁船」船長は釈放されて「道徳英雄」として中国へ凱旋だ。挙句の果てに尖閣も沖縄も「核心的利益」と称する「侵略宣言」まで出されても、抗議もロクにしないものだから、コリャ舐められっ放しのやらずボッタクリ。それでも「対中ODAは日中友好に役に立つ」と公言できてしまうようなのが中国駐在日本大使なんだから、中国の方から見れば「対日外交は連戦連勝」で笑いが止まるまい。
とまあ、思っていた訳だが・・・WSJ紙の御意見は、チョイと異なるようだ。
 以前記事にもした通り、「森羅万象皆我が師」であり、殊に異論・異説は注意深く傾聴すべきだ。WSJ紙のオピニオン、御一読願おうか。
 
転載開始========================================= 
【オピニオン】日本、南シナ海の領有権問題に積極介入
  http://jp.wsj.com/World/node_475515?mod=WSJ3items
Ian Storey
2012年 7月 10日 15:57 JST
 日本政府は今、海上貿易を守るために東南アジア諸国連合(ASEAN)加盟国との軍事的連携を深め、中国政府に立ち向かおうとしている。
 フィリピンとベトナムは南シナ海での中国の強硬姿勢に対し嵐のような抗議をしてきたが、懸念を表明しているのは両国だけではない。あまり目立たないが、日本も重要な役割を果たしてきた。パラセル諸島やスプラトリー諸島に直接的な領有権はないものの、世界第3位の経済大国である日本は緊張の拡大を防ぐことを非常に重視しており、そのために積極的に動き始めている。
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Associated Press

フィリピンを訪問した海上自衛隊の艦船
 カンボジアの首都プノンペンで今週開かれれるASEAN地域フォーラムで、玄葉光一郎外相は最近の情勢に関して強い懸念を示し、領海権の主張を明確にして外交的解決を急ぐことを関係各国に要請する意向である。こうした介入はベトナムのような東南アジアの国々には歓迎されるだろうが、日中間の摩擦をほぼ間違いなく激化させるだろう。
 日本は中国との間に領土問題を抱えているが、それとは別の、直接的な領有権がない領土問題で日本政府が中国を敵に回すことには大きな意味がある。以前から南シナ海の情勢を注視してきた日本政府が、より積極的なアプローチの必要性を感じるようになったのは2008年に緊張が高まり始めてからのことだった。
 日本はそこに2つの大きな懸念を抱えている。1つ目は時間の経過とともに低レベルの緊張がより大規模な紛争へと発展し、海上輸送を妨げるのではないかというもの。南シナ海のシーレーン(海上輸送路)は日本製品を重要な市場である東南アジアや欧州へ輸出するのに使われるほか、輸入原油の90%が通過するため、経済安全保障上の問題となる。
 2つ目の懸念は、中国が恫喝によって南シナ海の支配権を確立すると、日本との領土問題がある東シナ海でも同じ戦術を使ってくる可能性があるというものだ。領有権とその領海における「歴史的権利」を主張するための疑わしい理由を、中国に丸めこまれたり強要されたりした結果、東南アジア諸国が受け入れるようなことになると、1982年に採択された国連海洋法条約のような既存の法的規範の実効性が損なわれてしまうだろう。中国が同じ理由を主張してきた場合、東シナ海の尖閣諸島(中国名・釣魚島)の領有権をめぐる日本側の主張の説得力にも悪影響を及ぼしかねない。
 そればかりか中国は、軍事的圧力に関して、1つの地域で成果を上げたのだから、他の地域でも効果があるはずという計算をするかもしれない。こうした中国の瀬戸際政策により、日中関係が軍事的、外交的な危機に瀕することもあり得るのだ。
 こうした事情もあって、日本は南シナ海危機への対応で主導的役割を果たすことを決意し、その一手段として多国間のフォーラムを利用している。日本政府はASEANのサミットで近海の「平和と安定」を呼びかけてきた。さらに重要なことに、日本はその海上保安庁と東南アジアのそれに類する組織との協力関係を強化することを約束した。南シナ海で領土問題を抱える国々は一般的に、その領有権を誇示するのに海軍の艦艇ではなく、沿岸警備隊を使ってきたので、この協力には重要な意味がある。
 日本は最近、年次ASEAN海洋フォーラムに関して、オーストラリア、インド、米国といった対話国を含む拡大会合も提案した。日本は、既存の国際法の枠組みを強化し、南シナ海の領有権問題を解決するメカニズムを構築する上でこのフォーラムを有効な場と捉えている。拡大会合が実現すれば、会議場における自由民主主義の存在感も高まることになる。ASEANでは、中国を敵に回すことを恐れて慎重な態度を取る加盟国があるという問題点も指摘されている。
 日本はASEANのみの議論や交渉に完全に満足しているわけではない。ASEANの努力に対しては強い支持を表明し続けている日本だが、その危機対応能力のなさに苛立ちも募らせている。日本としてはASEANが一致団結することを望み、加盟国が圧倒的に優位な立場にある中国と個別に取引することに反対している。
 そこで日本政府は、この地域のいくつかの国々との2国間協力を模索していくことになる。日本が1番積極的に支援してきたのが、軍事力に乏しいことでASEANという環で最弱部分と不安視されているフィリピンだ。日本は現在、フィリピンの沿岸警備隊の防衛能力の向上に力を入れ、その海上監視能力を強化するために巡視船10隻の供与にも基本合意している。
 両国は軍事的な連携も強化し始めている。定期的な対話はすでに始まっており、今年、海上自衛隊の艦船はフィリピンを訪問し、合同演習に参加したほか人道支援も行った。日本はフィリピンの他にも、ベトナムと防衛協力関係を深めることに合意しており、シンガポール、マレーシア、インドネシアとの交渉にも参加している。
 日本以外の大国が南シナ海の領土問題に干渉してくることに中国が反対するのは自由だが、日本による干渉は中国自身の瀬戸際政策が招いたものである。今週、プノンペンで開催されるASEAN地域フォーラムの結果、対立の火花が散るようなことになったとしても、東南アジア諸国にとって有利な結論が出るように働きかけるという日本政府の決意は固いようだ。
(筆者のイアン・ストーリー氏は東南アジア研究所=ISEAS、シンガポール=のシニアフェロー)
記者: Ian Storey
=================================転載完了

現民主党政権は、戦術的敗北を戦略的勝利へ転換しうるか?

 さて、如何であろうか。
 
 いや、なんとも面映いばかりの日本外交に対する高評価だ。まだASEAN会議が終結し、その結果がでる前に書かれた記事だから、と言うのもありそうだ。結果としてのASEAN 会議は、異例の「共同声明断念」となり、つづくARFでも南シナ海で暴虐極める中国を掣肘する(*1)「行動規範」は声明から削除されてしまった。中国にして見れば「外交上の勝利」であり、上掲WSJ紙の評価に従うならば「日本外交の敗北」とも言いえよう。
 
 だが、当該オピニオンの〆である
 
> 東南アジア諸国にとって有利な結論が出るように働きかけるという日本政府の決意は固いようだ。
 

と、日本政府が決意を固めており、今後もその決意を保持するならば、今回ASEANおよびARFに於ける「日本外交の敗北」には、「日本政府に、中国と対峙し、東南アジア諸国と連携する決意を固めさせた」と言う意義がある事になる。これは仲々、大きな意義と、私には思われる。
 
 当該WSJ紙オピニオンが正鵠を射て居る事を、私は希望する。今や「世界第二位のGDP」と二桁成長しっぱなしの軍事力を以って典型的「覇権国家」としての行動を見せ始めた中国共産党政権に対し、ASEAN含む周辺諸国との連携、言わば「対中国包囲網」の完成は極めて意義がある。
 
 もし、我が国にWSJ紙オピニオン指摘の意思があり、行動を伴うならば、私は、現民主党政権の外交力・外交方針を、一寸は見直すだろう。
 それでも、「民主党にしては、仲々やるじゃないか。」程度、ではあるが。
 
 何しろ今までの失点が凄まじい(*2)からな。汚名挽回するつもりなら、急がないと、党そのものがなくなるぞ。
 

<注釈>

(*1) かも知れない。少なくとも「掣肘すると期待される」ではあるが、どうだろうね。ま、「棍棒を手に、口調は穏やかに」とは外交の基本であるから、その「穏やかな口調」ぐらいにはなるだろう。後は、「棍棒」の用意だな。 
 
(*2) インド洋上給油中止、普天間基地移設問題の激化、日米同盟の危機、尖閣諸島沖中国「漁船」体当たり攻撃始末(そう言えば、ビデオ公開はどうなった。有耶無耶か。)、未だ駐中大使の丹羽某、などなどなど・・・