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4500字近いWSJ紙のインタビューを引用しようとしたら、私の追加できる文字数は限られるな。私がこの記事を転載する理由は以下の通り。
① スリーマイル島事故と言う「福島原発事故の先輩」からのアドバイスである
② 「リスクのとらえ方」に「ジャッジメントコール(個人的見解・判断)」と呼ぶ「解釈の幅」を持たせている
③ 「事故に学んで強くなれ」と言う、単純だが力強いメッセージに共感した
転載開始=========================================
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【肥田美佐子のNYリポート】スリーマイル事故の元NRC現場責任者に聞く「日本もフクシマから学び、強くなれる」
http://jp.wsj.com/Japan/node_452989?mod=Center_Column
2012年 6月 1日 16:22 JST「真実を知りたい」――。東日本大震災後、読者の方々から、こうした切実なメールが太平洋や大西洋を越えて届くようになった。だが、こと原発問題となると、米国でも、何が真実かを見極めるのは難しい。データが伝える客観的な「真実」は1つのはずだが、リスクのとらえ方が「ジャッジメントコール(個人的見解・判断)」にゆだねられているからだ。そして、それは、言わずもがな原発へのスタンスや評価によって大きく異なる。本紙や本コラムでも報じたが、4月初め、ロン・ワイデン米上院議員(米上院エネルギー・天然資源委員会)らは東京電力福島第1原子力発電所を視察し、米政府やヤツコ原子力規制委員会(NRC)委員長(当時)などに書簡を送り、原子炉4号機の危険性について警告した。水素爆発で建屋の屋根が吹き飛んだ4号機の使用済み核燃料プールには、核燃料棒1500体以上が「環境に露出した」形で冷却されている。建屋の補強工事が行われたとはいえ、「大きな地震や津波でプールが損壊すれば、核燃料棒が過熱してメルトダウン(炉心溶融)しかねず、放射性物質が飛散し、制御するのは至難の業になる」と、ワイデン議員は言う。4号機の危険性は、以前から一部専門家などによって指摘されていたが、ワイデン議員の懸念表明後、日本での報道も増え、国民の間に不安が広がっている。5月26日、細野豪志原発事故担当相は、それを払拭するかのように、4号機の原子炉建屋内を視察し、内部の映像も公開。燃料プールは傾いておらず、建屋は、東日本大震災と同規模の地震にも耐えられると言明した。だが、東電や規制当局、政府への不信感は根強く、国民がどの程度納得するかは未知数だ。一方、米国の専門家の間でも、さまざまな意見がある。4号機の危険性について、とりわけオフサイト(原発敷地外)へのリスクは低いとみるのが、エネルギー分野専門の独立系コンサルタント、レイク・バレット氏だ。同氏は、1980~84年にかけて、NRCのスリーマイル事故・現場責任者として、損傷原子炉の安定化や回復、クリーンアップの陣頭指揮に当たった。その後、米エネルギー省(DOE)・民間放射性廃棄物管理局の副局長(局長代行)も務めている。震災後、バレット氏は、日本の原発問題についても、米議会向けブリーフィングを行ったり、米メディアで積極的に発言したりしている。「日本には数多くの難問が待ち受けているが、米国がスリーマイルから教訓を得て強くなったように、日本もフクシマの経験から学び、強くなれる」と、同氏は言う。本コラムでは、今後も原発問題をめぐる米専門家などの意見や提言を幅広く取り上げていくつもりだが、今回は、スリーマイル事故については第一人者であるバレット氏をワシントンDCに訪ね、話を聞いた。――4号機の使用済み核燃料プールのリスクについて、どう思うか。バレット氏 個人的には、原発敷地外へのリスクは非常に低いと考える。使用済み燃料は、(定期検査中だった4号機の炉心から震災4カ月前に取り出され)現時点で18カ月たっており、(放射性物質の発熱で生じる)崩壊熱は低温になっている。たとえマグニチュード9の地震がきて建屋が損壊しても、熱出力が低いため、(燃料棒の集合体を構成している)被覆管の発火にはつながらないだろう。放射能が飛散するに足るエネルギーがないのだ。当時、4号機が稼動していたら、話は別だったが。――だが、4号機のプールが壊れて水が漏れ出た場合、放出されるセシウムの量は、チェルノブイリ事故を大きく上回ると警告する米専門家もいる。これは真実ではないのか。バレット氏 数学的試算で言えば、正しい。だが実際のところ、(燃料棒には)そうした放射性物質を東京や米国に飛散させるだけの能力が、もはやないのだ。たとえば「アフガニスタンには、世界中の人々を抹殺するに足る銃弾がある」というのは真実だが、実際には起こらないのと同じだ。震災当時、第1原発の原子炉は多くの熱を帯びていたが、現在ではヘアドライヤー500台分以下の熱しかなく、(オフサイトへの)リスクは非常に低いと思う。とはいえ、安全だとは言いたくない。「安全」とはリスクをどうとらえるか、だからだ。これを安全とみる人もいれば、そうでない人もいる。ジャッジメントコール(個人的判断)だ。――日本は、国際協力を十分に仰いでいると思うか。バレット氏 DOEのエンジニアもNRCも、日本のエンジニアや規制当局者とともに問題解決に当たっている。スリーマイル事故で水処理を担当した(米最大の核廃棄物処理企業)エナジーソリューションズも水処理に当たっており、国際的な経験は、すでに生かされていると思う。東電にもっと予算があったら、さらなる支援を求める余地があるか? わたしには分からないが、米企業にはもっと手伝えるだけの能力はある。だが、言葉の壁を考えても、現場に米国人の原発作業員を多数送り込むといったマンパワーの支援が効果的とは思わない。エンジニアリングの基準なども、日本には日本のやり方がある。社会的な適応も必要だ。郷に入れば郷に従え、である。しかし、日本はやや閉鎖的に見える。米企業にとって、そう簡単にはいかない。ビジネスと文化の隔たりを埋め、日本人と米国人がともに効率よく働くメカニズムをつくり上げるには、時間がかかる。一朝一夕にはいかない。――米国がスリーマイルから教訓を得たように、日本もフクシマから学べるということだが、日本が米国から学べることはあるか。バレット氏 たとえば、使用済み燃料を保管するキャスクが一例だ。米国では、20年以上前からコンクリート製の「ドライキャスク」の開発に努めてきた。だが、日本では今も、大型で分厚い旧式の金属製キャスクが使用されている。米国で金属製が使われていたのは30年前だ。金属製は、1つ当たり100万ドル(約7830万円)以上する。コンクリ製は、その半値だ。日本の(規制)システムが、もう少し柔軟で変化に速く対応できるものだったら、もっと早くキャスクの規格変更ができ、何十億ドルもの節約が可能だったろう。そして、浮いたお金を病院の改修工事や補償金の支払いに充てることができたのだが。日本では、(原子力発電によって生じる)使用済み燃料を(青森県)六ヶ所村の使用済み核燃料再処理工場に運ぶ計画のため、オンサイトでの(キャスクによる)保管の必要性があまりなかったことも、コンクリ製の採用が遅れた理由ではないか。キャスクは、日本が米技術の利用の迅速化を図りうる例の一つだと思う。――使用済み核燃料プールから燃料棒を取り出すに当たって、最も困難なことは何か。バレット氏 (燃料プールの中に入れる)クレーンやキャスクの設計・製造など、構造的な骨組みをつくり上げることだ。安全性の確認も必須である。どれも工学的な課題であって、なんら特別なことではないが、時間がかかる。スリーマイル事故後にわれわれがそうしたように、工学的な作業を通して、注意深く地道な努力を重ねなければならない。高線量や水処理、空気の浄化、水素ガス――。スリーマイルと似ていることばかりだ。米国には、大規模原子炉をいくつも廃炉・解体した経験がある。第1原発の廃炉には、あと30~40年かかるだろうが、われわれは、日本にとって役立つであろう数多くの経験をもっている。日本も、すでに(米国の経験を)利用していると思うが。――もう十分だと?バレット氏 東電の仕事をしているわけではないので、詳細は分からないが、今後、もっと利用してもいいと、東電は考えるのではないか。日本人は非常に誇り高い国民だから、まず自分でできると考え、人に尋ねたがらないところがあるかもしれない。米国人には、日本人ほど「面子」という概念がないため、もっと早く助けを求めるだろう。もっとオープンでもあるので、他国の技術やメソッドを取り入れるのも速い。文化が違う。また、多大なストレスにさらされたとき、(キャスクなど)いつも慣れているものを頼りにするのは、人間の心理のなせる業でもある。最後に、東電にはこうアドバイスしたい。まず、日本人7割と、日本のビジネスに通じている外国人3割から成る運営委員会を設置するのも一案だ。そして、もっと新しい技術を取り入れるべきだとか、こうしたほうがいい、とかいった助言を東電上層部にしてもらう。(緊迫時には外より内に向かうという)人間の本性と文化の差を乗り越え、最も効果的でタイムリーなクリーンアップを実現するためだ。費用効果が高く時宜を得たクリーンアップ――。求めるものは、皆一緒だ。*****************肥田美佐子 (ひだ・みさこ) フリージャーナリスト
Ran Suzuki
東京生まれ。『ニューズウィーク日本版』の編集などを経て、1997年渡米。ニューヨークの米系広告代理店やケーブルテレビネットワーク・制作会社などにエディター、シニアエディターとして勤務後、フリーに。2007年、国際労働機関国際研修所(ITC-ILO)の報道機関向け研修・コンペ(イタリア・トリノ)に参加。日本の過労死問題の英文報道記事で同機関第1回メディア賞を受賞。2008年6月、ジュネーブでの授賞式、およびILO年次総会に招聘される。2009年10月、ペンシルベニア大学ウォートン校(経営大学院)のビジネスジャーナリスト向け研修を修了。現在、『週刊エコノミスト』 『週刊東洋経済』 『プレジデント』『ニューズウィーク日本版』などに寄稿。『週刊新潮』、NHKなどの取材、ラジオの時事番組への出演、日本語の著書(ルポ)や英文記事の 執筆、経済関連書籍の翻訳にも携わるかたわら、日米での講演も行う。翻訳書に『私たちは“99%”だ――ドキュメント、ウォール街を占拠せよ』、共訳書に 『プレニテュード――新しい<豊かさ>の経済学』『ワーキング・プア――アメリカの下層社会』(いずれも岩波書店刊)など。マンハッタン在住。 http://www.misakohida.com
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マイク・バレット氏。そのまま漫画に出てきそうな風貌ながら、言う事はしっかりしている。