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 報じられているのは、原子力基盤機構調査で明らかになった福島原発事故の詳報。特に、最初に炉心溶融に至った1号機について、以下のように報じられている。
 
1> 非常時に原子炉の圧力を下げて冷却する「非常用復水器(IC)」が津波から45分以内に稼働していれば、炉心溶融に至らなかったとする解析結果
2>  ICは今回の事故でも地震直後に自動起動したが、
3> 10分後に原子炉温度が急激に下がり、運転員が手動停止。
4> 再起動させたのは津波から約3時間後の3月11日午後6時18分だった。
 
 タイトルにもした通り、これは貴重な教訓を含んでいる事実だ。
 
 それはさて置き
 
 我々が福島原発事故に対して何を為すべきか、今一度確認しようか。
 
 先ず第一になすべき事は「被害の極限」だ。これは人的生物的被害もさることながら、物的被害まで含む広範な概念だ。幸いにして私の見るところ、この「被害の極限」は実質上は峠を越している。水素爆発等による新たな大気中への放射性物質拡散や、高濃度汚染水の大量流出による海洋汚染の可能性は今は相当に低くなった。油断するべきではないし、予断もあるべきではないが、炉心であった原子炉核燃料による再臨界から「チャイナシンドローム」に至る悪夢の可能性はさらに低い。今後、我が国初の「商業原発の廃炉作業」と言う長期間にわたる作業はあるものの、今後被害局限すべきは所謂風評被害、福島差別、放射能アレルギー被害であろう。であるからして、「実質上は峠を越えた」と私は断じる。
 無論、風評被害の局限は、実質被害の比ではなさそうなので、これはこれで厄介ではあるが。
 
 では、第二になすべき事は。これは「再発の防止」だろう。
 
 それ!だから脱原発だ!!原発止めろ!!と短絡してしまう輩は掃いて捨てるほどあろうが、お気の毒だが今すぐ全原発を運転停止にしたところで貴方の「安全」はさして高まらない。止めた原発を廃炉にするには10年オーダーの作業が必要であるから、その間は貴方の自己満足的「安心」が高まるだけだ。また。「自国だけ一国脱原発(*1)」しようとしたドイツのシーメンス社が原子力事業から撤退してしまったように、「脱原発」して原発を商売にならなくした後の廃炉作業は「未だ原発を保有して原子力技術を保持している外国」に頼る事になろうから、実に無責任である。
 さらに言えば、我が国が「脱原発」を宣言したところで半島や大陸の原発は増えこそすれども減りはしない。となれば、恐らくは大陸の原発は「自称国産原発」となろう事は先ず間違いない。その事実を検証も検討も安全上の関与も原子力技術を放棄してしまった我が国は出来ないと言うのに「その方が安心」であるならば、実にめでたい限りである。無論、以前記事にもしたが「安心」とは心の問題であるから、それで貴方が安心なのは貴方にとって結構な事ではあろう。
 
 だが、私が懸念するのは、国が保証すべきなのは、「安心」ではなく、「安全」である。それは電力の安定供給を当面の間含む(*2)のであるから、私は福島原発事故後も尚、原発推進論者なのである(*3)。
 
 故に、私は主張する。「福島原発事故に対して我々が為すべき第二の事」である「再発の防止」の為には、今回転載記事にされているような「福島原発事故状況とその原因」は極めて重要である。其処には、再発防止や再発した場合の被害局限に対する大小さまざまな教訓があるはずであり、それを今後に活かしてこそ「再発の防止」もなろう。責任者を追及する事よりも、「戦犯」を糾弾する事よりも、教訓を抽出して今後に活用するほうが、遥かに重大である。
 
 例えば、上記1>~4>に抽出した報道の中からだけでも、以下の疑問と教訓とすべき事項を抽出できる。
 
 (1) 「非常用復水器(IC)」の始動基準と停止基準。それが明確且つ適切であったなら1号機の炉心溶融は防止しえた可能性がある。

 (2) 上記(1)とも重複するが、「IC起動10分後に原子炉温度が急激に下がり、運転員が手動停止させた」理由と判断基準

 (3) その後のIC再起動が、津波から約3時間後の3月11日午後6時18分に至った理由。

 (4) ICを「津波後45分までに再起動」させるのに必要だった対策
 
 繰り返すが、「誰が悪い」とか「誰がミスった」かを判定し、糾弾する為ではない。犠牲山羊を槍玉に挙げるのは一時の爽快感はあるかも知れないし、痛快かも知れないが、再発防止の為には、殆ど役に立たない。それよりも設計として、手順として、組織として再発防止を実施するほうが遥かに実がある。
 
 今回の報告で、「地震直後に非常用復水器(IC)が作動し、その後手動で停止と言う事実」と「津波後45分までに非常用復水器(IC)を作動させていれば炉心溶融に至らなかったとする解析結果」は、「設計として安全に停止し、炉心溶融を回避できるようになっていたが、手順或いは操作、判定基準などの不適切から炉心溶融に至った可能性」を示唆している。
 
 少なくとも、「福島原発事故の再発防止」に、設計上も手順上も目処があり得る、と言う事だ。
 であるならば、その教訓を正しく汲み取り、今後のより安全な原発設計、原発運転に資させてこそ、「福島原発事故」が活きるであろう。
 
 最悪の事態からでも、よりよき明日の為の糧を得ることは可能である。
 
 前進せよ。日本。
 
ならば、行って我らの正統な遺産を要求しようではないか。
 我々の伝統に敗北の概念はない。今日は恒星を、明日は銀河系外星雲を。
 我々を止められる力など、この宇宙には存在しないのだ
。 」 
J・P ホーガン「星を継ぐもの」から、クリス・ダンチェッカー教授
 
 炎よ、行け。
転載開始========================================= 

【放射能漏れ】
「非常用復水器」すぐ稼働なら炉心溶融なかった 原子力安全基盤機構調査 

 http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/111209/dst11120919150008-n1.htm
2011.12.9 19:14 [放射能漏れ]
 原子力安全基盤機構(JNES)は9日、東京電力福島第1原発1号機で、非常時に原子炉の圧力を下げて冷却する「非常用復水器(IC)」が津波から45分以内に稼働していれば、炉心溶融に至らなかったとする解析結果を公表した。
 ICは今回の事故でも地震直後に自動起動したが、10分後に原子炉温度が急激に下がり、運転員が手動停止。再起動させたのは津波から約3時間後の3月11日午後6時18分だった。この時点で、すでに燃料は溶融し始めていた可能性が指摘されている。
 JNESは津波襲来から約45分後の同日午後4時15分にICを再稼働させたと仮定したシミュレーションを実施。その結果、原子炉の水位は維持され、燃料の溶融が防げたという。
 ICは電源を失った際に唯一稼働可能な冷却装置で、今回の事故でも稼働状況が適正だったかが、事故検証における重要な争点の一つとなっている。
 再起動が遅れたことについて、東電は保安院に対し「津波直後の数時間はプラント全体の状況把握に取り組むのが精いっぱいで、ICに集中して対応できる状況ではなかった」と説明している。
=================================転載完了


<注釈>

(*1) にして、私に言わせれば、「なんちゃって脱原発」。「フランスの原発製電機を安く買ってやっている」なんて公言しておいて、「脱原発」も無いもんだ。「必要な時だけ外国の原発に頼る」なんて事は、欧州だから出来ること。我が国ではできない。
 
(*2) 遠い将来ならば「電力供給なんて要らない」と言う世界になるかも知れない。別の形でエネルギーが供給され、情報通信を支えるかも知れない。まあ、私の目の黒いうちには、なりそうに無いが。
 
(*3) 私の原発推進論―または私が福島原発事故を経てなお原発を推進する理由。―前進せよ、人類。   http://blogs.yahoo.co.jp/tiger1tiger2stiger/35630668.html