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 何度か使っている「脱原発原理主義」と言う言葉は、私の「造語」だ(*1)。「脱原発」も「原理主義」も既にある言葉で、その組み合わせで意味もそのまま「脱原発を絶対善視し、絶対原理に祭り上げてしまう主義主張」としているから、造語と言っても大して「造って」いる訳ではない。当ブログではこの「脱原発原理主義」として真っ先に東京新聞を挙げているが、朝日とて負けてはいない。三アカ新聞筆頭の意地、なのかも知れない。
 
 先ずは一寸前の社説だが、御一読願おうか。
 

<注釈>

(*1) 先行して使っている人が、既にあるかも知れないが。 
 
転載開始========================================= 

【朝日社説】 核燃料サイクル―撤退へのシナリオ描こう(H24/5/9)

  http://www.asahi.com/paper/editorial.html
 原子力を考えるとき、使用済み核燃料をどう処理するかという難題は、避けて通れない。
 日本では、そのすべてを再処理し、プルトニウムを取り出して使う「全量再処理」を大前提にしてきた。核燃料サイクル路線と呼ばれるものだ。
 しかし、原発を減らしていく時代に、この路線の存続理由はどんどん失せている。
 むしろ、プルトニウムを持ち、それを利用することの問題点が大きくなっている。
 いま、政府の原子力委員会は原子力大綱の策定作業を進めている。そのなかで、再処理路線からの撤退を明確にすべきだ。
■核不拡散への貢献を
 第一の理由は、核拡散の防止である。
 唯一の被爆国の日本は、福島での原発事故で改めて放射能禍の恐ろしさを知った。その一方で、世界ではイランの核開発疑惑が深まり、北朝鮮による新たな核実験への懸念も強まっている。核廃絶を唱える日本としては、事故を契機にいま一度、原子力利用が核拡散につながらない方策を熟考するときだ。
 核兵器をつくるには高濃縮ウランかプルトニウムが要る。これ以上の核拡散を防ぐため、ウラン濃縮施設は国際管理とし、再処理は停止する。それを日本が率先し、各国に賛同を働きかけるべきである。
 日本は非核国で唯一、商業規模(大規模)の再処理施設を持っている。韓国も再処理に意欲を見せるが、91年の北朝鮮との共同宣言で、両国ともウラン濃縮、再処理施設を保有しないことになっている。韓国内には北朝鮮が合意を破っており、もはや宣言にはしばられないとの意見がある。
 日本が再処理路線をやめて、韓国にも同様な方針を促す。それが、朝鮮半島の非核化の実現や、北東アジア全体の安全・安定に資する道だと考える。
 米国は核拡散の結果、兵器用核分裂物質がテロ集団に渡ることを強く警戒している。日本が新たな核不拡散政策を先導すれば、米国の安全保障にもプラスになる。同盟の双方向性を高める効果も期待できる。
■経済的にも不合理
 日本は余剰のプルトニウムを持つことへの、国際的な視線の厳しさももっと自覚しなければならない。
 事故後、プルトニウムを混ぜたMOX燃料の原発での利用計画は先行きが見えなくなった。このまま再処理に突き進めば、余剰プルトニウムが増えるばかりだ。日本にその意図がなくても、いずれ日本が核保有にいたるのではないかとの懸念が海外でふくらみかねない。日本のプルトニウムがテロ集団に狙われる危険もゼロではない。
 撤退の第二の理由は、経済的に見合わないことだ。
 原子力委員会の小委員会が、核燃料サイクルに関するコストを比較した。これまでどおりの全量再処理▽再処理をしないで地下に捨てる「直接処分」▽再処理と直接処分の併存、の3シナリオで計算した。
 その結果、直接処分のコストは、全量再処理よりも約3兆円も割安になった。
 そもそも、核燃料サイクルの主要施設である再処理工場(青森県)、高速増殖原型炉もんじゅ(福井県)とも、故障続きで本格稼働できないままだ。政府はふくらむ経費に甘かったが、もはやそれもできない。
 再処理によって高レベル廃棄物の体積が減るとされるが、高レベル以外の廃棄物の体積は逆に増える問題も抱えている。
■核のごみは中間貯蔵
 再処理からの撤退は、「政策変更コスト」に正面から向き合うことを抜きには進まない。
 たとえば、再処理をやめると六ケ所再処理工場の運営会社や地域経済は困るだろう。工場の廃止や業務転換などのために、電力会社がこれまで再処理のために積み立ててきた基金を使うことも一案だ。
 いざ撤退となれば、使用済み核燃料の扱いが問題になる。最終処分のあり方を決めるまで、とりあえず数十年間保管する中間貯蔵施設を電力会社ごとにつくるなど、代替策の具体化が求められる。
 小委員会は来週、再処理の未来についての複数のシナリオとコストの一覧をまとめて、原子力委員会の新大綱策定会議に提出する。策定会議は複数シナリオを並べて、今月中にも最終決定機関で、関係閣僚が集まるエネルギー・環境会議に見解をあげる。
 それを受けて、同会議が「国民的議論」を経て、核燃料サイクルのありようを含めた原子力政策を夏ごろに決める方針だ。
 これまでの議論では、「政策決定を数年間、遅らせる」といった留保シナリオ案もある。だが、将来的にもサイクルが抱える本質的な問題は変わらない。いまこそ路線を転換し、新たなエネルギー戦略を描くときだ。
 日本は、原子力を整理する時代に移行すべきである。
=================================転載完了
 
 

日本が核燃料サイクルから撤退すると、核不拡散に貢献するぅ?

 さて如何だろうか。
 
 案の定と言うかやっぱりと言うか、社説タイトルからして明らかだが、当該朝日社説は「核燃料サイクル撤退論」である。その撤退の理由を、当該朝日社説は以下の通り挙げている。
 
 (1) 核兵器不拡散への貢献

 (2) 経済的不合理性
 
 態々小見出しにして居るくらいだし、朝日社説としてはこの二つを根拠に為す「核サイクル撤退論」に相応の自信をもっているのだろう。だが、私のような「福島原発事故を経て尚原発推進論者(*1)」の目からすると、全くの「脱原発原理主義」であり、笑止千万、片腹痛し、と言うところだ。
 
 先ず朝日の「核燃料サイクル撤退理由」の片割れ、上記(1)「核兵器不拡散への貢献」であるが、我が国が「核燃料サイクルから撤退」する事で「核不拡散に貢献」するという主張をなすには、必要条件があろう。
 
 即ち「我が国が核燃料サイクルにより核兵器開発を計画している。」と言う条件が。
 
 何故ならば、この条件が( 従来公言されている通り )成立しないならば、我が国が幾ら核燃料サイクルを推進しようとも「核拡散」にはならないのだから現時点で「核燃料サイクルから撤退」したところで、ちっとも「核不拡散」にはならない。
 逆にこの条件が成立し、我が国が( 実は )「核燃料サイクルによる核兵器開発を計画」しているならば、現時点でその「核燃料サイクルから撤退する」事は「核兵器開発の断念」に他ならず、確かに「核不拡散に貢献」することになる。従って「我が国が核燃料サイクルにより核兵器開発を計画している。」と言うのが、朝日の掲げる「核燃料サイクル撤退理由」上記(1)と言う主張が成立する必要条件である。
 
 無論、石破元防衛相が指摘するとおり、我が国の原子力技術、特に核燃料サイクル技術の保有が我が国を「潜在的核兵器保有国」たらしめ、抑止力たり得る事は私も認めよう。だが、それは現時点ではあくまで「潜在的」だ。私の知る限り、我が国は未だ、核兵器開発計画に着手はしていない。
 第一、「天下の」朝日新聞が「我が国の核兵器開発計画」なぞ察知した日には、こんな程度の社説では済むまい。それこそ一面トップどころか、号外ぐらい出しそうな大騒ぎになろう。そんな大騒ぎになっていない、と言う事は、意味する所は一つだ。
 
 「天下の」朝日新聞すら、我が国の核兵器開発計画なんぞ察知してはいない。
 
 それ即ち、朝日の掲げる核燃料サイクル撤退理由上記(1)と言う主張そのものが成り立っていない、と言う事だ。それを「核燃料サイクル撤退理由」の筆頭に掲げてしまうところが、屁理屈であり、脱原発の絶対善視であり、原理主義であると言うのだ。
 
 もう片方の「核燃料サイクル反対理由」上記(2)「経済的不合理性」もどんなモンだか。
 
朝1>  原子力委員会の小委員会が、核燃料サイクルに関するコストを比較した。
朝2> これまでどおりの全量再処理▽再処理をしないで地下に捨てる「直接処分」▽再処理と直接処分の併存、の3シナリオで計算した。
朝3>  その結果、直接処分のコストは、全量再処理よりも約3兆円も割安になった。

 
としているが、ここでは「コスト」しか計算していないとすると、再処理することで新たに原発燃料として発電される利益が計算されているのか疑問だ。まあ、1kwhあたり10円かそこらの安価な原発発電では、約3兆円の赤字を取り戻すのは確かに大変そうだが、
 
朝4>   再処理によって高レベル廃棄物の体積が減るとされるが、高レベル以外の廃棄物の体積は逆に増える問題も抱えている。
 
と当該朝日社説が認める通り、「高レベル廃棄物が減る(*2)」と言うメリットもさることながら、「直接処分」と称して捨ててしまえば唯のゴミにしかならない「使用済み燃料」から新たな核燃料を取り出すからこそ「核燃料サイクル」であろう。ペットボトルの回収と再利用に価値を見出せるならば、「3兆円のコスト増による核燃料サイクル」を実施検討する価値もあろうが。
 
朝5>  日本は、原子力を整理する時代に移行すべきである。
 
等としたり顔で当該朝日社説は〆る。
 
 だが全原発の稼動を止めて「原子力を整理」しかねない現状の日本は、止めた原発分の電力を補い火力発電の燃料に年3~4兆円の国費が消えており、このまま「脱原発」で原子炉廃炉ともなれば、電力不足は全く解消されないまま廃炉費用ばかりが嵩むことになる。無論「核燃料サイクル」どころか原子力技術そのものが維持できないだろう。朝日にして見れば願ったり適ったりの「シナリオ」だ。
 
 原発を再稼動し、より安全な原発を目指し、核燃料サイクルも追求する。上記の通り朝日の言う上記(2)「経済的不合理」「全原発停止」と言う現状の方が上である。逆に言えば原発再稼動で「核燃料サイクルによるコスト」は稼げる勘定だ。これで電力不足やそれに伴う、それこそ「経済的不合理」を回避できる。
 
 何れを選ぶべきかなんてのは、私には自明であり、朝日とは逆だ。ま、いつものことだが。
 

<注釈>

(*1) 私の原発推進論―または私が福島原発事故を経てなお原発を推進する理由。―前進せよ、人類。   http://blogs.yahoo.co.jp/tiger1tiger2stiger/35630668.html 
 
(*2) 上記朝4>の通り、当該朝日社説は「高レベル廃棄物の体積が減る」と「体積」を強調するが、減るのは体積ばかりではない筈だ。