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 もう何度書いたか知れないほどであるが、我が国に限らず「国のエネルギー政策」の目的は、見通せる将来に渡って「電力の安定供給」である。「安定供給」の中には「安価な供給」の意味を含んではいるし、「安定」と言うのは必ずしも電圧や電力量ばかりではない。例えば先行記事にした東欧のチェコ(*1)は、ロシアからの天然ガスに依存する電力供給では安全保障上問題であると判断し、福島原発事故後も原発を推進し、その発電シェアを今後8割にまで引き上げる計画だと言う。これ即ち、「安定」の中に「国の安全保障」と言う意味を含んでいるということであるし、安定して充分な電力供給量があるということは、これまた先行記事にした通り、広義の防衛力でもある(*2)
 
 「国のエネルギー政策」の目的は、上記の通りある程度広い意味を含む「電力の安定供給」である以上、原発・火力・水力などの従来型発電法も「今をときめく」再生可能なエネルギーたる太陽光・風力・潮汐力・地熱も、さらにはスマートグリットなどの送電方法も、今だ概念段階の域を出ない高効率・大容量蓄放電技術も、全ては手段である。
 
 以上のように当ブログでも主張し続けている(*3)私が、日経社説タイトルに「強靱な電力網築く改革に踏み出せ」の文字を見たときは、思わず「我が意を得たり」と思い込みそうになった・・・・そう、「思い込み」そうになっただけだ。
 
 先ずはその日経社説を、御一読願おうか。

<注釈>

(*1) 原発に未来を託すチェコ、「他に道はない」  http://www.afpbb.com/article/economy/2838390/8015106  「元衛星国」の意地―原発に未来を託すチェコ[ http://www.blogs.yahoo.co.jp/tiger1tiger2stiger/36226766.html 

(*2)  余剰電力は防衛力である-脱原発騒動と電力不足状況によせて  http://blogs.yahoo.co.jp/tiger1tiger2stiger/35687699.html 

(*3) あんまり同じ事ばかり主張するので「飽きられた」のが最近の当ブログアクセス数低迷の原因か、と考えている。或いは、あまり他所のブログに議論仕掛けに行かなくなった事が原因か。 


転載開始========================================= 

日経社説 
エネルギーを考える 強靱な電力網築く改革に踏み出せ

 
2012/1/10付 

 東日本大震災で露呈した日本の電力供給体制のもろさをどう克服するか。政府は制度改革の論点をまとめ、夏までに結論を出す。

 電力不足の長期化を避けるには、省エネを一層強め、太陽光など自然エネルギーを最大限活用する仕組みが要る。欧米より割高な電気料金がさらに上がるのを抑え、産業空洞化に歯止めを掛けなければならない。強靱(きょうじん)な電力網につくり直すため、抜本的な改革に踏み出すときだ。


節電へ時間別料金制に


 政府の「電力改革および東京電力に関する閣僚会合」が昨年末にまとめた論点整理は、家庭向けの売電の自由化や、電力会社の発電・送電事業の分離など、ひと通りの論点を挙げた。だが、何から着手してどう進めるのか、改革の道筋は示していない。

 何よりも重要なのは、企業や家庭ができるだけ安いコストで電気を安定して使えるようにすることだ。電気を効率よく使う次世代送電網(スマートグリッド)などの技術革新も踏まえ、短期、中期の課題を整理し、順序立てて改革を進める必要がある。

 当面の課題は、今年も予想される電力不足をどう乗り切るかだ。需要がピークになる冬の夕方や夏の午後の対策がカギになる。節電を強いるのでなく、省エネを動機づける新たな仕組みが要る。

 昨年夏の電力危機では、政府がピーク時の需要を15%減らす目標を掲げ、37年ぶりに電力使用制限令を出した。大企業の電力消費は最大29%減ったが、工場の操業時間の変更などで社会への影響は大きかった。制限令の対象でない家庭の節電は6%にとどまった。

 制限令のような法的手段に頼らずに節電を促すため、時間帯別料金制の導入を急ぐべきだ。需給が逼迫する時間は料金を高く、それ以外は安くする仕組みである。

 夏の午後などの料金が上がれば、安い夜間電力を使う給湯器や蓄電池の普及に弾みがつく。効率のいいエアコンや発光ダイオード(LED)照明、断熱性の高い建材への買い替えも期待できる。

 政府は、電気をどこで、どれだけ使ったかが分かる次世代電力計をすべての家庭に普及させる目標を立てている。こうした「見える化」を早く進め、自発的な省エネを後押ししたい。

 消費者が料金の安い電力会社を選べるように、家庭向けの自由化も急ぎたい。企業が自家発電で余った分を家庭に売ったり、太陽光の電気を集めて地域で配ったりするビジネスの芽が出ている。

 経済産業省は電力会社ごとに与えている免許制度を、発電、送配電など事業ごとに見直す案を検討している。こうした仕組みを取り入れ、発電事業への新規参入と価格競争を促すことは重要だ。

 送電部門の改革では、自然エネルギーをどう普及させるか、災害時の安定供給をどう確保するかの2つの視点が欠かせない。

 北日本には風力や地熱、西日本には太陽光発電の適地が多い。今は、発電しても、電力会社の送電線を借りる「託送料」が高く、参入の壁になっている。自然エネルギーは天候に左右され、地域の電力会社だけが取り込むと電圧などが不安定になる問題もある。


全国送電網の再設計を


 まず託送料を下げ、自然エネルギーによる発電会社が送電線を使いやすくする規制改革が必要だ。地域をまたぐ基幹送電網も整え、電気を融通しやすくする体制をつくりたい。昨年の大震災と原発事故の後に電気の広域融通が円滑にできず、電力不足の一因になった教訓を生かすべきだ。

 東京電力が原子力発電所の事故による損害賠償や廃炉の費用を捻出するため、同社の発電所を売る案が取り沙汰されている。東電の経営問題と電力市場全体の改革は本来は次元の違う話だが、発送電分離を検討するよい契機になる。

 東電以外の9電力会社を含めて発送電分離を考えるなら、今のような電力会社の地域割りの意味は薄れる。富士川を境に50ヘルツ、60ヘルツと東西で異なったままになっている周波数を統一することを含め、日本全体で送配電網を再編する大きな設計図が要る。短期間での実現は容易でないが、今から検討を始めるべきだ。

 電力改革が日本の産業や家庭にどんな利益と影響をもたらすか。それを見定めながら改革を続ける不断の取り組みが重要になる。

=================================転載完了

前提の誤り


 さて、如何であろうか。
 
 「思い込み」そうになったのは日経社説が「強靭な電力網」と銘打ちその「電力網」の意味を勝手に解釈してしまったから。当ブログの主張では、原発含む発電法から蓄放電、送電まで全部を「電力の安定供給(*1)」の為の手段としているのに対し、当該日経社説が扱うのあくまでも送電と、電力消費量の方に焦点を当てている。
 それだけならば、焦点の違い、力点の違いにしか過ぎないのだが、どうも日経社説氏と私との相違はそんな些事ではなさそうだ。何しろ日経社説氏と来たら、以下のように断じてしまうのだから。

経1> 電力不足の長期化を避けるには、省エネを一層強め、太陽光など自然エネルギーを最大限活用する仕組みが要る。

 上記経1>の前半省エネを一層強めには同意できないこともない。それは電力需要の圧縮であり、それ即ち必要電力量の削減である。それが行き過ぎたり、悪影響を与えるようでは「電力の安定供給」のさらに上位の目的「我が国の発展」に反するものであるが、創意工夫の範囲であるならば、同意奨励する事はあっても、反対する理由はない。
 だが後半太陽光など自然エネルギーを最大限活用する仕組み電力不足の長期化を避けると言うのは、余りにも「太陽光など自然エネルギー」にも「最大限に活用」にも過大な期待をかけすぎていよう。所詮「太陽光など自然エネルギー」は、再三繰り返すとおり「態と発電しない」ことはできても発電量を制御できない。尚且つ現状どころか当面の間、高効率且つ大容量の蓄電技術なぞ影も形もないのだから、「最大限に活用」にも相当に制限がある。精々が「需給アンバランスによる無駄を減らす」事と、家庭用電源程度の小容量蓄電池が使える程度。それでは「電力不足の長期化を避ける」足しにはなっても、対策とは、到底言われまい。
 
 だから、その後の上掲日経社説は、「電力不足の長期化を避ける」主として節電を奨励する料金体系や、スマートグリッドなど、「電力需要の圧縮法」と「送電効率の向上」しか上げていない。あまつさえ
 
経2>  富士川を境に50ヘルツ、60ヘルツと東西で異なったままになっている周波数を統一することを含め、
経3> 日本全体で送配電網を再編する大きな設計図が要る。
経4> 短期間での実現は容易でないが、今から検討を始めるべきだ。
経5>  電力改革が日本の産業や家庭にどんな利益と影響をもたらすか。
経6> それを見定めながら改革を続ける不断の取り組みが重要になる。

等と当該社説を〆ていては、その「不断の改革」の間中電力不足になるという事であり、「電力不足の長期化」は不可避と言う事ではないか。一体何の為にこの社説を掲げているのか、訳がわからなくなる。

 言い換えれば、当該日経社説が「電力不足の長期化を避ける」策として提唱しているのは、節電策=電力需要の圧縮のみであり、タイトルにもしている「強靭な電力網」は一朝一夕ではならず、短期的には掛け声のみにしかならない。

 あまつさえ、

経7> 送電部門の改革では、自然エネルギーをどう普及させるか、災害時の安定供給をどう確保するかの2つの視点が欠かせない。

などと、「自然エネルギーの普及」を送電改革の目的に掲げるなぞ、本末転倒である。何故ならば「太陽光など自然エネルギー」は、現状、大容量蓄放電技術が概念の域を出ない現状に於いては如何に「最大限に活用」しようとも、安定した発電法ではないのだから、「電力不足の長期化」を避けられるほど大幅な「自然エネルギーの普及」は(*2)、電力供給を不安定にするからである。
 
 「自然エネルギー」などと言う錦の御旗の前に平身低頭してしまうから、こんな意味の通らない社説が書けてしまうのだ。ちったぁ頭ぁ冷やしゃぁがれ、クソ日経。



<注釈>

(*1) 出口、即ちエンドユーザーたる電力消費者側での「供給」。だからこそ、発電のみならず、送電も、蓄放電も関わってくる。 

(*2) 仮にそれほどの発電施設を設置できるほどの土地面積が確保できたとしても