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そりゃ一般的には「軍艦」と「戦艦」の区別をつかない人が大半だ。戦艦というのは軍艦の一種で、登場したのは19世紀も後半。その絶頂は実は20世紀も初っぱなだけで、後は惰性で20世紀半ばの第2次大戦まで「主力艦」と呼ばれたが、大東亜戦争は開戦壁頭の真珠湾攻撃で航空攻撃の圧倒的威力が実証されて以来は「主力艦」の座を失い、第2次大戦後の戦艦保有国となると五指に余るほど。アメリカが唯一の「戦艦保有国」になってからもしばらくたつが、そのアメリカ最後の戦艦・アイオワ級も建造は第2次大戦中。20世紀末の湾岸戦争を最後に予備役の保存艦とされ、ついに先頃記念艦として正式に退役。今じゃ戦艦なんて記念艦としてしか残っていない。(※1)何てことは、「堅気の衆」では知る者も少ない。
それでも「戦艦大和」というと日本ではまだまだ有名だ。日本で建造された最後の戦艦だからか、史実として描かれるのはもちろん、宇宙戦艦に仕立てられて人類を救ったり(※2)、怪獣に生まれ変わってウルトラセブンと戦ったり(※3)、かとおもうと「半物質化」というよくわからない状態になって浮上し、沖縄水上特攻「菊水」作戦を継続し、沖縄の米軍基地を砲撃するついでに91式徹甲弾の水中低伸弾道でロサンゼルス級原潜を撃沈したり(※4)、と、SFなどでも大忙しだ。
かくも日本人になじみの深い「戦艦大和」だ。イタリアの当時最新鋭にして最後の戦艦「ローマRome」の残骸が発見されたニュースを「イタリア版戦艦大和、発見される!」と報じれば、受けるに違いない、注目を浴びるに違いない。そう記者なりデスクなりが考えても不思議はない。
然り、確かに私の目を引くところとなり、かようなブログ記事に化けたわけだ。
しかしながら、私の目を引いたのは、「イタリアの戦艦ローマ」如きを、我らが大和級戦艦に準えた、その無知と不当さ故に、だ。

諸元を一表化して比較してみた。ついでにいくつかの諸元については、その比率や差分を計算してみた。さらには「判定」を加えて色分けしてみた。「大和圧倒的優位」及び「大和優位」を青で、「Rome圧倒的優位」 「Rome優位」をピンクで、「同等」を黄色で塗り分けした結果は、当たり前ながら我らが大和の優位だ。Romeは30ktの高速を誇るから、それが優位である程度。なお、比較したのは建造時の諸元であるから、大和の方がいささか古い。なおかつこの後大和は、戦訓を取り入れての対空兵装強化がなされ、副砲を半減させての高角砲・機銃増設がなされたことも、付記すべきだろう。ああ、その対空射撃の指揮統制に問題があったのも付記すべきだろうが、それは当時の米戦艦以外は全て「対空砲火の指揮統制に問題あり」であったことを併記しないと不公平だろう。
確かに、大和とローマは竣工した時期が近く「同じ世代」であり「条約後戦艦」であり「最後の戦艦」である。なにより、チャンと両方とも戦艦であるだけでも、一般的な記事では上出来の部類と言えよう。
さらに言えば、ヘタリアのパッ艦に準えたとは言え、「戦艦大和」の名を明記し、想起せしめた事は、AFP通信の功績としてよかろう。
但し、滑空爆弾は、普通は第二次大戦の「戦闘機」には積めないぞ。(※5)
> 「ローマ」がドイツ軍戦闘機の爆撃を受け沈没したのは、進水からわずか1年3か月後の1943年9月9日。乗員1352人が死亡し、助かったのは662人だけだったという。
<注釈>
(※1) 記念艦としての戦艦ならば、我が国にも「三笠」があるから、我が国は未だ「戦艦保有国」だ。(※2) 松本零士原作 宇宙戦艦ヤマト(※3) アイアンロックの艦上構造物は大和級だろう。「足跡」からすると装軌式らしいが(※4) 星野宜之作 ヤマタイカ(※5) フォッケウルフFw190みたいに1.8t爆弾積んじまう奴も居るから、一概には言えないが