「抗議の自殺なんかする奴は異常だ!」と断じる共産主義的傲慢


 
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 さて、如何であろうか。
 
 先ずは前者の記事から、何を以って中国政府は英ガーディアン紙を「歪曲報道」とするかを見ていこう。報じられる限りの中国駐英大使の言い分は、以下の通りだ。尚、抗議は書簡を以って行われたそうであるから、言い間違いとか聞き取り損ないとかはないし、中国駐英大使としては、書簡を読み直して推敲する余裕があったはずである。
 
1>  「事実を歪曲(わいきょく)した報道をした。まことに遺憾だ」
 
2> 「少数の亡命チベット人の話を引用して、焼身自殺を公然と賛美した。
3>  白を黒と言いくるめ、人々を惑わすものだ。まことに遺憾だ」
 
4> 「チベット仏教は平和を追求し寛容の精神がある。
5>  修行に専念すべき僧侶や尼が焼身自殺したことは、仏教精神に対する最も致命的は破壊行為」、
 
6> 「現地の群集は焼身自殺を広く非難しており、宗教人はさらに心を痛めている」
7> チベット族については「中国国民として、正当かつ合法的な意思表明の方法が完全に認められてている」、

8> 「自殺という極端な方法をとる理由はない」と主張した上で、
 
9> 「焼身自殺については、ただひとつの解釈しかできない。
10>  異常な力でコントロール・支配されていたということだ」
 
11> 「ダライ・ラマはこの種の極端な行為を非難もせず、止めようともしていない」、
 
12> 「ダライ集団は(焼身自殺などを)美化し、あおろたて、煽動(せんどう)してさらに多くの人を傷つけている」、
 
13> 「背後には人に言えない政治目的がある。
14>  仏教の教義にそむき、人類の良知と道徳にそむき、ましてや人道主義にもそむいている」

 
 さて、お気づきだろうか。
 上記1>~14>を通じて、中国駐英大使の書簡は、「英ガーディアン紙がどんな事実をどう歪曲して報道したのか、全く触れていない」のである。
 
 上記1>事実を歪曲した報道をした。」と断言しているのにも拘らず。
 
 何故ならば、上記2>「焼身自殺を公然と賛美した。」のは英ガーディアン紙の焼身自殺に対する解釈であって、事実の歪曲では全くない。後者の報道にもあるとおり、「抗議の声を上げて焼身自殺した」と言う事実さえ確かならば、後はどう解釈するかの問題だ。英ガーディアン紙はそれを賛美して報道し、上記4>~6>で中国駐英大使の主張どおり、現地の群衆が批難しようが、宗教人が心を痛めようが、或いは上記3>のように中国駐英停止が英ガーディアン紙の報道を評価しようが、「英ガーディアン紙が事実を歪曲した」ことを、示唆すらもしていなければ、相関関係さえ不明である。せいぜいが、「解釈の違いを指摘している」だけである。
 
 無論、この報道は中国駐英大使の抗議文全文を報じたものではないから、報じられていない部分で「明らかな事実の歪曲を指摘している」可能性はまだ残されている。そうであれば、このYahooニュース自体が、歪曲報道とは言わぬまでもとんでもない欠陥報道と言う事になるのだが、どうやらその可能性は低そうだ。
 何故ならば、それ以降の上記7>~14>の全く独善的な、いかにも中国らしい中国駐英大使の英ガーディアン紙、自殺したチベット僧、ひいてはダライ・ラマ師に対する批難には、「英ガーディアン紙が事実を歪曲して報道した」と言う事実は全く必要なく、「英ガーディアン紙が自殺したチベット僧を賛美して報道した」事実さえあれば充分そうであるからだ。
 
 くどいようだが、チベット僧が焼身自殺したというのは、中国駐英大使自身が認める紛れもない事実だ。さらには、上記8>「自殺等極端な方法」と認めているのだから、「何らかの主張の為にチベット僧が焼身自殺した」と言うところまでは、当該書簡の中で中国駐英大使自身が認めているところだ
 
 それを賛美するのは英ガーディアン紙の解釈だ。現地の群集、宗教人、さらには中国駐英大使が自殺したチベット僧を批難しようとも、英ガーディアン紙の賛美は、事実の歪曲には当たらない。
 
 焼身自殺したチベット僧が薬物の影響下にあったり、催眠術か何かでマインドコントロールされている事実があれば、英ガーディアン紙の賛美は誤りであるとは、少なくとも言えよう。それこそ正に中国駐英大使の言わんとするところかも知れないが、それならば現地群集が批難すべきは焼身自殺ではなく、そのマインドコントロールの筈だし、宗教人は「心を痛める」で済む訳がない。大体、上記9>~10>のように焼身自殺の理由は異常なコントロール」としか理解できないような、想像力の欠如と言うよりは、根本的な死生観の欠如した中国駐英大使の主張が「ダライ・ラマ集団によるマインドコントロール」では、毛筋ほどにも信用する気にならない。
 
 第一、ダライ・ラマ師自身はチベットどころか国外に居るのに、どんなマインドコントロールを施すと遠隔操作で焼身自殺を、それも複数実行させられると言うのだ。

 さらに言うならば、焼身自殺したチベット僧の、自由や独立の大義に殉じる至誠を信じられないような中国駐英大使が、ダライ・ラマ師による国外からのマインドコントロールなら信じられると言うのも、実に不思議な話だ。性悪説も極めれば、此処までいく、と言う事だろうか。(※1)
  
 正直なところ、不覚にも、と言うべきか、私はこの中国駐英大使が本心で斯様に主張しているのであれば、哀れを催さずには居れない。
 
 現世、今ある命、今目の前の利益以外なんら信じる事ができず、「悠久の大義に生きる」とか、「生きるべき時と死す可き場所」とか、「命を惜しむな、名こそ惜しめ」とか、一所懸命とか、「己が生命以上の事」を理解できず、理解しようともしない、ある意味典型的な共産主義者にして中国人が。
 
 「己が生命以上の事」を理解できない者は、己が命以上の事は為せないだろう。
 
 「今宵、我らが宴は地獄で行う!」―レオニダス王 映画「300」より―
 
 「人はやがて死んでいく。だが、国は生き続ける。」
 
 
追伸:
> 若者が「チベットに自由を」「チベットに独立を」という政治的訴えを叫んで焼身自殺に及ぶと伝えられていることについては、
> 「20年前後しか生きていない若者自らの言葉でないことは明らかだ」と断じた。
 
 白虎隊も、神風特別攻撃隊も、我が日本人の偉大なる文化的遺産なんだなぁ。
 
 先人の偉業を誉む可きかな。

 

<注釈>

(※1) だとすると、私自身の(大分甘い)性悪説も、少々見直しの必要を感じるんだが。