応援いただけるならば、クリックを⇒ https://www.blogmura.com/
「正月なんだから、悲観的な話は嫌われるし、「良い話」を聞きたくなる/書きたくなるのは人情だ」とは、先行記事に記したが、どうも、産経新聞もそんな気分であるらしい。「そんな気分」は、真実を報じ社会の木鐸たらんとするマスコミの使命には有害である可能性を孕んでいるのだが・・・先ずは産経の「目出度い」記事、御一読願おうか。
転載開始=========================================
【正論】
たくましいぞ日本経済の底力 驚異の環境適応力
http://sankei.jp.msn.com/economy/news/120105/fnc12010503370000-n1.htm
2012.1.5 03:07 [景気]「カネの動きではなく、モノの動きを通して経済を見る」-。商社エコノミストとして、常々心がけていることだ。貿易のデータから浮かび上がる日本経済は、巷間(こうかん)言われている「通説」とは一味違うことが多い。端的に言えば「意外とたくましい」のである。
経常収支GDP比3%黒字へ
昨年12月、日本貿易会が恒例の貿易動向見通しを発表した。各商社が商品別に見通しを作成し、それらを積み上げて総額をはじく。「ビジネスの現場感覚」を反映したデータだと自負しているが、今回は筆者が座長を務めたこともあり、概要を紹介してみたい。今回の見通しでは、2011年度は3年ぶりに貿易収支が赤字となる。これは想定の範囲内で、昨年の日本経済は震災の打撃を受けたし、円高の重圧もあったので輸出は落ち込む。原発が止まっている分、火力発電用の燃料を買わねばならず、輸入は増える。特にLNG(液化天然ガス)は前年比4割増の見込みである。しかし12年度になると、復興による供給力回復とともに輸出は増加に転じる。同時に資源価格が下がることで、輸入は減少を見込む。結果として12年度の貿易収支は3兆円程度の黒字を確保することになる。12年度の輸出は69兆円程度と、ピークだった07年度の85兆円からは見劣りがする。水準としては、05年度の68兆円に近い。主力の輸出品目である輸送用機器、一般機械、電気機器などの金額も、ほぼ6年前に戻ってしまった。
円高、油高への適応力に驚嘆
しかるに、当時は、1ドルが110円、原油価格は1バレル50ドル程度であった。それが今は1ドル70円台、1バレル100ドル前後の経営環境である。日本経済はリーマンショックと東日本大震災という痛恨のダブルパンチを受け、さらに円高と資源高という悪条件の下で、以前と変わらない数字をはじき出している。驚嘆すべき環境適応能力ではあるまいか。とはいえ、貿易黒字の絶対額が趨勢(すうせい)として減少していることは否めない。それでは経常黒字も減ってしまうのか、と思うとそれほどでもない。対外投資のリターンでもたらされる所得収支の黒字が堅調なので、経常収支は安定的に推移する。11年度は12兆円台となるものの、12年度は16兆円強と、10年度実績とほぼ同水準に戻る。こんなふうに、GDP(国内総生産)比3%程度の黒字が維持されるのであれば、「日本経済が借金体質に陥って、そのうち国債も国内で消化できなくなる」という恐怖のシナリオは、ある程度先のことと考えていいだろう。だから安心とまではいえないが、財政再建にはまだ時間が残されていると受け止めていいだろう。細部のデータも見ていて飽きない面白さがある。原発事故による風評被害により、日本の食料品輸出は大きく減少したと見る向きが多いだろうが、現実の落ち込みは1割程度である。しかも食料品輸出のうち、4割程度は魚介類が占めている。震災によって、被災地のフカヒレなど高級食材が打撃を受けたことを勘案すれば、放射線問題による影響は意外と軽微といえるのではないだろうか。残念ながら食料輸出の10年度実績は4070億円に過ぎない。これに対して輸入は5兆3070億円なので、10分の1以下の水準にとどまっている。これだけ高品質な食材を有しながら、また近隣諸国の生活水準の向上が目覚ましいなかで、この数字はいささか不本意といわざるを得ない。
「楽観は意志、悲観は気分」
食料品は生産から加工、流通までを一本化し、いわゆる農業の六次産業化(一次+二次+三次産業)を通して、輸出拡大を図るべきだろう。士農工商が「縦割り分業」をしているようでは、せっかくの機会を逃してしまう。ところで、日本の食料品輸入額が年間5兆円程度であると説明すると、「そんなに少ないのか」と驚かれることがある。しかるに、この5兆円の中には、畜産用の飼料やたばこなど、人の口には入らないものも含まれている。「輸入品が日本の食を脅かしている」という言説は、少なくとも数量ベースからいうと疑わしい。年間の食料品輸入の中には、酒類やコーヒーなどの嗜好(しこう)品や、最大の品目である魚介類も含まれている。これらをすべて除外して、肉類、穀物、果実および野菜、酪農品などの純粋な農産物のみの輸入金額を計算すると、3兆円以下になってしまう。年間の国内農業生産額は8・5兆円だそうだ。農水省は「カロリーベースで日本の食料自給率は4割」だとしきりに強調するが、金額ベースだと国産品と輸入品の比率は3対1程度である。両方の数字を押さえておくべきだろう。「楽観は意志、悲観は気分」であるという。くれぐれも不安を誘う「通説」には流されたくないものだ。数字は嘘をつかないが、嘘には数字が付き物なのである。(双日総合研究所副所長・吉崎達彦=よしざき たつひこ)
=================================転載完了
数字は嘘をつかないが、嘘には数字が付き物なのである。
さて、如何であろうか。なかなかの、「目出度さ」ぶりではなかろうか。
無論、「双日総合研究所副所」と言う「商社エコノミスト」の肩書きを持つ人が書いた署名論説だ。それ相応の自信もあれば、責任も掛かって来るもの。それ以上に、此の分析や予想が大ハズレにハズレたら、それこそ「商社エコノミスト」としての沽券に関わり、平たい話し商売が出来なくなりそうな肩書きだ。だから、当ブログの記事は言うに及ばず、大概のマスコミ報道なんかより、上掲記事の方が遥かに信用できそうだ(*1)。
そうでなくても「存外たくましい日本経済」と言う朗報は、信じたくなるような「明るいニュース解説」である。が、そんな中でも特に目を引いたのが、次の一節である。
無論、「双日総合研究所副所」と言う「商社エコノミスト」の肩書きを持つ人が書いた署名論説だ。それ相応の自信もあれば、責任も掛かって来るもの。それ以上に、此の分析や予想が大ハズレにハズレたら、それこそ「商社エコノミスト」としての沽券に関わり、平たい話し商売が出来なくなりそうな肩書きだ。だから、当ブログの記事は言うに及ばず、大概のマスコミ報道なんかより、上掲記事の方が遥かに信用できそうだ(*1)。
そうでなくても「存外たくましい日本経済」と言う朗報は、信じたくなるような「明るいニュース解説」である。が、そんな中でも特に目を引いたのが、次の一節である。
>「数字は嘘をつかないが、嘘には数字が付き物なのである。」
「統計で嘘をつく法」と言う古典的名著は何度か紹介・引用しているが、上掲記事で双日総合研究所副所長・吉崎達彦氏は。「統計(数字)こそ、嘘に付きものだ」と断じているのである。
況や、数字のないものは、嘘でない方がどうかしている、と言う訳か。成程、「商社エコノミスト」らしい判断基準と言えそうだ。
<注釈>
(*1) 先の衆院選挙前に、如何にマスコミの大半が「政権交代」を煽り、民主党を囃し立て、当時まだ与党にあった自民党を貶めていたかを想起すれば、マスコミは「誤報や誤予想の責任を取らない」のは自明である。