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嘉門達夫の歌に「ジミー&ハデー」と言うのがある。私が知っているぐらいの流行歌だから、相応に売れたのだろう。歌詞としては、「地味なもの」と「派手なもの」を対比して笑いを誘う一種の言葉遊びで、言葉遊びゆえにTPOで歌詞を変える、らしい。
その「ジミー&ハデー」に曰く、
地味地味地味、地味な実験、濾過。濾過。
派手な実験、核実験!!
なるほど、核実験よりも派手な実験と言うのは、そうそうなさそうだ。特に、地上核実験が行われていた頃には、ビキニ環礁やロプノール砂漠、ウーメラ砂漠のような人跡未踏の地であっても、それはそれは「派手な」実験であり、空母サラトガの煙突薙ぎ倒してしまうような「派手さ」があった。地上核実験以上に「派手な」実験と言うのは、当面なさそうである。
だが、「濾過」よりも「地味な実験」ならば、どうもあるようだ。
その「ジミー&ハデー」に曰く、
地味地味地味、地味な実験、濾過。濾過。
派手な実験、核実験!!
なるほど、核実験よりも派手な実験と言うのは、そうそうなさそうだ。特に、地上核実験が行われていた頃には、ビキニ環礁やロプノール砂漠、ウーメラ砂漠のような人跡未踏の地であっても、それはそれは「派手な」実験であり、空母サラトガの煙突薙ぎ倒してしまうような「派手さ」があった。地上核実験以上に「派手な」実験と言うのは、当面なさそうである。
だが、「濾過」よりも「地味な実験」ならば、どうもあるようだ。
転載開始=========================================
2012年5月27日 21:00 (ギズモード・ジャパン) http://topics.jp.msn.com/digital/gizmodo/column.aspx?articleid=1072027
2012年5月27日 21:00 (ギズモード・ジャパン) http://topics.jp.msn.com/digital/gizmodo/column.aspx?articleid=1072027
たぶん世界で一番哀しい科学者 (ギズモード・ジャパン)
ハンカチのご用意を...こちらに見えますのは豪クイーンズランド大のジョン・メインストーン(John Mainstone)教授。世界史上最も長い実験「ピッチの滴下実験」をただひたすら見守る、たぶん世界で一番哀しい科学者です。これはその聞くも涙、語るも涙の物語。
2分だけお付き合いください...。
一見固体で、ハンマーで割ると粉々に砕けるピッチ(樹脂)。このピッチが実は液体であることを証明するために、クイーンズランド大の初代物理学教授であられたトーマス・パーネル(Thomas Parnell)教授が1927年に始めたのが、この「ピッチ滴下実験」です。大学のサイトにはこう説明がありますよ。最初はピッチを温めてガラスのじょうごに注ぎ、下を密閉した。こうして3年置いて固まるのを待ち、1930年に密閉した脚部をカットして下に垂れてこれるようにし、垂れた日付けを記録する作業に入った。[...]
じょうごの中のピッチはなんら特異な環境には晒していないため、流れる速度を変える要因と言っても通常の季節ごとの気温の変化で変わる程度だ。ところがピッチの粘度は水の約2300億倍もあります。実験開始以来、落ちたピッチは75年間でたった8滴。初代パーネル教授はたった3滴見ただけで1960年代にこの世を去ってしまわれました。退屈の余り死んだんじゃなければいいのですが...。死後見張り役を引き継いだメインストーン教授は運悪く、自分の代にかわってから落ちた5滴を全部見逃してしまいました。まるで教授が席を外すタイミングを見計らったかのように垂れるピッチ。次の9滴目は今年垂れるかもしれないし、来年かもしれない。実験はあと1世紀かかります。今日もまたピッチ顔負けの粘度でじょうごを見つめるメインストーン教授なのでありました。-完-
そんだけ落ちたらもう液体でいいじゃんと思ってしまいますけど、そんなわけにはいかないんでしょうね。僕だったら70年代にガラスごと粉々に叩き割ってますよ...。[The Pitch Drop Experiment and Wikipedia via Daily Mail]
=================================転載完了
涙なんざ似合わんさ
さて、如何だろうが。
端的に言えば、私が「濾過よりも地味な実験」としたのは「ピッチの滴下実験」。なにしろ、75年間で8滴しか滴下しておらず、まだ百年かかろうと言うから気の長い話で、実験を始めた初代パーネル教授は「たった3滴見ただけで1960年代にこの世を去ってしまわれました。」為に二代目「メインストーン教授」が引き継いだが、「実験はあと1世紀かかります」と言うのだから少なくとももう一代、多分もう二代この実験を北斗神拳宜しく一子相伝(*1)で継承していかなければならない。この実験実施中の75年間に、第二次大戦から、米ソ冷戦、冷戦終結から対テロ戦争まであったことを考えると、実験実施者の「気の長さ」もさることながら「粘り強さ」も驚嘆に値する。
> メインストーン教授は運悪く、自分の代にかわってから( 42年以上の間に )落ちた5滴を全部見逃してしまいました。
端的に言えば、私が「濾過よりも地味な実験」としたのは「ピッチの滴下実験」。なにしろ、75年間で8滴しか滴下しておらず、まだ百年かかろうと言うから気の長い話で、実験を始めた初代パーネル教授は「たった3滴見ただけで1960年代にこの世を去ってしまわれました。」為に二代目「メインストーン教授」が引き継いだが、「実験はあと1世紀かかります」と言うのだから少なくとももう一代、多分もう二代この実験を北斗神拳宜しく一子相伝(*1)で継承していかなければならない。この実験実施中の75年間に、第二次大戦から、米ソ冷戦、冷戦終結から対テロ戦争まであったことを考えると、実験実施者の「気の長さ」もさることながら「粘り強さ」も驚嘆に値する。
> メインストーン教授は運悪く、自分の代にかわってから( 42年以上の間に )落ちた5滴を全部見逃してしまいました。
と報じられているから、二代目メイストーン教授の「運の悪さ」も相当なもののようだ。もっとも、ある年代からこっちはビデオカメラなどによる自動監視体制が敷けそうだから(*2)、初代パーネル教授程には「必死に観察しなくても良い」と言う事情はありそうだが。
当該報道記事は、「たぶん世界で一番哀しい科学者」と銘打ち、「ハンカチのご用意を...」等と、センセーショナルとは言わぬまでも、文字通り「お涙頂戴」の記事となっている。無論その「涙」は「気の遠くなるような実験を継続中の初代パーネル教授/二代目メイストーン教授」に対するものなのだろうが・・・率直に言って私はこの両教授が「哀しい」とは思わないし、ハンカチなぞ全く必要としない。寧ろ章題にした通り、「哀しい」と哀れんだり、涙を流したりなぞ、するべきではない、と考えている。
この「ピッチの液体としての特性」を確かめるためにこの「ピッチの滴下実験」を始めたパーネル教授も、それを引き継いだメイストーン教授も、この実験が「恐ろしく時間の掛かるものになる」とは当初から知っていた筈だ。特に二代目のメイストーン教授は熟知していた筈だ。言い換えれば、この「恐ろしく時間の掛かる実験の担当者」と言う立場は、恐らくは自ら選択した結果だろう。
その上で、初代パーネル教授は存命中に3滴の滴下を記録し、二代目メイストーン教授は己が目では見ていないが5滴の滴下を記録しており、「ピッチの滴下試験」としては、順当にかどうかは一寸判らないが、確実に実験結果が出ているのだ。
即ち両教授の選択、特にこの「恐ろしく時間がかかって自分の存命中は絶対に終わらない実験」を開始した初代パーネル教授の選択に対し、運命の女神は応えている。(*3)初代パーネル教授は3滴の滴下を確認し、本件に関する限り満足してこの世を去ったように、私には思われる(*4)。
確かに一見したところ、両教授の静かなる実験(*5)は「地味」であり、報じられるように「哀しい」とも思えよう。
だが、「ピッチの液体性」と言う真理の光は両教授を照らし、両教授とその選択に、栄光とは言わぬまでも、確かな栄誉を与えているのである。
章題にもした通り、涙何ざぁ似合わないだろう。
この「ピッチの液体としての特性」を確かめるためにこの「ピッチの滴下実験」を始めたパーネル教授も、それを引き継いだメイストーン教授も、この実験が「恐ろしく時間の掛かるものになる」とは当初から知っていた筈だ。特に二代目のメイストーン教授は熟知していた筈だ。言い換えれば、この「恐ろしく時間の掛かる実験の担当者」と言う立場は、恐らくは自ら選択した結果だろう。
その上で、初代パーネル教授は存命中に3滴の滴下を記録し、二代目メイストーン教授は己が目では見ていないが5滴の滴下を記録しており、「ピッチの滴下試験」としては、順当にかどうかは一寸判らないが、確実に実験結果が出ているのだ。
即ち両教授の選択、特にこの「恐ろしく時間がかかって自分の存命中は絶対に終わらない実験」を開始した初代パーネル教授の選択に対し、運命の女神は応えている。(*3)初代パーネル教授は3滴の滴下を確認し、本件に関する限り満足してこの世を去ったように、私には思われる(*4)。
確かに一見したところ、両教授の静かなる実験(*5)は「地味」であり、報じられるように「哀しい」とも思えよう。
だが、「ピッチの液体性」と言う真理の光は両教授を照らし、両教授とその選択に、栄光とは言わぬまでも、確かな栄誉を与えているのである。
章題にもした通り、涙何ざぁ似合わないだろう。
<注釈>
(*1) 「分割して相続」する訳にも行かないからな。(*2) フィルムカメラしかなかった頃は、それさえ出来なかった筈だ。(*3) 急いで付け加えれば、「両教授とも一滴の滴下も観測していない」と言う現状とは異なる結果が出たとしても、それはそれで「ピッチの液体性が否定され( つつある )」と言う形で、「運命の女神が応えた」事になる。(*4) これまたつけ加えれば、私なら、「魂魄此処に留まりて」幽霊になってもこの実験、最後まで見届けようとするだろうな。(*5) 静か過ぎるほどの実験