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以下に転載するのは、産経webに掲載された石平氏のコラム。コラム最後の略歴にある通り、石平氏は中国籍にあったが日本国籍を取得した帰化日本人であり、言わば「脱北者」ならぬ「脱中者」である。理の当然ながら、その中国評は極めて辛口であり、「CIAから金を貰っている!」なんて批難もあるようである。何を好き好んでCIAが中国の悪口を買うのか私には判らないが、「脱中者たる石平氏の中国評は、当然辛口である」と言うのは念頭に置くべきだろう。
その石平氏が産経に連載している【石平のChina Watch】と言う記事ともなると、これはもう中国に対して大辛で無かったら不思議なくらいであるから、財政赤字に悩むアメリカの一役所であるCIAが「中国の悪口を買っている」のだとすると、「CIAが金を出さずとも買えそうな中国の悪口」であり、CIAとしては大いに助かっている事だろう。(※1)
そうは言っても、今回の【石平のChina Watch】は、特筆大書すべき程に激辛である。先ずはその連載記事を、御一読願おうか。
<注釈>
(※1) 注記するまでもあるまいが、この「CIA云々」は皮肉だ。CIAが米国の利益を図るのは当然で、そのために中国の不利益を図る事はありうる事だろう。だが、「中国の悪口を買う=石平氏他に金を出して「悪の中国」を宣伝させる」よりは有意義な金の使い方が有りそうだし、また、そうしているだろうと言う確信に基づく、皮肉だ。ああ念の為。私のところにも「CIAの金」なんて、ビタ一文入って来ていない。
転載開始=========================================
【石平のChina Watch】
「政権VS艾未未戦争」の寓意
2011.12.8 11:07 [石平のChina Watch]
中国国民の間で支持が広がっている人権活動家の艾未未氏(AP)中国では今、著名芸術家で人権活動家の艾未未(アイ・ウェイウェイ)氏と政府当局との「イタチごっこ」の戦いが繰り広げられている。
まずは今年の4月、公安当局が突如、艾氏を「経済犯罪」の疑いで拘束した。その後、北京市の公安局は「捜査」の結果として艾氏の妻が代表を務める会社に「巨額の脱税行為」があったと主張する。
そして11月1日、当局は艾氏に対し、「未支払い税金と罰金」として1500万元(約1億8400万円)の支払いを命じた。一連の動きは、当局が反体制のシンボルとなった艾氏をたたき潰すための「策略捜査」である。
だが政府の汚いやり方に多くの人々が憤慨し、巨額の罰金支払いに困り果てた艾氏を支援する動きが急速に広がる。同月1日から4日までのわずか数日間、全国の支持者ら約3万人から計870万元の支援金が艾氏に寄せられた。艾氏はただちに当局の処分に対する異議申し立ての司法手続きを開始して、政府と争う姿勢を鮮明にした。
こうした中で、公安当局は艾氏が女性数人と一緒に写ったヌード写真をネット上に掲載した疑いで彼の身辺への捜査を始めた。「経済犯罪」のネタで「艾未未潰し」に失敗した政府は今度、「下ネタ」を持ち出して劣勢を挽回しようとしたのである。
しかし艾氏側は件(くだん)のヌード写真が「芸術作品」だと反論する一方、支持者たちが競って自身のヌード写真をネットに投稿して、当局への皮肉を込めた抗議活動を始めた。今では、投稿専用のメールアドレスまで登場して国の内外から写真投稿が殺到してくる「盛況ぶり」となっている。
そして同月29日、艾氏の妻、路青さんが警察に連行されたと伝えられた。連行の理由などはいまだに不明だが、要するに政府は艾氏たたきのためについにその家族にまで手を出した。
この戦いで特に目立っているのが政府当局のひきょうさである。当局は「反体制分子」の艾氏をどうしてもたたき潰したいが、正面から彼の行動を批判して政治的弾圧を堂々と加える勇気もない。本筋の政治問題とは無関係のところで口実をこじつけて彼をやっつけようとした。
たった1人の反対派との「正面対決」もできなくなっているほど中国の共産党政権は弱気になっているようだが、そのことは逆に、政権がすでに絶対的権威とイデオロギー上の優位性を失いつつあることの証拠ではないのか。
さらに興味深いことに今年春ごろからあの手この手を使って艾氏を葬り去ろうとしているのに政権は今になってもその目的を達成できていない。それどころか「艾未未潰し」をやればやるほど、国内外における彼の名声がますます高まり、艾未未支持の「反政府的」動きはますます広がる。政府のやることはすべて裏目に出て、「政権VS艾未未」の戦いはむしろ政権の旗色が悪くなる一方である。
かつて毛沢東時代、政権はその気になれば数百万人の「反動分子」たちを一夜にして葬り去ることもできた。その時のことと比べれば、今の状況はまさに隔世の感があろう。人権思想や民主主義的考え方が徐々に国民の中に浸透していくにつれ、一党独裁の支配体制が確実に弱体化しているのだ。
それはまた、中国における社会的進歩の表れであるが、今後、艾未未やその支持者たちの不屈の反抗精神がさらに広がっていけば、体制そのものの変革を促すような大変化がやがて起きてくるのではないか、と期待したい。
◇
【プロフィル】石平
せき・へい 1962年中国四川省生まれ。北京大学哲学部卒。88年来日し、神戸大学大学院文化学研究科博士課程修了。民間研究機関を経て、評論活動に入る。『謀略家たちの中国』など著書多数。平成19年、日本国籍を取得。
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噛めば噛むほど味が出る中国評
さて如何であろうか。
御一読頂ければ判るとおり、上掲記事で石平氏が取り上げるのは、「著名芸術家で人権活動家の艾未未(アイ・ウェイウェイ)氏と政府当局との「イタチごっこ」の戦い」である。特に、戦いの経緯もさる事ながら、艾未未氏が著名芸術家(※1)であるとは言え中国政府当局の姑息さと卑劣さ。而してその卑劣で姑息な手段を以ってしても艾未未氏の影響力を「無力化」出来ないでいる事実に注目し、その「寓意」として、「中国共産党政権の統治力・統制力弱体化」への期待を表明している。
1> たった1人の反対派との「正面対決」もできなくなっているほど中国の共産党政権は弱気になっているようだが、
2> そのことは逆に、政権がすでに絶対的権威とイデオロギー上の優位性を失いつつあることの証拠ではないのか。
3> かつて毛沢東時代、政権はその気になれば数百万人の「反動分子」たちを一夜にして葬り去ることもできた。
4> その時のことと比べれば、今の状況はまさに隔世の感があろう。
5> 人権思想や民主主義的考え方が徐々に国民の中に浸透していくにつれ、一党独裁の支配体制が確実に弱体化しているのだ。
6> それはまた、中国における社会的進歩の表れであるが、
7> 今後、艾未未やその支持者たちの不屈の反抗精神がさらに広がっていけば、
8> 体制そのものの変革を促すような大変化がやがて起きてくるのではないか、と期待したい。
特に上掲記事の〆、上記7>~8>は「体制そのものの変革を促すような大変化」に対する期待を明言しており、「石平は、中国分裂を狙う悪魔だ!」ぐらいの罵詈雑言が北京の辺りから聞こえてきそうだ(※2)。
だが・・・石平氏のこの激辛の指摘が、どこか間違っているだろうか。
上記3> 「かつて毛沢東時代、政権はその気になれば数百万人の「反動分子」たちを一夜にして葬り去ることもできた。」は中国政府としては「悪意ある宣伝だ」とか「根拠のない歴史捏造だ」とか言い出しそうである。何しろ「南京大虐殺」を「史実」として「30万人」とか「60万人」とかを「虐殺」してしまえる国ならば、「数百万人の反動分子を葬り去った」事を葬り去るのもまた可能であろう。が、「民主化を求めて天安門広場に居座った学生達」を戦車で蹂躙して見せた天安門事件は隠れも無いのに対し、未だ艾未未氏はキャタピラの肉片にはされていないから、石平氏の上記3>の指摘に本質的な間違いはない。
上掲記事にある艾未未氏に対する攻撃「脱税と課徴金」「ネット上ヌード写真への軽犯罪適用」「当人ではなく妻の連行」は「全て法律に適っており正統」かも知れない。だが、例えば課徴金1500万元(約1億8400万円)に対し「全国の支持者ら約3万人から計870万元の支援金が艾氏に寄せられ」る様では、それら「正統な」攻撃は大して効果を上げていないし、何より「正面対決」ではなく「卑怯」である事には異論の挟みようが無い。
「中国政府は艾未未氏に対し攻撃する意図なぞなく、上掲の「攻撃」は偶々重なった正統な法律の行使である」ならば、これ以上の偶然が重なって艾未未氏が窮地に追い込まれることはそうはなかろうし、第一、「妻の連行」の理由は明快に公表されている筈だ。
上記1>「 たった1人の反対派との「正面対決」もできなくなっているほど中国の共産党政権は弱気になっているようだ」と言うのは、中国政府としては「間違っている」と強調したいところだろう。が、攻撃を意図している限り、「たった一人の反対派」と「正面対決していない」のは紛れも無い事実であろう。この点で石平氏を「間違っている」と言うためには、上述の「中国政府は艾未未氏に対し攻撃する意図なぞない」か、「正面対決する力はあるが敢えて行使していない」即ち何らかの理由で「艾未未氏を特別扱いしている」しかない。前者は「見え透いた嘘」即ち虚言であり、後者は虚勢であろう。
如何であろうか、石平氏の「激辛」中国評。噛めば噛むほど良い味が出て来る、実にコクのある旨味ではないか。
上記8>「(中国の)体制そのものの変革を促すような大変化がやがて起きてくるのではないか」と言う石平氏の期待は、私も望むところであるし、中国国民(※3)にとっても望ましい変化と考える。またこの点こそ、中国政府が「間違っていて欲しい」と願う点であろう。
本来、共産主義者であり、無神論であるはずの中国政府が「願う」と言うのも妙な話だが、期待するだけ虚しい希望を、私は他に評する言葉を知らない。つまりは石平氏の「予言」に私は期待し、希望的観測している、と言う事でもある。
言い換えれば・・・
「中国分裂を狙う悪魔」ならば、此処にも一人居るぞ、と言う事である。
<注釈>
(※1) それ即ち、そう簡単には非存在化Unpersonさせられない、と言う事。中国に於ける無名人権活動家ならどうなるかは、想像に難くない。どころか、「火を見るよりも明らか」であろう。チベット僧侶が抗議の焼身自殺などと言う非常手段を取り、それを「外国に居るダライ・ラマのマインドコントロールだ」と主張して憚らない中国政府である。(※2) もしそうなったら、是非にも石平氏には、「私が悪魔に見えますか。尻尾も生えていないでしょう。」と返してもらいたいものだ。
(※3) あえて、「人民」とは言わない。