2012/2/16 8:50 先が思いやられる原子炉温度計の故障―福島第1原発J http://jp.wsj.com/japanrealtime/blog/archives/9445/?mod=JRTAdBlock2
Wall Street Journal紙と言うと、金融界では大御所的な有力紙、だろう(※1)。そんな「大御所」の日本語版が、AFP通信と同様に個人ブログへ引用可能になった、と言うのは、我々ブロガーにとっては一つの朗報であろう。但し、WSJ紙の記事が全て無料で閲覧可能な訳ではなく、寧ろ過半数は「全文閲覧は会員限定」になっているから、リンクに飛んでも会員以外はサワリの部分しか読めない。つまりは「会員が会員限定記事をブログに引用する事で、新たな会員=顧客獲得」を狙ったサービスなのであろう。
WSJ誌はアメリカが本拠であるし、その紙名からして経済重視なのであるが、福島第一原発事故には海外ながら関心が高いらしく、先頃あった「福島第1原発2号機の温度計の一つが温度上昇を示した」件を記事にしている。ま、先ずは御一読、願おうか。
<注釈>
(※1) と思う。 正直なところ伝聞情報で、どれぐらい「大御所」かは一寸見当が付かない。
2012/2/16 8:50 先が思いやられる原子炉温度計の故障―福島第1原発J
東京電力は14日、同社の福島第1原発2号機で温度計の1つが上昇していることについて、故障にほぼ間違いないと発表した。この温度計で示されている温度は上昇を続けているが、今回の発表で、破損した原子炉が再び制御不能になったのでないことが明らかになり、安堵感が広がった。しかし、温度計の故障によって、原発の事故処理における東電の力がいかに心許ないものかが改めて浮き彫りにされた格好だ。問題の温度計は第2原子炉の溶け落ちた核燃料の温度を計測する6つの温度計の1つ。この温度計は今月になって異常な動きを示すようになり、福島原発の状況を観察する人々から注視されてきた。第2号機は昨年3月の事故で炉心溶融が起きたと考えられている原子炉の一つだ。東電は昨年12月、全ての原子炉の温度が100度を大きく下回る水準に低下したことを発表、放射性物質の放出や再臨界の恐れがなくなったと宣言した。しかし今月1日に約50度だった2号機の温度計の1つが5日後に約70度を超える温度を示した。その後、原子炉の圧力容器への注水量を増やすなど冷却措置と、再臨界を防ぐホウ酸水の注入が実施されたものの、東電は12日、温度計が90度近くまで上昇していると発表した。そして、14日までにこの温度計が250度前後を示した。一方、同じ高さにある他の二つの温度計は安定して30度前後を示していた。そのため、東電は問題の温度計と他の2つの温度計で数値に差異があることと、水蒸気や放射能レベルの増加など核反応を示す兆候がないことを理由に、温度計につながる回線がどこかで切れたのではないかと判断した。ただ、第2号機の温度計故障で難しい問題が表面化したのも事実だ。原発事故の発端となった東日本大震災はもとより、それに続いた炉心溶融と爆発など、福島第1原発の設備が悪条件下にあったことを考えれば、機器が故障しても不思議でない。原子炉の多くでは放射能レベルが依然として高いため、設備機器の交換は言うまでもなく、点検さえほとんど不可能な状態だ。問題の温度計は放射線量の極めて高い第2号機の格納容器内という、まさにそうした状態に置かれている。東電によると、この種の温度計は通常、定期検査で13カ月ごとに点検および調整が実施されるという。しかし、福島第1原発では、原子炉建屋の漏えいをふさぐのに6年、溶け落ちた燃料の除去作業を始めるのが10年後になると専門家が予想している。そのような点検と調整は不可能だ。そして、その間に第2号機やその他の破損した原子炉でさらに故障が生じたらどうなるのだろうか。原発の安全性や安定性を判断する上で東電が依存している他の機器が故障したら深刻な状況になるのではないか。東電は、故障した温度計近辺に設置された30の温度計全てから測定した数値を基に2号機の温度を把握することが出来ると考えている。さらに、原子炉内部の状況を把握する他の方法の検討に全力を尽くしているという。記者: Phred Dvorak
意味の通らない「心配」
さて、如何であろうか。
「大変ダァ、心配ダァ」
此の他に何か言っているだろうか。
此の他に何か言っているだろうか。
これだけを言う為にWSJ紙は紙面を割くのだろうか。
此の記事が電子版の記事で、尚且つ無料で誰でも閲覧できる記事であることには留意が必要だ。それは記事、或いは記者のレベルの低さを意味するかも知れないからだ。レベルの高い記事・記者は有料記事の方にまわすのが、商売でもあり、有料会員へのサービスでもあろうから。
だがそれを斟酌したとしても、以下の一節はどうであろうか。
此の記事が電子版の記事で、尚且つ無料で誰でも閲覧できる記事であることには留意が必要だ。それは記事、或いは記者のレベルの低さを意味するかも知れないからだ。レベルの高い記事・記者は有料記事の方にまわすのが、商売でもあり、有料会員へのサービスでもあろうから。
だがそれを斟酌したとしても、以下の一節はどうであろうか。
1> 原子炉の多くでは放射能レベルが依然として高いため、
2> 設備機器の交換は言うまでもなく、点検さえほとんど不可能な状態だ。
3> 問題の温度計は放射線量の極めて高い第2号機の格納容器内という、まさにそうした状態に置かれている。
4> 東電によると、この種の温度計は通常、定期検査で13カ月ごとに点検および調整が実施されるという。
5> しかし、福島第1原発では、原子炉建屋の漏えいをふさぐのに6年、溶け落ちた燃料の除去作業を始めるのが10年後になると専門家が予想している。
6> そのような点検と調整は不可能だ。
2> 設備機器の交換は言うまでもなく、点検さえほとんど不可能な状態だ。
3> 問題の温度計は放射線量の極めて高い第2号機の格納容器内という、まさにそうした状態に置かれている。
4> 東電によると、この種の温度計は通常、定期検査で13カ月ごとに点検および調整が実施されるという。
5> しかし、福島第1原発では、原子炉建屋の漏えいをふさぐのに6年、溶け落ちた燃料の除去作業を始めるのが10年後になると専門家が予想している。
6> そのような点検と調整は不可能だ。
どうも訳文が硬いというか、日本語らしく無いと言うか、翻訳ソフトにかけてそのまま出したような日本語だ。世界的にも名の知れたWall Street Journal紙がそんなことをするとは一寸考えにくいが、「WSJ誌日本語版」ならばひょっとするとそんな物かも知れない。
上記1>~6>の前に同記事では、今回の「温度上昇計測」が「温度計の故障である」と言う東電の結論に一定の理解を示している。この点は「東電や日本政府は推定有罪」と言う原理に凝り固まっている日本の一部言論よりは大分増しであり、冷静である。だが、上記1>~6>の記述は、章題にした通り「意味の通らない「心配」」だ。
上記1>~4>は、今回呼称と判定された温度計を含め、「原発は通常13ヶ月毎に定期検査され、必要とあれば部品交換なり修理なりされてきた。が、今の福島原発ではそんな定期検査は不可能だ」と述べている。此の主張自体は間違いではない。即ち、上記6>も正しい記述だ。
問題は間の5>とその他の部分がつながらない事。「原子炉建屋の漏洩をふさぐ」のも「溶け落ちた燃料の除去作業が始まる」のも、「実施できない13ヶ月の定期点検」とは何の関係も無い。しいて言えば後者が「原発建屋内の放射線低下」につながり、「13ヶ月の定期点検再開」への糸口たり得るが、前者はそれこそ全く何の関係もない。
故に、ここで言う「専門家の予想」とWSJ紙の表明する「心配」が、直接結びつかない。敢えて結びつけるならば、「溶け落ちた燃料の除去開始までも10年掛かるのだから、温度計その他の定期点検開始は酷く遅れるだろう。」と言う、情緒的と言うか定性的と言うか、日本で言えば浪花節的な相関関係である。
で、その相関関係に基づいて、
7> そして、その間に第2号機やその他の破損した原子炉でさらに故障が生じたらどうなるのだろうか。
8> 原発の安全性や安定性を判断する上で東電が依存している他の機器が故障したら深刻な状況になるのではないか。
と、論じてしまうのだから、なんと言うかWSJ日本語版の記事とは言え、なんとも「日本的」。逆に言えば「非アメリカ的」である。
上記1>~6>の前に同記事では、今回の「温度上昇計測」が「温度計の故障である」と言う東電の結論に一定の理解を示している。この点は「東電や日本政府は推定有罪」と言う原理に凝り固まっている日本の一部言論よりは大分増しであり、冷静である。だが、上記1>~6>の記述は、章題にした通り「意味の通らない「心配」」だ。
上記1>~4>は、今回呼称と判定された温度計を含め、「原発は通常13ヶ月毎に定期検査され、必要とあれば部品交換なり修理なりされてきた。が、今の福島原発ではそんな定期検査は不可能だ」と述べている。此の主張自体は間違いではない。即ち、上記6>も正しい記述だ。
問題は間の5>とその他の部分がつながらない事。「原子炉建屋の漏洩をふさぐ」のも「溶け落ちた燃料の除去作業が始まる」のも、「実施できない13ヶ月の定期点検」とは何の関係も無い。しいて言えば後者が「原発建屋内の放射線低下」につながり、「13ヶ月の定期点検再開」への糸口たり得るが、前者はそれこそ全く何の関係もない。
故に、ここで言う「専門家の予想」とWSJ紙の表明する「心配」が、直接結びつかない。敢えて結びつけるならば、「溶け落ちた燃料の除去開始までも10年掛かるのだから、温度計その他の定期点検開始は酷く遅れるだろう。」と言う、情緒的と言うか定性的と言うか、日本で言えば浪花節的な相関関係である。
で、その相関関係に基づいて、
7> そして、その間に第2号機やその他の破損した原子炉でさらに故障が生じたらどうなるのだろうか。
8> 原発の安全性や安定性を判断する上で東電が依存している他の機器が故障したら深刻な状況になるのではないか。
と、論じてしまうのだから、なんと言うかWSJ日本語版の記事とは言え、なんとも「日本的」。逆に言えば「非アメリカ的」である。
或いは「心配ダァ」と表明するばかりで何の対策も責任も感じさせない、太平洋の向こう側にあるが故の合理的な脳天気さを、「アメリカ的」と見るべきか(※1)。
基本的にWSJ紙の表明する「心配」は、相関が的外れな部分もあるが、根本的な誤りではない。「13ヶ月の定期点検は当面不可能」「他のシステムにも故障が発生する可能性はある」何れも指摘としては正しい。それをWSJ紙が「直接の利害関係のない第三者」として客観的に指摘し、指摘しっ放しなのはWSJ紙の、「アメリカの勝手」と言うべきだろう。
だが、私は日本人であるし、日本に住んでいる。指摘しっ放しのWSJ紙とはおのずから立場が異なる。
そのWSJ紙の上記1>~6>の指摘には、ある程度首肯出来る。上記7>~8>の「心配」にも準備はしておくべきだろう。
その上で、上記7>の通りの事態が起き、上記8>の様に深刻になろうとも、我々は、我が国は、前進するのみである。
「ならば、行って我らの正統な遺産を要求しようではないか。
我々の伝統に敗北の概念はない。今日は恒星を、明日は銀河系外星雲を。
我々を止められる力など、この宇宙には存在しないのだ。 」
基本的にWSJ紙の表明する「心配」は、相関が的外れな部分もあるが、根本的な誤りではない。「13ヶ月の定期点検は当面不可能」「他のシステムにも故障が発生する可能性はある」何れも指摘としては正しい。それをWSJ紙が「直接の利害関係のない第三者」として客観的に指摘し、指摘しっ放しなのはWSJ紙の、「アメリカの勝手」と言うべきだろう。
だが、私は日本人であるし、日本に住んでいる。指摘しっ放しのWSJ紙とはおのずから立場が異なる。
そのWSJ紙の上記1>~6>の指摘には、ある程度首肯出来る。上記7>~8>の「心配」にも準備はしておくべきだろう。
その上で、上記7>の通りの事態が起き、上記8>の様に深刻になろうとも、我々は、我が国は、前進するのみである。
「ならば、行って我らの正統な遺産を要求しようではないか。
我々の伝統に敗北の概念はない。今日は恒星を、明日は銀河系外星雲を。
我々を止められる力など、この宇宙には存在しないのだ。 」
何度も引用するJ・P ホーガン「星を継ぐもの」からダンチェッカー教授の決め台詞である。ホーガン自身がアメリカ人であるし、小説もアメリカの出版ではあるが、今の我が国我らには相応しい。
心配結構。大いに心配した方が良い。心配は、用心と準備の種だ。
だが、撤退はありえない。水素爆発や再臨界の恐れのあった時でさえ撤退は一人東電の存否・責任のみならず、人類の英知の敗退を意味した。況や「ナンチャッテ」だろうがなんだろうが「冷温停止」状態に一反は持ち込んだ今後に、撤退なぞあるものか。
前進せよ、人類。
心配結構。大いに心配した方が良い。心配は、用心と準備の種だ。
だが、撤退はありえない。水素爆発や再臨界の恐れのあった時でさえ撤退は一人東電の存否・責任のみならず、人類の英知の敗退を意味した。況や「ナンチャッテ」だろうがなんだろうが「冷温停止」状態に一反は持ち込んだ今後に、撤退なぞあるものか。
前進せよ、人類。
<注釈>
(※1) そう言う意味では、極めて「アメリカ的」なマスコミは日本に掃いて捨てるほどあるから、不思議と言えば不思議だ。今回の「温度上昇」でも「ナンチャッテ冷温停止だ!」と吹聴して廻る輩の、なんと多かった事か。