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当ブログの老舗「社説比較」シリーズ当初からの主張は、「日本の新聞論調を比べるならば、朝日と産経を読み比べるのが手っ取り早い」である。だから、たまには「朝日 対 産経 直接対決」するのも宜しかろう。
取り上げるのは先頃の日中韓サミットに伴う日中首脳会談。仲々興味深い対比が見られるようだ。
先ずは両者社説から、御一読願おうか。
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①【朝日社説】日中関係―いがみ合うだけでなく
日中関係の歯車がかみ合わない。せっかく国交正常化40年の節目の年なのに、いがみあうような場面が続くのは残念だ。
おとといは、日中韓首脳会議で北京を訪れた野田首相との個別会談に、中国の胡錦濤(フー・チンタオ)国家主席が応じなかった。
韓国の李明博(イ・ミョンバク)大統領とは会っただけに、日本に対する異例の冷遇である。会議のホスト国としての誠実さに欠けるし、大国を自負する割には、あまりに大人げない態度だった。
外交関係がきしむときこそ、首脳同士が会うべきだ。意地を張りあえば、それぞれの世論は熱を帯びるだろうが、課題の解決にはつながらない。
日中両国は地域の安定と発展をともに担う隣国同士だ。さらなる悪循環を防ぐための大人の外交関係を築けるはずだ。
このところの不協和音の背景には、石原慎太郎東京都知事の「尖閣購入発言」や、新疆ウイグル自治区からの亡命者組織による「世界ウイグル会議」の東京開催がある。
13日の日中首脳会談で、温家宝(ウェン・チアパオ)首相はこの二つを取り上げ、「中国の核心的利益と重大な関心を尊重することが大事だ」と述べた。
「核心的利益」とはいかなる代償を払っても確保するという意思表示だ。これが直接に尖閣問題を指すかは別としても、中国がこれまで以上に踏み込んできたのは明らかだろう。
これに対し、野田首相は中国の動きを「日本国民の感情を刺激している」と指摘した。自国の領土への物言いへの反論として当然である。
中国政府は、ウイグルの人々に日本政府が査証(ビザ)を出したことに反発している。だが、犯罪者でもない人物の入国を拒む理由など日本にはない。それを「独立運動にお墨付きを与えた」と見るのは筋違いというしかない。
中国政府が領土に対する国内世論や、少数民族の扱いに敏感にならざるを得ない事情はわからないでもない。
一方で、日本側にも領土や人権問題で、中国に率直に言いたいことはたくさんある。
最近の米中両国の関係深化に比べて、日中間は表面的なすれ違いばかりが目立つのは、どうしたことか。
ただ、今回の野田氏と温氏との会談では、関係を悪化させたくない思いも見えた。意見の違いはあろうとも「大局的見地」に立っての努力が必要という点で一致したのだ。
あとは東シナ海ガス田の共同開発など、行動で示すことだ。
②【産経主張】「核心的利益」発言 中国の意図は尖閣奪取だ
2012.5.15 03:26 [主張]
日本は万全の備えと覚悟を
北京での日中韓首脳会議(サミット)に合わせて設定された野田佳彦首相と中国の温家宝首相との個別会談で沖縄・尖閣諸島をめぐって応酬があり、温首相が「(中国の)核心的利益と重大な関心事を尊重することが大事だ」と発言した。
「核心的利益」とは、中国にとって安全保障上譲ることができない国家利益をさす。尖閣問題と関連付けながら、中国首脳が、これを口にしたことは初めてであり、きわめて重大である。
≪野田首相の反論は当然≫
温首相は「釣魚島(尖閣諸島の中国名)は中国領土だ」と改めて強調している。中国公船による尖閣周辺の領海侵犯が常態化している状況下、温首相の発言は海洋権益の拡大を狙う中国が尖閣奪取の意図を明確にしたと受け止められる。尖閣問題が新たな局面に入ったとの危機認識が必要だ。
温首相の発言に対し、野田首相が「尖閣諸島が日本固有の領土であることは歴史的にも国際法上も明らか」と反論し、さらに、「中国の海洋活動の活発化が日本国民の感情を刺激している」と指摘したのは当然だ。首脳レベルでは尖閣問題にふれないようにしてきたこれまでの民主党政権の方針を転換したことは意味がある。
ただ、両首相は「日中関係の大局に影響を与えることは好ましくないとの認識で一致した」という。問題を棚上げにしても解決にはつながらない。
今回の「核心的利益」発言の背景には、中国側の思惑が見え隠れしている。
温首相は尖閣問題に加え、東京での「世界ウイグル会議」に出席したラビア・カーディル議長に対する日本側のビザ発給を批判したという。中国側はウイグル問題を「核心的利益」としている。
一方で、中国国営新華社通信や中国中央テレビは、ウイグルと尖閣の問題を並べ、温首相が「中国の核心的利益と重大な懸案事項を尊重するよう日本に求めた」と報じた。尖閣問題での対日強硬姿勢を強調する中国側の宣伝工作に振り回されてはならない。
台湾やチベット、ウイグル問題など中国の「核心的利益」を尖閣問題にまで拡大したともとれる発言の口実として、中国側は石原慎太郎東京都知事が先月発表した都による尖閣諸島の購入計画を意識しているようにみえる。
都が開設した購入資金の寄付金口座には半月で5億円以上が集まった。日本の国内世論の高まりに中国が危機感を強めている。
次期最高指導者に内定している習近平国家副主席は今月訪中した日中友好議員連盟に対し、「核心的利益」との文言を使って石原知事を暗に批判した。日本にしてみれば、知事の計画は尖閣諸島を守り、実効統治を強化していくための有効な提案だ。習副主席の発言もまた、中国側の勝手な言い分と言わざるを得ない。
≪海保法改正案の成立を≫
政権指導部の交代が行われる今秋の共産党大会を前に、中国では重慶市党委員会書記だった薄煕来氏の中央政治局員解任をめぐるスキャンダルや、盲目の人権活動家、陳光誠氏の米国出国問題など社会安定を揺るがす出来事が続いている。国内の統制をはかる意味でも、中国は尖閣で強く出ざるを得ないのではないか。
そうした状況を念頭に日本は戦略を練る必要がある。
野田首相が温首相との会談の翌日に求めていた胡錦濤国家主席との首脳会談は中国側が応じなかった。きわめて残念だ。
中断されたままになっている東シナ海のガス田共同開発をめぐる交渉再開については温首相から具体的な時期を引き出すことはできなかったが、粘り強く再開を迫るべきだ。さらに、15日から中国浙江省で開催される東シナ海での危機管理を話し合う事務レベルの海洋協議も継続が必要だ。
また、野田首相は、中国漁船衝突事件で強制起訴された中国人船長の身柄引き渡しを温首相に直接求めるべきだった。
最も重要なのは、領土を守るための具体的行動である。
すでに国会に提出された海上警察権強化に向けた海上保安庁法などの改正案は早急に成立させなければならない。野田政権には、尖閣諸島での自衛隊常駐や警戒監視レーダーの設置など、実効統治を強めるための具体的行動と覚悟が求められている
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「見る」と「観る」/見(けん)と観(かん)
さて、如何だろうか。
お気付きだろうが、朝日も産経も同じく先頃の日中首脳会談を取り上げ、その際の日中両首脳の発言を取り上げている。取り上げる事実や発言は、奇妙なぐらい両者一致している。例えば、中国・音家宝首相の発言については以下の通りだ。
朝1> このところの不協和音の背景には、石原慎太郎東京都知事の「尖閣購入発言」や、
朝2> 新疆ウイグル自治区からの亡命者組織による「世界ウイグル会議」の東京開催がある。
朝3> 13日の日中首脳会談で、温家宝(ウェン・チアパオ)首相はこの二つを取り上げ、
朝4> 「中国の核心的利益と重大な関心を尊重することが大事だ」と述べた。
産1> 温首相は尖閣問題に加え、
産2> 東京での「世界ウイグル会議」に出席したラビア・カーディル議長に対する日本側のビザ発給を批判したという。
産3> 中国側はウイグル問題を「核心的利益」としている。
これに対する日本側・野田首相の反応にしても以下のようになる。
朝5> これに対し、野田首相は中国の動きを「日本国民の感情を刺激している」と指摘した。
朝6> 自国の領土への物言いへの反論として当然である。
朝7> 中国政府は、ウイグルの人々に日本政府が査証(ビザ)を出したことに反発している。
朝8> だが、犯罪者でもない人物の入国を拒む理由など日本にはない。それを「独立運動にお墨付きを与えた」と見るのは筋違いというしかない。
産4> 温首相の発言に対し、野田首相が「尖閣諸島が日本固有の領土であることは歴史的にも国際法上も明らか」と反論し、
産5> さらに、「中国の海洋活動の活発化が日本国民の感情を刺激している」と指摘したのは当然だ。
産6> 首脳レベルでは尖閣問題にふれないようにしてきたこれまでの民主党政権の方針を転換したことは意味がある。
と言う事は「先頃の日中首脳会談」と言う事象に対する現状認識について、朝日と産経とで大差が無い事を意味している。
だが、現状認識は一致しても、考え方が異なればその現状に対する対応策には雲泥の差が生じる。その差は、例えば上記中国側発言に対する野田首相反応に対する評価で現れる。
朝9> ただ、今回の野田氏と温氏との会談では、関係を悪化させたくない思いも見えた。
朝10> 意見の違いはあろうとも「大局的見地」に立っての努力が必要という点で一致したのだ。
産7> ただ、両首相は「日中関係の大局に影響を与えることは好ましくないとの認識で一致した」という。
産8> 問題を棚上げにしても解決にはつながらない。
だから、朝日が、
朝11> あとは東シナ海ガス田の共同開発など、行動で示すことだ。
等と寝ぼけた〆方をしているのに対し、産経の方はその「東シナ海ガス田開発」を、
産9> 中断されたままになっている東シナ海のガス田共同開発をめぐる交渉再開については
産10> 温首相から具体的な時期を引き出すことはできなかったが、粘り強く再開を迫るべきだ。
産11> さらに、15日から中国浙江省で開催される東シナ海での危機管理を話し合う事務レベルの海洋協議も継続が必要だ。
として、「日中友好発揮の場」ではなく「国益追求の弾丸なき外交戦場」と捉える。
かくて同じ日中首脳会談を取り上げ、似たような現状認識に基づいて、片や朝日はタイトル「日中関係―いがみ合うだけでなく」と「日中友好バンザイ!友愛は全てを超える!!」と言わんばかりの脳天気社説を掲げるのに対し、産経は「「核心的利益」発言 中国の意図は尖閣奪取だ」と銘打ち警鐘を打ち鳴らす。
少なくとも産経の見方のほうが、安全側であろう。