都に民兵が在れば良かったのだろうか
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「州兵」National Guard。アメリカは各州に所属する「パートタイムの米軍(*1)」と言えば想像がつくだろうか。戦車、戦闘機も持つような立派な軍隊だが、流石に最新兵器ではなくて旧式兵器である事が多く(*2)、基本パートタイムの兵員(*3)であるから当然練度は落ちる。昔流に言えば「後備兵」「鎮護の兵」さらに遡れば「民兵」と言えよう。我が自衛隊で言えば予備自衛官に近いが、規模と装備の充実度(*4)が違うから、緊急時災害時の初動兵力に投入される事も多いのが州兵。このため、怪獣映画やSF小説などでは「人類側被害担当役」をやらされてしまう事がしばしばある。
何故そんな「州兵」なんて制度を思い出したかと言うば・・・章題にした通りだ。上掲記事「金曜討論」孫崎氏の「都の尖閣諸島購入反対論」の根幹が「都は責任を持てない = 国しか責任を持てない」であるから。即ち「尖閣諸島を実行防衛する力、防衛力・軍事力・外交力は国しか持っていないのだから、そんな力を持たない都が購入するのは無責任だ」と言う主張のため。逆に「都が責任を持てる = 都が尖閣諸島を防衛するだけの兵力を擁する」とは、どんな常態かを想像したが故。「我が国に米国の州兵制度に準じるものがあり、都が独自の兵力(*5)「都兵」と言うべきものでもあれば、孫崎氏は「東京との尖閣諸島購入」に賛成したのだろうか、と想像したから。
無論、想像の域を出ない。我が国の兵制が志願兵制となった自衛隊発足この方、予備兵力の不足は充足率の低さ共々自衛隊三軍共通最大の悩みであり、予備自衛官拡充と言っても焼け石に水。況や「都が動かせる独自の兵」なんて憲法改正しない限り無理であるから、当面無理である。
が、仮に今既に「都兵」があり、尖閣諸島防衛に都が相応の責任を果たせるとした場合、孫崎氏は「都の尖閣諸島購入」を支持しただろうか。私にはとてもそうは思えない。
孫崎氏の上記インタビューに対する答えから見える「都の尖閣諸島購入反対理由」は、先行記事にした各紙社説の反対理由に何ら新たな物を付け加えていない。つまり先行記事の表に同列にまとめることが出来て、以下の通りである。

即ち、孫崎氏の「都の尖閣諸島購入反対理由」は、先行生地の分類に従えば以下の4項目である。
(1) これは東京都の仕事ではない/尖閣を守る、外交は国の仕事。①②③④⑤⑥
(2) 「尖閣諸島を舞台にしてさまざまな施策を展開する」と問題は一層こじれる ①
(7) 国が購入した方が良い ①②④⑤
(9) 先人たちの「領土問題棚上げ」の知恵に学べ ②
[ 丸数字は、各紙社説に含まれる主張を意味する ]
表にもある通り、上記(1)、(7)は多くの社説と共通する項目、上記(2)は朝日新聞と、上記(9)は東京新聞と共通する項目である。言わずもがなながら、上記(1)[国のやる可き事]と言うのは上掲記事に登場する「都の尖閣諸島購入賛成論者]一色元海上保安官さえ(*6)認めるところだから、正真正銘掛け値なしに「衆目の一致するところ」であろう。
だがそれが、上記(7)「国が購入した方が良い 」に直接つながらないのは、一色氏も指摘するとおり、「国が不甲斐ないから」。此処で言う「国」は現・民主党政権ばかりではなく、政権交代以前の自民党長期政権も含めてなのであるが、日本の領土に日本人の上陸を、日本政府が「許可しない」と言うのは政権交代以前からであるし、孫崎氏の主張上記(9)「領土問題棚上げ」=「現状維持」を目指すようでは、国が保有したとて「日本人上陸禁止」は固定化されるばかりだろう。これまた一色氏の指摘どおり。
上記(2)は、先行記事にも書いたと思うが、上記(9)「領土問題棚上げ」=「現状維持」の裏返しでしかない。
詰まる所、孫崎氏の「都の尖閣諸島購入反対理由」は、①「尖閣を守る、外交は国の仕事」 ②「領土問題棚上げの現状維持こそ最善」の二点に集約されよう。
上記①は先述の通り「衆目の一致するところ」。だから「国に任せるべきだ」の孫崎氏主張は確かに「正論」だ。が、それが中国の「核心的利益」公言、尖閣諸島沖中国「漁船」体当たり攻撃、一色氏指摘する尖閣諸島沖への中国「公船」接近増加(*7)と言う現状を招いている。
その現実を目の前にして、尚孫崎氏が上記②「領土問題棚上げの現状維持こそ最善」と主張できてしまうのは、前例主義の役人根性でなければ、現状認識の相違であろう。つまり「現状のまま日本人が尖閣諸島に上陸しないと言う状態を維持し、中国を刺激しなければ、領土問題棚上げと言う現状は今後も維持できる。」と言う認識であり、上記の「核心的利益」公言も中国「漁船」体当たり攻撃も些事として無視しうる、と言う現状認識。
ダチョウは危機が迫ると土の中に頭を突っ込んで、その危機を見えないようにして安心を得る、と言う虚説がある。米国アニメなんかでたまに見る情景だ(*8)。「土の中に頭を突っ込んで危機を見ない」ダチョウは虚説・フィクションだが、孫崎氏の現状認識はどうも、真実であるらしい。
心、此処にあらざれば、見るとも見えず。
尖閣諸島の危機は、我が国主権の危機である。今、正に、そこにある。
我が国は、尖閣に限らず、中国との戦争に備えるべきである。今後10年間に中国軍が我が国の10倍になるというならば、なおのことその「10倍の軍」に備えるべきである。
何故ならば、戦争の準備こそが、戦争の抑止であるから。
その「備え」は軍事力ばかりではない。外交力、情報力を含めた多元的な対処が必要ではあろう。だが、「備え」が、戦争の準備が必要であることには、変わりがない。
<注釈>
(*1) フルタイム勤務の人も居るが。(*2) 旧式、ッたって戦闘機にF-16を主力とし、あろう事かF-22まで保有すると言うから、大概の国の空軍はアメリカ州兵にすら負けそうである。(*3) 近年はそうでもなく、フルタイムの兵員が増えているそうだが(*4) 私の知る限り、予備自衛官用の戦車も戦闘機も、自衛隊は保有していない。それらは現役兵用の貴重品である。(*5) 念のため付け加えれば州兵は州との関係は確かに深いが、あくまでも政府の管轄であり、合衆国大統領の指揮下にある。つまり州知事といえども、政府に反して州軍は動かせない。(*6) 序でに言えば、私自身さえ(*7) これに対し、孫崎氏は中国「漁船」接近数の低下を上げて、中国政府の「緊張緩和努力」と評価している。が、漁業資源の保全と言う意味ならまだしも、領土の保全と言う意味では、中国公船接近数増加の方が問題だろう。(*8) これが虚説・フィクションである事は「土の中に頭を突っ込む」それも「外界が見えなくなるくらい深く突っ込む」事が如何に困難かを想起すればわかる。尚且つダチョウである。ほぼくちばし全長を突っ込まなければ、目は塞がらない。予め「首を突っ込むための穴」を掘っておかない限り、危機に際して「首を土中に突っ込め」はしない。